教授「明るいニュースである」
石橋「ペラミビルって何?」
教授「インフルエンザの治療薬」
石橋「新製品?」
教授「そう、日本の塩野義製薬が開発した薬」
石橋「おぉ!で、タミフルやリレンザと何が違うんですか?」
教授「タミフルは錠剤で飲む薬」
石橋「そうです」
教授「リレンザは粉末で吸入するタイプ」
石橋「はいはい」
教授「エラミビルは、輸液。つまり注射や点滴するタイプの薬」
石橋「ほほぉ~」
教授「わかったかな?」
石橋「全然!」
教授「・・・」
石橋「インフルエンザを治療する仕組みは違うんですか?」
教授「基本的にノイラミニダーゼ阻害剤であることは共通しておる」
石橋「ノイラミニダーゼ阻害剤?」
教授「平たく言えば、人間の細胞に侵入するためにウィルスが持っている鍵にひっついて、鍵の形を変えてしまう物質のことじゃ」
石橋「それがひっつくとどうなるんですか?」
教授「鍵穴と合わないから、ウィルスは人間の細胞に侵入することができない」
石橋「侵入できないと?」
教授「増殖できない」
石橋「増殖できないと?」
教授「発病しない。或いは、短時間で症状が治まる」
石橋「なんで?」
教授「人類は、未だかつてウィルスを殺す薬を発見も発明もしておらん」
石橋「またまたぁ、タミフルやリレンザがあるじゃないですか」
教授「あれは、ウィルスを殺す薬ではない」
石橋「じゃあ、ウィルスは誰が殺しているんですか?」
教授「人間の自己免疫機能じゃよ」
石橋「それは、呪文ですか?」
教授「血液中の白血球や、発熱がそうじゃ。元々、人間は、体内に侵入したウィルスを殺す能力を持っておるんじゃ」
石橋「だったら、薬なんか必要ないじゃないですか」
教授「ん~、君にどう説明したらいいのか・・・ウィルスとの戦いは、増殖競争なんじゃよ」
石橋「競争?」
教授「極端な話、白血球とウィルスのどちらが数的優位に立てるかと云う競争じゃ」
石橋「例えば?」
教授「白血球の方が、沢山増殖して数的優位になれば、ウィルスを全滅させることができる」
石橋「なるほど。で、その逆の場合は?」
教授「ウィルスの方が、増殖が速い場合は、ウィルスが蔓延して人は死ぬ」
石橋「あちゃ~、で、薬の役割は?」
教授「ウィルスの増殖を抑える」
石橋「つまり、白血球の増殖するスピードが、ウィルスの増殖するスピードよりも早くなる?」
教授「その通りじゃ」
石橋「やがて、ウィルスは白血球によて、食べ尽くされる」
教諭「ご名答!」
石橋「ところで、自己免疫機能の発熱って何ですか?」
教授「うむ、ウィルスは熱に弱いんじゃ」
石橋「僕も熱に弱いですけど」
教授「それは、ちょっと意味が違うな。ウィルスの死滅温度は40℃、一方、ヒト細胞の死滅温度は42℃。つまり、人の体温を40℃に保てば、体内のウィルスは死滅し、ヒトの細胞は傷付かない」
石橋「微妙ですね」
教授「そう、ウィルスの死滅する温度と、ヒト細胞の死滅温度の間には、僅か℃の差しかない」
石橋「上げ過ぎれば、自分が死ぬ。上げ足りないと、ウィルスは死なない」
教授「その通りじゃ。そのギリギリの温度調節が自己免疫機能なんじゃ」
石橋「で、新薬ができたことが目出度いと?」
教授「いや、そうじゃない」
石橋「え?」
教授「その新約を、日本よりも先にアメリカが使用許可を出した」
石橋「何で、それが目出度いんですか?」
教授「わしは、塩野義製薬の株を持っている」
石橋「それが、何か?」
教授「このニュースで、塩野義製薬の株価は上がる。それで、ひと儲けするんじゃ」
石橋「・・・」
※注 白血球は、顆粒球(好中球、好酸素球、好塩基球)、単球(マクロファージ)、リンパ球(B細胞、T細胞(ヘルパーT細胞、キラーT細胞、サプレッサーT細胞)、NK細胞)の総称である
