ボッキはボッキでも色んな種類がある?!
我、EDマンなり。
勃起の種類と勃起中枢の話
反射性勃起 (reflexogenic erection)
心因性勃起 (psychotic erection)
夜間勃起 (nocturnal penile tumescence)
キーポイント
□ 勃起は3種類ある;反射性勃起、心因性勃起そして夜間勃起。
□ 勃起中枢は視床下部と仙髄にある。
□ 反射性勃起はペニスへの触覚的刺激による脊髄反射でおこる。
□ 心因性勃起は視覚、聴覚、嗅覚的刺激、または想像により視床下部が働くことでおこる。
□ 夜間勃起はREM睡眠中に自律神経が乱れることでおこる。
勃起の種類と勃起中枢の話
まず初めに忘れないで欲しいのは、勃起は副交感神経が優位な時に起こるものであるということ。詳しくは「勃起の仕組みを学ぶ前に知っておきたい基本的知識!」で解説しているので読んで欲しい。
結論から言うとボッキの種類は三つある。それぞれ、
反射性勃起……ペニスへの物理的な感触が脊髄反射を起動させて勃起。
心因性勃起……視覚や聴覚、想像などが脳を刺激し起こる勃起。
夜間勃起……レム睡眠中に起こる勃起。
となっている。ここで、簡単に神経のことについて説明する。
神経には中枢神経と末梢神経がある。
神経の塊である脳と背骨の中に通っている脊髄を合わせて中枢神経、それ以外の神経を末梢神経と呼び、末梢神経と中枢神経は常に信号を送りあっている。
中枢神経の中でも、勃起を司っているところを勃起中枢(Erection center)といって、それぞれ
脳……視床下部((特に内側視索前野(ないそく しさく ぜんや)と室旁核(しつぼうかく)))
脊髄……仙髄(せんずい)
にあるとされている。
絵で見ると↓↓
これは脳を前から後ろにかけて真っ二つに割った時の絵。視床(赤)の下にあるので視床下部(水色)。
仙髄は腰の辺りに位置する。
勃起に関連する神経の話はまた他のブログで詳しく説明する。
上に説明した基本的な情報を元に勃起の種類について詳しく説明していこう!
反射性勃起 (reflexogenic erection)
反射、脊髄反射という現象をご存知だろうか。ここで言う反射は光が水面に反射するものではなくて、人間の身体が何らかの刺激に対して脳を介すことなく反応する現象のことだ。脳を介していないと言うことはつまり無意識に勝手に起こってしまうもので、コントロールできない。
もう少し詳しく説明しよう。例えば、熱いものを間違って触った時、「熱い」という情報は手の末梢神経(まっしょうしんけい)から脊髄へ、そして脊髄から脳へと伝達される。脳が脊髄から入ってきた情報を読み込むことで初めて「熱い!!」と意識的に感じることができるわけだ。
しかし、この情報を脳に伝達している間にも手は焼かれて火傷していることになる。脳に伝達を送る時間分のラグがあるのだ。そこで、脊髄反射というヒーローが現れる。手の末梢神経が「熱い」という情報を脊髄に伝達した時点で脳を介すことなく、「手を引っ込める」という信号を脊髄レベルで手に送り返すことができるのだ。これによって熱いものから最速で手を守ることができる。
この「手を引っ込める」という信号は意識的なものではなく、脊髄レベルで出されたものなので、脊髄損傷などで脊髄が機能していない場合を除いて確実に起こるものなのだ。手を引っ込めないようにコントロールできるものではない。
さて、反射性勃起についてある程度想像がついただろうか。
ペニスが何かに触れると、ペニスの末梢神経が「触られた」という信号を脊髄そして脳に送るわけだが、同時に脊髄反射として脊髄レベルで「勃起する」という信号がペニスへと送り出される。
脊髄レベルで完結するということは、別にエッチなことを考えていたりムラムラしたりしていなくても起こる現象なのだ。副交感神経が優位な状態であれば、車に乗っている時の振動だけでも勃起できたりする訳だ。修学旅行中のバスで勃起してしまい少し気まずい思いをした少年たち、君たちの無実は今ここで証明されよう!!
心因性勃起 (psychotic erection)
心因性はその名の通り、心が性的に興奮することで勃起が起こること。あまり説明は要らないだろう。
エロ漫画や一糸纏わぬ女性の姿などの視覚的な刺激や、声や息遣いなどの聴覚的刺激、好きな子とエッチをする想像(fantasy) なんかも刺激となりうる。
これらの刺激によって脳の視床下部から脊髄の勃起中枢へと「勃て〜」という信号が送られるわけだ。
かといって必ずしも意識下で起こる訳ではない。まだ思春期の時代、授業中にエッチなことを考えていたわけでもないのに勝手にゾウさんがパオーンした経験はないだろうか? これは視床下部が意識外で刺激され勃起を起こしていると言われている。つまりは意識外でエッチなことを考えているかもしれないのだ。
反射性勃起であると考えられないこのような状況下では残念ながら「別に、いらやしいことを考えていたわけじゃないんだ! 男の生理現象なんだ!」と自分はあくまでも無垢であり無実なんだと言い訳はできない。なぜなら意識外でもエロイことを考えているという次元が違うレベルでエッチなのだから。青年諸君、君は黒だ。
因みに、EDマンはこの心因性勃起こそがAIによって難しくなるのではと危惧する。F*ck AI porn!! 我は叫ぶ。
夜間勃起 (nocturnal penile tumescence)
夜間勃起は寝ている間に起こるもので、特にレム睡眠中に起こるとされている。
人間の睡眠の状態にはレム睡眠とノンレム睡眠があり、レム睡眠は夢をみやすい状態だとして聞いたことがある方が多いと思う。
レムは英語でREM(Rapid Eye Movement)で訳すと「目が素早く動いている」状態で、文字通り寝てる間に目が高速で動いている時間があるのだ。
この時間は健康な思春期の男性で睡眠に3〜5回(160分ほど)あるとされていて、急速眼球運動に加えて骨格筋の活動の低下(身体が完全にグッタリとなってる状態) と起きているときに近く鋸歯状波(きょしじょう は) というのこぎりの様にギザギザした脳波が計測できることが特徴的だ。
夜間勃起の詳しいメカニズムはまだ解明されていないが、自律神経が乱れることから起こると推測されている。
事象としてはしっかりと確認されていて、昔はEDの診断で原因が心因性か器質性かを確かめるのに活用されていた。これをnocturnal penile tumescence (NPT) test といい、夜間勃起が健在であればペニス自体は勃つことができるという証明になるので器質性の可能性を省くことができるとされていた。しかし、器質性の神経性と内分泌性の場合でも夜間勃起が認められる場合があることが分かり、かつ測定に少なくとも二日は要することから今ではあまり使われていない。
因みに「朝勃ち」はまさにこのレム睡眠時に起こる夜間勃起のことで、厳密にいえば寝ている間に何回も朝勃ちしているわけだ。朝だからといって勃つ訳ではない。もちろんエロいことを考えている訳でもないのだ。これでラブコメ漫画の少女キャラクターからビンタをくらった可哀想な青年キャラたちをEDマンは慰めてあげたい。静香は「は? そんな状況が起こりうる時点で爆発しろ」とかよく分からないことを言っていたが。
以上、3つの勃起の種類について説明した。
次回もよろしくお願い申し上げる。
我、EDマンなり。我の活動にご興味ある方は、是非我の初めのブログを読んで欲しい。↓↓
参考文献、引用
* "Servier - Drawing Brain sagittal section - no labels" by Servier Medical Art, license: CC BY, marked and labelled
** "Human Biology fig. 1.30 - Large nerves of the body - English labels" by User:The Emirr/Wikimedia Commons, license: CC BY. Source: book ‘Human Biology’, https://textbookequity.org/Textbooks/HumanBiologyCK12.pdf. marked and labelled
1. Dean RC, Lue TF. Physiology of penile erection and pathophysiology of erectile dysfunction. Urol Clin North Am. 2005 Nov;32(4):379-95, v. doi: 10.1016/j.ucl.2005.08.007. PMID: 16291031; PMCID: PMC1351051.
2. Giuliano F, Rampin O. Central neural regulation of penile erection. Neurosci Biobehav Rev. 2000 Jul;24(5):517-33. doi: 10.1016/s0149-7634(00)00020-8. PMID: 10880818.
3. Ronald F. Pfeiffer, CHAPTER 29 - BLADDER AND SEXUAL FUNCTION AND DYSFUNCTION, Neurology and Clinical Neuroscience 2007, ISBN 9780323033541, https://doi.org/10.1016/B978-0-323-03354-1.50033-X.
4. Benjamin D. Sachs, Placing erection in context: The reflexogenic-psychogenic dichotomy reconsidered, Neuroscience & Biobehavioral Reviews Volume 19, Issue 2, Summer 1995, Pages 211-224,
https://doi.org/10.1016/0149-7634(94)00063-7