ゴクドーくん漫遊記 アニメ 紹介 | デブリマンXの行方

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いつか見えない社会問題になると信じている自分のような存在について、自分自身の人生経験や考えたこと、調べたことをまとめ、その存在を具体的にまとめることを目的とする。

 

2年前に購入した「ゴクドーくん漫遊記」のDVDを見直した。

アニメの第1話は唐突に始まり、世界観の説明も何もないため、初めは何が何だか分かっていなかったが、視聴が2週目であることと最近まで「スレイヤーズ」を見ていたことで、内容がスッと理解できた。購入した当初は、この後に書く購入の経緯から「スレイヤーズ」のパクリか何かという先入観があったのだが、見直してみるとまるで違う作品だった。

 

購入の経緯であるが、まずアニメのOPが凄い魅力的なこと。とりわけサビ以降の映像がシンプルながら、オープニングテーマの「プリズム」と相まって、中も見てみたくなるアニメOPだったと言える。OPの出来が良過ぎると中身が負けるというのはよくあるが、本作は良いバランスだと思う。ちなみに、オープニングテーマ「プリズム」であるが、オタクウケするキャッチーな曲でありながら、音楽配信がどうもないらしい。どうしても欲しかったわたしは、CDをネット注文した。今は珍しいコンパクトディスクである。歌詞は激しい恋の歌だが、アニメの内容とは一切関係ない。

次に、これが決め手となったことなのだが、この作品の原作ライトノベルは、原作者の中村うさぎさんが「ライトノベルはお金になる」と聞いて書いたものだということ(出典は忘れた。ニコニコ動画のコメントだったかもしれない)。

まあ、お金のために小説を書くこと自体はおかしくないが、それを女性がこの作風でライトノベルでアニメ化までやってのけたという点がとても非凡に感じ、その内容がとても気になったのが正直なところ。原作者の話をもう少しすると、この人の人生も非凡そのものというか、驚くほど先進的な価値観の人である。有名どころからすると、タレントのマツコ・デラックスさんのスターダムの1段目にこの原作者の存在があるらしい。

また、中村うさぎさんは現在はエッセイストとしての方が有名で、代表作も「ゴクドーくん」ではないようだ。そのうち読むこともあるかもしれない。

 

上記のように濃い原作者から生まれたこの作品。

OPを見ると珍しくもなんともないファンタジーな雰囲気であり、物語序盤も王子や魔王やお城や魔女という子ども向けの昔話にアンチヒーローを活躍させるような内容だが、物語全体を通してみるとアジア圏の世界観が強い。基本的に敵対するのは神か仏なのだが、作中で魔族が阿修羅と呼ばれることがあり、その意味でも仏教系のルーツを持っていたりする。と言っても、名前とキャラクター自体はそれほど重要ではなく、オマージュか何かである。世界観が作り込まれていた「スレイヤーズ」と比べると、世界観は全く重要では無く、内容も表面的な行き当たりばったりで、その点については金のために書かれたラノベと言われても納得する。

 

主人公の名前は「ゴクドー・ユーコット・キカンスキー」

読んで名の如しの主人公で、やることなすこと悪と言うか子悪党である。ただ、この世界のキャラクターは倫理的にアレなキャラが多いため、ゴクドーだけが特別外道かと言われるとそうでもない。むしろ、自分の利益に結びつくことしかしないだけマシまである。利己主義故に合理的で、幼稚な世界観における説教役のポジションを担う。ちなみに名前のゴクドー(初期の原作表記「極道」)は、仏教用語で「道を究めた者」であるため、世界観との関連は深いのかもしれない(後付けの気がするけど)。

 

この作品にテーマがあるかどうかはよく分からないが、主人公の性格から「利己主義と自己責任」に焦点が当たることが多い。作中のキャラクター達は、味方サイドが利己主義で自己中心的な人物が非常に多く、敵は神や仏など、そういった人間の弱さを戒めようとするものが多い。戦況が不利になるとすぐに寝返る、味方がミスをすればすぐさま仲間がそれをバカにするのは当然の流れで、ゴクドーが死んだと思うとルーベットとジンがようやく感情的になる程度の関係である。この世知辛さが徹底されていることは、本作最大の特徴と言えるかもしれない。

 

本作は「スレイヤーズ」よりも子ども向けな印象だが、現実にある神や仏といった要素を取り込んでいることで、時折哲学的な内容に発展することがある。そういう意味では、教養として優れた面のある作品と言えるかもしれない。また、ゴクドーの利己主義と自己責任についての考え方も徹底されており、とりわけ他人をアテにしない自己責任についての考え方は、誇大解釈すると現代の人にも大きく刺さる。とは言え、これは見なくちゃ人生損する作品!!とかそういうわけではなく、見ても損しない作品といった感じ。ただ、作風や展開の古くささ自体は否めないので、そこが気になる人にはお勧めしない。個人的に、戦闘シーンがすんなり終わってダレないの点は評価高い。