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第51話 白櫻尼様の困り事(3)
妾は、“白櫻尼”と言う『鴉天狗』の魑魅魍魎だが・・・
「どうか、新たな3人を、白櫻尼様の鍛錬に参加をよろしくお願いいたします」
と、己の矜持を投げ捨て、下手に兄・訓麿を懇願し無理やり承諾させた忠麿
今度は、妾に弓香たちが連れて来た3人の鍛錬の入門の懇願してきたのだ
“忠麿の奴、妾に対してどんな懇願の仕方をしてくるのだ?・・・・あの訓麿にやった懇願の仕方は勘弁だわ”
と、身構えてしまったが、ここは冷静にと腕を組み
「いくら申しても無理だ・・・・」
と、再度断ると、忠麿は悲愴な面持ちをしたが
「優秀な人財たちを“並みの鍛錬”で“並みの向上”をさせるのは勿体ない・・・・」
と、独り言を呟いたと思ったら
急に妾の目の前で『土下座』をしだし
「「私と兄からの“奉納物”を増やしても構いません!!!!」」
と、大声で口上を給い、地面に額を付けて
「「どうか!!!!山上遼太郎、平群明日香、橘蜜柑の3人の鍛錬の入門をお願い致します」」
と、懇願したのだ
妾に対しては『土下座』で懇願か・・・・
忠麿の訓麿への懇願に、正直“何で己の矜持を捨ててまで「醜い姿勢」で懇願をするのだろうか?”と、呆れてしまったが
妾に対しては、滅多にできない事だが、それでも「至極真っ当な姿勢」で懇願するものだから
訓麿に対しての『気色悪い位の下手』の懇願、妾に対して『誠意ある丁寧な下手』のとは、物凄く乖離を感じ、つい心が動かされ・・・・
“己の矜持を捨ててまで、あの3人を評価してるのか・・・・分かった、承諾しよう”
と、言いかけてしまい
“駄目だ・・・簡単に許してはいけない”
と、心に止めさせ、少し考察をしてみる事にした
確かに、忠麿の懇願は、どちらも“己の矜持”を捨てての“もの”だが
妾と訓麿、それぞれの性質を見抜き“懇願の仕方”を使い分けるといった、中々“策士”ぶりな事を仕掛けたなと、感心したが
今までの忠麿の思考や行動から、そんな“心算”をもって懇願するだろうか・・・
ただ純粋に“あの3人の才覚を覚醒させたく”無意識に、あのような懇願をしたのだろう・・・
そんな考察を引き出した妾は
「「こら~~~~忠麿!!!!何で俺まで“奉納物”の増量を強要されるんだ~~~~」」
と、怒鳴ってる訓麿の様子を見ながら
“あ~~~奴とは、違うわな~~~~”
と、溜息を尽き
「忠麿よ、頭をあげ『土下座』を解け・・・」
と、いつまでも頭を下げ『土下座』をしている忠麿を促すと
「それでは・・・」
と、忠麿は頭を上げ、期待に満ちた真剣な眼差しで妾を見上げた
“やはり・・・断ろう”
そう“決断”したが・・・純粋な青年の様な忠麿の眼差しに、何故か“母性本能”らしき“情”みたいな“良く分からない”感情が出てしまい、つい
「そなたの真剣な頼みを聞いてやろう」
と、口を滑らせてしまった
途端に、忠麿は“目を輝かせ”立ち上がり喜び勇み
「「あ、ありがとうございます!!!!白櫻尼様」」
と、頭を下げた後、入門にきた3人に
「「やっと、鍛錬の入門が認められたぞ」」
と、いい歳して、まるでお宝を手に入れた子供の様な喜びに報告していた
“し、しまった!!!!不覚に忠麿の眼差しに承諾してしまった!!!!”
と、妾は“不本意な承諾”をしてしまい後悔し
“どうにか回避する出来ないだろうか?”
と、額に人差し指を押さえ思考を巡らせると・・・・
“そっそうだ!!!!”
と、これなら上手く行くかもしれないと
「いや待て・・・・入門するには“条件”と“試験”を受けてもらう」
と、忠麿と入門したがる3人に、宣告すると
「「え~~~そんな~~~~ぬか喜びじゃん」」
と、弓香たち6人は悲痛な叫びをあげ
「なるほど・・・よく考えだものだ」
と、訓麿の奴は“妾の真意”を分かってるのか、ニヤリと嫌な笑みを浮かべ
「白櫻尼様・・・」
と、忠麿は、“3人の入門に待った”と掛けられ、悲しそうに呟いてきたので
「妾の“鍛錬”に付いて来れない者など“最初”から要らないだろ」
と、妾は“これ以上情に絆されてはならない”と毅然とした態度で返した
「・・・・・」
妾の態度に、忠麿は何も言い返さずに、顎に手を触れながら何か考え事をしていた
暫くして
「確かに、白櫻尼様の言う通りかもしれないですね・・・」
と、一言呟いて、妾の方を向き
「それでは、その“条件”と“試験”の内容を教えて下さい」
と、真剣な眼差し問うて来たので
妾は、早く“入門を諦めさせたい”と逸りながらも普段の態度で
「では、条件だが・・・・毎月、お米10㎏を奉納して貰おう」
と、答えると
「それって、あたしたちと一緒じゃない」
と、弓香がキョトンと言ったあと、3人に向かって
「“姫光”を10㎏奉納したら大丈夫だよ!!!!」
と、満面な笑みで教えていた
「何を言ってるのだ?弓香よ」
と、妾は呆れてると、弓香が腑抜けた顔で
「え、違うの?」
と、返してきたので
「何も“姫光”だけが“お米”じゃないだろ?」
と、妾は鼻で笑い
「“泡慈の乙女”を10㎏奉納してもらおう」
と、ニヤリ顔で答えると
「銘柄が違うだけだから“大丈夫”じゃない」
と、妙に納得する弓香だが
ホントに“違う銘柄”で、その米が簡単に手に入るとでも・・・・と“弓香の甘い考え”に笑いを堪えそうになった
そんな時“にわとり”・・・ではなく、平群明日香って女が
「「何言ってるだい!!!!弓香」」
と、“大声”で慌てて弓香をたしなめ
「わ!!!びっくりするじゃない・・・明日香主任」
と、弓香が慌て顔で、平群明日香に言い返し
「“泡慈の乙女”って言ったら、“泡慈島産”の超ブランド米だよ!!!早々手に入る物ではないんだ」
と、平群明日香が、真剣な表情で答えていた
「ほう~~~良く知ってるではないか」
と、妾は呟きながら
あの女“泡慈の乙女”が、そう易々と手に入らない事を知っていたのだな・・・これで“諦め”てくれると良いのだがな・・・と思いながら、弓香と平群明日香の会話を聞いていた
「「え~~~~うそ!!!!」」
と、驚愕する弓香、そして妾の方を向き
「あ~~~白櫻尼様、何でそんな無茶な“条件”付けるのですか!!!!」
と、悪態をつき妾に詰問してきたので
「まあ、兎に角・・・“泡慈の乙女”を奉納できなければ“鍛錬”に入門できないな」
と、弓香の詰問など聞かずに、とぼけながら言い返すと
「「ひ、酷い~~~」」
と、弓香が悲観に暮れたかと思ったら、急に“下手”にでて
「ね・・・白櫻尼様・・・・手に入りやすい“米ブランド”に出来ませんか?」
と、懇願してきたので
「妥協する気はない・・・もう諦めるのだな」
と、“もういい加減諦めてくれ”と、少し怒気を滲ませ断ると
「そ、そんな・・・・」
と、絶望ににた悲愴な表情をする弓香
そして、自分たちの願いが叶わず、悲しく悔しい表情で“諦めよう”とする3人
妾は“これで良いのだ・・・済まないな3人とも”と、少し悪い事をしたなと、心の中で謝っていた
そんな、みんなが“落ち込んで”暗くなってる雰囲気を突き破るかの様に
「いや、諦めるのは早い!!!」
と、忠麿が意気揚々と、大きな岩に腰をかけて気分を悪くしてる訓麿に近づき
訓麿の肩を叩き、それに戸惑う訓麿に
「兄上、是非とも“広範囲の人脈”をもって、“泡慈の乙女”を手に入れてくれませんか?」と、笑みを浮かべて頼みごとをする
「はあ~~~何で俺が、あいつら3人の為に“広範囲の人脈”を使わなくてはならないんだ」と、訓麿が変顔になりながら断り
「お兄様~~~そこを何とか~~~~」
と、忠麿が“瞳を輝かせ”さっきの“下手”で再び懇願し
「「ぎゃ~~~気色悪いから止めろ!!!!“広範囲の人脈”であっても“泡慈の乙女”が手に入るとは限らんぞ」
と、訓麿の奴、苦々しい表情で断る
「いえ、お兄様なら“必ず”手に入れる事ができますよ・・・・向上心のある後輩たち、『陰陽道組合』の発展、そして・・・・」
と、忠麿が、にこやかに“何の根拠のない確信”の期待を乗せ
「それらを成し遂げようとする私のために頼みます・・・・」
と“情熱”を持って真剣な眼差しで、頭を下げしつこく懇願し
そんな忠麿の情熱に、何故か“似合わない”真剣な表情になった訓麿が、虚空をみながら考え事をしだし
やがて、忠麿の方を向き
「わ、わかったよ!!!!保証は出来んが“何とか”手に入れてみるよ」
と、ため息をつき承諾したのだ
「あ、ありがとう!!!!兄上!!!!!」
と、忠麿が安心した笑みで謝礼すると
「・・・・ふん!!!」
と、訓麿がへの字口で、忠麿にそっぽ向き
忠麿は、妾に向き返し
「と、言う訳で・・・白櫻尼様よろしいでしょか?」
と、にっこりと返してきたので
妾は、何も言えず
“訓麿め、断れよ・・・・妾の意図が崩れるではないか”
と、心の中で悪態をつき
“あのドライな性格の訓麿でも、忠麿の情熱に絆されるのだな・・・”
と、妙に感嘆を覚えてしまった
そのあと、妾は
「そうだな“条件”の方はクリアできそうだな・・・・」
と、呟き
「では、“試験”の方だが・・・・」
と、ため息をつき
「弓香、貢治、泰隆を鍛えているより遥かにキツイ鍛錬に堪えれるか“試して”やろう」
と、にこやかに“試験”の内容を伝えると
「俺たちの“鍛錬”より“キツイ試験”って・・・それでは、誰も“入門”出来ないのでは?」と、貢治が訝しげに質問してきたので
「最初から“怖気ついて”どうするのだ?」
と、貢治と“鍛錬に入門”する3人を一瞥しながら嗾け
「そ、そんな・・・」
と、貢治が困った表情で呟いたのだ
“どうしたのだ?・・・ここまで、妾に嘆願してきたんだ、ここで引き下がってどうする?”
と、妾の心内が“断ろう”とした心情から一遍、“とことん鍛えてやろう”と言った心情が蘇えってきたのが見て取れ
“ここで断るなよ~~~”
と、心躍りながら3人の返事を待ってると
「あ~~~構わないぜ!!!!その“試験”受けて立つぜ!!!!」
と、ロバではなかった・・・山上遼太郎が、やる気に満ちた笑みを浮かべ、貢治の肩を叩き
「せ、先輩・・・・」
と、戸惑う貢治
「ありがとうな、貢治・・・・俺たちのために、白櫻尼様を説得させて」
と、にこやかに謝礼を言う山上遼太郎
「あたいも“弓香たち”を報いるためにも“怖気つく”訳にはいかないね」
と、山上遼太郎の“やる気”に触発した平群明日香
「わ、私も“泰隆くんたち”の足手まといなりたくないです・・・・頑張ります!!!」
と、おどおどしながらも、やる気に満ちた瞳で妾を見上げるハムスターではない・・・橘蜜柑
「なんせ、あの『都一の最強陰陽師』・安倍忠麿課長から認められてるんだぜ!!!俺たちの実力は・・・絶対に白櫻尼様の“試験”を“パス”してやるぜ!!!!」
と、山上が妾に“試験の合格”を宣告してきたので
「ほう~~~~こんなに“生きの良い”者たちを見ると・・・・」
と、妾は“生きのよい3人”を上目遣いで見下ろし
「ますます“虐め甲斐”があるのう」
と、“サディスティック”な心情が蘇り、ニヤリと舌なめずりする妾であったのだ
第52話へ続く・・・・・
<<後書き・・・>>
いよいよ、”試験”が始まろうとしています、3人は無事に”合格”できるだろうか?
それでは、次回お楽しみにして下さいね
作者の都合ですが・・・・
転職など、いろんなスランプに陥って
小説を書く意欲は”落ちて”います
何とか、意欲を取り戻し頑張っていきますので
よろしくお願いいたします
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