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<<あらすじ>>

 

妻を亡くしたある男性・・・本当に”妻を愛していた”のか?

それを確かめるべく、生前、妻と共にドライブで訪れた多くの”思い出の場所”巡りをしていた・・・その途中で、ヒッチハイクをしていた若い女性と出会った事により、ほのかに甘く切ない時を刻む・・・

そんな物語です

 

↓風間伴憲と結城香織のイメージ図

 

<<・・・・・>>

 

 

俺の名は、風間伴憲(かざま・とものり)・・・・40歳のオッサンである

 

只今、自家用車である“スズキワゴン”に乗って、ある目的を持ってドライブに出かけている

 

“ある事”を再確認する為、“思い出”を振り返りながら、何日もかけてドライブをしようと思い、大阪から出発して兵庫県のある「道の駅」が見えたので、そこで一時停車し、お茶や弁当を買い夕食を済ませようと考えた


・・・・・


先日、俺の大事な女性(ひと)・・妻の聡子(さとこ)を“癌”で失った

 

聡子との間に子供を授かる事は無かったが、一緒にいて幸せだった

 

聡子の“ほんわか”な雰囲気の醸し出した、余り欲の無い女性だった

 

そのせいだったのだろう・・・私の心の平穏を満たしてくれていた


俺も、聡子の心の平穏を保つよう、自分なりに努力をしたつもりだ・・・

 

逆に、聡子の方はと言うと・・・

「俺のような者と一緒にいて、君は幸せか?」
と、質問をすると

 

「貴方の様な、“安心感”のある人といると、私は何時も心が満たされるの・・・幸せよ」
と、微笑みながら答えてくれた

 

俺は、しがないサラリーマン・・・出世とは程遠い人間のため、妻には何時も苦労掛けさせていた

そんな俺を、妻は笑顔を絶やさず迎えてくれていた・・・俺には勿体ない相方だった


そんな平穏で幸せな時に、聡子は“癌”に侵されてることが判明した・・・もう、手の施しが無いほど“癌”は進行していた

 

俺は、それでも、聡子の“癌”が治り、再び共に心の平穏が満たせる幸せな時を取り戻すため、必死に妻の身体と精神の看病をし続け、聡子も決して諦めることなく精一杯頑張っていた

 

「今まで私を支えてくれて、ありがとう・・・貴方と一緒に生活が出来て凄く幸せだった・・・ごめんなさい・・・貴方との“約束”を守れなかった」

そう言い残しながら、俺と聡子の努力虚しく“癌”の進行が止まらず、最後は静かに息を引き取った

 

普通なら、最愛の妻を亡くすと、その場で号泣し悲しむはずが、俺の場合・・・

 

“やっと聡子はあらゆる苦しみから解放されたのだな”

 

と、最初に感じ、安心した心情が現れた・・・・

 

大事な女性を失って悲しく切なくは思っている・・・でも、何故、最初の心情が“死んでは駄目だ”と言う“非哀感”でなく、“苦しみから解放されて良かった”と言う“安心感”だったのか、自身の心情がよく分からなかった

 

そこから、俺は“本当”に、“聡子を愛している”のか自身の心情に疑惑を持った、俺と聡子の出会いが、他人とは違っていたため余計に・・・・

 

それを確かめるべき

 

俺と聡子の趣味である“ドライブ”をし、生前よく訊ねた場所を廻り、最後は、聡子の生まれ故郷の“長崎”の一度も訊ねた事もない実家を訪れ、聡子の遺骨を納めてもらう旅を実行したのである


・・・・・


「道の駅」の駐車場へ入ろうとした時、出入口付近で“長崎まで”と書いた『プラカード』を掲げ、リュックを背負ったショートヘアーの20代の女性が、駐車場から出て行く自動車に、ヒッチハイクをしていた

 

”ここから長崎までか・・・誰も乗せてはくれないだろうな~~、でも無事に乗せて貰える車があると良いのだけど”

と、思いながら、「道の駅」の駐車場に入り、そこのコンビニの弁当を買いに行った

 

無事に弁当とお茶を買い、車の方へ戻る途中、何故か、そのヒッチハイクの女性が気になって、弁当・お茶を、車の中に入れてから、出入口の方に向かうと・・・・

 

「や、やめて下さい・・・」

 

「長崎まで行きたいんだろ?そこまで乗せてやるぜ」

 

柄の悪い若い男性2人が、これまた柄の悪い車に、その女性を無理やり乗せようとしていた

 

周りの人たちは、遠目で見るのみで誰も助けようともしなかった

 

俺は、仕方なしに

「よう、香織ちゃん・・・こんな処で何をしてるんだい?」

と、知り合いの振りをし、柄の悪い若い男性たちとヒッチハイクの女性に近づいていった

 

その柄の悪い若い男性2人と、ヒッチハイクの女性は、キョトンとしたが、直ぐに

「おっさん!!!関係ないやろ!!!向こう行ってろや」

と、柄の悪い男の1人が吠えられたが

 

俺はとボケながら

「俺の姪っ子が、君たちに連れて行かれそうになってる処を見逃す訳には行かないだろ?」
と、言い返した

 

「うっ・・・」
その男が口ごもったが、もう一人の男が

「おっさん・・・ホントにこの女の親族かよ?」
と、疑念を持たれたが

 

「あ~~本当だ・・・これ以上騒ぎを大きくすると、警察が駆けつけてくるぞ」
と、相手の疑念に答える必要がないので、適当かつ淡々と答えると

 

「ちっ・・・仕方がね~~な」
と、呟きながら、2人の若い男は、柄の悪い車に乗り、「道の駅」から出ていった

 

さっきまで、呆然としていた女性が、意識を取り戻したかのように

「た、助けて頂いてありがとうございます」
と、頭をさげて、お礼を言ってくれた

 

「あ~~別にいいよ・・・無事に良い人に当たって、“長崎”まで行けると良いね」
と、少し塩対応し、自分の車の方へ戻ろうとした時

 

その女性に、腕を掴まれ

「お願いがあります・・・あたしを“長崎”まで連れってくれませんか?」
と、懇願された・・・・

 

まあ~~俺も“長崎”までのドライブだし・・・
それは良いのだけど、天国の聡子はどう思うだろうな・・・

 

頬を人差し指で掻きながら、考え事をしていると

「どうか!!!よろしくお願いいたします・・・お母さんが倒れて入院してるんです・・・長い間仕事が就けずお金が無いため“ヒッチハイク”で行こうとしてました」

と、再び頭を下げ懇願された

 

“なんちゅう見え透いた理由のいい訳なんや”

と、思い、つい・・・

「ぷっ・・・」
と、少々笑ってしまった

 

その女性、顔を赤らめ頬を膨らませながら

「何ですか?その笑い~~~じゃ、もう良いです」
と、言った後、俺から立ち去ろうとした

 

「すまん・・・分かった、俺も“長崎”までドライブをする処だ、そこまで乗せてあげるよ」

その女性を引き留めると

 

その女性、瞳を輝かせながら満面の笑みで

「ホントですか~~~嬉しいです~~」

早速、俺の腕に縋りつき

「確か、おじさんの車、あそこにある“青色のスズキのワゴンだったね」

と、言いながら、俺の車の所まで引っ張って行った

 

えらい、馴れ馴れしく、強引な処がある女性だな~~と感じた


妻の聡子とは正反対だと思った・・・

 

聡子は、恥ずかしがりやで、控えめな女性だったからな・・・


「処で、夕飯は食べたのか?」
と、俺が咄嗟に質問すると

 

「あっ!!!そう言えば、朝から何も食べてなかったです」
と、そのヒッチハイクの女性が答えてきたので

 

仕方なく、弁当とお茶は後日って事で、ヒッチハイクの女性を連れて、「道の駅」のフードコートに行って、一緒に夕食を食べるのであった


・・・・・


このヒッチハイクの女性の名は、結城香織(ゆうき・かおり)・・・・23歳と若い

 

無理やり乗せようとした柄の悪い男たちから救おうとして、適当に言った名前が、まさか“ドンピシャ”だったとは思わなかった

 

彼女自身も、見ず知らずな男に、名前を言い当てられた理由で、暫く茫然としていたみたいだ

 

それと、彼女の懇願した時の言い訳は、半分嘘で半分本当だった・・・


自分の母親は別に病気でも入院していた訳でなく、ただ単に“帰れる金”が無かっただけだった

まあ、長い間仕事に就けなかったのは本当みたいだな・・・

 

就けなかった理由は、“世の中の不景気”のせいだって事分かりきっていたので、野暮な事は聞かないが

 

せめて・・・と思い

「長崎に帰れる運賃くらい、友人とかに借りればいいだろ?」
俺は呆れながら香織に言うと

 

「あっ・・・家賃が払えなくてアパートを追い出されたばっかりで、そこまで頭が回らなかった・・・以前、学生時代に経験した“ヒッチハイク”を思い出して・・・」
香織は、頭を掻きながら、気恥ずかしそうに答えてくれた

「自分の故郷に帰って、もう一度やり直したい」
拳を握りしめながら、自分に言い聞かせるように口ずさんでいた

 

そんな彼女を見て、“若いって良いなあ~~”と感じた

もう、40を超えるオッサンも頑張れるかなと思ったが、自信は無かった


俺に関しては、彼女には、しがないサラリーマンで、亡くなった妻との思い出の場所を訪ねながら、妻の実家に辿り着くと言うドライブをしている事を教えた

 

「伴憲さんの奥さんとあたしは、同じ故郷なんだね・・・何かシンパシーを感じるわ」
香織は笑みを浮かべながら、嬉しそうに囁いていた


・・・・・


「道の駅」での夕食後、後部座席に香織を乗せ、亡き妻との思い出の“場所”巡りと、“長崎”へのドライブが始まった

 

「あの「道の駅」も、奥さんとの“思い出の場所”なの?」
香織が、運転席と助手席の間の空間から覗き込みながら聞いてきたので

「あ~~そうだ・・・「道の駅」すべてが“思い出”の場所と言って過言ではないかな」
俺は、香織が覗き込んで事を気にせず、前を見て運転しながら答えると

 

香織が、後部座席に凭れ
「いいなあ~~奥さんとは、頻繁に“ドライブ”に出かけていたんですね~~」
羨ましそうに口ずさんでいたので

「君だって“彼氏”とかと“ドライブ”に行ったこと位はあるだろう?」
と、そんな香織に対し適当に問うと

 

次は、拗ねりだし
「以前“彼氏”いましたが・・・ほぼ、“ゲーム”と・・・」

その台詞の途中で、急に顔を赤らめながら
「“えっち”しかしなかったわ・・・」
無理して言わなくてもいい事を、恥ずかしそうに答えてくれた

 

“若い者、あるある~~”
だと思いながら、抑えきれなくなり

「「ハハハハハ~~~」」
俺は、これでもかと言うほど笑ってしまった

 

でも、こんなに笑ったのは、まだ“癌”が見つかる前の、聡子が“天然ボケ”をした時以来だなと思いだしていた・・・懐かしいな~~

 

俺に笑われた香織はと言うと・・・

「そ、そんなに笑わなくてもいいじゃない~~~結構恥ずかしかったんだから」
と、プンプン怒りながら言って来たので

 

「すまん、すまん・・・つい、俺の若い頃の事を思い出してな」
と、香織には悪いなと思い謝った

 

そしたら、香織の奴、にやっとしながら

「伴憲さんも若い時って、“彼氏”みたいに“えっち”な事しか考えなかったんだ・・・男って、みんな一緒なんだね~~」
と、何故か機嫌が直ったみたいだ

 

男はみんな“すけべ”だと言う事は否定しないが・・・
まあ~~それで香織の機嫌が直るなら“儲けもん”だと思い弁明はしなかった


・・・・・


次の“思い出”の場所、岡山・日生の漁港に着いたのは良いが、もう日が暮れた為に、近くのビジネスホテルに泊まる事となった

 

「あたし・・・泊まれるお金持ってないよ?」
香織が不安そうに恐る恐る言って来たので

 

「俺が、出すから安心しろ」
と、言ったら

 

香織は嬉しそうに
「あ、ありがとう・・・」
と、言う途中で、警戒心をむき出し
「まさか、同じ部屋って事は無いですね?」
と、質問をしてきたので

 

「あのなあ~~さっき会ったばかりの人と一緒に泊る訳ないだろ・・・部屋は別々にきまってるだろ」
と、呆れながら答えると

 

香織の奴、本当に安心したのか、瞳を輝かせながら
「伴憲さん・・・ありがとうございます、ここまで親切にしてくれるなんて・・・」
と、謝辞をいいながら、一粒の涙を流していた

 

香織を無事に“長崎”届けるよう“善管注意義務”と言う感じで対応しただけで、親切にしたつもりは無いのだけど・・・そう思いながら

 

ホテルのチェックインを済ませ、各部屋へと向かい、それぞれの一夜を迎えた


日が昇り、俺と香織は、早速ビジネスホテルを後にし、日生の漁港に行き、焼いた牡蠣、蒸した牡蠣、そして、“牡蠣おこ”と言う“牡蠣”の入ったお好み焼きを思う存分、舌鼓を打った

 

「わ~~美味しい~~~こんなに“牡蠣”を食べる事が出来るなんて初めて~~」

香織は、これでもかって程、満面の笑みを浮かべながら、“牡蠣”料理を食べていた

 

俺は、その香織を見ながらにっこりと微笑み、聡子と一緒に楽しくワイワイしながら“牡蠣”を頬張っていたのを思い出していた

 

「あ、あたし・・・口の周りに何か付いてるんですか?」
俺が香織の食べる様子を見ているのに気づき、問い質してきた

 

「あ・・・妻とここで一緒に“牡蠣”を食べていたなあ~~と思い出していただけだよ」
と、答えると

 

何か、意味深な面持ちで
「ふ~~ん・・・そうなんですか」
と、言ったあと、再び“牡蠣”を食べ始めた

 

俺は、その香織の“喰いっぷり”を見て呆れかえっていた

聡子の“控えめな食事の仕方”とは違い、香織から“聡子”を投影した事に、少し後悔をしてしまったのである

 

・・・・・


この後、備前市の方へ出かけ、そこで“豊前焼の体験”をしてきた

ここも、“思い出”の場所で、聡子が、不器用ながらも懸命に“湯呑”を造り、その懸命で不細工な“湯呑”は今でも大切にしている

 

俺と香織は、ある備前焼の工房で、“備前焼”の挑戦をした

俺は“湯呑”、香織は“茶碗”を造り始めた

 

香織は、今まで“陶器”造りをした事がないため、指導員に教わりながら、回る轆轤(ろくろ)の粘土と格闘をしていた

 

「見た目は、簡単に思えたのに、案外難しいね~~」
四苦八苦しながらも、笑みを浮かべながら、懸命に“茶碗”造りに精をだしていた

 

俺の方はと言うと
「中々上手いですね・・・何度か“体験”をされてたのですか?」
と、指導員に褒められたので

 

「色んな焼き物の“体験”をしてるもんですから・・・」
と、気恥ずかしながら応答した

 

「成る程、そうでしたか~~」
と、指導員、感銘をしながら、俺の“湯呑”造りを見ていた

 

その俺の様子を見た、香織は“負けん気”を起こしてか、力み過ぎて、轆轤の“茶碗”を崩してしまった

「え~~~そんな」
と、香織は悔しながら、また“茶碗”を造りなおした

 

聡子なら、失敗しても“あら、失敗しちゃった”と、笑みを浮かべながら、“陶器”を造り直してたな・・・

ここでも、“聡子との思い出”を噛みしめていたが、香織との違いにも感心していた

“まったくの逆だな~~”と思いながら


粘土から、“湯呑”、“茶碗”に仕上げた物は、後は窯に入れ焼く事となるが、仕上がるまで日にちが掛かる為

 

出来上がった物は、後日送られて来るので、その出来栄えを楽しみにしながら、岡山市の方へ向うのである

 

 

第2話へ続く・・・