「しお…り……。生まれて…きてくれて…ありがとう…。」
言い終わったのと同時に、あったかいものがスルッと消えてしまった。
「しお…。」
「…逝っちゃった…ね…。私…これからどうしたらいいんだろう…。
勝手に逝って…勝手に戻ってきて…また逝って…。いくらなんでも
自分勝手過ぎるでしょ…。私一人残して…っはは…」
「…。」
「…剣悟、わざわざ一緒に来てくれて、ありがとね。」
私はそう言って、剣悟の肩をポンッと軽く叩いた。
…けど、その手は剣悟に掴まれて。
剣悟は掴んだ私の手をぐいっと引き寄せて、私を抱きしめた。
一瞬のことで訳が分からなかった私は、剣悟の腕の中に
収まった。
「…ちょっ…剣っ…」
「ばーか…。」
「…はぁ!?」
コ…コイツ…。
バカとか言いながら、頭をぽんぽん叩いてる。
よく赤ちゃんをあやすときにやる、アレ。
「おまえさ、ホントは泣いても収まらないぐらい悲しいんだろ?なんだかんだ言って
強がっても、あの人がいなくなったっていう事実は変わらないんだよ…。」
「…う…ん……。」
「だったらさ、気が済むまで泣けよ。泣き止むまで俺、ここに居るし。」
「…ふ…うぅ……お…おかぁ…さん…」
私はそれから2時間ぐらい泣き続け、気づいたら眠っていた。
その間剣悟は本当に私をずっと抱きしめていてくれた。
…『ばか』とか言って…ホントはめちゃくちゃ優しいんじゃん。
剣悟、ありがとう…。
―翌日―
ピピピッ ピピピッ ピピ―…
目覚ましは6時半にセットされていた。
剣悟がセットしたのかなぁ…。
おかげで助かったよ…。
今日は学校…は休む。
なぜなら…お葬式。
本当は出たくないし考えたくないけど…昨日いっぱい泣いて、少し落ち着いてきたから
なんとか頑張れそう。
私は適当に朝ごはんを済ませて、黒いワンピースに着替える。
一通り準備が出来たとき、ちょうど電話が鳴った。
「もしもし…」
「もしもーし、詩織?おはよー!」
「お…おはよう!あのさ…昨日はありが…」
「そんなのいいよ!ちょっと起きれたかどうか気になって…」
つまり…モーニングコールってことかな?
「さすがに目覚まし鳴ったら起きるって。」
「それよりさ、詩織に言っておきたいことがあるんだよね。今、いい?」
「ん?時間あるし…いいよー。」
それからグダグダ話しているうちに、剣悟が衝撃の言葉を言った。
「俺ねー、決めたんだ!!」
「な…何を?」
「お前の母さんの代わりに…なれるか分からないけど…俺がこの世の誰よりも
お前のこと大切にするから!」
「え!?…あの…どういうこと?」
「お前のためにはなんでもする!俺頭いいからさ、勉強だって教えてあげるし…
寂しくなったら料理も作りに行ってやる!とにかく…俺には甘えていいってこと。
わかった?」
「ん~。なんとなく?自分で『勉強できる』とかどうかと思うけどね。」
「お前はひとりで抱え込んで自爆しそうだから。」
「じ…自爆って…」
「おぉ!時間ない!いい?じゃぁな!」
ガチャ…―。
な…なんだったんだろ。
なんか嵐が過ぎ去った感が…。
ま、いっか。
おばあちゃんが7時半に迎えに来てくれるらしいから、準備が済んだ私はリビングのソファに
座っていろいろ考えてみた。
まず、私のこと。
お母さんもお父さんもいない今、私はどうなるのか…。
私はこんなんでも一応高校生だから、ここでひとりで暮らしていくのかな…。
それってすごく…さみしい。
それとも…おばあちゃんの家に引っ越すとか?
それもすごく嫌だな…。
おばあちゃんの家は北海道にある。
つまり、私が北海道に行かないといけなくなる…。
…。転校。
だめだ…。考えれば考えるほど悲しくなるよ…。
その次に考えてみたのは、剣悟のこと。
なんで剣悟は…ほぼ初対面の私にここまで優しくしてくれるんだろう。
前にあったことがある…とか?
いやいや。私はテレビの中以外であんなかっこいい人を見たことがない。
絶対に初対面のはず!
それに、お母さんが『天使』のことを話すときも…。
一瞬だけど…剣悟に微笑んだ気が…。
もしかして、お母さんと剣悟が会ったことがあるとか?
…。
あぁ…。またモヤモヤしてきた…。
プーッ プーッ…
そうこうしているうちに、おばあちゃんが来ていた。
私は窓から「今行くー!」と返事をして、急いで家を出た。
お葬式が終わって私は家に帰った。
おばあちゃんはいない。
私はこの家で、一人で生活することになった。
おばあちゃんは「何かあったらすぐにこっちに来るからね」って、
北海道に帰った。
基本的な生活は一人で出来るし、何の問題もない。
だけど…。
お母さんとの思い出だらけのこの家で、一人で生活するなんて。
あたし、これから…。
誰に頼ればいいの?
明日からまた学校に行かなくちゃいけない。
あたしは明日のぶんの教科書をカバンに入れて早めに寝た。
To Be Continued