水の中。 -79ページ目

水の中。

海外小説のレビューと、創作を。

下でキャロルがどうとか書いたせいで、数年ぶりに読み返してしまいました!


脚本家兼役者であるウォーカー。孤児である彼がウィーンで、自分そっくりの肖像をもつ男の墓を見つけ、とんでもない出生の秘密に巻き込まれていく物語。

というと、とってもフツーに聞こえますが、この出生の秘密とゆーのが、まったくとんでもないビックリ展開。

こんな荒唐無稽な話を、飽きさせることなく読ませるのは、細部に真実が宿っているせいでしょうか。
「結婚生活とは、手入れの必要な黄金の時計のようなもの」というくだりに感心したり。

全編が、警句や皮肉や愛情や死という魔法にあふれた、驚きに満ちた物語だと思います。

こんな角度から、人生を見ている人がいるんだなあ……。

これらの語りを、生き生きと再現する、翻訳者の手腕もまた素晴らしい。
もっとガンガン邦訳を出してもらいたいのですが、それにはガンガン売れてもらわないと。

というわけで、既刊は全てオススメです!
買ってください!(おちつけ)

ああでも、「沈黙のあと」のラストのアレはどうだろ……。アレはないよな、アレは……。

(評価★★★★★)
同名の日本のコミックを映画化した作品を、またさらに小説化したモノでございます(いっしょうけんめい省略してみたが長い……)。


妻子ある平凡なサラリーマン、オ・デスは、ある日突然、監禁されてしまう。
理由も分からず、相手も知らないまま、15年後に解放された彼に、おそろしい罠が待ち受けていた……。


まず、15年もの監禁生活がショッキングで、冒頭からあっという間に物語に引き込まれてしまいます。
が、やはり映画作品のノベライズというのは、映像を越えるものではないと思います。もし越えるような作品があるとしたら、それは本作品とはまったく違うものになっているはずです。

だから映画を観るべし!!
私が読んでしまった(しまった?)のは、ズバリ映画を観る予定がなかったから

という結論は置くとして、私が読んだことのある映画の小説化作品の中では、かなりよい出来でした。中にはあるんですよ、書き割りみたいなやつが……。
うーん、でも、あの終盤の種明かし、書くほうも難しかったと思いますが、小説で読むとバレバレ。映画だと上手に隠しておけるものなんでしょうか。ちょっと気になったり。


映画とは違うというラストに、作者の愛を感じました。
これが、この物語にとって最高の結末だと思います。

そうだよねえ、やっぱりあきらめちゃイカン。
キレイにラクになるより、汚れても傷ついても、歩き続けていかないと。

(評価★★★)
どんな内容かというと、漫画でいえば「GANTZ」のような……。
死んでしまった兄弟が、生かされてしまう話(スミマセン説明できてません)。

なんだろう、この話は。

ファンタジーと思ったほうが、読みやすいような……。
前作の「時間旅行者は緑の海に漂う」が傑作だったので、楽しみにしていたのですが。
そして「鳥」「宇宙人」「兄弟」という前作同様のテーマが使われているのですが、ナゼまた使うのか、その意図がわからない。物語自体も、何が書きたかったんだか、観念的すぎてサッパリ分からない。
せめてラストに救いがあればいいのに、それもない。


兄弟の和解を描くのに、こんな設定が必要なのか……?
なんというか、ジョナサン・キャロルをパワーダウンして独りよがりにすると、こんな作風になるのかもしれないなあ、と思いました。

ただし前作は、近年まれにみる傑作だったと思います!!←しつこい
(評価★)
以下はげしくネタバレ気味な感想です!
未読の方は読まないでくださいねー。



新三部作、開幕~!というわけで、アツイ期待をこめて手にした、ひさびさのホーガンSF。
こ、これは……!
ヴェリコフスキー理論というトンデモ説をベースにしてるとかは、この際どうでもいい。
私は下巻の途中まで、主人公キーンが 地 球 を 救 っ て く れ る 
のだと思い込んでました!
び、びっくりした……。何のための科学者系切れ者エンジニアなんだよアンタ!
そういうわけで、後半は決死の地球脱出行となり、それはそれで面白かったので別にいいかー、と(丸め込まれやすい読者だ……)。

しかしアレですね、実際にはクロニアみたいな社会が出来るとは思えない。
ホーガンの理想郷なのかもしれませんが、そんなにオレ(地球)が悪いのか、と聞き返したくなる……。私はすばらしいクロニア社会より、おいしいワインのある地球のほうがいいなあ。

次回はクロニア編なのかな?次の展開がまったく予想がつきませんが、楽しみです。
(評価★★★)
おおー、面白かった!

既刊すべて読んでますが、どちらかというと「読みながらテーマについて考えさせられる」というような物語が多く、作品自体を楽しんだのは初めて。
ラストまで、すごくうまい演出で引っ張ってくれます。

過去に主人公が発見した隣人の事故死は、他殺だったのではないか?
その謎解きが軸ですが、他殺を訴えた主人公が当時どのような目に遭ったのか、なぜ二十年もの歳月をかけて真実を暴こうとするのか、なども読者には隠されていて、それが少しずつ明らかになっていく展開は、緊張感に満ちています。

ある程度、いろいろな人間関係を経験してるオトナの人のほうが、楽しめるんじゃないかなーと思います。
(評価 ★★★★★)