B級パラダイス -9ページ目

B級パラダイス

健康優良不良中年が、映画、音楽、読書他好きなことを気まぐれに狭く深くいい加減に語り倒すブログであります。

愛読ブロガーさんが色んな形で「ベスト〇」を挙げていたのでちょっと真似したくなった(笑)

自分は少し捻って絶品カバーを挙げてみたい。今回は日本人によるカバーで。

基本的に元の曲が大好きってのが多いけど、好きすぎちゃうと「え?こいつがカバーしてんの?」的な敵意を持ってしまうのも困ったもので(笑)

幸いにして下に挙げたのは好きなアーチストの名曲をこれまた良いアーティストが単なるコピーではなく、しっかりリスペクトして、自分の歌にしているものばかり。

 

1.RCサクセション/上を向いて歩こう

まずは大好きだったこれを。もちろん元曲は坂本九ね。

「スキヤキ」として世界に知られたポップスをこんなロックにできちゃうんだと素直に驚いた一曲。

甲本ヒロトとの共演版をみつけたから貼っちゃおう。

相変わらずの「ワン、ツー、ワン、ツー、サン、シッ!」のスタートが嬉しい。

 

2.椿屋四重奏/BURN

次は惜しくももう解散している椿屋四重奏のカバーで、これまた大好きなTHE YELLOW MONKEYの「BURN]を。吉井君以上に粘っこい中田裕二のボーカルが曲にピッタリ。まさに絶品!

 

3.UNLIMITS/Don't Let Me Down

元々UNLIMITSの歌謡曲チックなマイナーメロディの曲が大好きなんだが、

このジッタリン・ジンのカバーは本当にオリジナルのごとくハマっている。

 

4.青山テルマ/TELL ME

正直青山テルマ自体はさほど興味を持っていなかったし、hideのトリビュートも数ある中でも

このカバーは好きだなあ。元曲の軽快なハードポップとは違うしっとりとしたアレンジで

曲そのものの良さも再認識。お勧めだ。

 

5.甲斐よしひろ/駅

逆に男性が女性の曲をカバーしたのだとがこれが好き。甲斐よしひろのカバーアルバムは

選曲がどれもいいけど、雰囲気も含め、これまたまさに絶品の一曲。

 

6.矢野顕子/中央線

何でも自分色に染め上げてしまうと言えばアッコちゃん。

THE BOOMのこの曲は比較的崩していないが本当にもう自分の曲になってる。

思えば彼女がカバーして好きになった曲がいくつもあるなあ。

 

7.ダイヤモンド☆ユカイ/青い瞳のステラ 1962年夏・・・

彼も自分色に染め上げるね。大好きな柳ジョージの曲の中でも特に名曲中の名曲だけど、

柳ジョージとはまた違う魅力いっぱいの仕上りで大好きだ。

 

8.ちあきなおみ/朝日楼(朝日のあたる家)

これはちょっと反則かな(笑)。アニマルズのカバーですな。本当に「凄み」を感じる絶品カバー。

そういえば吉井君も歌っていたなあ。

 

9.Hawaiian6/Autumn Leaves

これも反則かな(笑)。「枯葉よ~」のシャンソンが哀愁いっぱいのメロコアに。

彼らの激走するマイナーメロディには悶絶する名曲が多いが、これはビックリのハマリ方でした。

 

10.中森明菜/私は風 

本当はこれを紹介したくて書き出したようなもの。

彼女のカバーアルバム「歌姫」シリーズはどれも素晴らしくてドはまりした曲ばかり。

中でもこれはカルメン・マキとはまた別の「凄み」をまとっていてまさに絶品カバーだった。

カルメン・マキ&OZのようなロックバーションもいいし、アルバムのバラードバーションもいい。

両方貼っておくのでぜひ両方聞いてみて!(元曲同様長いけど(笑))

ううむ、やはり素晴らしい!

さて、明日は早起きしなくては。皆様おやすみなさい~

 

 

 

 

 

 

 

いやあ、ちと更新が途絶えました()

先週土曜に下の娘の仕事終わりに高速飛ばして迎えに行き、翌23日は俺の親父の誕生日。合わせて26日が誕生日の上の娘の祝いを前倒しで祝って夜また下の娘をアパートまで送ったので週末は何かと忙しく、映画も観ずに終わってしまったのだった。

月曜からは仕事が立て込み帰宅してから皆さんのブログチェックの余裕のないまま週半ばも過ぎてしまったのだなあ。

まあ、寝落ちしてしまったのが殆どで、目覚めて眠れず意味なく夜更かししたりもしたのだが、成る程インプットが無いと、なかなかブログ書く気が起こらないもので、書く気が起こらないと書きかけ記事を完成させることもないものだと実感(笑)。


そんな中唯一インプットしたとしたのがこれだ!(笑)。

少し前のアニメ三昧記事で少し書いた「ケンガンアシュラ」のアニメ放映分を撮りためていたのだが、土曜の昼間、漸く全て見終わったのだ。


商人たちの争いを収める手段として、江戸時代に始まり現代にまで継承されている「拳願仕合」。これは企業同士の争いなどが起こった際に、巨額の利益を賭け、各企業が雇った「闘技者」によって素手による格闘仕合を行い、勝った方が全てを得るというシステムなのだ。

主人公の十鬼蛇王馬(ときたおうま)が最強を証明するためにこの拳願仕合の舞台に足を踏み入れる様を描いたこの作品。

実は有名な「グラップラー刃牙」を読破していない前提ではあるのだが、これがまたすこぶる面白いのだ!


「拳願仕合」の覇者を狙う乃木グループの闘技者として採用された王馬の世話役を仰せつかったのがダメな中年サラリーマン山下和夫。

彼が子会社「山下商事」の社長として拳願会員となってしまい、次期拳願会々長を決定する「拳願絶命トーナメント」に王馬と共に参加するあたりから、集めも集めたりの各企業の闘技者がしのぎを削る様が描かれる一回戦。

ムエタイや中国武術、プロレスや相撲のみならず、ヤンキーや漁師(笑)、死刑囚やら暗殺者やらの犯罪者や特異体質の猛者が集う闘いの面白さったらもう最高で(笑)。


実はこのアニメは第一シーズンになるのだが、2回戦の途中、謎の武術「二虎流」の使い手である王馬が「呉一族」の呉雷庵と闘い、自らの「武」を掴み取るまでのところというかなり中途半端なところで終わっている。


原作は下の娘が持っていってしまったので全ては読めていないが、壮絶な2回戦後には「拳願仕合」の権利を独占しようとする企業の暗躍もあったりするようでますます面白そうなのである。


思えば、小説だと夢枕獏の「餓狼伝」(←レビューの一端はこちらこちら)と「獅子の門」(同じくこちらが大好きだし、漫画も「修羅の門」など、あまりに異次元的すぎる闘いではない異種格闘物が好きでハマったが、一番有名なグラップラー刃牙だけはちょっと突拍子もない登場人物に敬遠気味だったのは確かだ。


だがこの「ケンガンアシュラ」は原作者のサンドロビッチ・ヤバ子(なんちゅう名前だ )がフルコンタクト空手経験者で、なんと現在もブラジリアン柔術や総合格闘技をやっているというのがミソ。加えて担当編集者もフルコンタクト空手と軍用格闘術の経験者で、バトルシーンは実際にヤバ子と担当編集が組手を行い検証した上で描写しているというのが嬉しい(笑)。因みにアニメは担当編集がモーションアクターまで勤めているそうな。

そんなこんなで、まあこちらもかなり突拍子もないキャラはいるがファイトシーンはリアルでほんと面白かったのだ。


原作は元はネット配信後出版され、下の娘がどハマりし、続編の「ケンガンオメガ」も購入中だが、俺は全然たどりついていないので楽しみはまだ続くのだ()


アニメもNetflix配信され、後にBSで放送されたのを自分は観たわけだが、10月からNetflixで第2シーズンが配信されるそうで、未加入の俺はううむと唸るしかないのである()


さて週末はその下の娘の引っ越し。仕事もあり全く準備が済んでいないようなので、前日土曜からかみさんとヘルプに駆けつける予定。忙しくなりそうだ〜(汗)

昨日は持ち帰り仕事で明日提出の企画書を仕上げていたんで、とうとう連続更新が途絶えてしまったな。まあ仕事になればこんなもんだ。

そんなところに下の娘から連絡。土曜夜に迎えに来て欲しいとのこと。本当は土曜が全員休みだったので来週誕生日の上の娘の前倒し誕生パーティをするつもりだったのだが、下の娘は急な異動で休みが変動、30日に引越しだけは決めたらしく、明日というか今日休みになり、愛知に行って新しい職場になる店舗への挨拶とアパートの下見をしてくるが、土曜は仕事になったとのこと。

それでもやはり夜は仲の良い上の娘に会いたいがための仕事終わりの迎え要請なのだ。

ええ、親父としては夜でもどこでも迎えに行く気満々なんで二つ返事でOKしておきましたよ!(笑)

だが、こんなに妹が慕うのに姉の方は最近夢中のアニメ?の配信があるらしく、俺と一緒に迎えには行かないようなのだが(笑)。

この薄情な(笑)上の娘がお気に入りだった、こいつをレビューしておこう。

ザ・グリード1998年)

DEEP RISING

 

監督・脚本 : スティーヴン・ソマーズ 製作 : ローレンス・マーク、ジョン・バルデッチ 製作総指揮 : バリー・ベルナルディ 撮影 : ハワード・アサートン 特撮 : ドリーム・クエスト、ILM モンスター・デザイン : ロブ・ボッティン 編集 : ボブ・ダクセイ、ジョン・ライト 音楽 : ジェリー・ゴールドスミス

出演 : トリート・ウィリアムズ、ファムケ・ヤンセン、ケヴィン・J・オコナー、ウナ・デーモン、アンソニー・ヒールド、ウェス・ステューディ、デリック・オコナー、ジェイソン・フレミング、クリフ・カーティス、トレヴァー・ゴダード、ジャイモン・フンスー、クリフトン・パウエル、クリント・カーティス

 

上の娘が花も恥じらう高校生の頃。何かの拍子に「今までで一番面白かった映画は何だった?」と聞いたところ「・・・ザ・グリードかな」との回答(笑)。

「おまえ、他にも何かあるだろう?」と聞いても「だって本当に面白かったんだもん」とのたまう娘。

これは育て方が良かったと思うべきか、悪かったと思うべきか、複雑な思いをしたのを未だに覚えている。まあ爆笑はしたけど(笑)。

思えば下の娘もいいからついて来いと連れて行った「パシフィック・リム」で号泣してからのギレルモ・デルトロ監督ファン。んー、とにかく姉妹揃って親の背中を見て育ったということは間違いないわけだな(笑)。

 

というわけで、うちの娘も太鼓判を押すB級モンスター映画の傑作。未見の方は人生損してます(笑)。

船長のフイネガン(T・ウィリアムズ:ちょっとメル・ギブソンに似て見えることがある(笑))

助手でエンジニアのパントゥーチ(K・J・オコナー:ソマーズ監督作の常連ね)

彼の恋人で航海士レイラの3人組の密輸船が、目的不明の武装部隊に脅迫されて嵐の中進む。

武装部隊リーダーのハノーバー(W・ステューディ)が目指す目標は東シナ海上を航行中の豪華客船アルゴノーティカ号。

実はアルゴノーティカ号では少し前にパーティ中に既に異変に襲われている。


フィネガンたちが乗り込んだ時には3000人の乗客はもぬけの殻。IDカードを盗んで乗客の貴重品置き場でスリを働いたために倉庫に軟禁されていた美女トリリアン(F・ヤンセン)しかいなかったのだ。

しかし、乗員不明で訝しむ面々の裏で、見張りにいた部下たちは一人また一人と犠牲になる。

訝るフィネガンとハノーバーら武装部隊の眼の前に突如奇怪な触手が現れる!

アルゴノーティカ号は深海から浮上した未知の巨大生物に襲われ、人々はヤツらのエサになっていたのだ。

一行は手を組んで巨大生物との死闘を繰り返しながら脱出路を探すという未知のモンスター対決アクションだ。

 

俺の敬愛するB級モンスター映画の中では「トレマーズ」と共に東西の横綱をはるくらいの本作、まあ、船内を右往左往しながらの怪物との対決というプロットは「エイリアン」だし、重火器での戦い方は「エイリアン2」、豪華客船のパニック&脱出は「ポセイドン・アドベンチャー」、悪い奴とも手を組んで共闘する「要塞警察」などなど面白い映画の要素の数々をぶっこんで、グツグツ煮詰めて「テンタクルズ」の100万倍動き回る触手のタコ怪物を景気よく配したら傑作になっちゃったわけだ(笑)

ストーリーも演出も無駄がないが、余裕綽々のトリート・ウィリアムズに、峰不二子的泥棒美女ファムケ・ヤンセン、コメディリリーフのケヴィン・J・オコナーの主役3人のキャラが立ってるのがまず良い。

憎々しいウェス・ステューディ他武装集団の個性的な面々と、ずる賢いキャントン役のアンソニー・ヒールドと悪役キャストも皆適材適所。

彼らも動くが物語もとにかくテンポよく動く。だから飽きない。

そりゃあ70~80年代に大げさな宣伝で俺たちを騙して映画館に足を運ばせた、あの東宝東和の配給作だから「90分で3000人食って食って食いまくれ!」的な嘘・大げさ・紛らわしい惹句は健在(笑)。

フィネガンたちが来た後は、モンスターは3000人をご馳走様した後なんで、正直3000人の踊り食いをつい期待していると肩透かしは食う。でもそれは後からほのぼの思うもの(笑)

食い散らかした後はたくさん映るんだけどね(笑)

観ている時は次から次への息つく暇のない展開は妙なユーモアも纏い、緩急自在のサスペンスとショック&アクションにのつるべ打ちで、とにかく油断も隙もないのだ(笑)。

俺みたいなボンクラはヒャアヒャア言いながら笑顔でひたすら楽しい時間を過ごせること請け合いな一本なのだ。

 

この種のB級映画だとラストにカメラが寄って、倒したはずの怪物の卵があるとか、トマトをやっつけたと思ったら畑のニンジンが動き出すとか(笑)、まあよくあるお約束エンディングも、カメラが引いて「さて次は何だ」と終わらせるなんざニクいではないか。


後に「ハンナプトラ」を撮るスティーヴン・ソマーズ監督だが、まあCGの助けを借りながらも「次から次へ」の展開の速さは心地よさはこれが一番じゃないかな。まあ怪獣映画好きなんで点数が甘くなっている自覚はあるけどさ(笑)。

 

もうね、はっきり書きます。密輸船仲間のレイラの扱いとか確かにおいおいってところはあるよ。俺もそれは認める。だけどこの映画の些細なところであーだこーだ言う人とは俺は友達になれません(笑)。

とにかくB級映画の良いところをすべて兼ね備えたと言っても過言ではないこの作品、DVDは廃盤なのか12000円を超える値がついていてビックリ。

しっかり買っておいて良かったなあと娘に教えたら「いつまでも私がそれが一番だと思わないでよ!」と素っ気なく答えられてしまったが「面白いのは認めるけど・・・」と、また少し観たそうな顔をしているのであった(笑)。

嗚呼、B級映画の鑑、ここにあり。ザ・グリード万歳!(笑)

先週よりは暑さは少し緩んだが、まだまだ。

仕事が始まり更新もブログチェックの時間も取りづらくなっている。

ああ、夏休みは本当に楽しかったな(笑)。


正直日曜以降映画を観ていないのだが、一人暮らしの時にGYAOの配信で観て、書きかけだったこの映画をレビューしておこう。

グッドナイト・マミー (2014年)

ICH SEH ICH SHE

GOODNIGHT MOMMY

監督・脚本 : ヴェロニカ・フランツ、ゼヴリン・フィアラ 製作 : ウルリヒ・ザイドル  撮影 : マルティン・ゲシュラハト プロダクションデザイン : ハンネス・ザラート、フーバート・クラウズナー 衣装:ターニャ・ハウスナー 編集:ミヒャエル・パルム

出演: ズザンネ・ヴースト、エリアス・シュヴァルツ エリアス、ルーカス・シュヴァルツ ルーカス、ハンス・エッシャー、クリスティアン・シャッツ


検索すると野村沙知代の息子の本がヒットするのがある意味怖いが()、これはオーストリアのスリラー。以下珍しくネタバレ無しでご紹介だ(笑)。



DVDのジャケットはご覧の通りおどろおどろしいから引いてしまう方もいるだろう。

最初は「マミー」が「ママ」とミイラ男の「マミー」とかけているのかとも思った。

しかしこれは静謐で、不穏で、何より怖くて痛ましく、そして切ない映画だ。


エイリアスとルーカスの双子の兄弟の家に、手術を受け顔全体に包帯をぐるぐる巻きにした母親が帰宅する。

違和感を感じる兄弟。苛立ちヒステリックな母親に対して、子供たちは戸惑い怯えるが、母親の不可解な振る舞いもあり次第に疑念が深まる。

「本当のママなのか?」

母親を覗き見ると振り返る目の怖さ。

母親が森の中で裸になり、異様な速さで首を振る不気味なシーン。

双子は飼っていたゴキブリを寝ている母親に放つと口の中に。でも、起きない母親!

こんな描写に加え、家が売り出しにかかっていたり、母親そっくりの女性との写真を見つけたり。双子の戸惑いにこちらも同じ思いとなることこの上ない。


じわじわと軋む親子関係。極端に少ない会話。説明的な台詞もナレーションもないまま、「兄弟」の会話はますますエスカレート。母親を偽物だと決めつけ正体を明かすよう試し、時間が経つにつれて反抗的になる。

「お前なんかママじゃない!」

「わたしがママだと10回言いなさい!」


静謐な心理戦から膨らみきった双子の疑念はとうとう暴走する。

ある朝、鬼の仮面をつけて母親を問い詰める「二人」

ホクロがあったはずだ。

悪性だったから除去したの。

嘘だ!

母親の顔を虫眼鏡で焼いてホクロを作ろうとする狂気。

双子の行為がエスカレートする。

瞬間接着剤で口を塞ぐ。

食事ができないだろうとハサミで切ろうとするとああ、痛い痛い(汗)

そして明かされる真実。

他でもない母親の台詞で。


母親を束縛してからの拷問に近いような肉体的な「痛さ」もさることながら、それだけではない「痛ましさ」に切なくなる。


ああ、そう言うことなのか

親が別のモノかもしれないことの怖さ。

親であるのに子どもに信用されない怖さ。


加えて…の序盤にいくつかあった「あれ?」と感じた違和感。これがが解決するその「理由」はここでは書かないが、某映画に似ているがさらに残酷で切ない。


いくつかのレヴューサイトでネタバレが書いてあったが、みんな本当にそんなに早く気づいたのかな?まあ俺が鈍いだけかもしれないが()。


俺は違和感は持ったが、幻想的でもあり恐ろしげに表現された序盤の母親の演出もあるため、正直何が真実なのか、最後までわからなかった。


前述のゴキブリの他、猫の死体、カタコンベの骸骨など生理的にダメな方もいるであろう不気味なアイコンも出てくる。だが、どれも超常現象ではない「怖さ」だ。


母と子「3人」の家族だけの物語故に怖く、そして哀しい。

ラストの3人の姿は救われるが、それでもやはりこの結末は哀しい。


好き嫌いは分かれるだろうけど観て損はなし。是非、と俺は勧めます。

では予告編をどーぞ!

今年の学校の夏休みは短く、多くは昨日で夏休み終了したようだが、自分にとっては長い休みだった。


先週は11日のみ出勤ではあったが、その前に連休があり、12日からは夏季休暇。休みはたっぷりだった。


もっとも暑さで毎日ぐったり、急な異動が決まり里心のついた下の娘を13日夜に迎えに走り、15日朝、仕事場に直接向かうという娘を早起きして送った他は遠出もせず。買い物以外、ほとんど出かけなかったから、毎日のんびりと言うかダラダラと過ごしたわけだ(笑)。


それもあって、我がブログ史上初の9日連続の更新、うち、これまた初の8日間連続の映画記事更新、おまけに昨日はアクセス数も史上最高となるおまけも()

書けば書いただけのこともあり、毎日のように皆さんから楽しいコメントもたくさんいただけて、苦行になるかと思われた更新も何だかモチベーションも上がりまくりだったのである。ありがたやありがたや()


そんな休みも終わった今日は出社。久々ではあったがコロナ騒ぎも落ち着き通常業務に戻りサクサク進められた。

実は休みの間に仕上げなければいけない仕事を持ち帰っていたのだが、映画観る時間とブログを書く時間はあったのに全然手をつけておらず()、昨日の早朝、たまたま目が覚めたので急いで仕上げていたら、かみさんから「子供じゃあるまいしなんで先にやっておかないのよ」とか言われてしまったのだ。いや自分でもそう思ったんだから言うなよ!なんて台詞はグッと飲み込んだけどね(笑)。


自慢じゃないがコップの水が半分あれば「もう半分しかない」ではなく「まだ半分ある」と思う、良く言えばポジティブ思考、悪く言えば能天気な思考はガキの頃から変わらないのだ(笑)。

おまけに悪だくみするのは得意なくせに、スケジュールを立てるのは苦手()。いや立ててもその時点で満足してその通りに進めないという性格なので、昔から「夏休みの宿題」には本当に苦労したのを思い出したのであった()。


好物は最後まで残すくせに、嫌なことは後回しにするこの性格だからいつも苦労するんだよなあ。

これが俺にとっては「普通」のまま、ここまで生きてしまったが、良くぞまあ社会人としてやってこれたなあと、誰も褒めてくれないから自分だけ褒めておこう()。


そんなわけで昨日は仕事とブログを書いて終わってしまったのだ。因みに自分のPCはしばらく不調で、もう一年以上ほぼスマホで記事を書いているのだが、会社のパソコンを持ち帰っていたのでそれでブログも書けば早かったかと今気づいたな(笑)。


大体前日観た映画を翌日レビュー記事にしていたのだが、昨日は観なかったからなあ。

この更新の勢いを止めないよう、昔の書きかけ記事を仕上げるべきか思案しているのである

と言う記事でどうだ更新だ(笑)。


話は変わるが先日愛読ブロガーさんの記事でUFOのベーシスト、ピート・ウェイが亡くなったのを知った。

彼がMOTÖRHEADにいたエディ・“ファスト”・クラークが結成したFASTWAY。そのボーカルだったデヴィッド・キングがKROKUSやASIAにいたギタリスト、マンディ・メイヤーと組んだバンド、KATMANDU。

ってピート・ウェイからすっかり離れちゃったけど(笑)、バンド名のままの唯一のこのアルバムが大のお気に入りだった。デヴィッド・キングのロバート・プラントっぽい声も大好きで、昨日は久々聴きながら作業をしていたのだった。


「用意はいいか?普通の男だが侮るなよ」と歌う

「Ready For Common Man」を聴いてくだされ。


渡哲也さんが10日に亡くなっていたニュースはちょっとショックだった。決して大ファンではなかったし、彼の有名作というと「大都会」シリーズ、「西部警察」シリーズなんだろうが、後者はあまり熱心に観ていなかったし、映画も代表作の日活での「無頼」シリーズなど未見のまま、最近の出演作もあまり観ていなかった程度なのだ。


自分にとっての「渡哲也の映画」というと、なんと言ってもこれだ。

仁義の墓場1974年)

監督 : 深作欣二 企画 : 吉田達 原作 : 藤田五郎 脚本 : 鴨井達比古、松田寛夫、神波史男 撮影 : 仲沢半次郎 編集 : 田中修 音楽 : 津島利章

出演 : 渡哲也、梅宮辰夫、郷鍈治、山城新伍、高月忠、ハナ肇、室田日出男、曽根晴美、田中邦衛、今井健二、汐路章、玉川伊佐男、多岐川裕美、池玲子、芹明香、三谷昇、浜田寅彦、成田三樹夫、安藤昇


ロマンポルノに路線変更した日活を退社後、松竹、東宝の諸作品で主演・準主演として活躍し、NHK大河ドラマ勝海舟を病気降板した彼の復帰作であり、東映初主演作品だ。


日活時代の「東京流れ者」などでも「ヤクザだが筋を通す」真っ直ぐな青年だった彼が、自分の組の親分にさえ牙を剥き、半殺しするなど全く常識外れのまさに狂犬、ヤクザさえ持て余すヤクネタ石川力男を異様な迫力で演じていた。

身内でさえ手を焼く凶暴な石川は実在のヤクザだが、破壊衝動のままに何にでも噛みつき、女は強姦して自分のモノにするわ、その女に体を売らせて関東所払いの逃走資金を稼ぐわ、逃げた大阪では田中邦衛とヒロポン中毒になった挙句、赦しも無いのに無断で東京に戻るわと、観ているこちらがヒヤヒヤするほど最初から最後までやること全て無茶苦茶。

自分の好きなジャンル負け犬暴発映画の中でも異彩を放つくらいの強烈なキャラクターだった。

妻役の多岐川裕美がほんとに痛々しい。彼女はこの無茶苦茶な石川に尽くしに尽くす。肺を病んだ体に鞭を打って保釈金を工面するなど支え続けた挙句、病を直す気力もなくして自殺してしまう。


出所した石川はサングラスの下で涙を流しながらも、火葬場で妻の骨を拾い、骨壷を体から離さず、かつて自分が歯向かった親分のいる組に向かう。

薬で顔色も悪く、目だけギラギラ光らせ、あろうことか妻の骨を齧りながら

「俺もそろそろ一家を起こしてェんだ。」と強請る姿は異様な迫力で死神のようだった。


結局組員に襲われ(赤い風船が印象深い…)収監された刑務所屋上から身を投じ、わずか29年の短い生涯を自らの手で終わらせた石川力男。

有名な「大笑い 三十年の 馬鹿騒ぎ」の遺書が残されたその日は奇しくも亡妻の三回忌の日だった。


後の「大都会」の黒岩刑事部長や「西部警察」の大門軍団長からは想像つかないような、石川力男の狂った生き様を演じた渡哲也。こちらは先に刑事物の彼に触れていたから、「東京流れ者」などは「若いなあ」くらいで済んだが(あれはあれで鈴木清順監督のどこか変なヤクザ映画だったが)、初めてこの映画を観た時はびっくりだった。


前述のように初めての東映での主演作品だった本作。

脚本の遅れから撮影は連日早朝から深夜に至り、ほぼ不眠不休で、後半は渡は点滴を打ちながらの凄まじい強行撮影だったらしい。

クランクインの初日、病み上がりにもかかわらず寒い中、待ち時間に椅子にも座らず立って出番を待っている渡の姿に、深作監督が渡の付き人に椅子を用意しないのか尋ねると「初めての仕事場で初めての主演作で、偉そうに椅子なんか座ってられん。持ってくるなと言われた」と答えたそうで、深作監督も意気に感じたそうだ。


後のスクリーンや画面に映る彼の背筋の伸びた姿そのものの、真面目な姿勢が伺われる。


「大都会」シリーズの第1作「闘いの日々」は倉本聰の脚本もあり昭和らしいえらく暗い設定や話が多かったが見応えはあった。

「大都会Part」になると若手刑事「トク」を演じた松田優作を迎えてエンターティメント路線にシフトしてノリが良くなる。


恐らく優作がアドリブでもかましたのか、黒岩刑事部長の渡哲也が素で笑っているようなシーンもあったりで大好きなシリーズだ。「大都会パートⅢ」になるともう「西部警察」の雛形みたいになっちゃって、優作も出ないし、代わりが寺尾聡じゃあなあと観ることが減ってしまったが、その後の再放送は全て録画してDVDに焼いたのだった(笑)

黒岩のキャラクターはその後「西部警察」で大門に引き継がれ、油の乗り切った時期に、角刈りにサングラス、凶悪犯人を簡単に射殺するあのキャラクターを演じ続けることになる。

日活退社後にいくつもの映画会社からの専属契約オファーを断り、世話になった石原裕次郎の石原プロモーションに全財産を持参して入社した彼は、傾きかけていた石原プロの為に「映画」の誘いを断ってこのドラマに出演し続けていたのだそうだ。


「西部警察パートⅢ」の最終回に殉職する大門=渡。霊安室で彼の遺体に上司である小暮課長(石原裕次郎)が語りかける場面を良く覚えている。

もちろんその時はドラマ内での台詞としか聞いていなかったが、本当は「いい歳した大人がサングラス掛けて銃を撃ちまくる」このキャラクターを演じ続けることへの不満を、待っても待っても映画製作に着手しない忸怩たる想いを、会社(石原プロ)のためにぐっと堪えていた渡哲也に対する裕次郎からの心からの感謝と謝罪を込めたアドリブだったそうだ。


「大さん、俺はなぁお前さんのことあんたのこと弟みたいに好きだった。ありがとうありがとうぅぅ!」

黙って会社のために耐えてきた渡へのねぎらいと感謝を込めたこの台詞を遺体として聞かなきゃならない渡は、耳栓をして本番に臨んだそうだ。


「何となく聞こえちゃいましたけどね」と、はにかみながら言う「徹子の部屋」再放送の彼の表情は全くもって穏やかで、石川力男の欠片さえ感じられなかったけどね()


弟である渡瀬恒彦さんが亡くなったのは2年前。裕次郎や松田優作や原田芳雄に地井武男、日活時代に共演していた川地民夫や二谷英明などなど、仲の良かった皆さんや、ついぞ共演作がなかった高倉健や菅原文太ともあちらで旧交を温めているんだろうな…。

本当にお疲れ様でした。合掌。

昨日帰宅した下の娘が早くも異動が決まるわ、夜のニュースで渡哲也が亡くなっていたことを知るわで、「あーあ」感がハンパないですが、昼間2人の娘と観たこれをご紹介。


エスター 2009年) ORPHAN

監督 : ジャウマ・コレット=セラ 製作 : ジョエル・シルヴァー、スーザン・ダウニー、ジェニファー・デイヴィソン・キローラン、レオナルド・ディカプリオ 製作総指揮 : スティーヴ・リチャーズ、ドン・カーモディ、マイケル・アイルランド 原案 : アレックス・メイス 脚本 : デヴィッド・レスリー・ジョンソン 撮影 : ジェフ・カッター プロダクションデザイン : トム・マイヤー 衣装デザイン : アントワネット・メッサン 編集 : ティム・アルヴァーソン 音楽 : ジョン・オットマン

出演 : ヴェラ・ファーミガ、ピーター・サースガード、イザベル・ファーマン、CCH・パウンダー、ジミー・ベネット、アリアーナ・エンジニア、マーゴ・マーティンデイル、カレル・ローデン、ローズマリー・ダンスモア、ジェネル・ウィリアムズ


自分の記事をチェックしてくださる、すれっからしの映画ファンの皆様(失礼 笑)はとっくに観たよって方も多いでしょうが、毎回「ご紹介!」と言いつつネタバレダダ漏れ状態の我がブログ記事だけど、今回はネタバレ書かないぞ!と決意できるくらい、何度ものけぞることができるスリラーだった。


3人目の子どもを流産した妻ケイトとその夫ジョン。2人にはダニエルと難聴の女の子マックスがいるが、流産による心の欠落を埋めるために、孤児院からエスターという9歳の少女を引き取る。


2人も可愛い実の子がいるんだから、別に養女を求めなくとも…と思うのだが、この辺りはやはりアメリカ人とは考え方も違うのでしょね。

賢く聡明なエスターは、妹になるマックスとはすぐに親しくなり、ケイトとジョンも安心する。


だが、首と手首にリボンを巻いて決して見せようとしない。歯医者に行きたがらないなど、エスターには少し変わったところがある。その小さな違和感はだんだんと大きくなっていく…。


兄になるダニーが、悪戯でエアガンのペンキ弾で撃ってしまった瀕死のハトを「これで苦しませずに済ませてあげて」と石を持ち迫る姿の静かな怖さ。


学校の初日、クラシカルなと言うより時代遅れの服を笑った同級生を睨むエスター。

やがて彼女を笑った同級生を突き落とすあたりからエスターの「したたかさ」が一家を取り込み、徐々に不穏な空気になっていく。


訪問してきた孤児院のシスターを「2度と来れない」ようにしてからは…加速がついていくのだ。


まあ、DVDのジャケットに公開当時のコピーがデカデカ書いてあるし、原題ORPHAN(孤児)を差し置いて堂々タイトルロールになるくらいだから、このエスターが「悪い何か」であることは明白。


オーメンのダミアンは正真正銘の「悪魔の子」だったが、「悪い種子」の女の子、「危険な遊び」のマコーレー・カルキン、未見だがマーク・レスターの「ナイトチャイルド」など、「子供だから純真なはず」「可愛い子供がそんなことするわけない」という先入観を利用するくらいに悪賢い、サイコパスのようなガキの映画は多いが、今回のは全く予想がつかなかったなあ。


しかもエスターは、ケイトがかつて酒浸りで危うくマックスを溺れさせることになった過去を知り、夫のジョンも以前浮気をした過去がある情報を元に策を講じるのだ。

本来手を取り合ってエスターの異常さに対処するべき夫婦の間の「小さな不信」を「大きな傷」に広げる所なんて手強さはピカイチ。


特にエスターに徐々に疑念を持ちはじめるケイトを叩くのが本当に上手い。


早々と宣戦布告的な態度を取るのがムカつくし、

ケイトがエスターをカウンセラーに診せると、「エスターはケイトに懐きたいのにケイト自身が拒絶しているのだろう」と逆に決め付けられてしまうあたりの怖さ!

逆にジョンには自分を信じ込ませるのもそつがなく「大人を自分の思うように操る」手管を知ってるってのが本当に苛つくほど上手いのだ。

ジョンの助言に沿っているように見せかけ、ケイトの神経を逆撫するような「プレゼント」の意地悪さも酷かったなあ。


一緒に見ていた娘たちは「この旦那は気づかんのかい!」と苛立つくらい(笑)

思えば全て原因はエスターなのに、ケイトの立場は悪くなる一方。そしてジョンは我が娘たちに「鈍い!馬鹿か!」と罵られる。何だか自分が怒られているようでジョンには同情を禁じ得なかったことを白状しておこう(笑)


ケイトを演じるヴェラ・ファーミガはどこかで観たなあと思ったら、「死霊館」シリーズの奥さんだったし「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」のレビューでけちょんけちょんに書いた諸悪の根元の人だった()。←ちなみに記事はこちら


エスターの夫ジョンを演じたピーター・サースガードも、どこかでと思ったら、なんと大好きな「マグニフィセント・セブン」の敵役、極悪なボスだったりと←記事はこちら

これまでいい印象を持ってない2人が夫婦だったのか!と驚いたのだった(笑)。


いやしかし、エスター役のイザベル・ファーマン、この映画の時に10歳だそうで。いやはや恐るべき演技力ですな。
一瞬、同情すべきところがあるかと思わせつつ、予想の斜め上を行くエスターの「正体」は、娘たちと一緒に「えええええ〜⁉︎」と本当に声が出てしまったな(笑)。

まあネタバレで知ってしまっても、なるほどなるほどと、もう一回伏線などを検証しながら観てもいいかもと思えるくらいの一級品のスリラー。
未見の方は是非是非是非なのだ!
※実はDVDには別のラストも収録されていたが、自分は採用されていない方が好きだったなあ(笑)。


昨日は朝仕事に行くかみさんを送り、午前中は両親を連れて初盆の親戚まわり。夕方はかみさんを迎え、夜は久々連絡をしてきた下の娘が、明日休みだから帰りたいと言ってきたので夕飯後に高速すっ飛ばして迎えにとアッシー君の1日だった(笑)。

唯一暇だった午後の時間、クーラーで涼みながら観たこれをご紹介だ!

スズメバチ 2002年)

NID DE GUÊPES / THE NEST


監督・脚本 : フローラン・エミリオ・シリ 製作 : クロード・カレール、パトリック・グーユー・ボーシャン、ギョーム・ゴダール 脚本 : ジャン=フランソワ・タルノウスキ 撮影 : ジョヴァンニ・フィオーレ・コルテラッチ 音楽 : アレクサンドル・デプラ

出演 : ナディア・ファレス、リシャール・サメル、ヴァレリオ・マスタンドレア、ブノワ・マジメル、サミー・ナセリ、サミ・ブアジラ、アニシア・ユゼイマン、マルシアル・オドン、パスカル・グレゴリー、マルタン・アミック、アンジェロ・インファンティ


いい歳こいて「900ガロンの血糊を使用」とか「使用火薬量5トン」とか「飲んだビールが5万本」(いやいや ())的な映画の煽り惹句に滅法弱い、私ジャンゴ(バカ)が、DVD裏面の「わずか4分間に数千発の弾丸集中砲火」に惹かれて買っておいた、おフランスのアクション映画だ。


宣伝通りの激しい銃撃戦もさることながら、女性中尉を隊長とする特殊警察、5人の窃盗グループ、初老の倉庫警備員という一見何の接点もない面々が何の因果か巨大倉庫に鉢合わせ的勢揃い。


ここを砦にマフィアの戦闘部隊から集中砲火を浴びながらも共闘し壮絶な立て篭り戦を繰り広げるという設定が「引越し寸前の警察分署に逃げ込んだ一般人を追ってきたストリートギャング団に対し、数少ない署員と収監されていた凶悪犯という決して手を組むはずのないメンバーが共闘、外敵であるギャングと対峙する」という、大好きなジョン・カーペンターの「要塞警察」のフォーマットと一緒だったのが大変好ましく、あれの派手バージョンのような映画で大満足だった()


時は7月14日、パリ祭のその日。特殊警察部隊の女性中尉ラボリはこの日、ドイツで逮捕されたアルバニア・マフィアの最高幹部アベディンを引き渡され護送する任務についていた。アベディンは女性を拉致、売春組織に売り飛ばすのみならずレイプ魔というクソ野郎。


同じ頃、ストラスブール郊外では、ナセールをリーダーとする5人の男女の窃盗団がトラックで工業倉庫へ向かい、ある倉庫に侵入。

警備員たちを縛り上げ、まんまと新品のパソコンを盗む作業に取り掛かる。


その頃パリ祭を祝う花火が打ち上げられた時、ラボリの護送車が奇襲に見舞われる。

白バイ警官や同行車両の連中は集中砲火で全滅。相手はアベディン奪還のマフィア戦闘部隊だ。

運転手2人は重傷、代わってラボリが運転する特殊車両の護送車は、這々の体で工業倉庫へ逃げ込むが、そこでまさに窃盗中のナセールたちと出くわす。

警察が盗みの現場に踏み込んできたかと思えばいきなり銃撃が!

ラボリらと合流したナセールたちも襲撃の真相を知る。ラボリは彼らに武器を与え、彼らに縛り上げられていた警備員ルイたちも加え、共にアベディン一味に対峙することに。

しかし無数の敵に囲まれ逃げ場もなくなり、一斉砲火を浴び、まさに倉庫は「蜂の巣」となる


この襲撃で生き残っていた運転手2名が死亡し、特殊部隊はラボリ以下、元彼のジョバンニと古株のヴィンフィールドの3名のみ。

窃盗団は5人とも生き残ったがリーダー格のナセールは2階から落ちて重傷で動けない。あとは窃盗に銃器を使うことを渋っていたサンティノ、軽業師的な身体能力を持つセリム、女性のナディアに彼女に好意を持つマルシアルの4名。

ベテラン警備員のルイはカービン銃を手にして戦力になるがスピッツはビビって使い物にならないという布陣。


窃盗グループが用意周到に倉庫近くの携帯電波塔に細工をしたので携帯が繋がらない=救援連絡ができないという、前提が効いている立て篭り戦。


警備員ルイは倉庫内を熟知しているので撃ち込まれた催涙ガスは換気&スプリンクラーで無効化。

地下からの侵入者も撃退したり、コンテナを積んでバリケード代わりにしたりと何とか次の襲撃に備えるのだが苦しい戦いは続く。


ビビリ警備員スピッツはマフィアに投降しようとするがあっさり殺られ、軽業師セリムが身体能力を生かして外に助けを求めに出るも失敗(マフィアから投げ込まれた袋の中身だけでそれを判らせる演出も好み)。

マルシムが護送中のアベディンを差し出してしまえば助かるかもと実行に移そうとしたせいで、死ななくていい人が死んで状況が悪化。

責任を取るつもりか、特殊部隊員のヴィンフィールドと一緒にマルシムもトラックで敵陣強行突破を試みるもなどなど、必死の脱出作戦も上手くいかず、文字通り徐々に追い詰められていく緊迫感が持続するのも大いに好みだ。

とにかく襲ってくるマフィアが、暗視装置のついたマスクをしているので、一人一人の顔が全くわからないのが不気味。

まるでショッカーの戦闘員の如く無個性で、まあ「命の値段が安いやられ役」ではあるのだが、先日のジョン・ウィックの敵以上に、数の論理で襲いくるゾンビじみていてなかなか怖いのは確かだ。


この「顔が見えない」というのが冒頭に書いた「要塞警察」に通じる部分でもあるのだが、子供さえ容赦なく殺す描写も含めほんと似ていたなあ。

また窃盗団が冒頭で「荒野の七人」のテーマを口笛やボイパで口ずさむのだが、色んな仲間が集まる「荒野の七人」の他、「要塞警察」(または同じくカーペンターの「ゴースト・オブ・マーズも同様())の元になった「アラモ」や「リオブラボー」などの西部劇の立篭り戦を意識しているのは間違い無いと思う。

ただ、違うのはヒロイックな「主役」がいないこと。女性隊長のラボリも最近流行の「無茶苦茶強いヒロイン」でもなく、涙目で悩むし、その他の連中も皆等身大でヒーローがいないのも大いに好みだったなあ。

馴染みの薄い俳優が多いのも功を奏し、挿入される時間経過のテロップも効いてリアルに感じられたのも良かったなあ。

ドンパチを期待したら現代版西部劇に遭遇した、俺的にはお得な一作。お好きな方には是非!とオススメします(笑)。

一昨日は出社。PCR検査は自分も含め建物内の人員は無事全員陰性。まあ、感染者に関してはまだまだ色々ありそうだけど本日より夏季休暇だ。とりあえずクソ暑いけどまずは一息。

そんな夜、また酒飲みながら娘が付き合ってくれて観たのがこれ(笑)。

アタック・ザ・ブロック2011年)

ATTACK THE BLOCK

 

監督・脚本 : ジョー・コーニッシュ 製作 : ニラ・パーク、ジェームズ・ウィルソン 製作総指揮 : マシュー・ジャスティス、テッサ・ロス、ジェニー・ボーガーズ、ウィル・クラーク、オリヴィエ・クールソン、エドガー・ライト 撮影 : トム・タウネンド プロダクションデザイン : マーカス・ローランド 衣装デザイン : ロサ・ディアス 編集 : ジェナサン・エイモス 音楽 : スティーヴン・プライス

出演 : ジョディ・ウィッテカー、ジョン・ボイエガ、アレックス・エスメイル、フランツ・ドラメー、リーオン・ジョーンズ、サイモン・ハワード、ルーク・トレッダウェイ、ジャメイン・ハンター、ニック・フロスト

 

何だか製作年度を見返したくなる懐かしい手触り。古くは「マックイーンの絶対の危機(人食いアメーバの恐怖)」やそのリメイクの「ブロブ」や「クリッター」、「グレムリンなどの80年代のはた迷惑エイリアン/モンスターの来襲にティーンエイジャーが対決するというフォーマットを、ロンドンの低所得者向け公営団地を舞台に繰り広げられる一編だ。

 

製作総指揮にあのエドガー・ライトの名前。お気に入りのバカコンビの片方ニック・フロストも出演。監督はエドガー・ライトの後輩らしく、その雰囲気はいっぱいのSFアクションだったが、それだけにとどまらないのがミソだ。

 

主演は後に「スターウォーズ/フォースの覚醒」からフィンを演ずるこれがデビューの我らがジョン・ボイエガ!

ガキが多い不良少年グループの中で、一人落ち着きのあるリーダーを、男気いっぱいに演じてくれてカッコ良かったぞ。

 

南ロンドンの低所得者向け公営団地(ブロック)に暮らすモーゼス率いる少年5人組は、不良グループ。

帰宅途中の看護師のサムを脅し金品を奪っていると彼らの前の車に隕石が落下!

「何かいるぞ」とすぐ行っちゃうところが偏差値が低い…いや、無謀な少年らしくて感じでGOOD()

姿を現わす“妙なもの”(エイリアンなのに!)を花火で追い詰め「何だこれ!」と驚きつつもひるむことなく叩き殺すモーゼスたち()

死体を手に得意げに団地へと帰還、葉っぱの売人するロス(ニック・フロスト!)に報告する一同だったが、その直後、今度は隕石が次々と飛来!

どうも最初の時よりも大きく凶暴なエイリアンが多数出現している様子。

警察も襲われ、先輩ギャングも襲われるのを目の当たりにし「これ、やばいんじゃね?」とさすがに恐怖を感じて逃げ出そうとする面々。

 

しかし自分たちの縄張り=団地が襲われるのは我慢ならんと、ついに彼らは自分たちだけで町を守ると決意を固め、無数のエイリアンに反撃するべく勇気を振り絞って立ち上がるのだった。

じつは最初に殺したのがメスで、そのフェロモンに引きつけられて凶暴なオスたちが団地に集合しているのがわかる。

牙だけが青白く光るエイリアン。真っ黒なクリッターがゴリラ化したかのようだ。

 

映画の中でこいつらが侵略するのはこの南ロンドンだけ。

ブロックはイギリス英語では、いわゆる「団地」ではあるが、ただの団地というだけでなく、そこに住む人たちの殆どが低所得層なのだそうだ。

モーゼスたちの家庭環境はほとんど描写されないが、武器調達に自分の部屋に戻る一瞬で、皆が決して恵まれた環境ではないことがわかる。

 

地元の悪の先輩ギャングに葉っぱではなくコカインを売るよう言われただけで「昇格だ!」と喜ぶくらいに、先が暗くて見えない未来しか待っていないのだ。

 

そんな中、仲間も一人また一人と倒れていく。正直まだ子供に近いような連中だし、前半のノリならみんな生き残ってめでたしめでたしになると思いきや、予想外の展開。

リーダーのモーゼスは自分のせいで仲間も殺されてしまった状況にケリをつけるために立ち上がる。

エイリアンたちを自らが囮になり自分の部屋に誘き寄せて一気に爆破しようという算段。

前半のSFアクションから、終盤では一気に何だかストリートギャングが「男」になっていく燃える展開にシフトしていく。

この面構えがいいんだ。

普段好き勝手の悪さをやっている縄張(シマと読んでね)=団地の中で、自分の立場を自覚し、危険を顧みず自らの責任を全力で全うしようとする姿のカッコよさ!まさに男としてケジメをつけるって感じなのだ。

さすがその後ファーストオーダーに抵抗し、イェーガーにも乗っちゃうだけのことはある男気に拍手だ!(笑)

 

凶暴なエイリアンと壮絶な死闘を繰り広げたラスト。事情を理解していない警察に逮捕されるモーゼス。「どうせストリートギャングだ」と警察が彼らを見下すその一方で、少年たちと一緒に戦ったサムのように、彼らが必死にその場所を守るために戦ったことを、単なる不良少年ではないことを理解する人々がいる。

 

湧き上がる「モーゼス」コール。最後に他でもない仲間や住民に「英雄」として讃えられる彼の表情のカッコ良さと言ったら!うん拍手!

 

というわけでユーモアに彩られたテンポの良いSFアクションとしても、リアルな社会問題を背景にした少年たちの奮闘記としても、「男」が立ち上がる「物語」としても、一粒で三度くらいおいしい佳作、90分を切るランニングタイムも心地良いオススメの一品であります。是非!

月曜は「さびしんぼう」を観てから1時間後、俺のバランスセンサーが働いて、人の命が安い映画が観たくなり(笑)、かみさんから白い眼で見られながら録画しておいたこれを観たのだった!

ジョン・ウィック:チャプター2 (2017年)

JOHN WICK: CHAPTER 2


監督 : チャド・スタエルスキ 製作 : ベイジル・イヴァニク、エリカ・リー 製作総指揮 : ジェフ・ワックスマン、ロバート・ベルナッキ、デヴィッド・リーチ、ケヴィン・フレイクス、ヴィシャル・ルングタ キャラクター創造・脚本 : デレク・コルスタッド 撮影 : ダン・ローストセン プロダクションデザイン : ケヴィン・カヴァナー 衣装デザイン : ルカ・モスカ 編集 : エヴァン・シフ 音楽 : タイラー・ベイツ、ジョエル・J・リチャード

出演 : キアヌ・リーヴス、コモン、ローレンス・フィッシュバーン、リッカルド・スカマルチョ、ルビー・ローズ、フランコ・ネロ、クラウディア・ジェリーニ、ブリジット・モイナハン、ランス・レディック、トーマス・サドスキー、デヴィッド・パトリック・ケリー、ピーター・ストーメア、トビアス・シーガル、ピーター・セラフィノウィッツ、ルカ・モスカ、ジョン・レグイザモ、イアン・マクシェーン、ワス・スティーヴンス、マーガレット・デイリー


愛車を盗まれ、愛犬を殺されたことで怒り心頭、引退状態から復帰しロシアンマフィアに単身復讐を遂げた前作は無茶苦茶面白かった。レビューはこちら


本作はその5日後の物語。

前作で犬の復讐は遂げたものの取り返せなかった愛車を取り返すべく、前作で始末したロシアンマフィアの弟のところに向かうジョン。

マフィア弟は5日前に何があったかわかっているからアジトを手放してでも返したかったのに時すでに遅し。ジョンは車を奪うが追撃され肝心の車も何度も撥ねられたジョンもボロボロ()


相手もビビっているんだから、強奪する前に話せば無傷で車も戻ってきそうな気もするが、そんなことしたら掴みはOKのファーストシーンがなくなっちゃう()。カーチェイスの果てに向かってくる連中が何故か素手で、ジョンの肉弾戦は体捌きが今ひとつで強そうに見えないが()、デカい奴には躊躇なく銃で撃つのが笑ってしまう。


前作は「許すまじ!」の静かな復讐の情念を纏っていたジョンだったが、これでまた引退状態に戻れるかと思うとそうは問屋が下ろさない。てか映画としてもここで終われるわけがない()

かつて「誓印」を取り交わしジョンに“貸しがあるイタリアン・マフィア「カモッラ」の幹部サンティーノが、彼の実の姉ジアナ暗殺の依頼を持ち込む。

一度は断るジョンだが、妻との思い出の家を爆破されてしまう。

取り交わした「誓印」は絶対で、止む無くその依頼を実行すべくイタリアに向かうジョン。


ジオナは世界各地の犯罪組織たちを束ねる「主席連合」に就任するところ。弟であるサンティーノがその座を狙ってジョンに依頼をしたわけだが、ジョンはジオナとは友人で、彼女を守るカシアンも実力を認め合う仲。そりゃ気乗りしないし、断りたくもなるよね。それでもやるからには準備しなくてはならない。


前作でも登場した殺し屋たちの裏社会「コンチネンタル」の世界が前作以上にクローズアップされているのが本作の肝。

前作でも登場していた裏世界でしか流通しないコインや前述の「誓印」などの独自の仕組みが端的に示されて面白い。

ホテル内で血を流すのは御法度、ニューヨークではウィンストン(イアン・マクシェーン)が取り仕切っていたが、ローマではなんとフランコ・ネロ演ずるジュリアスがオーナー兼支配人なのだ。

武器調達のソムリエや防弾仕様のスーツのオーダーを受ける仕立屋などが存在し、テキパキとジョンのオーダーに応える様がちょっと気分が上がる()

結局色々あって仕事を遂行したジョンはわらわら湧いて出る追手を振り切るも、口封じのためにサンティーノ配下の連中にも襲われる。

結果それを振り切るものカシアンとやり合うのだが、戦いの途中でたまたまコンチネンタルホテルに入ってしまい「ホテル内の殺しは御法度」ルールで強制終了となる。


前作に続きジョンの接近銃撃戦は殆どがダブルタップ、一発で止めて確実にヘッドショットでトドメを刺す丁寧な仕事ぶり。おまけにほとんどジョンには弾が当たらないので景気良く倒しまくりますな()

しかし、サンティーノが無茶苦茶卑怯者で、「実の姉殺し」の口封じのためにローマで仕損じたジョンに700万の賞金をかけ、コンチネンタルアカウント部に連絡、帰国したジョンはニューヨーク中の殺し屋から狙われることに。


アカウント部がオーダーを受け自動送信でジョンが賞金首になったことを知らせると、ストリートパフォーマーから清掃員など様々な人間が携帯を確認して、そこら中に殺し屋がいて襲ってくる。

複数の殺し屋の襲撃を時間軸をずらして並列させて見せるとこなんざ憎いね(笑)
おまけにジョンの始末をし損なったサンティーノの部下の聾唖の殺し屋女性が今度こそと息巻き、さらに復讐に燃えるカシアンも追いかけてくるという絵に描いたような敵だらけの状況。

カシアンと地下鉄通路で対峙、サイレンサーを付けているとはいえ、往来の中でプシプシ撃ち合うのが凄かったな()


結果ジョンはコンチネンタルに属さないキング(ローレンス・フィッシュバーン)の協力もあり、しぶとく生き抜き、自分を嵌めたサンティーノへの逆襲に転じる。

美術館内の展示「鏡の間」での戦いもスリリング。「燃えよドラゴン」の昔から無条件に燃えてしまう()

結果、卑怯者サンティーノを追い詰めるもコンチネンタルホテル内で始末するというTPOをわきまえずの行為で、ジョンはコンチネンタル追放とあう次作へ繋がるラストは非情な世界だ。


前作のレビューでも書いたのだが「新必殺仕置人の」「寅の会」的なコンチネンタルが効いているよなあ。

必殺シリーズでも、藤田まことが元気なうちに、中村主水が江戸中の同業殺し屋から狙われて死力を尽くす物語が観たかったなあ。

工藤栄一監督の「必殺!裏か表か」も非情だったが、あの敵が同業殺し屋での物語、しかもそれで主水がボロボロになって果てる様を観たかったものだ。


おっと話が横に逸れた()

前作は「復讐」の想いの中、真っ直ぐ戦いに赴くジョンの姿がスタイリッシュで良かったけど、今回は自分の意思だったのは冒頭のみ。

あとは止むに止まれず、巻き込まれてしまう戦い。しかも同業相手が増えて全然余裕がない。前作も「伝説の男」の割にボロボロだあと思ったが、今回も激闘が続いて「大変だなあ」と同情したくなる一作だった。

もちろん相手の弾丸がほぼ当たらないという点はあるが()、昨今の細かいカット割で何が何だかわからないアクションではなく、カメラが常に引き気味で、キアヌが疲れながらも動きまわるアクションをきちんと見せてくれるのが好きだ。

リロードしたり、弾が尽きれば敵の銃をもぎ取ったりと必死さもしっかり描けているのも好み。


さて、ボロボロのジョンの行く末は如何に?

続編は本作の「1時間後」なのかな。こらも早めに観たいものだ。