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↓前回から・・・

 

 

 

・・・・・

 

俺・風間伴憲(かざま・とものり)と、ヒッチハイカーの結城香織(ゆうき・かおり)は、今、岡山市を目指しドライブをしている

 

その途中で、遅い昼食をとろうとしたが、流石に“牡蠣”を食べ過ぎて、受け付けなかった

 

日が暮れる頃には、岡山市に着き、適当なビジネスホテルを選び、勿論部屋は別で、一息ついた

 

やがて、日が沈み、岡山市内の適当な居酒屋へ、香織と共に晩御飯がてら飲みに行った

 

「かんぱ~~い」
ジョッキーを当て合いながら、生ビールを飲み、適当に頼んだ“ツマミ”を食べながら


今日の“牡蠣”をたらふく食べた事や、“備前焼”に挑戦した事を思い出しながら、会話が進み、暫くしてから・・・

 

「何で、あたしを“長崎”まで送ろうとしたの?」
すっかり、出来上がった香織が、自分をヒッチハイクしてくれた理由を聞きだした

 

「只の気まぐれだ・・・君の行き先が“長崎”だったからな、良かったじゃないか」
と、答えたが

 

俺の言った理由に不満があるのか
「うっそだ~~、本当は、あたしの“身体”目当てでしょ?」
と、酔ってるせいなのか、恥ずかしげもなく、しょうもない言いがかりを付けてきた

 

俺は、呆れながら
「あのな~~君みたいな小娘・・・誰が見向きなんかするか!!!」
と、咎めた

 

香織は不機嫌そうに
「あ~~あたしの事、小娘と言った~~これでも、おじさんたちにもモテたんだよ」
と、言い返してきた

 

結構強気な女の人だなと思いながら

「どちらにしろ、旅は、独りより複数で行った方が楽しいだろう・・・」
と、香織を宥めた

 

香織の奴、何か悲しそうな面持ちで
「伴憲さんの奥さんって、いいよね~~」
と、呟いたので

 

俺は首を傾げながら
「何でだ?」
と、問い質したら

 

「だって、奥さん亡くなるまで、伴憲さんが何時も傍にいたじゃない・・・羨ましいよ」
と、泣きそうになりながら答えた

 

そう言えば・・・俺はずっと他の女性など興味なく、聡子のことばかり見てたな・・・ほっとけなかったんだよな・・・聡子の事

そう、しみじみと感じてると

 

「あたしの“彼氏”なんて、“セックス”の事しか頭に無くて、最終的に、飽きたからって棄てたんだからね」
と、香織は泣きながらヤケ酒をあおっていた

 

俺は、慌てふためき
「お、おい!!!香織、そんな事をしたら急性アルコール中毒を起こすぞ」
と、香織のヤケ酒を止めていた

 

何とか止めたものの・・・すっかりと寝込んで仕舞い、(いびき)まで掻きだした

 

やれやれ、仕方なく香織を背負いながら、俺らの泊まるビジネスホテルまで行き、香織の部屋まで連れて行き、ベッドに寝かしつけた

 

まさかここまで、面倒を見なければならないのかと思ったら、暗澹たる気持ちになってしまった

 

よく見ると、香織の寝顔・・・可愛いものだと感じたが、聡子のように綺麗な顔立ちと比べると

やっぱり・・・妻の方が良いと感じ、部屋を後にした

 

次の朝、俺は、どんよりと曇った顔の香織と共に、ビジネスホテルの朝食をとっている

 

俺が、黙って食事してるだけなのに、その態度が“怒ってる”と勘違いした香織が

「ごめんなさい~~あたし、酔いつぶれると言う失態をして、伴憲さんに迷惑を掛けてしまいました~~~」
と、謝れたが・・・

 

俺は、その場では確かに“怒って”たが、一晩寝るとすっかり“忘れていた”

 

「その事は、どうでも良いよ・・・気にせずに朝食をとれよ」
と、俺は、何の事も無かった様に返事をした

 

香織、俺が怒って無い事に安心してか
「よかった~~伴憲さんったら、むすっとした感じで御飯食べるから、まだ“怒ってる”と思ったから」
と、言いながら、曇った顔は何処へやら、元気よく朝食を取り出した

 

香織の立ち直りの早さに

 

“こいつ・・・本当の反省してるのか?”

と、心の中で”呆れた”と同時に

 

聡子の場合“当分の間、反省するだろう”と、これまた“困る”とも感じた
どちらも一長一短と思った・・・


「香織よ・・・要するに、君が“長崎”に帰る理由は、“彼氏”に突飛酷(とっぴこく)捨てられ、就職も何もかも上手く行かなくなって、金も精魂も尽きたからだろ」
と、俺が、香織の今までの言動の要約を語ると

 

香織、下を向きながら
「・・・うん」
と、泣きそうになりながら答えた

 

俺は、すこし笑みを浮かべながら
「君は色々と苦労して来たんだな・・・上手くいかない時でも、藻掻きながら努力していたら、それなりの幸せはやって来るよ・・・俺も“そうだった”から気を落とすな」
と、宥めたら

 

香織、涙を浮かべながら
「う、うん・・・そうだね・・・ありがとう伴憲さん」
と、言って“うわ~ん”と泣き出した

 

俺は、再び慌てながら
「やめろよ~~ここで泣くと誤解されるだろ」
と、咎めた

 

でも・・・・・“足掻いて努力しても”幸福は来ない時もあるけどね


・・・・・


この後、岡山市内にある、“想い出”のある場所・・・「岡山城」へと向かった

 

岡山城天守閣のある、烏城公園の近くの駐車場で車を止め、降りて、天守閣の方へ向かおうとした時

 

香織が、俺の腕に絡みつき

「わ~~、このお城“真っ黒”だね~~~、普通は“白い壁”だよね」
と、遠くから見える、岡山城天守閣を見て、感心していた

 

その香織の行動に、つい既視感に囚われたよ・・・・

 

以前、聡子と一緒に来た時と“そのまま”だったのであった

俺は、知らぬ間に“涙”を浮かべていた・・・

 

それを見た香織は、キョトンとしながら

「どうしたの・・・急に涙をながして」
と、言われた

 

「い、いや・・・何でもない」
と、言った後、岡山城についての説明をしながら公園内に入っていた

 

俺の聡子に対する心情を、何故か分からないが、香織に覚られない様に誤魔化してしまった


あれから、香織はやたらと俺の腕に絡みつきながら、離れようとせずに、天守閣や後楽園などを見て回った

 

傍から見ると、”歳の差カップル”に見えるだろう・・・

 

俺とすれば、“はた迷惑”としか思わなかった、聡子に“申し訳ない”と、心の中で謝っていた

 

それに、香織が急に俺と距離を近づこうとした理由も分からなかった・・・

 

それでも・・・何故か、“ほっとけない”と感じた・・・

距離を置いたり、放置すると、香織の身に何か起こりそうな・・・そんな胸騒ぎに似た感覚を憶えた

まるで、聡子と出会った頃の様に・・・


・・・・・


“思い出”の場所の1つ『岡山城』を後にして、次の“想い出”の場所がある、広島の方へと車を走らせていた

 

その走行中に、後部座席の香織がいきなり

「伴憲さん・・・奥さんの聡子さんとの“馴れ初め”ってどんなだったの?」
と、聞かれてしまった

 

俺としては、余り聞かれたくないモノだったので

「済まんが・・・余り聞いて欲しくないな」
と、淡々と答えた

 

香織、何か寂しそうな面持ちで
「そうなの・・・ごめんね、あたし伴憲さんに入り込み過ぎたのかな」
と、言った後、黙ったまま話しかけて来なくなった

 

バックミラーから見える香織の顔が、まるで“聡子の悲しみの面持ち”に見えてしまった


そして、何か“胸騒ぎ”を憶え

「分かった・・・俺と聡子の“馴れ初め”を話そう・・・聞きたいのだろ」
と、無意識に行ってしまった・・・何故“その事”を香織に話そうとしたのかよく分からなかった

 

香織が忽ち、瞳を輝かせ

「うん・・・聞きたいです~~」
と、胸を躍らせながら、早く聞きたそうにソワソワしていた

 

俺は、そんな香織に苦笑いをしながら

「そんなに良い“馴れ初め”ではない・・・・」
と、前置きを入れたあと

 

真剣な面持ちで

 

「妻の聡子の出会いは・・・聡子が“自殺”しようとした処を偶々目撃し、思いとどまらせたのが始まりだった」

そう告白をした時

 

香織の顔は、まるで“俺に自殺を止められ困惑した聡子の顔”の様な印象を受けた

まあ・・・妻を失ったショックで、そのように幻視したのだろ・・・

 

実際は、予想外の事柄に驚愕しただけだろう

それに、俺自身が妻を亡くした事に”ショック”を受けている事に安心したのを憶えた


その後、“馴れ初め”から“妻に先立たれる”までの経緯(いきさつ)を、香織に語っていった

 

 

ちょうど、聡子と俺は同じマンションに住んでいて、偶然にも隣同士だった・・・

 

俺が酔っ払って間違って隣の部屋に入った時に、ちょうど聡子が縄で首を吊ろうとした最中だった・・・

 

俺は慌てて部屋に入り、聡子を縄から離し

 

「生きてたら絶対に良い事がある」

と訳の分からない事を言った後、間違った部屋から出て行ったよ

 

翌朝、隣の部屋の聡子が通勤したのを目撃して“自殺を思い留まった”と思い安心した・・・

 

それでも心配になった俺は、帰宅後、隣の部屋の前で聡子を待った・・・

 

違う場所で自殺してなければと思ってな・・・

 

そしたら、無事に聡子が帰って来た・・・

 

その時の“安堵感”はいまだに忘れないよ・・・

 

この後、俺は気恥ずかしそうしながら

「部屋を間違ったお詫びに、ご飯を奢らせて欲しい」

と食事を誘ったら

 

聡子も気恥ずかしそうに

「良いですよ」

と答えてくれた

 

その食事の時に、色んな話をしていくと気が合うのかして、これからお互いに部屋を行き来きしながら親密が高まっていった

 

特に“料理”と“遠出”が共通の趣味だったので、よく一緒に料理をしたり、ドライブに行ったりしてたよ・・・

 

結婚後も相変わらずだったけどな

 

そのうち、俺は

「一緒に住まないか」と言って

 

聡子はそのまま、俺の部屋に引っ越した

その後、婚姻届を出した後も変わらずに一緒に平穏に暮らしてたよ

 

聡子は、ほんの偶に“自殺しそうな症状”が現れるから、どうしても“ほっとく”事が出来なかった・・・

 

その“ケア”もやっていく内に

「私の為に、ここまで支えて貰えるなんて・・・こんなに嬉しい事はないわ・・・私は貴方にお返しをしたいの・・・どうしたら良いの?」

と、聡子に聞かれたから・・・

 

本当は・・・“何も要らない、ただ一緒に人生を歩もう”と言いたかったが、聡子の折角の頼みを無碍に出来ないだろ

 

俺は考え込んだ挙句・・・

これなら、聡子の“自殺衝動”が収まるかも知れないと思い

 

「俺へのお返しとして・・・俺より長生きしてくれ」
と、返答したら

 

聡子の奴、にっこりと笑みを浮かべ
「ありがとう・・・私、貴方より長生きするわ」
と、承諾してくれた

 

そこから、聡子は俺と一緒に色んな事に挑戦し、人生を楽しむかの様に謳歌したよ

最期は“癌”に侵され、努力むなしく“俺より先に”天国へと旅だったよ

 

 

と、話し終わった頃には・・・・

 

「そんな事があったのですね・・・」
香織は、べそを掻きながら、俺の話を聞いていた

 

その後、何を思ったのか・・・香織の奴、拳を握り気合を入れながら

「じゃ~~、“長崎の実家”まで、あたしが“聡子さん”の代わりになって上げる」
と、ほざいてきた

 

俺は、唖然とした後

「香織は香織だ・・・聡子ではない、別にそんな事する必要ないだろ」
と、苦笑しながら断ったが

 

「いえ!!!“長崎”へ連れってくれるお礼として、是非ともやらせて頂きます」
と、香織は頑として引かなかった

 

相変わらず、強引な()だなと思い

「まあ・・・好きにすれば良い、無理はするなよ」
と、半分諦めて返答したら

 

香織、嬉しそうな笑みを浮かべ
「あたし・・・頑張るね」
と、言ったので

 

「いや・・・無理はしないで」
と、またもや苦笑しながら突っ込んでいた


「もう一つ、聞いて良いかな?」
と、香織が神妙な面持ちで聞いて来たので

 

「なんだ?」
と、質問返しをした

 

「いつも助手席に置かれ、”思い出”の場所に行く時、宿に泊まる度に、リュックに入れて持ち歩いている、ダウンジャケットに包んだモノって・・・もしかして、聡子さんの・・・」
と、言って来たので

 

「そうだ・・・これは、聡子の骨壺だ・・・一緒に”思い出の場所”を訪ね終わった後、“長崎の実家”に帰えるんだよ」
と、答えたら

 

「そうなんだ・・・聡子さんとお別れするんだ」
と、香織が寂しそうに言って来た・・・・

 

香織の“その台詞”を聞いた時、言い知れぬ“悲しみ”を感じてしまった


俺は、只、聡子の遺骨を生まれ故郷の“長崎”で弔ったら、あの世でも“安心・平穏”になるだろうと考えていた

 

これが本当に聡子の為になるのだろうか・・・

 

そして、改めて“本当に聡子を愛している?”・・・

 

そう頭に浮かんできた

 

俺は、聡子と結婚し一緒になった理由が、聡子の境遇に対する“同情心”と、聡子が偶に“自殺衝動”を起こしていた為に“放置”出来なかったからである

 

それと、聡子と一緒にいて“居心地が良かった”からである

 

そんな理由で、“聡子を愛してる”と言う資格があるのだろうか?

 

そんな事を考えながら、俺と香織は、広島の方へ向かうのであった

 

 

第3話へ続く・・・