ユキからの手紙
ひまわりは枯れて、ぎっしりと種が詰まった頭を重そうにを垂らしていて、サルスベリの花は鮮やかなマゼンダ色に翳りを見せはじめました。くっきりとした輪郭をむくむくと成長させる入道雲は空に溶けそうで形があるようでない雲に変わってゆきます。
つまり、夏が過ぎ去ろうとしています。
思わせぶりな夏は今年もなおざりな言葉を残して去ってゆきます。
「また来年ね、あなたに、眩しいくらいの喜びと希望を。」
佐竹さんはもうすぐ稲の収穫だと言っていました。穂は黄金色に変わってきておりその頭を垂れ始めました。
イノシシが毎晩稲を荒らしにくるので追っ払うのが大変です。そのおかげで私自身、随分勇敢になれた様な気がします。イノシシを鎌をもって追いかける私を想像して笑わないでくださいね。
佐竹さんがよく言う事なんだけど、「男はうちなる女の存在を大切にするべきだし、女はうちなる男を大切にすべき」って言葉があります。イノシシを追い回すことで思い出したんだけれど。きっと男心とか女心ってものは男である事女である事には関係ないものなのかもしれないなと思いました。格好をつけること、我慢する事が男心なら、優しく軒の下の陽炎のように誰かをひたむきに愛する事が女らしさなら、それはきっと男である事女である事に関係はありません。私は男心も女心も大切にしたい。佐竹さんは私から見ると時に母のように見える事もあります、時に父のように見え、姉のように見え、兄のように見えます。サエコも私には無い、男も負けるほどの気の強さを持っています。私もサエコのように強くあらねばと思うのです。女である事に甘え過ぎよね。
つまり、夏が過ぎ去ろうとしています。
思わせぶりな夏は今年もなおざりな言葉を残して去ってゆきます。
「また来年ね、あなたに、眩しいくらいの喜びと希望を。」
佐竹さんはもうすぐ稲の収穫だと言っていました。穂は黄金色に変わってきておりその頭を垂れ始めました。
イノシシが毎晩稲を荒らしにくるので追っ払うのが大変です。そのおかげで私自身、随分勇敢になれた様な気がします。イノシシを鎌をもって追いかける私を想像して笑わないでくださいね。
佐竹さんがよく言う事なんだけど、「男はうちなる女の存在を大切にするべきだし、女はうちなる男を大切にすべき」って言葉があります。イノシシを追い回すことで思い出したんだけれど。きっと男心とか女心ってものは男である事女である事には関係ないものなのかもしれないなと思いました。格好をつけること、我慢する事が男心なら、優しく軒の下の陽炎のように誰かをひたむきに愛する事が女らしさなら、それはきっと男である事女である事に関係はありません。私は男心も女心も大切にしたい。佐竹さんは私から見ると時に母のように見える事もあります、時に父のように見え、姉のように見え、兄のように見えます。サエコも私には無い、男も負けるほどの気の強さを持っています。私もサエコのように強くあらねばと思うのです。女である事に甘え過ぎよね。
IN HER BOX
彼女は隔離された無菌室の中で手紙を読んでいる。
彼女自身ユキ以外に誰にも自分の事を教えはしなかった。だから、だれも彼女を見舞う事さえできないし、仮にそれを教えたとしても、見舞いにくる者など一人もいないだろうことは彼女が一番良く知っていた。
一度、ユキと佐竹が見舞いに来た事がある、その後、ユキの面談さえも彼女は拒むようになった。ユキと
佐竹の笑顔を見ると、彼女は泣きそうになった。彼女はユキに触れたかった、佐竹に触れたかった、この透明のガラスを境にユキと佐竹がいる世界があって、その世界にいる、ユキと佐竹が美して仕方が無く、その美しいものに触れたくて仕方が無かった。触れる事ができない事がなおさらそう思わせる。そう思う自分に同情する事が彼女には耐えられなかった。だから彼女は二人と会う事を拒むようになり、そのかわり、お互いに手紙を月に一度書くことユキと約束した。
ユキから彼女に宛てた手紙はユキを取り巻く新しい現実の話、彼女からユキに宛てた手紙は彼女が抱く空想の話。どちらにもお互いに与えあえる希望がちりばめられていた。
白い壁、薄青い無地のカーテン、一定のリズムでに鳴り続ける計器音が無機的なこの部屋をより無機的にした。彼女をとりまく、すべての色は明度が高く、色彩にかけている。
そのような空間でユキからの手紙が彼女に与える色彩は色とりどりで、彼女に生きる希望を、希望というよりも強い意志を持たせた。彼女はユキの事をうらやましいとは思わなかった、というのは彼女にとってユキの見たもの感じたものはその手紙によって彼女に与えられたからで、二人は共に生きていたから。いつかここから出て、彼女のもとに私も向かうのだと強い心を持つのだが、その強い気持ちに反して、どうしても涙が止めることができなかった。彼女自身ユキ以外に誰にも自分の事を教えはしなかった。だから、だれも彼女を見舞う事さえできないし、仮にそれを教えたとしても、見舞いにくる者など一人もいないだろうことは彼女が一番良く知っていた。
一度、ユキと佐竹が見舞いに来た事がある、その後、ユキの面談さえも彼女は拒むようになった。ユキと
佐竹の笑顔を見ると、彼女は泣きそうになった。彼女はユキに触れたかった、佐竹に触れたかった、この透明のガラスを境にユキと佐竹がいる世界があって、その世界にいる、ユキと佐竹が美して仕方が無く、その美しいものに触れたくて仕方が無かった。触れる事ができない事がなおさらそう思わせる。そう思う自分に同情する事が彼女には耐えられなかった。だから彼女は二人と会う事を拒むようになり、そのかわり、お互いに手紙を月に一度書くことユキと約束した。
ユキから彼女に宛てた手紙はユキを取り巻く新しい現実の話、彼女からユキに宛てた手紙は彼女が抱く空想の話。どちらにもお互いに与えあえる希望がちりばめられていた。
彼女からの手紙2
佐竹さんに出会い、わたしは今この村にいるわけです。佐竹さんは隣で編み物をしています。
男が編み物なんて、って思うけれど。佐竹さんが編んでいるカウチンセーターはきっと私の
冬を暖かくしてくれます。私は佐竹さんの為に、庭のハーブを積んで乾燥させたものを、
丁寧に空き瓶に入れます。私は佐竹さんのカウチンセーターを羽織って、佐竹さんと一緒に
ハーブティをいただきます。冬が待ち遠しいです。
男が編み物なんて、って思うけれど。佐竹さんが編んでいるカウチンセーターはきっと私の
冬を暖かくしてくれます。私は佐竹さんの為に、庭のハーブを積んで乾燥させたものを、
丁寧に空き瓶に入れます。私は佐竹さんのカウチンセーターを羽織って、佐竹さんと一緒に
ハーブティをいただきます。冬が待ち遠しいです。
