右京が突然、弘前への一人旅に出た。その目的は、同じく弘前へ向かう老女・尾上絹の尾行。右京は絹の孫らしき女性が謎の男達に拉致される現場を薫と共に目撃しており、薫に犯人の追跡を任せ、自分は絹の後を追いかけていた。どうやら絹は孫を救う手立てを求めて弘前を目指しているようなのだが、右京はそんな彼女の様子に何か違和感を持っていた。

一方、絹の孫を拉致した男達を追いかけて港の倉庫に辿り着いた薫は、男達が最近起きていた連続強盗事件の犯人だと気づく。しかし、攫われた孫の姿はどこにもない。薫は右京や角田と連絡を取り合いながら倉庫の張り込みを続けるが、やがて思わぬものを目にすることに!

同じ頃、絹と共に夜行バスで弘前へ向かっていた右京は、薫達との情報交換がきっかけで絹の秘密に気づく。


​①旅は道連れ

角田課長の夫婦喧嘩の話から始まる今回は、「」がキーワードになっていました。青森・弘前へ向かう夜行バスに一人乗り込む右京さん。一人旅かと思いきや、その目的は同じく弘前へ向かうおばあさん・尾上絹を尾行するためでした。絹さんとの「二人旅」の中で、右京さんは今回起きた事件の真実に近づいていきます。

怪しい人とバスに乗って…といえば、思い出すのが月本幸子が初登場した「ついてない女」。あの時は右京さんが空港へのバスに乗った幸子さんを追いかけて自分もバスに乗り込み、短い二人旅をしながら事件の真相に近づいていました。今回の話もそれと似た構成になっており、薫ちゃんとの別行動キーパーソンとの会話など、似た要素も出てきていましたね。

そんな中で右京さんと一緒に旅することになったキーパーソンのお婆さん・絹さんは、数時間前に孫を拉致されており、彼女を救う手立てを求めて弘前を目指していました。なぜ弘前へ向かっているのかという点も気になりますが、気になる点はもう一つあります。拉致の現場を目撃していた右京さんは、主犯らしき男が絹さんを脅していたのを見ていたのです。孫を盾に何かを要求していたのか、それとも…? 薫ちゃんと別行動を取って拉致事件を調べていくと、なぜか捜査一課が追っていた連続強盗事件と繋がり始め、更に絹さんの秘密が明かされたことから事態は急展開を迎えます。


​②もう一人の「ついてない女」

絹さんの正体は、10年前にヤクザと手を組んで大規模な詐欺事件を起こした詐欺師でした。貧しい家庭に生まれ、上京し結婚したもののすぐに離婚し、子供とも引き離され、「いいことなんて一つもなかった」と語るような半生を送ってきた絹さんは、服役中に孫(生き別れた娘の子供)だと名乗る女性・後藤真奈と面会したことで生きる希望を取り戻し、出所したら真奈さんと一緒に暮らそうと決めます。ところがその矢先、10年前に手を組んでいたヤクザが真奈さんを拉致し、彼女を盾に絹さんを脅迫するという事態が発生。孫の命には代えられぬと絹さんは要求を飲み、行動を開始したのでした…

不幸続きの人生を送ってきたという、幸子さんと似た境遇だった絹さん。幸子さんは右京さんとの出会いがきっかけで救いのある結末を迎えましたが、絹さんが迎えた結末は真逆のものでした。やっと見つけたと思っていた幸せが、実は全てまやかしだったと知った時の彼女の失望や悔しさはどれほどの物だったでしょう。だからこそ絹さんを騙した人物には観ている私たちも劇中の薫ちゃん同様に怒りを覚えましたし、薫ちゃんがその人物をガツンと一喝した部分はスッキリしました。

最後まで「ついてない」ままだった絹さんでしたが、旅の途中に右京さんと出会い、彼と言葉を交わしたことで少しだけ救われていたのではないかな…と思いました。彼女の哀愁や孫を思う優しい一面を表現した中尾ミエさんの演技もお見事でしたね。

謎と哀愁に満ちた「センチメンタル・ジャーニー」、その旅の果てのどこか寂しい景色が印象に残りました。


​③その他あれこれ

絹さんの回想に出てきた「野辺送り(葬列)」の映像が着色写真のような色合いになっている演出が印象的でした。私自身は実際に野辺送りを見たことはありませんが、何とも寂しい景色だなと感じました。何かの映画で見たことがあるような気もします(あるいは本で読んだような気がします)。

「連続強盗」「フィリピンで逮捕」と聞くと、最近の広域強盗事件を思い出しますね。不動産会社が詐欺にあった事件も、かつて話題になった「地面師事件」を思い出します。

ちなみに今回のキーパーソン・絹さんの名前の由来は「尾上縫」という実在の人物のようです。調べてみると来歴や起こした事件の内容が絹さんと共通していて「なるほど」と納得しました。

冒頭で奥さんと喧嘩した角田課長は家出し、しばらくの間特命係の部屋に寝泊まりしていました。本編では誰もいない特命係の部屋で一人スルメを焼きビールを飲むという場面があるのですが、滅多にない(というか普通ならまず見ることがないだろう)光景にちょっとびっくりしました。

ちなみに課長はその後無事に奥さんと仲直りして京都旅行に行き、薫ちゃん達に写真を送ってくるのですが、奥さんの容姿は分からずじまい。一体、どんな方だったんでしょうね。

終盤で薫ちゃんとトリオ・ザ・捜一が強盗犯のアジトへ乗り込む場面もカッコよかったですね! 伊丹さん達が並んで警察バッジを見せるのは「この印籠が目に入らぬか!」みたいでしたし、その後の大立ち回りも三人三様の戦い方が表れていておもしろかったです。薫ちゃんが一人だけ逃げたメンバーを港で追い詰めるのもサスペンスドラマのクライマックスシーンを思わせる描写でしたね。


​④次回の「相棒」は…?

次回は暴力団を巡る事件の物語。実業家の男性が暴力団の幹部を殺害した罪で逮捕されるも、正当防衛が認められ無罪に。組織から報復を受ける危険があるため、特命係が彼の警護につくことになります。しかし、事件には何やら不審な点があり…?

シーズン13最終話にも出演されていた赤ペン瀧川さんが、事件のキーパーソン役で再出演されます。事件に関わってくる暴力団は、以前内村刑事部長と関わりがあった組織。とくれば、思い出すのは刑事部長が正義に目覚めるきっかけになったあの事件。予告編では内村刑事部長が階段から転がり落ちる描写がありましたが、ひょっとしてここで頭を打って以前の刑事部長に戻っちゃうのかも? でも、それはそれで「原点回帰」感があっていいですね。昔のような特命係との絡みが見られると思うと、ちょっと嬉しい感じもします。

年内最後の放送となる次回、どんなお話になるのか今から楽しみです。そして来年の元日スペシャルも楽しみ! 早く情報解禁されないかな…