2025年10月18日(土)
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先日訪れた市橋安治展で、記念講演会「市橋安治とスペインの巨匠たち:ゴヤ、ピカソ、サウラとの対決」の案内を見つけ、さっそく電話申込みしまた。![]()
開催記念講演会「市橋安治とスペインの巨匠たち:ゴヤ、ピカソ、サウラとの対決」
日時:2025年10 月 18 日(土)
開場 13:00、開会 13:30~(15:00 終了予定)
講師:栗田秀法氏(跡見学園女子大学文学部教授、名古屋大学名誉教授)
会場:羽島市福祉ふれあい会館 2 階地域ふれあいスペース
(羽島市福寿町浅平 3 丁目 25 番地(羽島市民会館西隣))
参加費:無料
定員:50 名(要申込み)
羽島市福祉ふれあい会館にて開催。
講演中は撮影禁止。
ですので、下の写真は始まる前の様子です。![]()
市橋氏の奥様である佐藤文子さんもご同席されてました。
市橋安治 ──スペインに魅せられた羽島出身の画家
市橋安治(1948–2019)は岐阜県羽島市舟橋町の出身。小学生の頃に読んだゴッホの伝記がきっかけで絵描きを志し、1971年から約5年間スペインに滞在。ゴヤをはじめとするスペインの芸術家たちの影響を受けながら、独学で銅版画を制作し、表現の幅を広げていきました。
帰国後は名古屋市を拠点に、団体展や個展で精力的に活動。晩年まで油彩画を描き続け、命の限りを制作に注いだ画家です。
講演から見えた晩年の市橋作品 ──円熟と静かな情熱
講師は跡見学園女子大学教授で名古屋大学名誉教授の栗田秀法氏。市橋さんの晩年を知る栗田先生の語りからは、スペインの巨匠たちとの「対決」が単なる技法の模倣ではなく、精神的な対話であったことが伝わってきました。
たとえば、俵屋宗達の「白象図」へのオマージュ作品(2016年)では、宗達の大胆な構図を借りながらも、市橋さん独自の肉感と生命力が宿る白象が描かれています。動き出しそうな気配すら感じるほどです。
また、ピカソの「ゲルニカ」に登場する馬の姿を抽出した《ゲルニカの馬》(2018年)は、黒地に白のレイヤーを重ね、重厚なイメージを市橋流に再構築。ピカソの作品を部分的に抜き出しながら、機知に富んだ表現に昇華させています。
私が感じた市橋作品の魅力 ──優しさの奥にある強さ
市橋さんの作品には、犬や電球、イスなど、身近なモチーフが多く登場します。とくに犬を描いた作品には、どこか市橋さん自身の顔が重なるような親しみを感じました。
一見すると優しい雰囲気の絵が多いのですが、じっと見ていると、内側から強いパッションが立ち上がってくるような感覚があります。穏やかさの中に、揺るぎない意志が宿っている──そんな印象です。
栗田先生が語られた「現代の熊谷守一と言っていいのでは」という言葉にも深く共感しました。晩年の作品には、形の原理を追求するような静けさと潔さがあり、輪郭線を残す描き方や、取り澄まされたフォルムは、まさに守一の画風に通じるもの。私自身の好みにぴったりと合う、円熟した表現でした。
命を描く ──晩年の創作と市橋さんのまなざし
2012年に肺がんの余命宣告を受けた市橋さんは、放射線治療を続けながら創作を再開。2013年以降は油彩画に専念し、「曼荼羅」シリーズなどを発表。粗麻布に油絵具を厚く塗る技法を用い、筆触や塗り残しによる効果を巧みに活かしました。
亡くなる直前まで、愛犬や椅子など、日常のモチーフを描き続けた市橋さん。自分のささやかな生を慈しみながら、身の回りの事物に優しい目を向け、感じたことを素直に表現する──その姿勢が作品に深い痕跡を残しています。
「年を取って、やっと円熟してきたようで、70歳で亡くなったが、この後の進展と円熟を見たかった」──栗田先生の言葉には、画家としての成熟と、惜しまれる命の重みが込められていました。
郷土の画家を知る初の機会 ──市橋安治展の意義
今回の展覧会は、羽島市で市橋安治を紹介する初の機会。郷土ゆかりの作家が生涯をかけて描いた油彩画や銅版画を通して、絵に生き続けた市橋さんの姿に触れる貴重な場となりました。
人生の後半に差し掛かる私たちにとって、「描きたいように描く」姿勢や、日常の中にある美しさを見つめるまなざしは、心に深く響くものがあります。市橋さんの作品には、そんな静かな力が宿っていました。





