日本の近代音楽史に燦然と輝く黒い星。ニューヨークの屋根裏なんていかなくても、ここにはその先進性・攻撃性、そういった全てがある。
暗黒大陸じゃがたら「南蛮渡来」
アーティスト: 暗黒大陸じゃがたら
タイトル: 南蛮渡来
久しぶりに、日本人のアーティストを紹介しようかと思います。知る人ぞ知る伝説のバンド“暗黒大陸じゃがたら”です。とにかくその特異性は初期から飛び抜けておりました。しかし当初その耳目を集めたのは、音楽ではなくエキセントリックなステージパフォーマンスでした。
ここでは、そのステージアクトについてはあえて書きません。それは彼等がその後決別した事ですし、ここでそのエキセントリックさを書いても、音楽愛好家にとってはなんのメリットも無いと考えます。しかし、そうでもしなければ80年代初期の音楽ジャーナリズムが彼等のような、フェラ・クティ直系のアフロビートとニューウェーブの融合という当時としては極めてマニアックな音楽を、メディアが取り上げるはず無かったのは容易に想像が付きます。この辺りの話は、ジミ・ヘンドリクスと同じようなものを感じますね。。。
1981年5月から、彼等は音楽集団として、音楽で勝負することにしました。そしてちょうど一年後の82年5月に、このファーストフルアルバム「南蛮渡来」が発表されました。このアルバムは各方面から大絶賛を浴びます。そうなんです。もともと音楽性が極めて高いバンドだったのです。
今彼等のアルバムをこうして聞いてみると、フェラ・クティの影響はもちろん、Pfunkの影響や、ダブレゲエの要素、フリージャズの影響、マイルス・デイヴィスの影響、フランク・ザッパの影響などとにかくゴテゴテに煮詰めた、濃厚なエトスを感じます。そして、そこにリーダーの江戸アケミの独特の詩による、攻撃的なヴォ-カルが、コーラスとともに縦横無尽に切り裂きます。
今の時代に出てきても、面白いバンドだと思います。結局ここまでオリジナリティを完成させてデビューするバンドって今あまりいないんですよね。もちろん、演奏とか作曲とかの完成度は、高い人が多いんですが、オリジナリティを追求しきれていないバンドがやっぱり多いと思います。
“じゃがたら”のオリジナリティは常に次の作品を期待させる魔力を持ているし、何をやっても普通にならないそういう面白さがあるんですよね。これって、不変のものなんですよ。バンドの面白さって、こういうところにあると思いませんか?
このまさにバンドらしいバンドからは、多くの才能が生まれました。彼・彼女らは、未だに音楽業界でそれぞれ独自の色を持った正当派異端児として活躍しています。しかし、今“じゃがたら”は多くの人の記憶の中でだけ演奏するバンドになってしまいました。
“じゃがたら”は、1990年1月27日に中心メンバー江戸アケミの死により、その活動を凍結させた。ついに果たした89年のメジャーデビュー(今の時代とはやっぱりその位置付けが全然違うんですよね・・・)の翌年の事でした。確か酔って風呂に入り、溺死したという余りにあっけない最後でした。
江戸さんは、それまでにも精神に異常をきたして活動停止に陥ったりと、そういう部分があったのである意味でいえば、遂にという感もありました。どこか、彼は自分自身を削って音楽に捧げているそんな生き方をしていました。とにかく不器用で、狂気を持った純粋さで暴力的なマインドを持ち、繊細で不安定な存在でした。こんな事をいうと、身近な人に怒られてしまいそうですね。
中・高校生だったDecoyには、日本では珍しい芸術としてポップミュージックに取り組む本物のアーティストに見え、そういう部分が憧れでした。インディーズのショップでも他の中途半端なパンクバンドのアルバムの中で、異彩を放っていました。。。今でもDecoyにとって“じゃがたら”は特別なアーティストです。
各曲の説明をしておきます。1曲目「でも・デモ・DEMO」はアフロ・ビートものです。サックスの咆哮、江戸アケミのヴォ-カル、まさにフェラ・クティです。初めて聞いたときに、最初にやられた曲です。素晴らしい。さながら今ならジャムバンドと呼ばれるような音楽ですね。今の若手ジャムバンドにも(一年前のDecoyですが・・・笑)もっと聞いてもらいたい。23年も前に、既にここに到達してるのです。日本音楽界の至宝です。
2曲目「季節の終わり」はかなりニューウェーブ色の強いパンキッシュな楽曲です。歌詞をとにかくシンプルにし、シングルコイルの多分、テレキャスターをJC120に入れて出している、ギラギラしたエレキギターを全面に出した、楽曲です。初期のレッド・ホット・チリペッパーズを思わせますね。
3曲目「BABY」はPFUNKですねー。ベースの動きが面白いです。PFUNKがうねりのグルーヴだとしたら、“じゃがたら”のものはキレのグルーヴですね。でもこの少し危ない感じの雰囲気、どこか遠くにいってしまいそうな感じは、真似して出ているものじゃあ無いですね。“じゃがたら”とPFUNKが共通で持っているバックグラウンドですね。
4曲目「タンゴ」は日本のバンドらしい日本語ロックの曲です。しかし、ただの歌謡曲にならないのは、その歌詞の素晴らしさによる所が大きいですね。不安感と淋しさと虚しさが伝わって来ます。5曲目「アジテーション」はアフロ・ビートとPFUNKの融合といった所でしょうか?長く続くイントロが、絶品ですね。このゆったりとした曲構成。引っ張って引っ張って、江戸のヴォ-カルが登場します。煽って煽って展開。この落差は面白いです。
6曲目「ヴァギナ・FUCK」これはもうそのまんまですね。ニューウェーブパンクですね。2分足らずの小曲です。エレキギターの攻撃性がうまく出ています。7曲目「FADE OUT」は、潜在的な江戸アケミの自殺願望が吐き出されているような感じの楽曲です。ダブレゲエの影響が濃厚な曲ですね。ダビーな音響処理の施された、霞んだ遠くにある音像の前で、江戸アケミの毒のあるの言葉が吐き出されます。
8曲目「クニナマシェ」は“じゃがたら”流のアフロ・ビートです。この曲もかなり引っ張る構成ですね。コーラスの使い方も面白い。とにかく音が隙間につまっている感じです。でもそれは隙間をなくすという事ではなく、隙間を非常にうまく使っている感じなんです。リズムパートはベースがグイグイグルーヴさせていきますね。子供の声まで登場していよいよカオスになった時、凄く美しいメロディーがどこからともなく降臨してきます。この構成は狙ってるものではないと思う・・・。
9曲目「元祖家族百景」はフランク・ザッパ的な、プログレッシブなロックですね。荒削りな部分もありますが、全てのフレーズがザッパ的なひねりを加えられており、非常に面白いですね。緩急のつけ方も面白いですし、お見事な一曲。べたべたな日本語歌詞なんですけど、楽曲としてあまりベタな感じがしないのは、このひねりのせいだと思います。
10曲目「ウォークマンのテーマ」はいかにもニューウェーブなベースラインが、時代を感じますね。でもこれも変な曲です。最後の方ではダビーな音の処理がされて、ブルースハープなんかも出てきてカオスになっていって・・・テープ編集がとってつけたように・・・でもってザクっと終わってしまいます。
通して聞いてみると、やはり“じゃがたら”は最初からあのままで、結局このまま最後まで存在していたんですよね。そんな感じのいわゆるカテゴライズを拒否する、ごった煮サウンドです。
未体験の方がいたらそのまま未体験でもいいかもしれません。でももし体験できたら、それはそれで面白いと思います。多分。劇薬ですから、不用意にはやはりお勧めできないです。。。でもここには彼等にしか出せないサウンドが確かに存在します。一度お試し下さい。癖になっても知りませんけど。。。笑。それでは。
Love Always,
Peace Everyone,
暗黒大陸じゃがたら「南蛮渡来」
アーティスト: 暗黒大陸じゃがたら
タイトル: 南蛮渡来
久しぶりに、日本人のアーティストを紹介しようかと思います。知る人ぞ知る伝説のバンド“暗黒大陸じゃがたら”です。とにかくその特異性は初期から飛び抜けておりました。しかし当初その耳目を集めたのは、音楽ではなくエキセントリックなステージパフォーマンスでした。
ここでは、そのステージアクトについてはあえて書きません。それは彼等がその後決別した事ですし、ここでそのエキセントリックさを書いても、音楽愛好家にとってはなんのメリットも無いと考えます。しかし、そうでもしなければ80年代初期の音楽ジャーナリズムが彼等のような、フェラ・クティ直系のアフロビートとニューウェーブの融合という当時としては極めてマニアックな音楽を、メディアが取り上げるはず無かったのは容易に想像が付きます。この辺りの話は、ジミ・ヘンドリクスと同じようなものを感じますね。。。
1981年5月から、彼等は音楽集団として、音楽で勝負することにしました。そしてちょうど一年後の82年5月に、このファーストフルアルバム「南蛮渡来」が発表されました。このアルバムは各方面から大絶賛を浴びます。そうなんです。もともと音楽性が極めて高いバンドだったのです。
今彼等のアルバムをこうして聞いてみると、フェラ・クティの影響はもちろん、Pfunkの影響や、ダブレゲエの要素、フリージャズの影響、マイルス・デイヴィスの影響、フランク・ザッパの影響などとにかくゴテゴテに煮詰めた、濃厚なエトスを感じます。そして、そこにリーダーの江戸アケミの独特の詩による、攻撃的なヴォ-カルが、コーラスとともに縦横無尽に切り裂きます。
今の時代に出てきても、面白いバンドだと思います。結局ここまでオリジナリティを完成させてデビューするバンドって今あまりいないんですよね。もちろん、演奏とか作曲とかの完成度は、高い人が多いんですが、オリジナリティを追求しきれていないバンドがやっぱり多いと思います。
“じゃがたら”のオリジナリティは常に次の作品を期待させる魔力を持ているし、何をやっても普通にならないそういう面白さがあるんですよね。これって、不変のものなんですよ。バンドの面白さって、こういうところにあると思いませんか?
このまさにバンドらしいバンドからは、多くの才能が生まれました。彼・彼女らは、未だに音楽業界でそれぞれ独自の色を持った正当派異端児として活躍しています。しかし、今“じゃがたら”は多くの人の記憶の中でだけ演奏するバンドになってしまいました。
“じゃがたら”は、1990年1月27日に中心メンバー江戸アケミの死により、その活動を凍結させた。ついに果たした89年のメジャーデビュー(今の時代とはやっぱりその位置付けが全然違うんですよね・・・)の翌年の事でした。確か酔って風呂に入り、溺死したという余りにあっけない最後でした。
江戸さんは、それまでにも精神に異常をきたして活動停止に陥ったりと、そういう部分があったのである意味でいえば、遂にという感もありました。どこか、彼は自分自身を削って音楽に捧げているそんな生き方をしていました。とにかく不器用で、狂気を持った純粋さで暴力的なマインドを持ち、繊細で不安定な存在でした。こんな事をいうと、身近な人に怒られてしまいそうですね。
中・高校生だったDecoyには、日本では珍しい芸術としてポップミュージックに取り組む本物のアーティストに見え、そういう部分が憧れでした。インディーズのショップでも他の中途半端なパンクバンドのアルバムの中で、異彩を放っていました。。。今でもDecoyにとって“じゃがたら”は特別なアーティストです。
各曲の説明をしておきます。1曲目「でも・デモ・DEMO」はアフロ・ビートものです。サックスの咆哮、江戸アケミのヴォ-カル、まさにフェラ・クティです。初めて聞いたときに、最初にやられた曲です。素晴らしい。さながら今ならジャムバンドと呼ばれるような音楽ですね。今の若手ジャムバンドにも(一年前のDecoyですが・・・笑)もっと聞いてもらいたい。23年も前に、既にここに到達してるのです。日本音楽界の至宝です。
2曲目「季節の終わり」はかなりニューウェーブ色の強いパンキッシュな楽曲です。歌詞をとにかくシンプルにし、シングルコイルの多分、テレキャスターをJC120に入れて出している、ギラギラしたエレキギターを全面に出した、楽曲です。初期のレッド・ホット・チリペッパーズを思わせますね。
3曲目「BABY」はPFUNKですねー。ベースの動きが面白いです。PFUNKがうねりのグルーヴだとしたら、“じゃがたら”のものはキレのグルーヴですね。でもこの少し危ない感じの雰囲気、どこか遠くにいってしまいそうな感じは、真似して出ているものじゃあ無いですね。“じゃがたら”とPFUNKが共通で持っているバックグラウンドですね。
4曲目「タンゴ」は日本のバンドらしい日本語ロックの曲です。しかし、ただの歌謡曲にならないのは、その歌詞の素晴らしさによる所が大きいですね。不安感と淋しさと虚しさが伝わって来ます。5曲目「アジテーション」はアフロ・ビートとPFUNKの融合といった所でしょうか?長く続くイントロが、絶品ですね。このゆったりとした曲構成。引っ張って引っ張って、江戸のヴォ-カルが登場します。煽って煽って展開。この落差は面白いです。
6曲目「ヴァギナ・FUCK」これはもうそのまんまですね。ニューウェーブパンクですね。2分足らずの小曲です。エレキギターの攻撃性がうまく出ています。7曲目「FADE OUT」は、潜在的な江戸アケミの自殺願望が吐き出されているような感じの楽曲です。ダブレゲエの影響が濃厚な曲ですね。ダビーな音響処理の施された、霞んだ遠くにある音像の前で、江戸アケミの毒のあるの言葉が吐き出されます。
8曲目「クニナマシェ」は“じゃがたら”流のアフロ・ビートです。この曲もかなり引っ張る構成ですね。コーラスの使い方も面白い。とにかく音が隙間につまっている感じです。でもそれは隙間をなくすという事ではなく、隙間を非常にうまく使っている感じなんです。リズムパートはベースがグイグイグルーヴさせていきますね。子供の声まで登場していよいよカオスになった時、凄く美しいメロディーがどこからともなく降臨してきます。この構成は狙ってるものではないと思う・・・。
9曲目「元祖家族百景」はフランク・ザッパ的な、プログレッシブなロックですね。荒削りな部分もありますが、全てのフレーズがザッパ的なひねりを加えられており、非常に面白いですね。緩急のつけ方も面白いですし、お見事な一曲。べたべたな日本語歌詞なんですけど、楽曲としてあまりベタな感じがしないのは、このひねりのせいだと思います。
10曲目「ウォークマンのテーマ」はいかにもニューウェーブなベースラインが、時代を感じますね。でもこれも変な曲です。最後の方ではダビーな音の処理がされて、ブルースハープなんかも出てきてカオスになっていって・・・テープ編集がとってつけたように・・・でもってザクっと終わってしまいます。
通して聞いてみると、やはり“じゃがたら”は最初からあのままで、結局このまま最後まで存在していたんですよね。そんな感じのいわゆるカテゴライズを拒否する、ごった煮サウンドです。
未体験の方がいたらそのまま未体験でもいいかもしれません。でももし体験できたら、それはそれで面白いと思います。多分。劇薬ですから、不用意にはやはりお勧めできないです。。。でもここには彼等にしか出せないサウンドが確かに存在します。一度お試し下さい。癖になっても知りませんけど。。。笑。それでは。
Love Always,
Peace Everyone,