このブログは物語形式で1~112まで順番に繋がっています。内容は、日本からメキシコに移り住み日系企業に勤めながら都会生活を送っていた筆者が、メキシコの自然に抱かれた生活に出会うまでを描いた記録です。
112.幸せへの鍵
10年のメキシコ生活を終えて帰ってきた日本。
街で目にしたのは、若い男性の華奢な体つきと無表情で携帯電話に没頭する人たち、そして生気のない表情で行き交うサラリーマン達だった。それまで目にしていた海と溢れる椰子の葉とたくさんの笑顔の世界から、180度違う不健康そうな光景を目の当たりにし、大きなショックを受けた。そこに居る人たちは明らかに幸せそうではなかった。
それから少し経ったある日、日本で生活を始めた自分もかつての元気を失い始めていることに気付いた。日本での暮らしは人を幸せにしないものなのか?僕はいろいろな角度から考え始めた。そしていつしか、『どうしたら人は幸せに生きられるのだろう?』という問いが自分の中での大きなテーマとなっていった。
そんなある日、俳優のロバートレッドフォードの言葉を雑誌で見かけた。
「生きていくうえでもっとも大切なことは、自らを律し、可能な限り自分に正直であること」
なぜかこの言葉が胸に突き刺さると同時にメキシコでの日々が思い出された。
日本よりも経済発展が遅れているメキシコだけど、逆に日本よりも生きている実感があった。様々な価値観が入り混じった中で、人は他人の目を気にせず、感情にふたをせず、出来る範囲で自分の心に忠実な選択をする生き方をしている。そんな社会で暮らす機会を与えられ、僕は幸せに生きるためのエッセンスを少しだけ学べた気がする。
一番大切なのは物や形ではない。自分の心に従った行動を取るという意志だ。それが心が満足する生き方に通じる道を作ってくれると思う。人が心を安らげるのは自分にとって好ましい環境に身を置いたとき。そして人がもっとも輝くのは、自分の持っている能力を存分に発揮して人に喜んでもらえたときだと思う。それは黙っていては与えられず、自分で欲しいと声をあげて取りに行かなければならない。それには先ずは心の声に耳を傾けてみることだ。
それこそが“幸せへの鍵”なのかもしれない。
