連続小話『OLホステスは見た!』第11話です。
気楽にお付き合いください
容姿はNHKのアナウンサーっぽいと言われます。
民放アナウンサーでないのはなぜだろう
そんな私がOLをしていた20代半ばに迷い込んだ、夜の街でのお話です。
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ここから今日のお話。
2回出勤してみて、夜の仕事は自分には向いてないような気がしてきたOL。
足取り重く向かった3回目の出勤日のこと。
瀬川さんという60代後半ほどの男性がお店にやってきた。
「お久しぶりやねえ。嬉しいわあ」
と、ママが駆け寄った。
「せやなあ、ご無沙汰してしまったなあ」
と言いながら、瀬川さんは慣れた様子で一番奥のカウンターに座った。
ママとは古いお付き合いのようで、共通の知人の話で盛り上がる。
わたしは蚊帳の外~♪
しばらくすると他のお客様がいらしたが、ママに言われるままそちらは私が応対した。
お酒を作り終わり、さあ何を話そうか…と思う間もなく。
「連れをママに紹介したいから呼んでほしい」とそのお客様に言われたので、瀬川さんと話し込んでいたママに声をかける。
お客様の方をちらりと見ると、朗らかモードだったママが一瞬でキリっとした表情に。
「つきこちゃん、じゃあ瀬川さんお願いね」
気合をいれるかのようにジャケットの襟元を正すと、スッとお客様の方へ向かわれた。
ママはジャケット×タイトスカートが定番スタイル
瀬川さんがどういう方なのか何の説明もなく。
丁重に扱わねばならないと感じたお客様のときのママはいつもこうだった笑
瀬川さんはそんなママにも慣れているのか、にこやかに私に話しかけてくれた。
「初めましてやね。ここは長いの?」
「まだ今日で3回目なんです。よろしくお願いします」
精一杯の、でもおそらくぎこちないであろう笑顔で答えた。
瀬川さんが何者なのか分からないまま、でも聞いたら失礼だろうから聞けないまま、手探りで会話をはじめる。
瀬川さんも同じように思っていたに違いない。
慣れてきてからは、こういう場合はこちらから名刺を渡し、お客様にも自己紹介をしてもらう流れにしていた
「お店はどう?少し慣れてきたかい?」
「どうなんでしょう。まだまだ緊張します」
「昼は会社員なのかな?そっちの調子はどうや?」
「そちらは2年目でだいぶ慣れきたところです。瀬川さんは最近いかがですか?」
聞かれたことを聞き返す、オウム返し作戦。
なんとなくで聞き返しただけだったのだが、これが思わぬ盛り上がりにつながった。
なんと最近、娘さんが離婚し、幼い子どもを連れ、瀬川さんの家に戻ってきたのだという。
ちょうどその数日前に、「親が裕福だと子どもの離婚率が高い」という記事を読んだばかりだった。
親に経済的余裕があると、「頼れる先がある」と子どもは考え、離婚のハードルが下がる要因になるのだそうだ。
その話をすると瀬川さんは「そうか、そうか、それは面白いね」と言って満足げに、嬉しそうに笑っていた。
父親からすると娘婿に勝ったような気持ちになるものなのだろうか?
ママは紹介されたお客様の相手で手一杯のようで、一向に戻ってこない。
その日はずっと瀬川さんと話していたように思う。
久々にいらっしゃって、ママと話したいだろうに、愚鈍な新人(私)の相手をさせてしまい申し訳ないと思いつつ…
『OLホステスは見た!』第12話に続きます。
更新は不定期です
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