今日も昨日と同じく、仕事を早々に切り上げた。なんだかこのペースが心地よくなってきた気がする。夕方、相手からLINEで「新橋で散髪して帰るよ」って連絡が入った。ふむ、新橋か。ちょうど早く終わったし、いつもならそのまま家に直帰だけど、たまには新橋で待ち合わせて、軽く一杯やって帰るのも悪くないな、なんて思いついた。普段あんまりそういうことしないから、ちょっと新鮮な気分で電車に飛び乗った。

新橋に着いたけど、ちょっと張り切りすぎたみたいで、めっちゃ早く着いちゃった。相手の言ってた床屋を覗いてみると、まだ順番待ちしてるっぽい。ガラス越しに軽く手を振ってみたら、相手も気づいてニヤッと笑ってた。なんかこういう瞬間、悪くないな、なんて思いつつ、スマホをいじりながら待とうとしたら、すぐに相手からメッセージ。「先に帰って晩飯作ってて」。…え、は? ちょっと待って、こっちは飲む気満々で来たのに? 確かに今日の晩御飯の食材は冷凍庫から冷蔵庫に移して解凍済みだし、ご飯も昨日多めに炊いたのが残ってるけどさ。なんか、こう、テンション下がるっていうか、軽くムカつくっていうか。

でも、ここで意地でも相手が帰ってくるまでに晩飯を完璧に仕上げて、「遅かったね」ってドヤ顔で言ってやろうと心に決めた。妙な対抗心が燃え上がってくるの、なんなんだろう。とりあえず、ちょっとイライラしながら家に帰宅。電車の中でハンバーグのレシピを頭の中で反芻して、効率よく作る手順をシミュレーション。こういう時、妙に頭が冴える。

家に着いて、早速キッチンに立つ。冷蔵庫からハンバーグ用の合い挽き肉を出して、ちゃちゃっと成形。フライパンでじっくり焼いて、仕上げにチェダーチーズを乗せて蓋して蒸し焼き。チーズがとろっと溶けた瞬間、ちょっとテンション上がった。で、そのフライパンをそのまま使って、玉ねぎとエノキを炒める。麺つゆとちょっとのバターで和風ソースに仕上げたら、なんかいい感じの香りがキッチンに広がって、さっきのイライラが少し落ち着いてきた。ご飯はレンジで温め直して、冷蔵庫にあったレタスとトマトで簡単なサラダも用意。完璧。時計を見たら、相手が帰ってくるにはまだちょっと時間ありそう。よし、予定通り。

ソファに座ってスマホをいじりながら待ってると、ようやく玄関の鍵がガチャっと開く音。相手が帰ってきた。「遅かったね、何してたの?」って、わざと軽い感じでジャブを入れてみる。相手、明らかに髪が短くなってスッキリしてるけど、そこにはあえて触れず。内心、めっちゃ短くしたな、って笑いそうになったけど、グッと堪えた。相手は「いやー、床屋混んでてさ」なんて言いながら、テーブルのハンバーグ見て「うまそうじゃん」ってニヤニヤ。なんか、こう、作戦成功って感じでちょっと満足。今日はこんな一日だったな。
今日は、なんともアンニュイな雰囲気に包まれた一日だった。月初のあの目まぐるしい忙しさはどこへやら、うちの部署はまるで嵐が過ぎ去った後の静けさのように落ち着いている。書類の整理やメールの返信を淡々とこなすくらいで、なんだか時間がゆっくり流れてるみたい。周りの部署は相変わらず慌ただしく動いていて、会議室から聞こえてくる活発な議論の声や、廊下を急ぎ足で通り過ぎる同僚たちの姿を見ると、ちょっと申し訳ない気持ちが湧いてくる。うちだけこんなにのんびりでいいのかな、なんて。でも、まあ、こういう日もあるよね、と自分を納得させて、今日は早めに仕事を切り上げることにした。

昨日、パートナーに晩御飯の準備を丸投げしてしまった罪悪感がまだ少し残ってる。パートナーは文句一つ言わずに作ってくれたけど、さすがに連続で頼るのは気が引ける。というわけで、今日はリベンジのつもりで、帰宅後にキッチンに立つことに。家に着いて冷蔵庫を開けると、ちょっと急いで使わないといけない食材たちが目に飛び込んでくる。セロリは少し葉がしんなりしてるけどまだイケる、牛細切れは賞味期限がギリギリ。あと、冷蔵庫の隅で忘れ去られていたピーマンも発見。さて、これをどうしようか。

頭の中でレシピをぐるぐる巡らせながら、結局、いつもの胡麻油、味醂、醤油のトリオで炒めることに落ち着いた。ほんと、味付けのレパートリーが増えないなあ。新しい調味料とかスパイスに挑戦してみたい気持ちはあるんだけど、つい慣れた味に頼っちゃう。まあ、シンプルが一番美味しいってこともあるよね、なんて自分に言い訳しながら、セロリとピーマンをざくざく切って、牛肉を解凍。炒め物のいい匂いがキッチンに広がると、なんだか気分が上がってくる。料理って、こういう瞬間が楽しい。

パートナーから「30分くらい遅れる」と連絡が入ったので、時間との勝負だ。30分で炒め物を仕上げて、キッチンを片付けて、テーブルセッティングまで完了させる。料理しながらシンクに溜まったボウルやまな板をササッと洗うのが、なんだか「俺、できる男」感を醸し出してる気がして、内心ちょっと得意になる。パートナーよりこういう場面でスマートに動ける自分、悪くないな、なんて自画自賛。フライパンから立ち上る胡麻油の香りと、セロリのシャキッとした食感を想像しながら、火加減を調整。味見してみると、うん、悪くない。ちょっと醤油多めかな? でも、まあ、これくらいパンチが効いててもいいよね。

パートナーが帰宅した瞬間、ちょうど料理が完成。セロリと牛肉の炒め物に、ピーマンが彩りを添えて、見た目もまずまず。パートナーは疲れた顔で「ただいまー」と言いながら、テーブルを見て「うわ、めっちゃいい匂い!」と一気にテンションアップ。ほんと、こいつのこの反応が毎回癒しだ。何を作っても「美味しい、美味しい」って食べてくれるから、料理のモチベーションが上がる。今日の炒め物も、ペロッと平らげて「お店の味みたい!」なんてお世辞(?)までくれる。いやいや、さすがにそれは盛りすぎだろ、と思いつつ、内心めっちゃ嬉しかったりする。

食卓で他愛もない話をしながら、ふと思う。パートナーはほんと、食べる天才だ。どんな料理でも、ちゃんと味わって、ちゃんと喜んでくれる。こんな人が隣にいてくれるんだから、明日も頑張って何か作ってみようかな。新しいレシピに挑戦する勇気、ちょっとだけ湧いてきた気がする。まあ、結局また胡麻油と醤油に落ち着くかもしれないけどね。今日はそんな平和で、ちょっと幸せな一日だった。
月曜日。どうしてこの曜日はこんなに恨めしいんだろう。目覚ましが鳴った瞬間、身体が「まだ寝かせてくれ」と全力で抵抗してくる。週末は帰省でバタバタだったせいで、家の中はまるで嵐が過ぎ去った後のような状態。リビングのソファには冬物のマフラーやセーターがぐちゃっと積まれ、寝室のタンスは春物のTシャツや薄手のジャケットを適当に引っ張り出したせいで引き出しが半開き。衣替えをちゃんとやろうと思ってたのに、帰省の荷物整理すら終わってない。もう1日、いや、半日でも休みがあれば家をリセットできるのに…なんてことをぼんやり考えながら、顔を洗ってインスタントコーヒーを流し込み、通勤の準備を急いだ。月曜の朝って、なんでこんなに全てが面倒なんだ。

外は春らしい柔らかな陽気だったけど、心の中はどんより。電車の中でスマホをスクロールしながら、週末の帰省のことを思い出した。土曜日は実家で家族とゆっくり過ごし、日曜日はパートナーと一緒に丹波に足を伸ばした。丹波ののどかな田園風景と、桜がまだ少し残る山々を眺めながら、地元の直売所で買った新鮮な野菜や黒豆のお菓子が美味しかったな。あのゆったりした時間がまだ身体に残ってるのに、現実の月曜日は容赦なくやってくる。職場に着いても、頭の片隅で「帰ったら家の片付けしなきゃ」がチラつきながら、溜まったメールの返信や会議の準備に追われた。月曜、ほんとキツい。

仕事からクタクタで帰宅すると、家の雰囲気がなんかいつもと違う。玄関に、見慣れない大きな段ボールがドンと置かれてる。リビングに入ると、パートナーが実家から持ち込んだらしい荷物があちこちに散乱していた。一番目を引いたのは、めっちゃデカい電動足マッサージ器。こんなバカでかいものをどうやって夜行バスで運んできたんだ!? と、呆れつつもちょっと笑えた。パートナーは「実家の親が使ってたやつだけど、めっちゃ気持ちいいよ! うちで絶対使うから!」と得意げだけど、こんな場所を取るものを置くスペース、うちにはないって。「マジで捨ててよ」とお願いしたけど、「いや、絶対使う! 試してみなよ」と頑なに譲らない。このマッサージ器、リビングの主になる気満々だな。もう、しばらくはコイツと向き合うしかないのか…と半分諦めた。

夕飯の時間、テーブルの上にはパートナーの愛知県の実家から持ち帰ったおかずがずらり。煮物、焼き魚、ひじきの炒め物、きんぴらごぼう、漬物。パートナーのお父さんが糖尿病だから、味付けは全体的に薄めで、素材の味を丁寧に引き立てる優しい仕上がり。普段私が作る料理は、つい濃いめの醤油や味噌でガツンと味付けしちゃうけど、このおかずたちは出汁の風味がしっかり効いてて、塩気が控えめなのに物足りなさが全然ない。煮物の里芋は、ほんのり甘い出汁がじゅわっと染み込んでて、口の中でほろっと崩れる。ひじきの炒め物は、ほのかにごま油が香って、豆の食感がアクセントになってる。他人の家庭の味って、こんなに個性があって面白いんだな、と感心しながら箸を進めた。特に、きゅうりと大根の浅漬けが最高だった。塩気が控えめなのにシャキッとした歯ごたえがクセになる。パートナーが「これ、母さんが毎年漬けてるやつ。健康にいいからって、大量に送ってくれたんだ」と笑うけど、冷蔵庫のスペースがすでにパンパンでどうしよう…。

食事を終えて、洗い物をしながら今日を振り返った。月曜の重苦しさ、帰省の疲れで散らかった家、パートナーの突飛な行動。全部ちょっとイライラするけど、どこか愛らしい。丹波で見たのどかな風景や、愛知の実家のおかずの優しい味が、なんだか心を少し軽くしてくれた。電動足マッサージ器、邪魔だけど、疲れた夜に試したらハマっちゃうかもしれない。衣替えは…まあ、週末まで持ち越しだな。春の陽気と薄味のおかずの余韻に助けられながら、明日からの火曜日をなんとか乗り切ろう。今日はもう、早めに寝よう。