エゼキエル書第1章
ぼくらは空の果てまで飛べるかな
神様が約束してくれる場所まで
ぼくらは見たこともない乗り物に乗り
神様がくれる力で夜空まで飛ぶ
不確かな希望などいらない
悲しみや苦悩などいらないいらない
見たこともない神の業はぼくらを運ぶ
どこまでも深い霧の向こう側まで
火花を散らし遠い星の渦まで
野性を纏い暗い銀河の果てまで
贖い
何をもっても償えない
何をもっても赦されない
俺の独り言が
独房で響くと
看守がやってきて
警棒で檻を撫でる
お前の場所はここだけだと
言って看守は歪んだ笑顔を見せる
どんな神でもよかった
場合によってはどんな悪魔でもよかった
いや悪魔には魂を売らない
売らないとあの日決めた
俺がしてしまったこと
俺がしてしまったことが
俺を苦しめる
いっそ死んでしまったほうが
良かったかもしれなかった
精神はどん底に落ち込んで
時には壁を血が出るまで殴った
お願いだ
あの時間に
あの時間の前まで
戻しておくれ
あいつの言葉も
あいつの心も
受け止めて見せるから
九十四年
九十四年の人生を閉じたあなたは
コーラのことを黒い水と言って嫌った
耳は恐ろしいほど遠く
隣山まで叫んでいるようなボリュームでしか届かなかった
ちょうちょが飛んできてあなたの頭にとまる
何事もないようにあなたは庭の景色を見ている
いつになっても名前を覚えてもらえなかった
大きな声で怒鳴るように叫んでも
まるで上の空だった
あなたが息を引き取るとき
九十四年の人生が逆回転でよみがえる
妻の他界
ひ孫の誕生
孫の誕生
娘たちの結婚
仕事の頓挫
妻との不仲
娘たちの誕生
貧しい新婚生活
戦争
戦争
戦争
あなたの誕生した日に
多くの笑顔と祝福が
あなたを包み
あなたはそっと涙を流した
墓参りに行けなくてごめんね
今は遠い場所で生きているよ
九十四年の歴史と共に
歩んだあなたは
まだ記憶の中で生きているよ
頭にちょうちょを乗せて
庭をじっと眺めて
午前1時
こんなに人恋しい夜なのに
空からは冷たい雨
あなたの電話はつながらない
ひとり商店街を歩く
ほとんどのシャッターは閉まっている
いつか聴かせてくれた歌のフレーズが
頭の中をぐるぐると廻る
忘れないでいて、という歌詞だった
たまらずコンビニに入って
飲みたくもない酒を買った
こんなに人恋しい夜なのに
空からは冷たい雨
涙ならば温かいのに
おやすみ
君の声を聞くたび苦しくなる
君のたたずまいを見ると泣きたくなる
そんなに背負わなくてもいいんだよ
少し休んで持てない荷物は僕が持つから
雨に打たれて穴だらけの靴で
お腹を空かせて砂利道を歩く
お願いだそのかみしめた唇の