今日、19:06代々木上原発の急行をモノ挟みで停めて3分遅らせたのは私です。
ジャンバーのポケットに入っていたメガネは真ん中からひん曲がりました。
勿論、宝くじは当たりませんでした。
もう暴れても仕方ないので淡々とお金が無くなりました、とひめに報告しました。
いい意味でも悪い意味でも慌てない人なので、淡々と受け入れたように見えますが、どう理解したのかは正直わかりません。
年末年始のあいさつにかこつけて仕事をくれそうな人に連絡をしてみたり、海外の転職サイトに登録してみたりしていますが、ドリームジャンボより可能性があるとは思えません。
それでもまだ真剣に生き死にを考えるほど追いつめられていないのは、いままでなんとなく危機を切り抜けてきているからだと思います。
学生の頃はそれはそれは貧乏でしたが、親元に逃げ込もうと思えば逃げ込める位置に住んでいましたから危機感を感じたことはありませんでした。
人生で一番最初に金銭的に危機になったのは最初の妻に逃げられた時でした。
彼女の名誉のために言っておきますが、お金が無くなったから逃げたわけではありません。
お金がなくなって私に心のゆとりがなくなって、彼女に当たってしまったので逃げたのです。
バブルがはじけて、食わしてもらってた会社から仕事が来なくなって、パチンコ依存症になりました。
うちを出ていく彼女の引っ越し荷物をレンタカーで運んで、帰ってきた時に燃料を満タンにするお金がなかったのを覚えています。
本とバイクを売って、保険を解約して食いつないでいるうちに運よく友人からゲーム制作の仕事の声がかかり、気がついたら曲がりなりにも人を雇って仕事をするようになっていました。
何年かやった後、販売元と喧嘩別れしてまた仕事がなくなりました。
飼っていた猫が死にかけていたので看病にかこつけて仕事を探すこともなく、オーム真理教が逮捕されるあたりから阪神大震災が起こるあたりまでずーっとワイドショーを見て過ごしていました。
3月1日に猫が死にました次の日に弔ったその足でサラ金にいってお金を借りました。
その次の日、面接に行き、清掃のバイトを始めました。
清掃のバイトをしている間、サラ金に借りたお金で食いつないでいました。
月末には上限いっぱいまで借り切ってしまって、バイト料を全額返済に突っ込んで、次の月まで少しづつ借りながら生き延びる生活でした。
今思えばこの時は人生の最底辺でした。
漫画でも芝居でも絶対自分が勝てない人たちを見てしまったので、これ以上戦う気になれず、プログラマとしては使い物にならないスキルしか持ってないことがわかっていましたし、なにより興味を失っていました。念願だったゲーム制作でも限界を見てしまって、これ以上将来に何かできる気もせず、さすがにもう人生だめかなぁと思っていました。
学生のころから兎に角物書きになりたくて、でも自分が成功した姿が想像できず、多分野垂れ死ぬんだろうなと漠然と思っていた、その未来がやってきた感じでした。
なんでだか遠い知り合いの紹介で会社務めをすることになっていたのもきっと自分にまだ運があったからでしょう。
今考えるとなぜあの会社が自分を雇う気になったのか不思議です。
たまたまおかしなものが好きな、不思議な人が面接をしてくれて、それをまた変人に紹介してくれて、それでなぜか契約してくれたのです。
本当に細い細い一本の糸がつながった奇跡でした。
それが奇跡だったんだなぁと気が付いたのは、ごく最近でした。
なぜかプログラムのエキスパートという触れ込みになっていて、調子に乗りやすい自分はその気になってしまって、嘘を嘘で塗り固めている間になんとなく力が付いてきてしまった、というのが真相です。
フリーでいろいろやってきたから会社勤めのエンジニアなんかより経験値が高いんだよ、とうそぶいていましたが、大学卒業してからずっと一つの仕事に専念していた人に、だらだらごろごろその日暮らしをしていた私が勝てるわけないんです。
気が付いたらサラ金の借金は完済、人生二度目の危機からもなんとなく脱出していました。
結婚して、子供ができて、契約だった会社に正社員で入社して、このまま何事もなく社会人として死ぬまで安泰だと思い込んでいました。
社会は不景気でしたが、忙しいなりに収入がある自分は勝ち組だと思い込んでいました。
馬鹿でした。
会社員になったら収入が減りましたが、生活は変えられなかったのでじりじりお金が無くなって行きました。
このままだとまたサラ金だなーと思っていたら会社が売られてなんでか退職金が支払われました。
それを使い切ってやっぱりサラ金だなーと思っていたらまた会社の名前が変わって退職金が支払われました。
たった5年の会社員生活で3回退職金をもらいました。
3回とも直前には預金が底をついていました。
3回目は会社を辞めさせられたので結構まとまった金額の退職金をもらいました。
折角だから失業保険を満額もらって見ようかなんて思っていたら、本当に満額もらいきって、もらえなくなっても職が見つかりませんでした。
退職金も一年でものの見事に使い切りました。
節約したら負けだから、というのがひめの理屈でしたが、失業中に8桁使い切ったのはさすがです。
銀行口座がマイナスになるかならないかの瀬戸際あたりである会社に拾われました。
最初は月10日勤務のバイトでした。
2か月くらいでお客さんに気に入られて事実上常勤になりましたが、収入はぎりぎり現状を維持するくらいでした。
毎月銀行預金がマイナスになり、月末になると収入を全額突っ込んでプラスに頭が出て、徐々にマイナスに行っての繰り返し。
この会社はバイトのつもりだったので、正社員の口は別に探していました。
一つ、そこそこの金額で正社員にしてくれるという内定をもらったのですが、ちょっと胡散臭かったので今の会社と天秤にかけてみました。
その会社が正社員で雇ってくれると約束してくれたので、内定をもらった会社は断りました。
多分これは間違いでした。
今どんなに探しても、この会社が出してくれた条件なんて絶対に出てきませんから。
その会社には結局2年勤めましたが、固定給にするという約束も、正社員にするという約束もいつの間にか消えていて、歩合制にするから基本給0にすると脅されて、この会社ダメだなぁと気が付いて、まともな会社を探し始めました。
今の会社は最初の会社の同僚から呼ばれた会社です。
自分の専門とはかなり毛色が違う会社です。
正直この会社で自分になんの仕事ができるのかわかりませんでした。
それでもまともに商売している日本の会社なので、藁をもつかむ気持ちで入社しました。
給料は最初の会社の半分になりました。
前の会社よりも手取りは少ないです。
それでも給料日の関係でちょっとしたボーナスくらいの金額が手元に残りました。
こぞうが私立の中学校に入り、入学金やらなんやらで出費がかさんでだめかなぁと思っていたのが救われました。
普通の日本の会社はとても居心地がいいです。
自分が必死に働かなくても明日会社がつぶれるような危機感に煽られることはありません。
毎日定時に会社に行って、席に座って与えられている仕事をこなしていれば、少ないとはいえ決まった金額を決まった日にちに振り込んでくれます。
今、お金がない以外はとても安定した、安らかな生活ができています。
今でも気持ちはこの会社に籍を置いている間は死なないと思い込んでいます。
冷静に、客観的に計算すると破産するんだと、理性ではわかっていても、体が付いて行かない感じなのです。
サラリーマンの子供なので、会社に入っていれば生活に困ることはないと信じているからなのかもしれません。
何度も何度も危機を救われてきたから、今度も何とかなるような気がしているからのような気がしています。
でも、もう救われるネタがありません。
宝くじくらいしかないんです。