歌謡レゲエ?とんでもない!ソウルフルな歌唱力、魂の込められた超一流の演奏、良質な楽曲。名盤です。
Millie「Time Will Tell」

アーティスト: Millie
タイトル: Time Will Tell

ジャマイカン・ミュージック好きにとっては、あのレゲドンって一体どうなんだろーか。。。まあ善し悪しはここでは触れませんが、またジャマイカン・ミュージックが恋しい季節が来ましたね。

最近は、青果店でも寿司屋でも季節を感じることが出来なく成りつつありますね。。。
物流が便利に成ることは素晴らしいのですが、なにかこう夏をずーんと感じられない気がして寂しいものです。ところが逆に、物流が便利に成ることで、季節感が出るように成った分野も有るのです。その代表的なモノが、そう音楽です。

一昔前は、洋楽のレコードは現地発売から、数ヶ月後あるいは1年後とかに初めて入荷してきました。ところが今では殆ど、現地と変わらないダイレクトな反応で世界中の“今”の音楽が入ってきます。ここには、インターネットを含めた通信の強化により、世界的規模で良い音楽が愛されているとも考えられます。

さて今回紹介するレコードは、今のような流通が全然なかった頃、そう35~40年前の名盤です。この度取り上げたのは、ミリー・スモールことミリーの「タイム・ウィル・テル」です。なんと今回の再発に当たって、15曲もボーナストラックが!!(本編以上の曲数。。。)

まあ恐らく彼女の事を知っている方は、なかなか少ないと思いますので簡単に紹介します。ジャマイカ出身のシンガーで、スカ~ロックステディ~レゲエとその時代を、一線で活躍してきました。どちらかというとそのかわいらしいルックスで、アイドルとして扱われる事が多かった様ですが、声はどちらかと言えば低くて非常に、技巧派です。BLUE BEAT GIRL、QUEEN OF SKAの称号も得ています。

ミリーはそのキャリアを非常に速くからスタートし、UKへ移住後、「My Boy Lollipop」(ファーストアルバム収録)の世界的大ヒットで世界的に有名になりました。このアルバムはそんな彼女の1970年発売のセカンドアルバムになります。UKでのやはりクラブヒットとなった「Enough Power」、「My Love And I」「Mayfair」を収録しています。そのイギリスでの人気は凄まじかったようで、最近発掘されたビートルズの映像(DVD)にも登場していたとか?

さて、全体的な内容ですが、スカ、ロックステディというよりはもっとハードでファンキーなスキンヘッド・レゲエです。

スキンヘッド・レゲエは、60年代イギリスの政治背景と密接な関係を持っています。60年代、戦後が終わったその瞬間から、政治的にも社会的にも若者は、ある種の敗北感を味わった(アメリカと同じですね。)。いわゆる目的を失った、ポスト・ウォーという時代です。政治に対して大きな不信感を持ち、大きな夢を持っていても、労働者階級からはい上がることが出来ないと感じた若者達は、等身大の自分自身と向き合うようになり、サッカーを愛し、自分の地元を愛する様に成りました。彼らは、週末のクラブでその苛立ちを、音楽に合わせてガンガンに踊ることで晴らしていました。その彼らが、音楽的に共感していったのが、先進国の政治的な抑圧の元で苦しんでいた60年代後半の西インド諸島の音楽、スカやレゲエだったのです。

これがモッズの始まりらしいのです。その彼らのムーヴメントはその後、パンクを生み、その流れの中で、ジャマイカの音楽との融合はさらに進んで行き、80年代のダブ、ニューウェーヴへと続きます。

さて本題に戻ります。このアルバムはかなりのボーナス・トラックが入っており、その音楽性も非常にファンキーなものから、50年代のソウルミュージックまでと非常に幅広いものに成っていますが、本編は、前出したとおりのファンキーなアーリーレゲエ、スキンヘッド・レゲエです。かなりダビーな空気や、ロックな雰囲気、実は実験的な一面も持っています。

楽曲について細かく説明をしておきます。1曲目は試聴の段階で、一発でやられた「Melting Pot」です。空から名盤が降臨するかのようなイントロのホーン。そして愛くるしく、しかし味わい深いミリーの歌声、そしてホーンの見事なアレンジ、そしてダビーな空間処理、そして、なにより。。。リズム隊の素晴らしさ!ベースとドラムのコンビネーションはこの手の音楽をやろうとしていた当時、Decoyはかなり勉強しました。シンプルなのにウネルんですよ。これは踊れる。

2曲目「My Love And I」では、一変してリゾートな優しい楽曲。しかしオルガンのバッキングとそれに絡むピアノが見事に楽曲を引っ張ります。こういうアレンジ好きですね。歌もイイし、演奏も良い。3曲目「Mayfair」でも1曲目同様の、ダビーなヴォーカルへの空間処理が、どこか遠くへ私たちを連れてゆきます。基本は良質なロックステディ。4曲目では魅惑的な、ミリーの魅力爆発です。とてもキュート。ギターのバッキングやオブリガード、ここでもウネリまくるリズム隊など聴き所も結構あります。

5曲目「Give Me Tomorow」はバラードなイントロから、ファンキーなロックステディへ流れ込みます。これもお手本のようなアレンジです。。。そしてDecoyオススメの6曲目「White Boys」これは、ファンキーでダンサブルな一曲。ポップなメロディラインにイキなアレンジ。名曲。

そして7曲目「Enoch Power」はヒットチューンです。非常にタイトでウネルリズムにのってドゥワップな男性コーラスとの掛け合い、ホーンセクションのオブリガード、全編臨戦態勢のダンスチューン。懐かしく、そして未だに愛される楽曲です。

8曲目「Going To The Circus」はかなり60年代のロック・ポップスの影響を感じさせる楽曲です。エレキギターの使い方といい、ホーンセクションもどちらかというと、あのスペクターサウンドを感じさせます。どこまでもピースフルな素晴らしい楽曲です。

と・・・13曲目「Time Will Tell」までがオリジナルアルバム収録曲。そしてそこから14曲目から28曲目までがボーナス・トラックです。全曲紹介していると、凄いことに成るのでここら辺で楽曲紹介は辞めておきます。

取りあえず言えることとしては、まあ難しい当時の歴史はともかく、イギリスの若者と西インド諸島の若者が同じ文化を共有して、生まれたこの時代のイギリスのアルバムの数々には、その時代でなければ作り得なかった音楽があります。この時代の音楽の一つの入り口として、このアルバムを楽しんで貰えれば幸いです。それではー

Love Always,
Peace Everyone,
部屋の温度が下がる、非常に洗練されたアフロキューバンミュージック。優しくだけd、しなやかな腰にくるグルーヴを持つ音楽
Cool Cool Filin Unit「Cool Cool Filin」

アーティスト: Cool Cool Filin Unit
タイトル: Cool Cool Filin

ボサノバに近いと言えば、近い。
しかし基本的にやはりラテン音楽としての色合いが、フィリンには圧倒的に強い。
非常にリズムもタイトなものがありますし、パーカッションの位置がやはり違うのを感じます。

そもそもこのアルバムに出会ったのは、渋谷タワーの試聴機でした。
当時とにかくガットギターの上手い演奏に飢えていたDecoyは、ガットものはとにかく試聴しまくっていました。ファドやフラメンコ、勿論ハワイアン(ウクレレ・・・ナイロン弦ならば)や、クラシックも。。。でも結局のところ、やはり戻るところはブラジルものかフラメンコでした。
「やはりブラジルとスペインだ!」
と思っていました。

そんな時です。このアルバムを聴いて、不意打ちを食らったのは。。。
このアルバムを初めて聴いた時は、かなりびっくりしました。アフロキューバンの音楽としては、別格の洗練度だったのです。

Decoyのアフロキューバン音楽の印象は、伝統に根ざしたほろ苦いコーヒーのようなイメージでした。しかし、このアルバムを聴いたら、かなりシナモンの効いたカフェラテを感じました。心地よい甘さを漂わせる、この絶品を是非とも多くの方に味わってもらいたい。

簡単にこのフィリンという音楽について、説明をしておきます。1940年代にキューバ音楽に、アメリカのジャズが融合されて生まれたのが、このジャンルの始まりだそうです。あのブエナ・ビスタ・ソシアルクラブ・バンドの歌姫「オマーラ・ポルトゥオンド」もこのジャンルの歌手だったとの事です。そういう意味で言えば、かなり歌謡・民謡曲的な要素も持っていた音楽なのだと思います。

で、今回紹介致しますクール・クール・フィリンは、その伝統のフィリンを徹底的に、R&B、ラップ、を加味して現代風にアレンジしたものです。とにかく無駄な音が無い、究極までに絞り込んだ洗練の美を感じます。そして、またこれらの楽曲を演奏しているミュージシャンのレベルの高さにも、感銘を受けました。ボサノバ好きにも。絶対オススメの内容です。

さて各曲について簡単にふれておきます。
1曲目「Ayer La vi IIorar」はどこかミッドセンチュリーのソファーのイメージを思い起こさせる、そんな包み込まれるような感じの楽曲です。2曲目「Quiero habitarte」は、ガットギターの素晴らしい響きを効くことが出来ます。歌にかかるオブリガードもとても美しいです。3曲目「Realidad y fantasia」デュオという最小ユニットで、間の美学を感じてください。楽曲のレベル恐ろしく高く、演奏のレベルもまたニューヨークのジャズミュージシャン並に高い。

4曲目「Libre」は、これまでの中でも特に洗練されている楽曲です。エレピのサウンドがたまりません。どこか懐かしさも感じ明日ね。5曲目は、これも非常に美しい楽曲で、「Quiereme y veras」ホテルのエントランスホールのような緻密さと開放感を感じてください。とにかく聴く度に新鮮なイメージを与えてくれますね。

全編ユルユルなメロディで、でも真の通ったしっかりしたフィリンサウンド。
北欧の、素晴らしい家具のデザインが目に浮かびます。来るたびに発見の有る、南の島のホテル。今年の夏もまた、暫く滞在してしまいそうだ。。。
それではまた。

Love Always,
Peace Everyone,
大いなる確信を持って、ドロップされた作品。乾いたサバンナにソウルのスコールが降り注ぐ。
Arrested Development「3 Years, 5 Months And 2 Days In The Life Of ...」

アーティスト: Arrested Development
タイトル: 3 Years, 5 Months And 2 Days In The Life Of ...

正直、最初にヒップホップに出会ったときの印象は余り良くなかった。何しろドラムの音もベースの音もとにかくチープに聞こえた。そしてラップもなんだかデモのシュプレヒコールの様で、全然ソウルを感じなかった。良くよく考えてみるとそれは当然で、15年前の日本の中学生の耳に入ってくるヒップホップなんてものは、そもそも白人の二次利用を経て十分に薄められて、そこに砂糖を加えて口当たりの良いものに加工されており、そのメッセージ性や背景にあるカルチャーの欠片さえも、それらは届けてくれなかった。

Fuckの連呼を聴いても別に格好いいとは思わなかった。しかし、そのヒップホップへの思いこみは、良質なアーティストのヒップホップアルバムを聴くことで次第にかき消されていった。やはりオールドスクールや、アンダーグラウンドなものに惹かれました。

その中でも非常に強い影響を与えてくれたミュージシャンがこの、アレェッステッド・デヴェロップメントでした。とにかく当時一世を風靡しました。通常ヒップホップで売れるモノというのは、どこかくだらない二束三文のイメージが合ったのですが、このアレェッステッド・デヴェロップメントは音楽的な質が高くて売れているのが一線を画していました。

そして当時のヒップホップのイメージは、妙にアフリカ系アメリカ人の犯罪者を思わせる暗いものが多かったのですが、このアレェッステッド・デヴェロップメントのジャケット写真は非常におおらかでナチュラルです。彼らの存在は、はっきり言って何もかもが新鮮で真新しくて、Decoyは彼らの音楽性に一発でやられてしまいました。

アレェッステッド・デヴェロップメントのサウンドは、いわゆるヒップホップのサウンドの美味しいところと、伝統的なソウルミュージックの暖かさを併せ持つ素晴らしいものです。ポジティブで尚かつアメリカの今の問題を鋭く追いかけるスピーチのライムは同胞にだけでなく、広く世界に向けたメッセージでした。今聴いても全く古びる気配が有りません。

それでは、楽曲について少し触れておきます。1曲目「Man's Final Frontier」アルバムのスタートを飾るファンファーレの様な楽曲。スクラッチとサンプリング。ファンキーなループ。最初の一分でヒップホップに必要な全てが詰まっている。2曲目「Mama's Always On Stage」では全編にあの「フードゥーマン・ブルース」のジュニア・ウェルズの素晴らしいブルースハープがループされています。面々とブルースの魂は引き継がれている。そんな機にさせる一曲です。Decoyのフェイバリットでもある、なじみやすい一曲です。

3曲目「People Everyday」はレゲエ風のゆったりとしたグルーヴのリラックスしたピースフルな名曲です。4曲目「Blues Happy」たかがインタールード。こういう細かい部分も抜群に作り込まれています。
5曲目「Mr. Wendal」もまたキャッチーで耳に残るサンプリング。ここにも大きな太陽が見え隠れします。どこまでもポジティヴ。

6曲目「Children Play With Earth」ではイントロのビートにグッと来てその後のスラップベースににやりとさせられます。シンプルで最大のグルーヴを生み出す、典型的なリズム例です。7曲目「Raining Revolution」はしっとりと。スピーチの理知的な声が織りなす言葉に自然と耳は傾く。8曲目「Fishin' 4 Religion」ではオールドスクールが顔を出します。

9曲目「Give A Man A Fish」ベースのネタ使いが憎い。このパターンもはっきり言えば掟破り。ヒップホップというより明らかにシンガー・ソングライターに育った。10曲目「U」はドラムン・ベース風。通常ヒップホップでは有り得ないテンポの楽曲です。スネアの音なんかは、明らかに60年代や70年代のファンク系のレコードのそれだ。しかしアレェッステッド・デヴェロップメントは全く新しいものに再構成している。11曲目は2回目のインタールード「Eve Of Reality」夜の訪れを告げるかのようだ。

12曲目は、文字通りナチュラルな楽曲「Natural」。段々テンションが上がってくる。13曲目「Dawn Of The Dreads」はベースがキモ。ドラムとベースでゆったりと重いグルーヴを弾き出す。そして14曲目「Tennessee」。どこまでも澄み切ったテネシーの青い空の下、彼らの物語はまだ続く。ラップと言うより唄と言えそうだ。15曲目「Washed Away」はクールダウンの一曲。どこか不思議な無調性の楽曲。そしてラストはもう一度「People Everyday (Reprise)」。連帯を訴え、未来をみんなで変えていく勇気の力。それが希望というものなのでしょう。

出来ればそのうち、この中心人物スピーチのソロアルバムも取り上げてゆきたいと思う。

Love Always,
Peace Everyone,
天才にしか出来ない作品作り。今聴いても新しい。絶対的にフランク・ザッパなアルバム!
Albert Ayler「Love Cry」

アーティスト: Frank Zappa
タイトル: Hot Rats

初めて耳にしたのは、中学生くらいだった。家庭教師の先生が、この人は凄いから。。。と言って教えてくれた。初めて聴いたがよく分からなかった。

高校生の時は敢えて少し遠ざけていた。どうしても、奇抜なモノより古いブルースやソウル系のギタリストやジャズ系のギタリストや、ライ・クーダーのようなアコースティックなものに目が向けられた。

大学生になり、遅ればせながら、スティーヴィー・レイ・ヴォーン→エリック・ジョンソン→スティーヴ・ヴァイという流れで、いわゆる超絶的なものに向き合った時に、フランクザッパはまた降臨した。ビデオで見たが。。。やはりよく分からなかった。

よく分からないからと言ってCDを中古に売ることのないDecoyは、ずっとそれでも数枚のアルバムをしまっていた。ある日、それは突然やってきた、折しもジャム・バンドというカテゴリが生まれた90年代末もう一度、アルバムに耳を通した。すると。。。

一気にフランク・ザッパの想いが耳から入ってきた。「!」という感じだ。とにかくあまりにもすんなり理解できてしまい、なんとも驚いた。よくよく考えてみると、沢山のジャズアルバムやヨーロッパのプログレや現代音楽を聴いていた、Decoyの耳は相当に深化していたのだ。だから、全然ピンときていなかった、フランク・ザッパの音楽が、とても心地よく変態じみた、狂気のオリジナリティ溢れる音楽が、素晴らしいポップミュージックとして認識されたのだった。

そこからは一気に聴きあさった。アルバム毎に裏切りを行うフランク・ザッパは、相変わらずDecoyをやきもきさせるわけだが、
「これぞフランク・ザッパの中でお気に入り!」
と呼べるアルバムに何枚か、時代をとばして買ってみてたどり着いた。このアルバム「Hot Rats」がそのアルバム。

フランク・ザッパについて簡単に説明をします。
本名フランク・ヴィンセント・ザッパ(Frank Vincent Zappa) 誕生日は1940年12月21日。両親は共にシシリアンな訳ですが、父:ギリシャ・アラブ系、母:フランス系という事で、超混血です。彼の独特な人種のはっきりしないオリエンタルな顔立ちのルーツはここです。父親はかなり多才な人物で、様々な分野に秀でていたようです。

フランク・ザッパの音楽の入口は、どうやらストラビンスキーらしい。前衛的なクラシック。いかにもザッパらしい。最初ドラムをやっていたザッパは高校卒業後にギタリストに。もしここでザッパがギターを持たなかったら。。。それはそれで、きっとドラムの世界で革命を起こしたでしょうね。

フランク・ザッパは、超前衛的なその音楽性で1966年にデビューを飾り、ほぼ口コミでファーストアルバムを20万枚近く売り上げました。勿論その裏には、1週間のうち6日は、1日2ステージのライブをやるという地道な活動が裏には有りました。

その後、彼は1993年のその死まで、2年に3枚はアルバムを出し続ける。はっきり言ってDecoyもまだ彼のアルバムをコンプリートはしていない。。。だからこの「Hot Rats」よりも好きなアルバムが今後でてくるかも知れない。しかし、このアルバムが、Decoyの中でフランク・ザッパのベストの一枚で居続けることは間違いないと思う。とにかくジャズ好き、ジャムバンド好き、現代音楽好き、ファンク好き、そしてロック好き等多くの人に聴いてもらいたいアルバムです。

少し曲目について触れておきます。1曲目「Peaches En Regalia」とにかくイントロから変態的なギターが続きます。フレーズに、天才のひらめきを感じ、その複雑に絡み合うアンサンブルに、ニンマリしてしまいます。素晴らしい。そしてその「序破急」な展開、地上から空に飛び上がり、そして世界の国境を渡り歩きながら、人類を新たなレベルに連れて行ってしまいそうです。これは短いけれど交響曲です。展開が一度きりというのも、いさぎよし。

2曲目「Willie The Pimp」ではヴォーカルでキャプテン・ビーフハートが参加。ごてごてのドロドロなブルースロックでザッパは弾きまくります。弾き倒すとも言える。力技の応酬。

3曲目「Son Of Mr. Green Genes」ではどこか中世のような雰囲気のアンサンブル。本当に国境のない音楽です。そもそもこの音楽は、どういうジャンルなんだろう。21世紀になってもザッパの音楽に、私の表現力は追いついて行けません。それでも明らかに宇宙を感じるとても大きなスケール感。そして一転してジャム・セッションのようなラフなパート。そしてまた「序破急」な展開。シンセの音やパーカッションの音が、左右のスピーカーから飛び出します。ミックスの段階で色々な仕掛けをしているのが解ります。9分間飽きない。何度聞いても勉強になります。

4曲目「Little Umbrellas」これも、なんだか地球以外の国を見てきた観光客の回想シーンのようなサウンドです。ハーモニーがかなりギリギリの危うい所を歩きます。不安なハーモニー。一歩間違えたら不快に成ってしまいそうですが、そこはザッパです。落っこちないように、きっちり壁の上を歩いています。

5曲目「The Gumbo Variations」は大作です。17分近くあります。もちろんそこかしこにフランク・ザッパ流のブービー・トラップが仕掛けられています。イントロのギターフレーズ。それをモチーフにサックスが展開→悶絶していきます。この辺りの持って行き方、ジャムバンド系のサックス奏者「スケーリック」に酷似。彼もかなり影響を受けていると見た。この曲は、とにかく行ききっています。当時存在した様々な演奏スタイルがドンドン数珠繋ぎででてきます。この辺りは、ジャムってるように思えるんですがでもこの構成力はさすがです。。。

6曲目「It Must Be A Camel」は、クールダウンの曲。非常にリラックスしたドラムとベースにピアノが乗ります。しかし、当然それで終われない。このいい感じのトラックの上全体にコラージュのようなサウンドオブジェを配置。スネアドラムになにかエフェクトをかましたノイズやら、倍テンのホーンセクションやらそしたらアレレなんかピアノも調子が?うーん意図的に調子を外している。これ、非常につかみ所が無い楽曲です。不思議。絶対に地球の音楽じゃないよ。これコラージュとして編集されていなくて、譜面で演奏しているんだろうけど。。。ヤバイよ、本当に。

バッハ級の天才のアルバム、一枚くらい持っていてもいいのでは?それでは。

Love Always,
Peace Everyone,
今の時代、自由になるのは結構怖い。だから時に人は自由に音楽と戯れる人に憧れるのだろう。アルバート・アイラーによる傑作!
Albert Ayler「Love Cry」

アーティスト: Albert Ayler
タイトル: Love Cry

アルバート・アイラー。普通に音楽を、普通にジャズを聴いていてもなかなか出会えないミュージシャンの一人です。ここまで注目されるようになったのは、つい最近の事です。やはりサン・ラなんかと一緒で、インプロビゼイション・ミュージックというカテゴリとか、スピリチュアル・ジャズというカテゴリとかで、再評価が進んだ感じです。

そういう流れ、どうもむなしい様に感じてしまいます。妙にお洒落な冠を付ける必要ってあるのでしょうか?そうした方が売れるからなのだろうが、そういう胡散臭い冠は、はやりが廃れると同時になんだか寒いものに成りそうで怖いのです。アシッド・ジャズとか、フリー・ソウルとか今聴くと少し恥ずかしい響きのある言葉ですよね。音楽的には、素晴らしいのに言葉として音楽が古くなっていくんですよね。

サン・ラの作品は今でもその多くはやはり難解ですしアルバート・アイラーだって、当たりはずれがあります。それでも、彼らが時折見せる閃きと煌めきは、この大空の星全ての瞬きと同様に尊いものです。そういう普遍なもの・・・とDecoyは思ってます。

それでも、そう言う流行の唯一の美点は、なかなか人に聴かれない諸作品が、大手のレコード屋さんの試聴機に入るという事でしょう。非常に確率は低いかもしれませんが、全くジャズを知らないパンクの少年が、たまたまアルバート・アイラーを聴いて涙して、
「パンク・サキソフォニストになる!」
と言うような、面白い展開も有るかも知れないですよね。これはとても素敵な事です。

ここで話しをちょっと本作品の主人公、アルバート・アイラーに移してゆきます。1936年生まれのアルバート・アイラーは1970年の謎の死(水死)までの34年間をひたすらナチュラルに、そして激しく生きた。彼の作品は、とにかくナチュラルなのです。子供が初期衝動でサキソフォンを心象風景のまま吹いていく、そんな感じなのです。とにかく人間臭い。どんなにコンピューターで打ち込んでも、彼の作品は再現はまず不可能でしょう。

そんな彼は、やはりその生き様も人間臭い。不器用なんです。ドラッグやったら不味いのに、手を出しては入院。元気になって演奏して、消耗しきってまたドラッグ。結局彼は演奏をするためだけの最低限のもの以外全てを投げ出した。ところが、この人の場合はギリギリまでそぎ落とすことによって生まれる超感覚があって、そこからとてつもない爆発力を見せる。

その最盛期の爆発が、その不器用で熱くてナチュラルな生き方が、このアルバムには吹き込まれている。最初は、戸惑うかも知れないでも、じっくりと聞き込んで欲しい。人間として共感できる瞬間がだんだんと、何カ所も見えてくる。気が付くと、切ない気持ちとともに熱く握り拳。そして人生の勝負への挑戦のための、エネルギーが生まれてくる不思議な気分になれる。

音楽など、何を聴いても同じ。よく分からないと仰るあなたに、是非ともこういう本物の音楽を聴いて貰いたい。音楽を聴くという行為は、音楽を通して演奏者の心と自分の心が対峙していく事であり、
それを通して得る感動は、一流のシェフの料理や、素晴らしい映画や、巨匠の文豪の書き上げる小説で感じる感動となんらかわりないのですから。

少し、各曲について触れておきます。1曲目「Love Cry」はファンファーレで始まる。このどこか儀式の始まりを告げるラッパを感じさせるモチーフが続く。そこに声がからみ、極太のウッドベースがからみつく。腰の入った音楽である。2曲目「Ghosts」は超有名曲。サキソフォンとトランペットによるテーマが感動的です。裏でドラムはかなりスキにやっています。

3曲目「Omega」では、ハープシコードも加わり非常にオリエンタルな感じです?4曲目「Dancing Flowers」人間が孤独と対峙していくようなそんな様が見えました。5曲目「Bells」こちらもテーマが感動的です。6曲目「Love Flower」もハープシコードの神秘的なフレーズです。かなり自由度の高い楽曲です。そして7曲目「Zion Hill」、8曲目「Universal Indians」こちらもかなり自由な楽曲です。アイラーはドンドン自由に飛翔してゆきます。

とにかく、始まって終わりまでどんどんテンションが上がっていくこの独特な感じを、是非体験してみてください。それではまた。

Love Always,
Peace Everyone,