大いなる確信を持って、ドロップされた作品。乾いたサバンナにソウルのスコールが降り注ぐ。
Arrested Development「3 Years, 5 Months And 2 Days In The Life Of ...」

アーティスト: Arrested Development
タイトル: 3 Years, 5 Months And 2 Days In The Life Of ...

正直、最初にヒップホップに出会ったときの印象は余り良くなかった。何しろドラムの音もベースの音もとにかくチープに聞こえた。そしてラップもなんだかデモのシュプレヒコールの様で、全然ソウルを感じなかった。良くよく考えてみるとそれは当然で、15年前の日本の中学生の耳に入ってくるヒップホップなんてものは、そもそも白人の二次利用を経て十分に薄められて、そこに砂糖を加えて口当たりの良いものに加工されており、そのメッセージ性や背景にあるカルチャーの欠片さえも、それらは届けてくれなかった。

Fuckの連呼を聴いても別に格好いいとは思わなかった。しかし、そのヒップホップへの思いこみは、良質なアーティストのヒップホップアルバムを聴くことで次第にかき消されていった。やはりオールドスクールや、アンダーグラウンドなものに惹かれました。

その中でも非常に強い影響を与えてくれたミュージシャンがこの、アレェッステッド・デヴェロップメントでした。とにかく当時一世を風靡しました。通常ヒップホップで売れるモノというのは、どこかくだらない二束三文のイメージが合ったのですが、このアレェッステッド・デヴェロップメントは音楽的な質が高くて売れているのが一線を画していました。

そして当時のヒップホップのイメージは、妙にアフリカ系アメリカ人の犯罪者を思わせる暗いものが多かったのですが、このアレェッステッド・デヴェロップメントのジャケット写真は非常におおらかでナチュラルです。彼らの存在は、はっきり言って何もかもが新鮮で真新しくて、Decoyは彼らの音楽性に一発でやられてしまいました。

アレェッステッド・デヴェロップメントのサウンドは、いわゆるヒップホップのサウンドの美味しいところと、伝統的なソウルミュージックの暖かさを併せ持つ素晴らしいものです。ポジティブで尚かつアメリカの今の問題を鋭く追いかけるスピーチのライムは同胞にだけでなく、広く世界に向けたメッセージでした。今聴いても全く古びる気配が有りません。

それでは、楽曲について少し触れておきます。1曲目「Man's Final Frontier」アルバムのスタートを飾るファンファーレの様な楽曲。スクラッチとサンプリング。ファンキーなループ。最初の一分でヒップホップに必要な全てが詰まっている。2曲目「Mama's Always On Stage」では全編にあの「フードゥーマン・ブルース」のジュニア・ウェルズの素晴らしいブルースハープがループされています。面々とブルースの魂は引き継がれている。そんな機にさせる一曲です。Decoyのフェイバリットでもある、なじみやすい一曲です。

3曲目「People Everyday」はレゲエ風のゆったりとしたグルーヴのリラックスしたピースフルな名曲です。4曲目「Blues Happy」たかがインタールード。こういう細かい部分も抜群に作り込まれています。
5曲目「Mr. Wendal」もまたキャッチーで耳に残るサンプリング。ここにも大きな太陽が見え隠れします。どこまでもポジティヴ。

6曲目「Children Play With Earth」ではイントロのビートにグッと来てその後のスラップベースににやりとさせられます。シンプルで最大のグルーヴを生み出す、典型的なリズム例です。7曲目「Raining Revolution」はしっとりと。スピーチの理知的な声が織りなす言葉に自然と耳は傾く。8曲目「Fishin' 4 Religion」ではオールドスクールが顔を出します。

9曲目「Give A Man A Fish」ベースのネタ使いが憎い。このパターンもはっきり言えば掟破り。ヒップホップというより明らかにシンガー・ソングライターに育った。10曲目「U」はドラムン・ベース風。通常ヒップホップでは有り得ないテンポの楽曲です。スネアの音なんかは、明らかに60年代や70年代のファンク系のレコードのそれだ。しかしアレェッステッド・デヴェロップメントは全く新しいものに再構成している。11曲目は2回目のインタールード「Eve Of Reality」夜の訪れを告げるかのようだ。

12曲目は、文字通りナチュラルな楽曲「Natural」。段々テンションが上がってくる。13曲目「Dawn Of The Dreads」はベースがキモ。ドラムとベースでゆったりと重いグルーヴを弾き出す。そして14曲目「Tennessee」。どこまでも澄み切ったテネシーの青い空の下、彼らの物語はまだ続く。ラップと言うより唄と言えそうだ。15曲目「Washed Away」はクールダウンの一曲。どこか不思議な無調性の楽曲。そしてラストはもう一度「People Everyday (Reprise)」。連帯を訴え、未来をみんなで変えていく勇気の力。それが希望というものなのでしょう。

出来ればそのうち、この中心人物スピーチのソロアルバムも取り上げてゆきたいと思う。

Love Always,
Peace Everyone,