…。
「し…お……」
誰?
私を呼んでるの?
まわりが白いようなスモークがかった空気に包まれてる。
声のする方に歩いていくと、彼がいた。
にこって微笑んでそこにいた。
彼は全く動かない。
「けん…ご…くん…?」
私が声をかけてもびくともしない。
すると突然、声が聞こえた。
「ついに夢で俺を見るようになったかぁ…。」
そう言ってバカにしたように、口角をあげた。
「し…しょうがないでしょ。好き…なんだから!」
緊張してるけど、同時に不安にもなった。
だって、おかしい。
確かにけんごくんの声がした。
それは、心のなかに直接入ってくるような声。
ただ、目の前のけんごくんの唇は…
笑うときしか動かない。
でも、夢っていう世界だからかもしれない。
そう思おうとしたとき…。
「じゃ、俺のことが好きになっちゃった詩織に、ちょっと大事な話ね。」
なんか…嫌な予感がした。
彼が消えてしまいそうな。
私たちは真っ白な世界のなか背中合わせで座った。
ふれ合ってる背中が温かくて心地いい。
「俺ね、人じゃないんだよね。」
突然頭のなかに響いた声は、おかしなことを話し出す。
それを黙ってききつづける。
「分かりやすく言っちゃうと、堕天使ってやつなんだけど…」
「ははっ」何て笑ってる彼は、何か寂しそうで。
「天国で詩織のことずっと見てて、惚れちゃって…」
話してることは変だし、ちょっと聞き流してる感もあるけど
私はなにも言わずに静かに聞いていた。
「で、神様に黙ってこの姿で降りてきて…まぁ、見つかっちゃったんだよね。」
…つまり…?
「俺、帰らなくちゃ。」
…かえ…る…?
「ま…待ってよ!よくわかんな…」
最後まで言うのを待たずに!彼は雪のように消えた。
何で黙って消えるのよ…。
その時、フッと目が覚めた。
「けん…ご…く…。」
どうしよう!
会いに行かないと…
今日は土曜日。
私はパジャマのままで、スリッパを履いて家を飛び出した。