「何あの人。割とかっこいい!」


部活中、僕は学校の周りを走りこんでハァハァ言いながらノルマをクリアし、校門に寄りかかって休憩をしているときでした。一年生の女子軍団、なんともギャルギャルしい雰囲気をかもし出している彼女ら、あーあ、そのメイクとかとったら本当のキミのかわいさがわかるっていうのによ・・・とか心の中でキザを演じているときでした。

校門から自転車を乗りながら出てくる軍団。それを横目に見ている僕。うざいから早く帰れと思っていると、ある声がまるでドップラー現象(救急車などが目の前に通ったときに来るあの音の違和感みたいなやつ)のように聞こえてきました。
「何あの人。割とかっこいい!」

まぁドップラー現象というのはめちゃくちゃ大げさなんですけど、だんだんと遠くへ行ってしまったため、ちゃんと最後までは聞こえなかったんですけど、難聴気味の耳をなんとかかっぽじって「かっこいい!」というところまで聞こえてきました。かっこいい。それは女性が男性に対して抱く一種の好意・・・その日その時その時間その場所では男の子は僕しかいなかった・・・。・・・!?


僕はいままで「かわいい」とは言われてきたが・・・かっこいいと言われたことがなかった。かっこいい。うん、すげーいい気分だ!すがすがしいぜ!もうちょい走っても体力に余裕が持てそうだぜ!とか思ってもう一度周りを見回してみると、僕以外の男性でおじいちゃんが学校の近くを歩いていました。まさか・・・

むかし・・・エロサイトめぐりをしていたとき。どうしてもコレ!っていうネタがなくこまって何軒も回っていた・・・行きたくも見たくもない熟女のサイトまで間違えてみてしまったその日。僕はなんとも奇妙なエロ動画を発見した。

「おじいちゃんをナンパ!」

なんだかよくわからんけど、潮吹き女王の紅音ほたるがおじいちゃんをナンパしてセックスするという内容だったようだ・・・(紅音ほたるが好きじゃないから見てはいないが)おじいちゃんをナンパ・・・僕にはまったく理解できない世界だと思って記憶の隅に片寄せた。

しかし、世の中にはいろいろな趣味の女性がいる。おじいちゃんのようなヨボヨボな体が好きだからセックスしよ!とか言ってナンパしている女の人もいるかもしれない・・・もしかしてあの一年生の女の子もおじいちゃん好みでおじいちゃんとイキまくって逝きまくってるわけなんだろうか・・・はぁ。

と、意味のないネガティブ思考をしていた冬の夜長。
私はそこで決めた。バレンタインでこの気持ちを伝えよう!そう思って今年は気合を入れて何度も何度も彼に上げるためのチョコレートを作っては食べ、やり直すという作業を繰り返した。最終的には、普通のチョコレートの中にガラナチョコを混ぜるというどっかに書いてあった恋が叶うチョコレートの作り方を見て作ったものにした。ガラナにはコーヒーの何倍もののカフェインが入っているので、相手を興奮させたり、強壮効果にもつながるんだとか。もしかしたらその夜・・・とかね!考えちゃったりね!


そしてバレンタインデー当日。彼は授業が終わるとさっさと部活へ行ってしまった。放課後すぐに渡そうと思っていたけど、彼に「校門で帰り待ってる。」とメールを送り、校門付近でうろうろしていることに。

何もしないで時間が過ぎていく。6時に終わる部活まで校門によっかかって時計を見返す、立ち上がる、うろうろする、よっかかる。その行動を何度も繰り返しているうちにあたりはいつの間にか暗くなっていた。時計は6時10分をさしていた。冷え切った手足が震えてくる。緊張を高まって、ブルブル震えだす。携帯のバイブみたいだと自分でおかしくなってクスクス笑って緊張をほぐす。

校舎の裏側から彼の姿が見えて、私は手を振った。でも彼は振ってくれなかった。となりにバスケ部の小川クンがいたから恥ずかしくて振らなかったんだろう。駆け寄ってくる神谷クン。駆け抜ける体の身震い。チョコの入った紙包みを両手で差し出して、私はとうとう彼にこの気持ちを打ち明けた。

ごめんなさい。彼はその一言だけ言って黙っている。私は涙がこみ上げてきた。こんなに頑張ってきたのに、このチョコを作るのだって!何度も何度もやり直して、今日完成させてきたのに!・・・・・・最後に、最後になんで私じゃダメなのか聞いてみた。

「僕・・・付き合ってる人いるんだ。」

私は嘘をつかれてたんだ・・・なんで嘘なんてついてたのよ!

「嘘はついてないよ・・・好きな女の子がいないだけだったんだよ・・・」

意味わかんないよ!好きじゃないのに付き合ってるの!?

「好きだよ・・・でも女の子じゃないんだ・・・」

私はすべてを理解した。横の小川クンと付き合っているんだな貴様ァーーッ!!暗闇を走り出した私。革靴のカッポカッポした音が校舎に反射して、当たり一帯に響き渡っていた。こうして私の高校一年の恋物語は終止符を打った。
入学したその日から、私は彼に惚れてしまった・・・


私の名前は土橋由香里。お姉ちゃんは何をとち狂ったのか知らないけど体育教師に惚れてるらしいけど、私はそうじゃない。お姉ちゃんは女子高へ行ったからそんなこと言ってるだけで、私は普通の共学。そんなただれた恋愛になんか興味ない、青春ぶっちぎりの16才。

入学式のその日、私は最初の席順で隣に座った彼に驚いた。大きな体に男らしい顔、まるで体育会系の将来体育教師希望です!熱血の!とか言いたげな顔をしていたもんだから、きっと体臭は野球部の部室みたいな臭いがするんだろうなと思って、その場でクンカクンカしてたんだけど、どーしてもフルーティーないいにおいしか香ってこない。むしろまだ香水とかつけてなかった私のほうが臭いんじゃないの!?と思っちゃうほど。

入学の書類を書くことになったその時、私は家に筆入れを忘れてしまったことに気づいた。まだ友達もいないので誰かから借りるのはなんだか気まずいな・・・とオロオロしている時、肩をポンと叩かれた。せ、先生だっ、入学早々怒られるのなんかやだよー、とか思って振り向いたら隣の彼だった。

「ペンないんでしょ?コレ貸してあげる。」

大きな図体とは似合わないかわいらしいシャーペンを私に貸してくれた。こんなたくさんの書く項目があるのに、なんでこんな早く書ききれたんだろうという疑問と、こんなかわいいペンでどんな字を書くんだろうという好奇心で、彼の書類を見てみた。

名前のところだけ丁寧に書いて、あとは殴ったような字の羅列だった。大切な書類なのに、私がペンを忘れたことに気づいて、急いで書いてくれたんだ・・・・・・。なんて優しい人なんだろう・・・・・・。気持ちの高ぶりは隠せなかった。なんだか恥ずかしい気持ちになって自分の書類を作り始めた。そこで彼の名前を覚えた。神谷・・・神谷涼二クン・・・。


しかしそれ以来、あまり話すことなく席替え。神谷クンとは席が離れてしまった。この気持ちはしまっておくだけなのかな・・・と思っていた矢先のこと。

文化祭係で一緒になっちゃった。

「恋!そのすてきな好奇心が由香里を行動させたッ!たちまち由香里と男の子は友達になり由香里は彼に夢中になったッ!」

もう夢中だったけど、係をしているときは特に楽しかった。毎日の放課後のために学校へ来るようになった。一緒に係になったおかげでメアドも自然に聞くことができ、さらには自然にメールすることもできた!彼は意外と女の子らしいメールの文体を打ってくる・・・きゃわいいじゃん。ありがとう先生!ありがとう神様!

文化祭も成功!私と彼の仲もその頃には友達以上恋人未満(自称)な関係になっていた。このまま持っていけば間違いなく彼と私は・・・、そう思うとどんどんワクワク・・・・・・と思ったんだけど、もしかしたら神谷クン、好きな女の子とかいるのかも・・・。そう考えると不安になった。不安は行動へと変わった。

「神谷クンって好きな女の子とかいるの?」

いつもはどうでもいいようなメールをしていた私と彼。そのため、今回のような特別なメールを送ったものの、なんだか胸がドキドキしてきた。返信はまだかまだか!と思いながら携帯電話の前に正座。

「今はいないよ」

アタックチャーンスッ!!