ナニワ金融道 1巻 感想 | デブリマンXの行方

デブリマンXの行方

いつか見えない社会問題になると信じている自分のような存在について、自分自身の人生経験や考えたこと、調べたことをまとめ、その存在を具体的にまとめることを目的とする。

 

経済の勉強をしようと思ってとりあえず1巻だけ購入。

近年流行った漫画だと「闇金ウシジマくん」に近いけれども、あちらは完全なアウトローなのに対してこちらは日の本を歩ける方。また、あちらは画力の高さでストレートにエグい描写をするため、わたしは1巻もまともに読めていないが、こちらはそこまで危険な領域には踏み込んでいない。

 

この漫画を読む上で大切なキーワードは「約束手形」を初めとする「手形」。

金融慣れしていない自分からすると理屈は分かるが理解には至っていない概念であり、現実での接点もないので、読んでいるとわたしの脳みそが「難しい話!!」と思い込んで糖分を消費しているのを感じる。

とりあえず、上記のサイトに書いてある「約束手形のメリット・デメリット」の部分を把握すれば1巻を読むには困らない。

少し横道に逸れるが、この漫画内で登場する紙の手形は、2026年末までには全面的にデジタル化するようだ。(一般社団法人 全国銀行協会より「https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/news/news341018.pdf」)

 

この漫画の勉強になるところは華やかさのないリアリティにある。

主人公が面接に落ちた理由や、金を借りることに抵抗がなくなった人々のどこか余裕を感じさせるところなど、世間一般の通念からは逸脱しているものの、そこまで含めてリアルである。

 

主人公が入社した会社はアウトローではないものの、「バレなきゃ犯罪ではない」が徹底されていて、やっていることはヤクザと見紛うことが多い。違うところは恐喝よりも小手先のテクニックによるものが多いこと。他人の戸籍謄本を取得する手法は、ハンコ社会の無意味さを象徴している。まあ、そういったバレなきゃセーフの技術が発展したことで、世の中の規制や個人情報の取り扱いは大変厳しくなったのではないだろうか。

もっとも、そういった技術が磨かれているから今も高度な詐欺が次々と誕生しており、末端の人間に全ての泥を被せるような組織的犯罪も生まれているのだろう。

悪名が無名に勝り、犯罪する方が得な世の中では「騙される方が悪い」となるし、なにより騙す奴は「騙される方が悪い」と相手に告げるほど正直ではない。この辺りのリテラシーは生きていく上で必須だろう。相手の行為が残酷であることを理解するためには、自分もその行為の残酷さに通じていなければならない。

 

この漫画は弱者を食い物にしている金融業の話であるが、忘れてはいけないことは、現実はこの漫画よりもしたたかで、分かりにくく、よりエゲつないということ。現実と距離を置いて法律の中で生きるためには、それ相応の知識と経験と環境を変えるための覚悟が求められる。弱者に転落してから這い上がれるのは、実は強者だったものだけである。本当の弱者は転落したら二度と這い上がれない。とにかく足場を固めて進むほかないとわたしは思う。