スズメバチ | B級パラダイス

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健康優良不良中年が、映画、音楽、読書他好きなことを気まぐれに狭く深くいい加減に語り倒すブログであります。

昨日は朝仕事に行くかみさんを送り、午前中は両親を連れて初盆の親戚まわり。夕方はかみさんを迎え、夜は久々連絡をしてきた下の娘が、明日休みだから帰りたいと言ってきたので夕飯後に高速すっ飛ばして迎えにとアッシー君の1日だった(笑)。

唯一暇だった午後の時間、クーラーで涼みながら観たこれをご紹介だ!

スズメバチ 2002年)

NID DE GUÊPES / THE NEST


監督・脚本 : フローラン・エミリオ・シリ 製作 : クロード・カレール、パトリック・グーユー・ボーシャン、ギョーム・ゴダール 脚本 : ジャン=フランソワ・タルノウスキ 撮影 : ジョヴァンニ・フィオーレ・コルテラッチ 音楽 : アレクサンドル・デプラ

出演 : ナディア・ファレス、リシャール・サメル、ヴァレリオ・マスタンドレア、ブノワ・マジメル、サミー・ナセリ、サミ・ブアジラ、アニシア・ユゼイマン、マルシアル・オドン、パスカル・グレゴリー、マルタン・アミック、アンジェロ・インファンティ


いい歳こいて「900ガロンの血糊を使用」とか「使用火薬量5トン」とか「飲んだビールが5万本」(いやいや ())的な映画の煽り惹句に滅法弱い、私ジャンゴ(バカ)が、DVD裏面の「わずか4分間に数千発の弾丸集中砲火」に惹かれて買っておいた、おフランスのアクション映画だ。


宣伝通りの激しい銃撃戦もさることながら、女性中尉を隊長とする特殊警察、5人の窃盗グループ、初老の倉庫警備員という一見何の接点もない面々が何の因果か巨大倉庫に鉢合わせ的勢揃い。


ここを砦にマフィアの戦闘部隊から集中砲火を浴びながらも共闘し壮絶な立て篭り戦を繰り広げるという設定が「引越し寸前の警察分署に逃げ込んだ一般人を追ってきたストリートギャング団に対し、数少ない署員と収監されていた凶悪犯という決して手を組むはずのないメンバーが共闘、外敵であるギャングと対峙する」という、大好きなジョン・カーペンターの「要塞警察」のフォーマットと一緒だったのが大変好ましく、あれの派手バージョンのような映画で大満足だった()


時は7月14日、パリ祭のその日。特殊警察部隊の女性中尉ラボリはこの日、ドイツで逮捕されたアルバニア・マフィアの最高幹部アベディンを引き渡され護送する任務についていた。アベディンは女性を拉致、売春組織に売り飛ばすのみならずレイプ魔というクソ野郎。


同じ頃、ストラスブール郊外では、ナセールをリーダーとする5人の男女の窃盗団がトラックで工業倉庫へ向かい、ある倉庫に侵入。

警備員たちを縛り上げ、まんまと新品のパソコンを盗む作業に取り掛かる。


その頃パリ祭を祝う花火が打ち上げられた時、ラボリの護送車が奇襲に見舞われる。

白バイ警官や同行車両の連中は集中砲火で全滅。相手はアベディン奪還のマフィア戦闘部隊だ。

運転手2人は重傷、代わってラボリが運転する特殊車両の護送車は、這々の体で工業倉庫へ逃げ込むが、そこでまさに窃盗中のナセールたちと出くわす。

警察が盗みの現場に踏み込んできたかと思えばいきなり銃撃が!

ラボリらと合流したナセールたちも襲撃の真相を知る。ラボリは彼らに武器を与え、彼らに縛り上げられていた警備員ルイたちも加え、共にアベディン一味に対峙することに。

しかし無数の敵に囲まれ逃げ場もなくなり、一斉砲火を浴び、まさに倉庫は「蜂の巣」となる


この襲撃で生き残っていた運転手2名が死亡し、特殊部隊はラボリ以下、元彼のジョバンニと古株のヴィンフィールドの3名のみ。

窃盗団は5人とも生き残ったがリーダー格のナセールは2階から落ちて重傷で動けない。あとは窃盗に銃器を使うことを渋っていたサンティノ、軽業師的な身体能力を持つセリム、女性のナディアに彼女に好意を持つマルシアルの4名。

ベテラン警備員のルイはカービン銃を手にして戦力になるがスピッツはビビって使い物にならないという布陣。


窃盗グループが用意周到に倉庫近くの携帯電波塔に細工をしたので携帯が繋がらない=救援連絡ができないという、前提が効いている立て篭り戦。


警備員ルイは倉庫内を熟知しているので撃ち込まれた催涙ガスは換気&スプリンクラーで無効化。

地下からの侵入者も撃退したり、コンテナを積んでバリケード代わりにしたりと何とか次の襲撃に備えるのだが苦しい戦いは続く。


ビビリ警備員スピッツはマフィアに投降しようとするがあっさり殺られ、軽業師セリムが身体能力を生かして外に助けを求めに出るも失敗(マフィアから投げ込まれた袋の中身だけでそれを判らせる演出も好み)。

マルシムが護送中のアベディンを差し出してしまえば助かるかもと実行に移そうとしたせいで、死ななくていい人が死んで状況が悪化。

責任を取るつもりか、特殊部隊員のヴィンフィールドと一緒にマルシムもトラックで敵陣強行突破を試みるもなどなど、必死の脱出作戦も上手くいかず、文字通り徐々に追い詰められていく緊迫感が持続するのも大いに好みだ。

とにかく襲ってくるマフィアが、暗視装置のついたマスクをしているので、一人一人の顔が全くわからないのが不気味。

まるでショッカーの戦闘員の如く無個性で、まあ「命の値段が安いやられ役」ではあるのだが、先日のジョン・ウィックの敵以上に、数の論理で襲いくるゾンビじみていてなかなか怖いのは確かだ。


この「顔が見えない」というのが冒頭に書いた「要塞警察」に通じる部分でもあるのだが、子供さえ容赦なく殺す描写も含めほんと似ていたなあ。

また窃盗団が冒頭で「荒野の七人」のテーマを口笛やボイパで口ずさむのだが、色んな仲間が集まる「荒野の七人」の他、「要塞警察」(または同じくカーペンターの「ゴースト・オブ・マーズも同様())の元になった「アラモ」や「リオブラボー」などの西部劇の立篭り戦を意識しているのは間違い無いと思う。

ただ、違うのはヒロイックな「主役」がいないこと。女性隊長のラボリも最近流行の「無茶苦茶強いヒロイン」でもなく、涙目で悩むし、その他の連中も皆等身大でヒーローがいないのも大いに好みだったなあ。

馴染みの薄い俳優が多いのも功を奏し、挿入される時間経過のテロップも効いてリアルに感じられたのも良かったなあ。

ドンパチを期待したら現代版西部劇に遭遇した、俺的にはお得な一作。お好きな方には是非!とオススメします(笑)。