世界の中心で遠吠える
むかーし、むかし………からの知っているこの男、があるところに住んでいました。
この男、嘘をついてみんなを驚かせるのが大好きでした。まわりの人は毎回つかれる嘘にほとほと困り果てておりました。
(『狼中年』の伝説 其の1
其の2
其の3
其の4
其の5
)
今日はそんな男の違うおはなし。
こんな男でも嫁がいます。しかも2児の父親です。
今日はこの男の新婚旅行のお話です。
場所はオーストラリア、そしてエアーズロックに訪れたそうです。
エアーズロックと言えば「地球のへそ」とも言われる場所。
そして新婚旅行が数年前ですから「世界の中心で愛を叫ぶ」が映画、ドラマ化されヒットしていた頃です。場所を聞きすぐさま、
「叫んじゃう?『世界の中心で愛』叫んじゃう?」
と言われるのは当然の成り行きでした。
そうこうして旅行から土産と土産話を持って帰った二人。すぐさま聞きました。
「叫んじゃった?『世界の中心で愛』叫んじゃった?」
しかしながら現実は全く違う結末を与えたのでした………恐らく天罰として。(ププっ!)
さて明日はエアーズロックに登頂です。
いくら観光地とはいえ大自然が作った一枚岩、そして朝日を浴びて変化する風景を楽しむ「サンライズ観光」のため夜明け前からの登山とあって、前の晩に細々と準備しました。規定量の飲料水、防寒着などのガイドから指定された品、記念撮影のカメラなどをリュックに詰めました。
そして早くに就寝し備えたのでした。
翌日は天候にも恵まれ、登頂成功。
早速素晴らしい大自然をバックに記念撮影とカメラの電源を入れる男。
数メートル離れた場所では嫁がポージングしてスタンバっております。
「オン/オフ」を繰り返しますが電源は入りません。それもそのはず。
電池パックはホテルで充電中です。
とっさに自分の失態に気付いた男。
しかしながら今回だけは嘘は思いつかなかったようで、嫁に近づき己の失敗を告白したそうです。
そして………
『エアーズロック』…『地球のへそ』…『世界の中心で』………
「SHI○Eっ!!」
(あまりの直接的口撃の為、自主規制中)
と男は数日前愛を誓った嫁に「叫ば」れたのでした。
「その崖から飛び降りろっ!」
「帰り道は前転で帰れっ!」
などの罵声を浴びた男。
考えた挙げ句、一緒に登っていた日本の女子大生のグループに声をかけ、写真を撮ってもらい、後日送ってもらう約束を取り付けました。高い昼食と引き換えに。
後日そのエピソードを涙ながらに語る男とその妻。しかしながら話はそこで終わらなかったのです。
「女子大生からCD-Rが届いたんだけど、中身が何にも入ってないんだよね…いぢめられてんのかな?」
そして先方にやんわりデーターが入っていなかった旨を伝えると、謝罪の手紙ともう一枚CD-Rが入っていたそうです。
大自然をバックに……いや…大自然の中に豆粒のような大きさの二人が写るスナップ写真が中に入って。
「誰だかわかんねえの………小さすぎて(泣)」
口をついてでる言葉の八割以上が嘘のこの男。
この男こそ現実の「狼少年」。
いいえ。
『リアル・狼中年』なのですが、今回は全て本当のお話。
つりぼり十番勝負≪「NT」編≫④
右だ。
それで………
こいつが左だ。
そしたらこいつは上からだから…
こっちにやって………
おまえが下をくぐる………
それでこいつは………
ここで……3回転?
するとおまえはこっちに…………
そしたらこいつで…………
って、おいっ!!??
何でコブが出来てんのじゃああぁぁぁ!!!
わかったわっ!
おまえがそういう反抗的な態度で出るんならこっちも……
チョッキン!!となっ!!
どうだ!好きなだけ絡むがイイさ!
がはは!! ざまあみろっ!!
よし!じゃあまずは電車結び……
雨降ってきた……ああ…PE(糸の種類)が手に………
ヘバリ付いて………もうっ!
フロロ(糸の種類)を先に……
輪を作って………
三回くらい巻いて……
そんで中…………あら?
引っ張ったら…………ほどける!ってなんでやねんっ!!
ああ!フロロが「じんじろ毛」みたいに………
かまわん!このまま………
ええい!!やりにくいったら!!
チョッキン!!となっ!………あれ?PEどこ行った??
あ…ここか………ってフロロはどこよっ!!??
ああ!もうっ!!……輪っかで……引っ張って……
こっちも……輪っかで……引っ張っ…ブチッ!! って!?
切れてどーすんだよぉっ!!
キレたいのはこっちじゃあああ!!!
……落ち着け!落ち着けばすぐ出来る!
大丈夫!池は逃げない!魚も逃げない!
釣果の差も大きいっ!!勝てるっ!!
……PE………良し!………フロロ…も………よし!
スナップ(仕掛けの一部)………あっ!!落とした!!
いいわ!捨ててやるわ!!新しいので………
??どこ?……どこに結べちゃってんの??
…引っ張っ……ブチッ!!
嗚呼ああああああぁぁぁぁぁぁぁッ!!
早朝からの釣行は確実にわたくしの体力と集中力を奪っておりました。ポンド(池)に戻ると直ぐにライントラブル(糸が絡まっちゃう事)に襲われたのです。普段であればなんて事はない程度の事でしたがここへきて強まる雨脚。ただでさえ失っている集中力をさらにすり減らすのでした。
池に移ってからはライントラブルでのタイムロスで未だ2匹のみ。トータルは41匹となりました。
インレット(水の流れ込むところ)に猟師のように竿を掲げている「パックン」(ビチョヌレのフローリングの犯人はズブヌレの釣り道具で安心しつつも面倒な仕事を増やしたと地団駄を踏む40歳)。釣り上げました。得意な池で本領発揮でしょうか。少なくなった「釣りキチ・三平」の時間を味わうかのごとき釣行でしょうか。
何となくその竿さばきにも哀愁を感じさせます。
近づいてその感想でも聞いてみましょう。
「さすが師匠。池はすごいや。」
「うん。こないだ拾ったスプーン(ルアーの種類)が当たった当たった!トラブル手間取ってたね…大丈夫?」
トラブルを気遣ってくれるとは。これも「三平師匠」としての最後の優しさか…。
「ええ。なんとか。で、どれほど上げたんです?」
終了まであと30分を切り、あたりも薄暗くなってきています。
「釣りキチ・三平」として、「三平師匠」としての最後の姿に敬意を表して、そしてはなむけにその釣果を聞こうではありませんか!
「43」
「43……なかなかの数字……ええ!?」
「いやあこのスプーン入れ食いで……」
ストリーム(渓流)へと猛ダッシュしキャスティング。今日一番釣れたポイントとルアーを一心不乱に投げ続けます。
「おいおい!待ってよぉ………」
「元・三平師匠」ではなく『現・三平師匠』が走ってきましたが構っている余裕などありません。取りあえず追いつこう…さらに暗くなった川にスプーンを投げ続けます。
一匹ゲット!トータル42匹。その差今一匹か……下流でキャスティングする三平師匠の背中がちらりと視界に入ります。ネットを左手に掲げるその姿は確実に「釣った魚を取り込む作業」に他なりません。
あと2匹か……あと2匹で並ぶのか………???
さらにもう1匹をゲット。あと1匹を上げなくては、敗戦が……………「釣りキチ・五平」が………決定してしまう……………。
「あのぉー!!……すんませんっ!!」
気がつくと背後に管理人さんが立っています。
「15分程で入り口閉めますから…お願いしますっ!」
移動して次に三平師匠にも声をかけて行きました。
こちらを向き終了のサインを送る防衛成功の「釣りキチ・三平」ホルダーの姿は涙か、日没の薄暗さか、とっても見えにくかったんだ……………。
《管理釣り場『NT』の結果》
パックン 45匹
わたくし 43匹
規定により
『釣りキチ 三平』・パックン
「釣りキチ 五平」・ぢゅんぢょヴィ
つりぼり十番勝負≪「NT」編≫③
「鳴って」ます。
わたくしの脳内を駆けめぐるこの旋律。
川幅があまりないため上流から下流へと投げるダウンキャストを二人とも実行しています。
「パックン」(釣行後に飲みに行くも気がついたらビチョヌレのフローリングに横たわる自分。まず一番に下半身をまさぐりビチョヌレの原因が自分でないことを確認し、ほっと胸をなで下ろす40歳)こと「三平師匠」の上流にわたくし「五平」。「三平師匠」が何本上げたかまるわかりです。倍と言っても過言ではないような釣果です。まさに「大漁」。
ルアーのカラーチェンジで面白いほど上がります。一方の「三平師匠」はシブくなってしまったのかポイントを変えるべく上流のこちら側へ歩いてきます。いつもなら
「どう?調子は?」
などとかなり上からな言葉をかけてくるのですが今回は背面と言えど釣行の差はわかったのでしょう、腰を低く落とし、ヘコヘコと小走りに横を通り過ぎる「三ヘコヘコ」となっています。ここは激励をかねて声をかけてあげましょう!
「教えてやろうかっ!?えっ??」
「……いえ………結構です。」
可愛くない「三ヘコヘコ」!
その後上流へ釣り上がるもさらに川幅が細くなり、流れも激しく素人同然、長靴姿の二人にはどうにもならないと判断し、また釣り下りました。
その後もストリームでのわたくしの釣果は、絶好調。三平師匠はボチボチ。「中畑清」と「栄村」ほどの差が二人の間にはあるのでした。
濡れそぼリ、川に落っこちた猫のように身体を丸めしょぼしょぼとわたくしに近寄ってくる「三平師匠」ならぬ「三しょぼしょぼ」。
「あの~…ぽ、ぽぽぽぽ…」
猫じゃなくて「鼠」だったようです。
「何?」
「ぽ、ポンド…に…も、戻りませんか………?」
わたくしのあまりの「絶好調!中畑清」っぷりに恐れをなしてしまったのでしょう、「三ぽぽぽぽ」。得意のポンドへ戻りたいと懇願するのです。
わたくしは、器も、そしてけケツ…「アナ〇」の大きな人間です。ここはしょうがありません、付き合ってあげましょう。そして優しく声をかけてあげました。
「『お願いします』は?」
「お、……おね…お願いします。」
ポンドへと向かう道すがら、「三ぽぽぽぽ」はわたくしに聞いてくるのです。
「ど、どれくらいお釣りになられ………」
「39!」
「うわあぁぁ!つ、釣ったなあ!」
「で?師匠はよっ?」
「29…」
「えっ??何?」
「29…」
「何だって!?」
「29ですぅ!…うう(泣)」
いける………。
今回は………いける。
残り約2時間………。
「釣りキチ・三平」タイトルは目の前…………。
《つづく》
