もしかしたら私は人生で一番、勝負するのにいい時期にいるのかもしれない。


スキー場で子供たちについていけなくなってリタイアして、休憩所で休んでいたら面白い電波を受信した。
宝くじ買うより少しはマシな勝負ができるかもしれない、と思った。
ヒントはスマート・ウオッチ


毎日定時に帰れる、大して忙しくもない仕事をして、生きていけないこともない給料を頂いて、家に帰れば好きなことをする時間がある。
清貧に満足することなく絶えずモチベーションを掻き立ててくれる家族が居る。


50という歳を言い訳にしていたのも、よく考えたら大間違い。
責任もなく、世間に甘やかされていて、元気があって頭の回転も早い若いころにやっとけばもっと楽だったのかな?
やりたいことはやり尽くして後悔することもなく、世間に期待されず、肩の力が抜けて落ち着いてきた今よりはるかに有利だとは言えないんじゃないかな?
残された時間は短いけれど、それは失敗しても負け逃げが簡単ってこと。失敗したら残りの人生どうしようという恐怖は若いころの方がはるかに大きいはず。
20代で気が付いて、成功しようと思ってたらきっと30代で失敗することが怖くてやっぱり何もできなかったと思う。自分はそうだった。
残り長い人生を負け犬で過ごす恐怖に負けていた。


漫画描きになるって言って、就職しなかったのはいいが、大したこともせずコンビニのバイトで食いつないでいた20代のあの頃。離婚してもまだ自分と社会の立ち位置がわからず、死にかけた猫の世話だけしていた30代のあの頃。会社をリストラされて、次の会社なんてすぐに見つかっちゃうんだから保険が出ている間は仕事したら負けだよねって思っていた40代。

膨大に浪費してきた時間を有効に使っていれば今の俺がバラ色の人生を送っていたのかと言うと、多分それは大間違い。
20代には20代、30代には30代、40代には40代の、なにもできなかった理由があった。
夢ばかりでかくて、一筆書き繋がるそこに至るまでの道筋が見つからず壮大に空回りしていた20代。
未来の俺が「40代になったら英語使える奴が勝つぞ、やっとけ」って言ったって理解できる基礎が全くない。
C書くのがつまらなくて、C++覚えるの面倒くさくて、プログラムなんてやってられるかと思っていた30代の俺に「Androidでお前のやりたかったこと大体できるぞ、今のうちにJava押さえとけ」って言われても、聞く耳持つはずがないし。
会社員なんだから次は上のランクに転職しないと負け組とか信じて疑わない40代の俺に「お前の賞味期限切れてるから無理だよ」って言ったところで信じる理由がどこにもない。
全部やって、気が付くのにこれだけの時間と経験が必要だったんだからそれはしょうがないんだと思う。

色々ぶつかって、迷惑かけて、恥かいて、それでやっと50超えたところで、社会は人と人の信頼関係で回ってるんだとか、俺が正しいから俺に従えって言って従う奴なんていとか、尊敬されたいと思ってる間は尊敬なんてされないんだとか、そういう当たり前のことにようやく気が付いた。

10代で気が付いたやつは10代から伸びるんだろうね、俺50になって気が付いたからやっとこれからなんだよ。

それでついこの前まで、10代、せめて20代で気が付入れてばよかったって後悔してた。
正確には後悔しなきゃいけないんだろうなぁって思ってた。
実はどうしても後悔の感情が沸かなくて、そっちのほうで困ってた。
でも、20代で気付いてたら完全に勝ち組かっていうとそうでもない気がする。


会社の社長、会長と飲んで絡んだけど、全く勝てなかった。
私が100円200円ケチって生きているのに10億100億の稼ぎの話を真剣にできる。
正直下品だなぁと思ったが、それでも10歳違わない人間が桁の違う話をするのは、歩んできた人生の違いなんだなぁと感じざるを得ない。
前の会社で本社から30そこそこのエグゼクティブが来て偉そうにしゃべってた時にはこいつら馬鹿じゃねぇかと思って嘲笑していたけれど、今、まっとうに社会の歯車の中で金を動かしてる人たちはすげえリアルだ。

私は本当に社会の尺度で測られるのが嫌で逃げ回っていたけれど、社会と向き合って価値を高めることに執着していた人たちの努力は、50になってはっきり違う。素直に尊敬できる。
その尺度は金になる。その構造もやっと理解できた。
同じ夜中にヘルメットかぶって棒切れ振り回しているのに野球選手と道路工事のおっさんの収入に雲泥の差があるのか。むしろ道路作ってる分工事の方が価値があるんじゃね?と思っていた私。
結局のところ、金っていうのは社会という枠組みの中でどれだけ人の心を動かしたかを示す尺度なんだね。
どんだけ役に立ったかは別の尺度で測られるかもしれないけれども、お金じゃないんだってこと。
なにが言いたいかって言うと、金なんてやっぱりつまらない、私にとってどうでもいい話。
だから金が無いって文句を言うのはまったく筋違い。
だからっていって、何もしないで死んでいくのはこれもまた筋違い。
生きている限り何かしていこう、って思ったって話。

10億100億稼ごうって言う人と同じレベルで金の話する気はないけれど、10億100億稼ごうって人の目をまっすぐ見て同じレベルのことを語れる人間にはなりたいって強く思った。


自殺するまで思いつめられたらどこぞの文豪のように歴史に名前を残すような偉業が残せるのかもしれないけれど、悩みが続かない私は思いつめる才能もないんだなぁと思った。