Mexican Resort Style ~スパな生活~ -7ページ目

106.時間の粒が漂う町

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夕暮れが近づいていたのでソカロで目にしたホテルに泊まることに決めた。一般的にコロニアル風建築のホテルは外から中の様子を伺いにくいことがある。中に入ると大きな中庭と建物があり、広い敷地を抱えていることが多いのだ。このパツクアロのホテルも入ってびっくりだった。2、300年は経っているであろう元修道院をホテルに改造したもので、流れている空気が違うのだ。『中世の時代に迷い込んだか』と錯覚するほどだった。そして夜になって町を散策すると、この町自体が時間がとまっているかのようであることに気付かされた。

近くのレストランで夕食を食べたあと一度ホテルに戻り、今夜あるバーでライブがあると聞き、遅い時間に彼女と出かけたが、あいにく定休日だったため近くのカフェに入った。夜になってついた町の明かりはぼんやりとしていてまるでガス灯のよう。何百年も前とおぼしき古い建物があちらこちらに佇み、地面には石畳の道が続く。通る車も少なく、たとえ通ってもまたすぐに静寂が包み込む。そのうち雨が降ってきて通りからは完全に人気が消えた。今目の前にあるのは恐ろしく古い建物と石畳の道だけ。100年前も同じだったんだろうなあとぼんやり考えながらコーヒーをすする。

止みそうにない雨に濡れながら彼女とホテルまで小走りで戻る。道端でダンボールをかけて眠っていたインディヘナの老人を踏みそうになる。夜の冷え込みと雨のせいで体が震えてきた。ホテルに戻ったら即熱いシャワーを浴びたい。

翌朝、昨夜の雨から一転して晴れ上がったソカロは、道行く人の活気に溢れていた。古ぼけた建物の中では確かに現代の人が忙しそうに生活していた。けれどパツクアロには過去と現在の壁を通り抜けた時間の粒が漂っている。それはもうこの世にはいない人々と今を生きる僕達を結びつけるために、今も町をしっとりと包み込んでいるのかもしれない。