さて、自分への誕生日プレゼントで購入した Fender Pure Vintage '51 Telecaster Pickup が届いたので、Fender TRADITIONAL II 50S TELECASTER のピックアップと換装していきます。
まずは検品です。断線していたらアウトですからね。
製品仕様のDC抵抗:Neck: 7.8K, Bridge:7.15K
となっていますが、
計測した結果
Neck: 8.0K, Bridge:7.16K でした。合格です。
もともとついているピックアップが
Neck: 5.30K, Bridge:5.95K ですから、だいぶ出力が高い代わりに、マイルドな音色になっているということでしょうか。
まず、コントロールプレートを外して、配線具合を写真に撮って記録します。その後両ピックアップのワイヤーをハンダごてをあてて取り外します。
もっとも、Fender のピックアップセットについてきた標準配線図で配線方法は後から確認できるようになっています。
更にピックガードを外し、ネジやブリッジの位置などを書き留めておきます。
既存のネック側ピックアップを外します。木ネジで直接ボディに留めてありました。
あとで反省したんですが、既存の木ネジと新しいピックアップ付属のネジの長さを確認しておくべきでした。そんなことは無いかとは思いますが、新規の木ネジの長さが長くて、ボディを貫いたら涙ものですものね。
既存のピックアップは「PTP1071 A56T-PU42-730 TTC F 」という部品番号でした。ボビンのベースはプラスチック製で、残念ながらワイヤーはどんなものか金属カバーに隠れて外から見えませんでした。
Pure Vintage '51 を見てみます。「AV 51」と手書きされています。
この Pure Vintage '51 Telecaster Pickup と銘打ったピックアップは、2022年10月に発売された American Vintage II 1951 Telecaster に搭載されているピックアップそのものなんですよね。だから「AV 51」ということなんでしょう。
ボビンはバルカンファイバー製。あずき色のエナメルコーティングワイヤー(倍音が出やすいとされる)が見えます。ハウリングやマイクロフォニック抑制対策のワックスポッティング済みだそうです。
最終的にピックガードに隠れて見えない部分ですが、マウントネジにもマイナスの木ネジが付属されているというヴィンテージ仕様に対する Fender の拘りようです。
既存の木ネジ穴に正確にねじ込めているか、結構苦労しながら取り付けました(最初失敗して別の穴をほじってしまいました)。特に固定用スプリングに代えて付属のゴムチューブ(ネック用の長いのが2つ、ブリッジ用が3つ付属)にするとネジの先端が見えないので非常に困難になります(先に両面テープか何かでチューブをネジ穴に固定しておいてやればよかった)。ヴィンテージ仕様に拘らないなら既存のスプリングを使用した方が安全かと思います。
エクストラキャビティーに配線を通していくときは、クロスワイヤーに弾力性がないので、穴の出た先から引っ張らないで、押していくように通していかないとピックアップとのハンダ接続部分が断線しそうで怖いです。
次はブリッジピックアップ。
既存のものは、金属のベースプレート(evelation plate というそうです)がボビンにネジ止めされています。
「PTP1072 A56T-PU42-830 TTC R」という部品番号です。
ポールピースはスタガード(階段状)。
もともとプラスチックでちょっぴり梨地だが光沢があって、いかにもプラスチック然としていたボビン表面に、黒のアクリルガッシュで着色したクラフト紙を張り付けて、さもバルカンファイバー製のように加工したので、見た目は高級品と区別がつかない力作でしたね。この力作フェイクともお別れです。
Pure Vintage '51 のブリッジピックアップを見てみます。
evelation plate は、冷間圧延鋼から打ち抜かれた鉄製で鈍い色をしています。
前モデルの American Vintage Telecaster のBridge ピックアップのエレベーションプレートには、銅メッキが施されていました。
これはプレートの錆びを防ぐとともに、アース線のハンダ付けが容易になるためだそうですが、初期のブロードキャスター、エスクァイア、テレキャスターにはメッキされていないエレベータープレートが採用されていたので、これもオリジナルにこだわった仕様のようです。
また、初期モデルの鉄製のエレベータープレートはピックアップにワックスで固定されておらず、大音量で演奏するとピックアップからマイクロフォニックノイズが発生していたそうですが、今回のピックアップは、Formvarコーティングワイヤー(全体のブライトネスを向上させる)にワックスポッティング済みとのことです。逆にネジ止めされていないので、経年劣化でプレートがはがれ、マイクロフォニックが発生する可能性はありますね。
1955年までのTL用ブリッジピックアップはポールピースの高さがすべて均一な、「フラッシュマウントポールピース」であったそうです。このオリジナルに従って、今回のピックアップもあえて「各弦の出力バランスを均一化するフラッシュマウントポールピース」になっています。
これは元々スティールギター用に開発されたPUであり、全弦を同時に弾くコードストロークという奏法を考慮していなかったためと言われている。
指板の半径は緩やかに凸になっているので、指板の真ん中に位置する3弦と4弦は、端に位置する他の弦よりも、ピックアップからの距離が遠くなることになる。TLの、1Eと6Eの両弦の出力が大きすぎて(逆に3弦と4弦 の出力が少なく、また当時、3弦にまでフラットワウンドと呼ばれる、断面が平面なワイヤーが巻かれている弦だったため、更に出力が弱かったのも相まって)バランスが悪いという指摘に、レオ・フェンダーも応じ、距離を合わせ、音量のバランスをとるために、3弦と4弦のポールピースを上げたのがスタガードポールピース。以降のブリッジPUでは「スタガード」ポールピースが標準になったとのこと。
あとで、何のピックアップを乗せたか分からなくならないようピックガードの裏にラベルを貼っておきました。因みにメキシコ製ではなく、Made in USA でした。
配線のハンダ付を終え、何とか無事にピックアップ換装を終えることができました。
ゲルストマン症候群の私としては、綿密な事前準備と細心の注意を払って作業をしても、必ずどこかで大失敗をしてしまうのが常なので、毎回本当に神経をすり減らす作業です。
朝の10時から初めてお昼をはさんで午後の3時までかかってしまいましたが、達成感が半端ないものがあります。
さて、これでどのくらい満足できる仕上がりなのか、肝心の音の変化が気になるところですが、この点は後日報告したいと思います。
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