「ねぇ。きいた?」
「ん?なにを?」
「あんたのとなりの剣吾くん、愛海ちゃんと付き合ってるんだってー」
…え?
健吾くんが愛海ちゃんと…?
ウソ…。
私は周りの音とか、しゃべり声とか全部が聞こえなくなった感じがした。
なんていうのかな。
絶望…?
いつの間にか健吾くんは私の心の支えになってたから。
…勝手にしただけだけど。
本当なら蒼汰と話し込んでいる剣吾くんに、今すぐにでも聞きたい。
でもそんなことしたら…。
違うのなら全然全く問題はない。
むしろ最高に嬉しいよ。
でも。
もしも仮に。
そうだよ。なんて言葉でも返ってきてしまったら…。
多分学校をサボり出すと思う。
かと言って聞かないなんてできない。
これはこれで夜も眠れなくなる。
夜ふかしは美容の大敵だし。
これは聞くしかない。
その日の帰り、剣吾くんを誘って一緒に帰った。
もちろん、あの事を聞くために。
学校から結構離れた頃、あの話を切り出した。
「け…剣吾くん…。あの噂、本当?」
「噂ぁ?なんだそれ、俺は何も聞いてねえよ。おしえてくれる?」
え…。本人が知らないとかどういうこと!?
私は友達から聞いたことを、そっくりそのまま剣吾くんに伝えた。
やっぱり剣吾くんは、何も知らなかったと言って驚く。
「あ…ありえねぇ…。俺、あーいう女子スッゲェ苦手なんだよ。」
「ったく…。勘弁してくれよぉ…。」なんてぐちりながら、参っていた。 よかった。
うそだった。
安心したからかなんなのか、私は調子に乗ってとんでもないことまで聞いてしまう。
「じゃぁさ、剣吾くんはちゃんと好きな人とかって…いる…の…?」
自分で聞いて途中で緊張してしまう。
だってまるで…。
こんなの告白と同じじゃない。
多分耳まで真っ赤なのがバレないように、少し下を向いた。
「…さぁ。」
…なんてあっけない答え方。
なんでだろう。あれ、 涙が…出そう…。
気づいたら涙で周りが見えなくなって、思わず転んでしまった。
「…っいたぁ…」
なんだか情けなくて余計に涙が出てくる。
「おいおい…。お前どんだけドジなん…え…?うそっ…ちょっと…」
ちょっと転んだだけで泣いている私に驚いたのだろう。
剣吾くんの焦り方は人生で一番だった。
「な…何泣いてんだよぉ。」
「だってぇ…。だって剣吾くんに話無視された気がして…。」
こんな理由じゃぁ、絶対嫌われる。
そう思った。
剣吾君は私の前にしゃがみこんで、指で涙を拭った。
「…だって…。す…好きな奴に…好きな人誰かなんて…答えられないっつーか…」
驚いて顔を上げた。
うつむきながら、顔を真っ赤にして話す彼は、上目遣いで私を見ていた。
は…反則っ…!
「ここまで言わせたんだから、責任とって…くれるんだろうな…?」
そういってわたしの首の後ろに手をまわして、そっと…キスをした。
あぁ、もう。
バカ詩織…。
自分からキスするなんて…。
ごめん。 美香…。
俺はついに恋をしてしまった。
タブーを犯してしまった…。