脱脂の特徴、そして、浮かび上がる美容の闇 | 美容外科医・Dr.安嶋“あじ先生”のブログ『あじブロ』

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あじまビューティークリニック・院長の安嶋康治(あじまやすはる)です。

クリニックで行っている美容医療のご紹介から、プライベートのお話まで、色々な事を書いています。
是非ご覧ください(^^)

◆形成外科専門医◆


こんばんは!





今回のブログでは、

●脱脂で治せるクマとは?
(脱脂の特徴・他の治療法との比較もご紹介)


そして、

●脱脂の特徴から浮かび上がる
美容医療の闇

についてお話ししたいと思います。


少し長めになりますが、
クマ治療をご検討の方には
きっとお役に立てるであろう
内容になっていますので、
ぜひ最後までご覧ください。









まず、

テーマ 其ノ壱!



脱脂で治せるクマとは?

​〜
さんのクマは、本当に脱脂が適応?〜


そもそも、脱脂とは何か???


脱脂(経結膜脱脂術)とは?

下まぶたの裏側の粘膜(結膜)を切開し、
眼窩脂肪という目玉を包み込むように存在する
脂肪の飛び出している部分を除去する手術です。​




『クマ治療』『クマ取り』などと

ネットで検索すると

真っ先に出てくるのが脱脂ですが…



全てのクマが脱脂によって

必ず綺麗になるか?


と言うと…



そんなことはありません。



クマには色々な原因(要素)があるからです。



クマに見える要素は様々!


目の下が『なんか変』になっていて、


×疲れて見える

×寝不足に見える

×老けて見える


など、マイナスの印象になっているというのを

全てひっくるめて『クマ』というひと言で

表されてしまっているのです。



治療するにあたっては、まずは

目の前の患者さんのクマが

どういった状態であるかを

的確に診断できるかどうかが

ポイントとなります。




主なクマの要素は、4つ!
(手術ではなかなか治らない「色のクマ」を除く)


 ①膨らみ

下瞼がぷよぷよと膨らんでいる。

原因…眼窩脂肪が周りより前に飛び出している



 ②痩せ・凹み

下瞼や隣接する頬が痩せて凹んでいる。

原因…脂肪の不足

(あるいは骨の形や目玉の位置などで凹んで見える)



 ③溝(ティアトラフと言います)

目頭から斜め下に、ハの字に食い込んでいる。

原因…リガメントが強く、皮膚や筋肉が

骨に引き込まれている



 ④皮膚のたるみ

下瞼の皮膚がたるんでいる。

原因…加齢による皮膚弾性の低下・余剰



他にも、

皮膚の色が悪いというクマもありますが、

色素沈着や皮膚の薄さが原因なので

残念ながら手術ではほぼ改善しません

皮膚科的な施術でゆっくりと少しずつ

改善させることはできます。





目の下の形を見ていただくと、

同じ「クマ」でも一人一人全く違う

ということがわかります。


骨格や肉付き、皮膚の性質も違う。




これだけ要素が違うのですから、

手術の術式も要素に応じて

選ぶ必要があります。




冒頭にある通り、

脱脂は脂肪を取る手術。

なので、


①膨らみが強ければ…

脱脂を検討して良いと思います。




しかし、

他の②〜④の要素が強ければ、

別の治療をお薦めします。




②凹みが強ければ…

ボリュームを補充する脂肪注入を。



③溝が強ければ…

リガメントを剥がして、そのスペースに

眼窩脂肪を移動させるハムラ法を。

ハムラ法には2種類あり、

●脱脂と同じように、まぶたの裏側を切開するものを裏ハムラ法

●皮膚を切開し、下記のたるみ取りを
併せて行うものを表ハムラ法

と一般的に言います。



④たるみが強ければ…

皮膚を切除してリフトする除皺術を。

(表ハムラ法やミッドフェイスリフトに準じて

内部処理を行うことが多い)




それぞれの要素に応じて

お薦めすることが多いです。




…という訳で、


クマの手術方法は4種類!

●脱脂

●脂肪注入

●裏ハムラ

●表ハムラ


これらを、クマの要因に合わせて

選択して(あるいは組み合わせて)

治療することになります。



 

クマの要素に応じた
治療方法を選ぶべし!

1つの手術で全てのクマ要素が改善する訳では無い!



クマの要素と手術の関係をまとめると、

このようになります。

 

 


この表でも示している通り、


脱脂で改善するのは

①膨らみのみです。


脂肪を取り出すだけの手術なので、

当然ですね。


脱脂は、

膨らみを取るに過ぎず。
(膨らみ以外は解決しない)


つまり、

脱脂が適応となる人とは…?

①何となく目の下が膨らんでいる。

でも、

②膨らみの周りの肉付きが良く凹みがなく、

③下まぶたと頬の間の溝が目立たず、

④皮膚のたるみが進行していない。

という

限られた条件をクリアした人だけ

なのです。





ネットなどでよく見かける

 ピリピリ 脱脂の失敗談 ピリピリ


× 凹んで余計老けてしまった

× 溝が残ってしまった

× 下瞼に深いシワができてしまった




…というのは、


そもそも凹み、溝、たるみが

ある程度存在していたのに、

脱脂をしたことによって

他のクマ要素があることに気づいてしまった

(膨らみが無くなったら他の要素が

目に付くようになってしまった)

ということだと思われます。


サムネイル

​過剰な脱脂(脂肪の取り過ぎ)
によって凹んだとしたら、
それは論外です。

でも、意外に多い取り過ぎ問題。

眼窩脂肪は、目玉を包み込む
クッション素材!
必要だから、そこにある。

飛び出した不要な部分だけを
そっと取り出すなら大丈夫ですが、
奥から引っ張り出すと…
超ヤバイです!

過剰脱脂についてのまとめブログ

まだご覧になっていない方は、
是非ご一読を!




では、


脱脂はダメな手術なのか?


…と言われると、

そんなことはないです。


手術適応を見極め、適切な量を除去すれば

とても良い手術です!





シンプルな手術だからこそ…


◎腫れや内出血などが少なめ

(もちろん個人差あり)


◎コストが比較的安く抑えられる

というメリットがあります。



まずは適量脱脂をしてみて、

万が一他のクマ要素が残って気になったら

他の要素の治療を追加する

…というのもアリです。

脱脂と脂肪注入はよく組み合わされる手術ですが、

まず脱脂して様子を見て、凹みが気になったら

その時に脂肪かヒアルロン酸などの

注入治療を検討してみては?

という提案も、私はよくします。



先ほど出てきた脱脂の失敗談だって、

ご自身のクマの要素について

納得がいく説明を受けてから

脱脂を受けていれば、

膨らみ以外の要素が気になるかも知れない

という心構えができているので、

『失敗』という受け止め方にはならなかった

のではないかな?と思います。


【​脱脂のメリット】

①腫れや内出血が軽め
②他の手術法に比べて安め


適応を選べば、良い手術!




以上、


● 脱脂で治せるクマの種類

● 他の手術方法との比較


についてでした。






〜休憩〜

私は、元々書き物が苦手でしてもやもや

書く方も疲れますが、

読む方も疲れますよねアセアセ

もうひと息です!

お付き合いくださいませ!






はい、

テーマ 其ノ弐!



美容医療のについて。



これは、脱脂の特徴から

炙り出すことが出来ます。


お断りしておきますが、

以下に述べる内容は特定のクリニックを

名指しで否定するものではありません。



なぜ脱脂ばかりが

ネット広告やテレビCMで

流れてくるのか???



繰り返しになりますが…


脱脂という手術は、


患者さん側のメリットとして

● 腫れや内出血といった症状が軽め

● 他の手術法に比べてコストが安め


といった要因があります。



しかし、一方で、

良くも悪くも膨らみを取るだけの

至極シンプルな手術法であるが故、


限界(デメリット)として、

▲ 膨らみの要素しか治せない


というのは、クマを治療する側の

我々美容外科医にとっては

大きな制限となり得ます。

ハムラ法や脂肪注入など様々な手段を

持っている身からすると、

物足りないと感じる事もあるのが事実。




では、


なぜネット広告やテレビCMなどで

「切らないクマ取り(瞼の裏側切ってますけどね)

と称して脱脂ばかりが

流れてくるのでしょうか?



これには、脱脂における

クリニック側のメリット

が大きく関与している

と私は考えています。

⬇︎

● 手術時間が短い

(1人の患者さんにかかる時間が短い→回転率が高い)


● 比較的手技が簡単なので、

すぐ執刀医になれる

(クリニック経営者としては、経験の浅い医者を雇っても

割とすぐ執刀医として働かせることができる)


というメリットです。




一方で


ハムラ法など他の手術法は、脱脂に比べて

圧倒的に手術の時間がかかります。

私の場合ですが…

脱脂→15分前後

裏ハムラ法→1時間ちょっと

表ハムラ法→2時間ちょっと

かかります。


また、

ハムラ法は脱脂に比べて手技が難しいので、

おいそれと出来るものではありません。

同じハムラ法と呼ばれる中でも、

それぞれの先生で細かなこだわりが

沢山詰め込まれています。




この比較の意味合い、

わかりますか???


つまり、そういうことです。


脱脂は、効率良く

収益を上げやすい手術。

だから、広告を出して
 患者を集めている。


クマ取りは流行りの治療であり、

潜在患者数が多いと思われます。

流行りと言うのも、そもそも

クリニックが作り出したものかも知れません。

たくさん広告を出すことで、普段考えもしなかった

クマが気になって仕方なくなる、

という「意識の誘導」もあると思います。




脱脂の広告を出している

クリニックの中には、

適応がある患者さんだけに

広告と同じ料金で脱脂をしている

クリニックもあるかと思いますが…


広告の中には、

極端に営利主義な

悪徳クリニック

も紛れている可能性があります。



× 適応がないのに脱脂を薦められる

× 広告とは桁違いの高額な料金を請求される



クマを取りたい、綺麗になりたいと思う

皆さんの心を食い物にする…

まさに美容医療の




こうした悪徳クリニックの餌食にならないよう、

怪しいクリニックの

見分け方を2つご紹介します。

当てはまったら全て悪徳、

当てはまらなかったら大丈夫、

ということを保証するものではありません。

あくまでも、判別の一助としてご覧ください。





 ​広告の料金が安過ぎる

クマ治療は自由診療のため、手術の料金は

それぞれのクリニックでまちまちです。


脱脂は20万円〜40万円が相場

と言われますが、

安過ぎる広告は怪しいです。


安い広告は、クリニックまで

足を運ばせるための撒き餌!?


クリニックまで来てもらったら、

色々な理由をつけて

料金を吊り上げていく

という手法のことが多いです。

これは、次の項目にも繋がります。


 他には、

・慣れていない先生が執刀する

・来院してくれる患者さんが少な過ぎて、

とにかく来て認知して欲しい

・安くする代わりにネットのクチコミに

褒めちぎるコメントを書き込んでもらう

・広告は片目の料金とか、脂肪1個を取る場合の料金

(眼窩脂肪は片側に3個あります)


などの理由が隠れていることが多いようです。





 医者のカウンセリング時間が短い

(カウンセラーの話(勧誘)が長い)

クマの要素は、様々です。


皆さんがどのようなクマか、

どの手術法が適切かは、

執刀医が診察・説明しなければなりません。


そして、手術内容やリスクなども

当然執刀医がしっかりと時間をかけて

説明すべきです。



しかし…


営利主義のクリニックは、

医者の診察・カウンセリングの時間が

極端に短い傾向にあるようです。


クリニックを受診したものの、

医者の話は3分程度で終わってしまい、

あとはカウンセラーのお姉さんに

ずっとオプションの話をされる

…というもの。

 


「あなたのクマは広告の方法ではなく、

当院独自のウルトラスペシャル脱脂法

じゃないと綺麗になりませんよ」

(なんやねん、そのキラキラネームの手術方法は)

とか、

「この器具や針糸を使うと腫れが少ないです」

(それが最良ならそもそも基本料金に含めて全例で使え)

とか、

「この点滴を併用すれば腫れや内出血ガー」

「このドリンクを飲めばお肌ガー」

とか!とか!!とか!!!


ニコニコ笑顔で色々なオプションを

ゴリゴリにつけてアップセルしてきます。



クマ取り8万円という広告を見て行ったのに、

80万円の見積りを出された。など。

糸リフトもつけられて200万円というケースも!

埋没イチキュッパの広告で50万円の見積りを出された

というのもよく聞く話です。


良いことばかりを言われて、

高額見積りで当日契約&当日手術を迫られる

という、

嘘のような、本当の話。


もちろん、

カウンセラーが全員が悪い

と言っている訳ではありません。

中には本当に親身になって色々と丁寧に

説明してくれるカウンセラーもいます。


そのクリニックがどのような方向性で

カウンセラーを雇っているのか、が大切。

本当に患者さんの助けにするためなのか?

高額契約させるための売り子なのか?


担当患者を契約させれば、その分給与が上がる

というシステムになっているため、

カウンセラーは必死でアップセルする。

この給与体系がそもそも間違っていると思います。


私は、高額契約を迫るカウンセラーに問いたい。

あなたは、自分の家族や恋人にも

同じ契約を結ばせるのですか?と。




一般の方々にとって、

美容クリニックはまさに異空間。


その場で正常な判断は絶対にできません。


少しでも違和感を感じたら、

その場で契約書にサインせずに

一度自宅に持ち帰り、落ち着いて

見積書や契約書を見直してみましょう。

これは、悪徳かどうかに関わらず、ですね。

 ちなみに、あじクリでは

カウンセリング当日手術は行いません。

最もライトな埋没法でも、です。


一度話を持ち帰って、メリットともに

デメリットやリスクを反芻し、

それでも手術を受けたいと思ったら

連絡してください。というスタイルです。

期限はあるものの、契約後の解約もOKです。











今回のブログは、これにて

おしまいですっ!



いやー疲れました。

 

少しのつもりが、自分の中で超大作に。

1日くらいで書けるかな〜と思っていましたが、

なかなか進まず、結果5日くらい要しました。



「自分はこういう考えで診療しています」

とか、

「こういう治療法を行っています」

というのは書けるのですが、


こういうクリニックはダメ!という

否定するようなことは

極力書きたくないんです。

性に合わない。



でも、

クマ治療を検討している皆さんにとって

必ずお役に立てるはず

と確信して、思い切って書きました。




  


クマ治療は、魔法でもファッションでも

ありません。

(クマ治療に限らず、美容整形全般)


しっかりとした診断と治療を

お受けになられますように。








〜完〜