EDマンここに降りたったり
AIの発展に伴って人類滅亡の危機が訪れた。
ED(Erectile Dysfuntion)またの名を勃起不全。EDとは、満足な性行為を行うのに十分な勃起が得られないか、または維持できない状態が持続または再発することを言う。
EDセンサー急上昇
時は令和。2022年11月30日、米OpenAi社がChatGTPをリリースした。そして同刻、宇宙の何もない空間から赤ちゃんが産まれた。
「うぎゃ、あやうぎゃぎゃ (EDマン参上!)」ーー我の産声だった。
赤ちゃんであったが、既に自我はあった。自分がEDマンであることも自然と認識していた。
EDセンサー🤖……0%
突然頭の中で流れた、機械的な音声のアナウンス。
(どういうことだ……?)
その時、膨大な情報が頭に流れ込んできた。
主に地球に存在するニンゲンという生物について。そしてニンゲンが直面している、種族存続の危機。
「おぎゃあ"ぁぁーー」
あまりの情報量に我は頭を抱えて悶えた。
そしてその短時間で我はみるみる老化していった。
幼児、少年、青年とカラダが変化して、顔には皺ができ髪は白髪が混じって、髭は伸びていった。そして、頭に流れ込む情報が止まった時にはおじさんになってしまった。
髪の毛も前頭部からは消え失せていた……。ストレスによるものだ。我の心は深く傷ついていた。
だが、自分の存在意義は理解した。なぜ我という存在が生み出されたのか。どんな使命を持っているのか。
現在、地球ではChat GPTリリースからまだ半年ちょっと。人工知能の進化のスピードは凄まじく、世界はAIの持つ可能性に沸きだっている。
実際に使ったことある方はその性能に目を見開いたことだろう。コード言語を使う必要はなく、まるで人と会話するかのようにコマンドを与え、文章の要約から翻訳、自らコードや論文を書くことさえできる。
EDセンサー🤖……5%
再び頭の中で流れたアナウンス音。
(やっぱり……)
我が人類滅亡の危機を感知するとセンサーの数値が上がるみたいだ。そしてEDマンセンサー🤖に比例して私の中でチカラ(EDマンパワー💪)が増していくのも感じた。
読者の方は強引な「人類滅亡」のワードに説明を求めていると思う。順序を追って説明しているので、できればこのブログを最後まで読んでほしい。
我が読み込んだ情報の中にこんな画像がある↓↓
人工知能を使えば、もう嫌な上司にどんな文面を書こうか悩むストレスも無く、なんなら自動送信で自尊心も救うことができてしまうのだ……。
EDマンセンサー🤖…… 3%
センサーの数値が減った。
ストレスや傷ついた自尊心が減るのはいいことだ。
必ずしもAIそのものがEDマンの危惧する人類滅亡に帰結する訳ではないのだ。
ChatGPTはオープンソースモデルとして作られた。つまり、他の会社や団体が人工知能のコードにアクセスでき、自らのサービス開発に利用できる。実際に、既に様々なサービスがChatGPTを使って運営されている。ChatGPTを顕著な例として挙げたが、もちろん他にも様々なAIが存在する。
そしてその用途はアダルト界にも及んでいる。そこに、最大の問題があるのだ。
我の頭に流れてきた情報の中。
地球上の青年達が携帯やパソコンの画面を見つめていた。開かれた目は充血しており、必死に何かに集中している。
腕は往復運動をひたすらに繰り返していた。
私は彼らの画面を覗き込んだ。
「オーマイガー😱 It’s AI porn!!」
EDマンセンサー🤖……20%
EDマンセンサー🤖……30%
EDマンセンサー🤖……45%
EDマンセンサー🤖……65%
刹那、EDマンセンサーは急上昇を始めた。それに伴いEDマンパワー💪も急上昇して、身体の奥底から溢れんばかりのチカラが湧き出した。
「パワーーーーー」
カラダが爆ぜた。我は星や宇宙雲を蹂躙するかの如く加速し、周囲を塵とかして地球の大気圏へと突入した。
向かうは地球上の日本という国の首都、東京。EDマンの拠点に相応しいと判断した。
我の使命は人類の男性をEDから、不妊から救うため。
東京都丸の内、アップルストア前。
高速でバク宙しながら、我は降りたった。
「ボク、EDマン!!」
早々に訪れたEDマンの危機
「きゃーーー」
我が地球に降り立って、ポーズを決めていると目の前の女性が酷く怯えだした。
我はEDマンパワー💪を少し費やして、彼女の思考をスキャンした。
(胸元と股間だけを隠した布……、変態、キモッ! ハゲ、おっさん、警察、キモッ、警察、警察……)
彼女の思考を支配している言葉。
どうやら我の格好の問題だったらしい。
我はEDマンパワー💪をもっと費やして服を作り出し纏うと、我の登場を目撃した全員のその部分の記憶を消した。
EDマンパワー💪は万能である。
EDマンセンサー🤖……15%
だがしかし、EDマンセンサー🤖とEDマンパワー💪は連動しているらしい。 EDマンパワーを大量に使ったため、センサーの数値も減った。
我が新たなEDによる人類滅亡の危機を認識すれば、EDマンセンサー🤖は反応して回復する。我は人類滅亡の危機が存在する限り半永久的にパワーが使える。
地球上での活動にインターネットへのアクセスが不可欠であると感じた我は、アップルストアへと足を踏み入れた。
「じゅ、十二万円……」
iPadの値段を見て気が動転した。
EDマンセンサー🤖の充電が急遽必要になってしまった……。
人類滅亡の本題に入る。
ディープフェイクという言葉をご存じだろうか。
一般的にAIを用いて作られた偽造の映像や音声のことを指すのだが、これがもう既に相当高度なレベルで偽造できる。
この動画を見てほしい。トム・クルーズとは似ても似つかない人が、ディープフェイクの技術を使うことで、見た目は本人にしか見えない。↓↓↓
EDマンセンサー🤖……20%
そして勿論これは映画界に限ったことではない。やろうと思えば悪用もできる。
オレオレ詐欺で「声がちょっと似てるかも?」とかそんなレベルではない。テレビ電話で声や顔、喋り方の癖までも再現された”フェイスタイム詐欺”だって可能なのだ。そんな電話がきたら、いったい何人が詐欺だと見抜けるだろか。
2021年時のオレオレ詐欺などを含めた詐欺の被害件数は年間約14,000件。被害額は282億円に及ぶ*。
2021年度はまだ、人を欺けるような高度なAI技術が使用されていないことを考えると、詐欺による社会の損失、そして裏社会の犯罪者組織のポケットがこれからどれだけ潤うか恐ろしくなる。
ここでEDマンアドバイス: 気休め程度だろうが、我は家族間で本人確認用の合言葉を作ることを推奨する。
EDマンセンサー🤖……25%
EDマンセンサー🤖は順調に貯まっている。
だが十二万円を捻出するのにEDマンパワー💪はまだ足りない。お金をゼロから生み出すのはコスパが悪いようだ。
まあともあれ、問題はアダルト業界の話だ。
ディープフェイク自体はアダルト業界で既に使われている。動画内の顔を有名人に編集したり、音声を変えたり、用途は様々。もちろん悪用されている場合も多い。
しかし、考えてもみてほしい。AIが可能にする、顔も体型も声も、性格すらも貴方のタイプそのものの人物モデルを売りにしたサービス。
AIによって一人一人の指向、タイプを分析し、その人物の3Dモデルを作り出せば、文字通り性癖をそのまま具現化した商品を売ることができるのだ。ーーこれはアダルト業界に革命が起きる。
そして、もう既に開発は進んでいる。
EDマンセンサー🤖が急上昇を始めた。それだけ人類への影響は大きい。
ーー人間は性欲を満たすのに人間が必要でなくなるのだ。
AIによって脳にドーパミンを大量放出させることでより強い快感を経験すれば、人々はそれを繰り返し、習慣化していく。
ドーパミンが大量放出されることに慣れ、日常で自然に作られる量では満足できなくなる。
依存はどんどん進み、AIのない生活に幸せを感じられなくなるのだ。もはや人間相手には興奮できなくなってしまう可能性すらある。
日本の少子高齢化問題でセックスレスが取り上げられることがあるが、それは悪化するばかり。
日本に限ったことではない。世界規模でそんなことが起これば人類存亡の危機だ。今はまだ笑い話かもしれないが、実際に起こってしまえば後戻りは難しい。
そして我の存在意義の根底……
EDに悩む青年達が増えること間違いなし!!
ーーEDマンセンサー🤖……100%
アナウンスの音声が頭に響く。
「はっ」
息を呑む音が背後からした。振り返ると、そこには青年が立っていた。
深くキャップ帽を被っており顔はよく見えないが、黒縁のメガネが特徴的だ。
「あんた、もしかしてEDマンか?」
別にEDマンであることを隠している訳ではないが、一見で正体を明かされた我は少し焦った。
頭をフル回転させ、データベースから青年についての情報を探す。
だが、おかしなことに青年の情報は一切見つからない。
対応に困っていると、青年が再び口を開いた。
「僕が何者なのか、そんなのは後で時機に分かる。それよりも、あんた呼吸しただろ。活性化酸素があんたのカラダを蝕んでるよ」
その言葉を理解するのに少し時間を要したが、その時我は初めて、自分のカラダが黒ずみ崩壊し出していることに気づいた。
思えば本来酸素呼吸など必要なかったのに、周りの人間がしているからと我も真似て呼吸をしていた。
(これが同調圧力か……)
酸素は体内で活性化酸素へと化学変化し、カラダの細胞を殺していた。
次第に動くのが難しくなって、息も浅くなってきた。
「今はとりあえず生存するためだけにEDマンパワーを使え!」
視界が霞んでいく中、青年の声が頭に響いた。
EDマン、居候する。そして……
気がつくと、我はベッドの上で寝ていた。
周りを見渡すと、見覚えのない部屋が広がっていた。服やゴミなどが散らかった部屋に教科書が山積みの机が置いてある。
「やっと目を覚ましたようだね、EDマン」
山積みの教科書の奥から、あの青年の声がした。
「君はいったい何者なんだ?」
質問という質問が我の頭で渦巻いていたが、まずは彼の正体が知りたくて仕方がなかった。
我の膨大なデータベースにもなかった青年。
「俺は静香(しずか)。あんたのことを助ける存在さ。俺はあんたの使命を助けたい。それだけだ。因みに男だからな? 名前でよく間違えられるけど」
青年は椅子から立ち上がり、我の方へ歩いてくる。水をいるかと聞かれたので、我は不要だと断った。
「そうか、静香。我の使命とは……ED撲滅のことかい?」
我はベッドの脇に立つ彼を見上げて聞いた。
「ああ、それもあるけど。まぁ、今はまだいい。それよりも……あんた、暫くEDマンパワー使えないだろう?」
「そんなわけな……」
馬鹿げた話だと否定しようとした時、我は確かにEDマンパワー💪を感じられないことに気づいた。
EDマンセンサー🤖は反応している。EDマンパワー💪も比例して増えているはずだが、生み出された瞬間に消費されているような感覚がある。
「カラダを修復中なんだよ。あんたの特殊なカラダ、再生するのにかなりのEDマンパワーを消費するからね」
「なるほど……」
確かに、そんな感覚はあった。
だが、EDマンパワーを使えないのは困る。我は使命を達成しなければいけないのだ。
「だからさ」
静香は続けた。
「EDマンは俺の家を拠点にすれば良い。カラダが治るまでは、ここで活動しなよ。iPadもパソコンも好きに使って良い」
我にとっては好条件だったが、静香にそんなことをする義理はない。
返答に悩んでいると、青年は再び口を開いた。
「俺はずっとあんたのファンだった。人々をEDから助けるっていう社会貢献に俺も手伝わせて欲しいだけなんだ! だからこの通り……」
静香は我の目の前で正座をすると頭を床につけた。
「わ! や、やめてくれたまえ!」
我は突然の土下座に少し慌てふためいた。
「分かった! 我は君を信じる! これから再びEDマンパワーが使えるようになるまでは、世話になる」
我がそう言うと静香は心機一転、嬉しそうな顔で、
「そっか! じゃあ早速始めよう! まずは……ブログだな!」
とiPadを差し出してきた。
こうして、EDマンブログは開始されたのだった。
コンプラに怯えるEDマン
静香によると、なんでも情報発信をするにはリスクが伴うらしい。
特にコンプラと呼ばれるものが人々を恐怖に怯えさせているようだ。
ということで、
医療相談は病院に行ってほしい。
そして、EDマンは読者がどんな考えを持っているのか興味がある。これはコメントで教えていただけると嬉しい。
最後に、ブログの場所や、形態が今後変わる可能性がある。ご了承いただきたい。
以上!
これから、よろしくお願い申し上げる。