適切な脱脂とは? | 美容外科医・Dr.安嶋“あじ先生”のブログ『あじブロ』

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あじまビューティークリニック・院長の安嶋康治(あじまやすはる)です。

クリニックで行っている美容医療のご紹介から、プライベートのお話まで、色々な事を書いています。
是非ご覧ください(^^)

◆形成外科専門医◆

いつも私のブログをご覧頂き
ありがとうございます😊🌟


今回は、あじクリで大変人気の
目の下のクマ治療
経結膜脱脂術
について、少しだけ解説をします。








…その前にちょっと。

 私のポリシーのこと


いつもブログをご覧いただいている

皆様はご存知かと思いますが…


目の下の加齢のメカニズムや

手術の適応判断、手術方法etc.について、

いつも、自分が正しいと思うもの、

自分の考え方だけを

淡々と説明しています。

変わり映えせずつまらなくてスミマセン😂



一方で、


『この治療はダメ!』

『この考え方は間違っている!』

という言い回しは、

私のポリシーに反する

ので(ほとんど)していません。



人の批判をしている暇があるなら

自分の知識と技術を磨こう!

と思いますし、

人を批判したところで

自分の価値は上がらない

という事も知っているからです。


サムネイル

ちょっと余談ですが…

​SNS全盛の今、

各ドクターやクリニックは
SNS上でアピール合戦に
なっていますが、


バズる投稿

『良い治療3選!』
とか
『オススメ治療5選!』
とかではなく、

『受けてはいけない治療3選!』
とか
『受けたらヤバい治療5選!』
というものらしいです。


患者側の不安心理を煽る作戦
のようですが、
正直言って🙊🙊っぽいですし、
私は自分の考え方に賛同してくださる
患者様だけにお越し頂きたいので、
こういう言い回しはしません🙂




 という理由で、


他のドクターの考え方に

ケチ、難癖をつけることは

極力したくないのですが…


 「ドクター個人の知識や技術のレベルの差」

という理由では片付けられないような、

ちょっと問題だなと思う事があったので、

お話ししたいと思います。


決してそのドクターを非難する事が目的ではありません。

間違った事を正しい事のように振る舞うのを

皆さんがご覧になり、皆さんが間違った知識を

身につけてしまうのを防ぎたいからです。








​脱脂の量は多い方が良い?


前置きが長くなってしまいました。


今回のテーマは

脱脂すべき量

についてです。



先日、インスタを見ていたら、

え?

と思わず声が出てしまうような

(脂汗が背中に滲んでしまうような)

リール動画が流れてきました。


コチラをご覧ください。

患者様の目線と、あと全体にも少し
ボカシを入れています​。
あくまでひとつの例に過ぎませんので、
元動画を探るのはおやめくださいね😣🙏🏼


経結膜脱脂の手術後。

驚きの声の後に、



「何個取れたんですか?」

と、周りのスタッフさんが

ドクターに聞いています。




「片方10個ずつ」
とドクターから返答が…。


この後、

綺麗になりました〜

という感じで動画は終了です。





✎︎______________





さて、疑問は2つ。


1つめ。

そもそも眼窩脂肪は

片方何個あるのか?


答えは、片方3個。


目の下の眼窩脂肪は、膜状の組織で

3つの小部屋(コンパートメント)に

分かれて存在しています。

ちなみに、目の上は2個。


手術を進めていく過程で

バランスを見ながら各コンパートメントから

少しずつ眼窩脂肪を取っていけば、

取り出した塊は10個にも100個にも

することはできるのですが、

「10個取れました」ということが

果たして何を表しているのか?

というのは

ちょっとわからないです💧


恐らくこの先生は

「たくさん取れた!」

という事をおっしゃりたいのでしょう。


これが経結膜脱脂術を行う上で

気をつけなければならない

最も重要な事です。

そう、これが2つめの疑問。

今回のブログのメインテーマ。

眼窩脂肪は

取れば取るほど

良いのか?

決してそんな事は

ありません。


元々飛び出している眼窩脂肪が多かったり

すれば、取る量も比較的多めになります。


あとは、


患者様の骨格や肉付き、

皮膚の性質、涙袋の有無、

周囲の凹みや溝の有無、

出目なのか奥目なのかなどを

総合的に判断して、

その患者様ごとに

脱脂量を調整するのが

一番良いのではないか

と私は思います。



どういう事なのか?



私がPCで描き殴った汚い

目のシェーマをご覧下さいませ💁🏻‍♂️

目の立体感を語る上で必要な組織だけを描いていて、

まぶたや目玉の筋肉などは省略しています。


色々あるクマの原因のうち、

膨らみは眼窩脂肪の飛び出しで生じます。


膨らみを取るのが経結膜脱脂術です。



膨らんでいる分の脂肪を取ると…

⬇︎


膨らみが無くなってキレイになった!

…となる訳です。





サムネイル

​経結膜脱脂術は
あくまでも膨らみを取るだけで、
凹みや溝、皮膚のたるみetc.を
消す事は出来ません。

これが経結膜脱脂術の限界⚡️

凹みや溝、たるみの改善には、
ハムラ法や脂肪注入などが
必要になります!



『じゃあ、残っている眼窩脂肪が出てきて

再発することもあるんですか?』


というご質問も、

カウンセリングでよく聞かれます。

眼窩脂肪が残っている限り、

膨らみは再発する可能性はあります。


しかし、再発した時に追加で脂肪を取るのは

さほど難しいことではないですし、

再発した頃には、膨らみではなく、

凹みや皮膚のたるみなど他の加齢性要素が

目立っている事が多く、これらを改善する

治療を優先した方が綺麗になる事が多いです。



ちょっと脱線しかけたので

本題に戻ります。




 たくさん脂肪を取ったら

どういう事が起こるのか?


⬇︎

⬇︎


眼窩脂肪は、

眼窩の骨の壁と目玉の間

にあるクッション素材

です。


飛び出している部分はもはや不要なので、

除去するのは良いでしょう。

『飛び出している体積よりも少し多めに取るとよい』

と清書に書いてあったりします。その通りだと思います。



しかし、

再発しないように

(あるいは美しく仕上げるため?)

目玉の下側(〜奥側)の

眼窩脂肪を取ってしまうと…

目玉はお尻あるいは背中に

敷いていたクッションを

剥ぎ取られた状態

になるので、

尻餅をつき後ろにひっくり返る


つまり、

目玉やまぶたが

落ち窪んでしまう

というリスクに繋がります。

皆さんがよく言う“奥目”とか“窪み目”

というものですね💦






これは、

眼窩底骨折のメカニズム

ととても似ています。



ボクシングや喧嘩などで目玉を打撲すると…

⬇︎

目玉の下の骨(結構ペラペラ)が折れて

床が抜けるので…

⬇︎

眼窩脂肪や目玉が下に落ちて…

⬇︎

目玉が落ち窪む(眼球陥凹)


という現象が起きます。



勇気がある人は、『眼窩底骨折 眼球陥凹』で

画像をググってみてください🙊



骨が折れているか折れていないかは違えど、

眼窩脂肪が眼窩のスペースから無くなる事で

目玉やまぶたが落ち窪むのは同じです。


眼窩底骨折では、目の中から鼻の方に脂肪が抜ける。

過剰な脱脂は、体の外に脂肪が抜ける。

形を保つのに必要な脂肪が眼窩内から失われるのは同じ!

という理屈です。

 





う〜む…

顔面骨折をたくさん治療してきた形成外科医の血が騒ぎ、

熱く語ってしまいました🔥


まとめます。




結論!


今回お話しした理由から、私は、

眼窩脂肪は適切な量を見極め、

過不足なく除去すべき

と考えます。


つまり、

目玉の支えとして活躍している

眼窩脂肪は温存すべき

と考えます。


なぜなら、

たくさん取ることは、

ほぼ修正する事ができない

“奥目”を引き起こす

ことに繋がると理論付けているからです。


眼窩脂肪は癌化脂肪じゃないんです。

目の位置やまぶたの形を作るのに

とても大切な素材なのです。




経結膜脱脂術は、その手術自体は

美容外科の中でも比較的簡単な部類なので、

多くのクリニックで行われていますが、

考え方や細かな手術内容は

ドクターやクリニックによって

大きく異なります。


病気は治すが正解ですが、美容は正解がない。

正解に辿り着く道は1本ではない。

色々な考え方があると思います。

それで良いと思います。


今回お話した私の考え方に異論を唱える

ドクターもいるでしょう。


その考えが、正解に近づいているものなら

大いに歓迎ですし、議論も楽しいですが、

正解から遠ざかるような間違ったものであれば、

皆さんをそこに誘導する訳にはいきません。



経結膜脱脂術に限らずですが、

 クマ治療や他の美容外科手術を検討する上で、

ドクターの症例写真を見るのみならず、

カウンセリングやブログなどを通じて

考え方までしっかりと把握される事を

お勧めします。






最後までお読みくださり、

ありがとうございました!