なんやかやと忙しく、観たい映画を観に行く気力が削がれていたけど、前の記事の通り、今日に思い立って月末処理の内勤えいやと片付け行ってきたのがこれ!
ロケットマン Rocketman(2019年)
監督 : デクスター・フレッチャー 脚本:リー・ホール プロデューサー : マシュー・ヴォーン、デヴィッド・ファーニッシュ、アダム・ボーリング、デヴィッド・リード 製作総指揮:エルトン・ジョン、クローディア・ボーン 撮影:ジョージ・リッチモンド 編集:クリス・ディケンズ 音楽:マシュー・マージソン
出演 : タロン・エガートン、ジェイミー・ベル、リチャード・マッデン、ブライス・ダラル・ハワード、スティーヴン・マッキントッシュ、ジェマ・ジョーンズ、チャーリー・ロウ、スティーヴン・グレアム、キット・コナー、テイト・ドノヴァン
どうしても「ボヘミアン・ラプソディ」を想い出してしまうが、これはこれで凄く良かった。
エルトン・ジョンと言えば有名な曲も多く、映画や音楽を好きになった中学生の俺にとっては「Tommy/トミー」で彼が演じた“ピンボールの魔術師”そのものの「ド派手な衣装と奇抜なサングラスのハゲかかった人」(笑)のイメージだったのだ。
そんなわけで大好きなQUEENと違ってバックボーンやオフステージのことまでは知らなかったのだが、彼の成功の裏にはこんな苦しみを抱えていたのか、というのが正直ビックリであった。
親の愛情を実感できないっての、ほんと厄介なものだが、実感できないのではなく、本当に与えられないのは悲しいよな。自分を肯定できないのだもの。
アルコール依存症のグループセラピーにド派手な衣装のまま現れたエルトンが過去を話していくオープニング。
子供の頃から少年、そして「レジー・ドウァイト」が「エルトン・ジョン」になっていくまでの語り口が本当にいい。
「ボヘミアン・ラプソディー」以上に作品の発表時系列に沿わず、効果的に楽曲が使われて、何よりアレンジも大胆に「ミュージカル映画」になっているとは思わなかったが、これが本当に良かった。
プレスリーに影響を受けてロックに目覚めたエルトンの少年から青春時代を凝縮して一気に見せる「土曜の夜は僕の生きがい」の街中から遊園地までを移動する集団ダンスシーンの見事な楽しさ。
生涯の創作パートナー、バーニー・トーピンと出会い、エルトンの家で同居しながら創作活動をする2人。
歌詞を渡し「あとは宜しく」と髭剃りに行くバーニー。エルトンは幼い頃弾いていたピアノの鍵盤を叩きながら曲をつけていく。
次第に形作られるメロディ。バーニーの詞が心に響く歌になっていく。髭を剃るバーニーの手が止まり、エルトンの祖母アイヴィと共に側でじっと聴き入る「Your Song」のできあがるシークエンスが凄くいい。
アメリカ初進出、トルバドール・クラブでの「クロコダイル・ロック」。大きな手応えを感じ、高揚感に浸るエルトン自身と観衆が文字通り「宙に浮いて」いくファンタジックな演出がこれまた素敵で!
その後の成功の目まぐるしさを、様々なステージ衣装の転換を繋げて見せる「ピンボールの魔術師」も良かったし。
そう「ボヘミアン・ラプソディー」と明らかに違うのが、ドキュメントを飛び越えた楽曲の使用。これをエルトンを演じるタロン・エガートン他の出演者がミュージカルとして心情に合わせてしっかり歌ってくれるんだ。特にエルトン・ジョン自身からも賞賛されたというタロンの歌は凄くてちょっとビックリだった。
実は事前にスタッフ&キャスト情報を全く入れていなかったので、エルトンにしか見えなかったタロン・エガートンが「キングスメン」の彼だとエンドロールまで気づかなかったのだが(笑)。
マシュー・ヴォーンの名前をプロデュースのところに見つけ、ああ、そういえばエルトン・ジョンが彼自身として『キングスマン:ゴールデンサークル』に出演していたなあ!と納得したのだった(笑)
ストーリーとしてはゲイでもあったエルトンがマネージャーのジョン・リードと出会い、成功はさらに加速していく。
かつて「エルトン・ジョン」を名乗る前のレジーは、アメリカから来たシンガーのバックバンドを務めながら、どうすれば音楽で成功するのか尋ねる。
「やせっぽちで黒人の俺は、場末で10年音楽をやった。なりたい自分になる為には、生まれた自分を捨てることだ」
この言葉を元に彼は「レジー・ドウァイト」を捨て「エルトン・ジョン」となり、成功の道をひた走るのだが、彼の成功は即ち「エルトン・ジョン」を演じること。
「派手な衣装を捨てて昔に戻ろう」という親友でもあるバーニーの言葉にも耳を貸さず彼を遠ざけてしまう。
「ボヘミアン〜」でのフレディの男性との恋より生々しい描写だった恋人でもあるマネージャーのジョンの裏切りにもあい、酒とコカインに溺れるエルトン。
成功とは裏腹に孤独が増していくエルトンの姿が痛々しい。「ボヘミアン〜」のフレディのように両親の理解を得られず、最後まで彼の両親はエルトンを突き放したままであるのが悲しいところ。
製作総指揮にエルトン・ジョンが名前を連ね、この凄まじい内容を正直に作らせたのも凄いことだなと思う。
ド派手な衣装のまま現れたグループセラピーで語り出し、ストーリーとともにそれを脱いでいくエルトン。
「あのふくろうのいる森に帰ろう」とエルトンに三行半を突きつけらるバーニーが歌う「Good-bye Yellow Brick Road」を、最後に立ち直ろうとするエルトンが歌うのもいい。
エルトン・ジョンは確かベスト盤をPCに入れていたのだが、いかれちまって聞けないのが悔しいが、てっきりエルトン1人で作っていたと思っていた曲の数々、バーニー・トーピンの歌詞をエルトンが曲にしていたことを意識してまた聴き直したいな。
久々自分の中の映画スイッチが押された良き映画。良かったら是非。