リアルタイム経済小説「極小企業」 -2ページ目

第15章 2011年02月11日

人は時間を意識しなくていい時ほど時計を気にする。
少なくとも朝倉はそうだった。

なんだか宙ぶらりんな気持ちになり何かにすがりつきたくなる。

それは時間という物が何よりも絶対的である証拠なのかもしれない。

しかし人は時間を相対的に捉える事によって正気を保っているという話を耳にした事がある。その真偽はおいておいて

感覚として、同じ1分が一瞬に感じたり、永遠に感じたり。

こんなことは珍しくない。

秒針からすると良い迷惑かもしれない。
彼(彼女かもしれない)は、ただ黙々と与えられた仕事をこなしているだけだ。

まあ、そんな秒針の想いは知る由もなく我々は変幻自在に自分自身の中で時を操っているのだ。

そんな事考えながら朝倉は久々の休日の昼下がりを過ごしていた。

あえて何もしない。何も考えない。

今日はその事を自分に課していた。

何もしない。何も考えない。

このことは意外に難しく、苦痛である。

春というものが遠い未来の事のある様な寒々しい日和、

朝倉は自らの殻に閉じこもり、その闇の中に身を置く事で何かを見いだそうとしていた。

この無の休日はこれからの自分にとって大きな意味を持つと信じて

第14章 2011年02月10日

春の小道を我が物顔で歩く昆虫のような

観光客を背になんだか居心地が悪そうなインド象のような

どんな一歩なのかはわからないが着実に一歩を踏み出した事に変わりはなかった。

望もうが望まれぬようが明日と言う物が東京の地下鉄のように毎日きっちりとした時間に来るように一歩を踏み出した者には結果という物が必ず訪れる。

中身がどうであれ。

サービスが開始し、しばらくの時が経った。

結論から言うと望ましい物ではない。

会員数は微増ながら着実に伸びてはいるがそれが利用に繋がっていない。

「これはまずい」

朝倉は思った。

「とりあえず」

の会員がほとんどなのである。

3人は手持ち無沙汰の毎日を送っていた。

本来なら、商品の発送やメンテナンスなどで忙しくしておかなければいけない

彼らも当初はそれが当然の事のように思っていた。

しかし現実は。

たまに舞い込む注文に対処してあとは、どうするこうするの終わりの無い会話が続いていた。

毎日毎日、会議をする為に事業をおこした訳ではない。

そう3人は当然考えていたが結果としてそうなっているのだ。

何か打開策が必要だ。

朝倉には明日、久々の休日が待っていた。

この休日、何をするか。

なぜか、このことが今後の展開を大きく左右しそうな感覚を持っていた。

第13章 2011年02月04日深夜

朝倉の日記
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桜のように生きたい。

そう、どこかの寺院の住職は言った。

誰に期待されるでもなく、誰にほめられる訳でない。

でも、桜は時がくれば花を咲かし、花を散らす。

誰かに期待されたい、ほめられたい。

そのような欲を取り払うことを言っているのだろう。

僕にそのような生き方が出来るのだろうか。

人に褒められたいし、評価されたい。

それはごく当たり前の感情で今まで疑う事が無かった。

しかし、それだけではいけない事も学んできた。

自らがすべきことがあるということ。

人になんと言われようと、思われようと。

自らがこれと決めた事を押し通す勇気と決意

これが今僕に必要な物だろう。

ニーズに迎合するだけがビジネスではないはずだ。

自らが信じ、続けていけば必ずついてくる人はいる。

それがニーズを生み出すという事なのかもしれない。

日本で初めてのことをする。

それにはそんな決意が必要だ。

根拠の無い自信だけが今の支え。

進もう。ただひたすらに。

自分を信じて、仲間を信じて。

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