犬の想いで、、、その13<ふうちゃんと仲間たち>
ヒラメちゃんが新しい家族の許に巣立ってから、ガレージが寂しくなりました。
しかし、ふうちゃんには寂しがる暇はありませんでした。
新しい仲間がやって来たのです。
それは、小さいニャンコ
♀と 1匹のリスザル♂
動物好きの夫に掛ける歯止めは無いようです![]()
ニャンコの名はトト、、、リスザルはキキ、、、
その頃には、ふうちゃんは子供時代に好きだったソファを卒業していました。
ただし、車での移動中に入っていた小さなボストンバッグを見つけると、前足を突っ込んでキョトン
としています。
ふうちゃん、、、大きくなったね
リスざるキキは、相当なヤンチャ者です。
トト
の尻尾を掴んだり、、、おやつを横取りしたり、、、
ふうちゃんの頭に飛び乗って、耳を引っ張ったり、、、
ふうちゃんが大事に小屋の奥に隠している、ワンコ用の歯磨きガムを盗み取って、自分のケージに隠したり、、、
マンションに連れて帰ってお風呂に入れてあげると、、、
あ~あ、ええ風呂やった、、、と気持ちよさそうにデッカイ態度です。
トト
だって、平気でふうちゃんの頭に乗っかります。
ふうちゃんはというと、迷惑そうな顔をしながらも動じることはありません。
土佐犬ですから、元々の顔つきが、タレ耳・タレ目・タレ頬なんで、、、ね。
その頃、マンションにはインコも居ました。
娘はペットたちに育てられたと言っても、過言ではありません。
ふうちゃんは首輪は付けていましたが、散歩の時以外はロープ無しです。
半分開けられたガレージのシャッターの下で、悠々と昼寝を楽しむ毎日でした。
近所には他に大型犬を飼っているお宅はありませんでしたら、犬好きの子供たちとも仲良しでした。
娘が小学 3年生の春の午後、ふうちゃんが変な格好で昼寝しています。
上半身だけを小屋から出して、、、
ついさっき迄は、普通に歯磨きガムを噛んでいたのに、、、
娘より 1歳年上ですから、彼女は 9歳になっていました。
恐らく、心臓か、、、脳卒中、、、
下校した娘は、大きな箱に入って眠るふうちゃんを見て泣きました![]()
彼女にとってふうちゃんとの別れは、初めてのペットの死の経験でした。
おっとりした性格で、無駄吠えも無く、賢くて大人しいふうちゃん、、、
私には、学生時代に飼っていた秋田犬、うお~ん
と尻尾ペンペン
のクロの想いでが重なりました。
人よりも短命の、ペットとの別れを避けることは出来ません。
ふうちゃんとの別れで、感じました、、、
ペットたちは、順々にその命を繋いでくれている、、、
新しい子が前の子の命を継いで、また私の許にやって来る、、、
これからも悲しい別れがあるに違いないけれど、縁あってやって来る子がいれば、精いっぱい育ててあげよう、、、そう思いました。
犬の想いで、、、その12<ふうちゃんと赤ちゃんブル>
まだお母さんが恋しいのか、赤ちゃんブルたちはふうちゃんの後を追います。
ヨチヨチ、、、ヨチヨチ、、、ちゃんと歩いているのですが、短足ですから、、、
お座りをしていても、立っているのか
座っているのか![]()
オシッコ
をすると、お腹が濡れます![]()
ふうちゃんはというと、赤ちゃんブルたちを大歓迎![]()
ふうちゃんが横たわると、ブルたちがオッパイを吸い始めました![]()
よく見ると、驚いたことに、オッパイが出ているのです![]()
動物の母性って、すごい、、、感動![]()
彼らは、いつも一緒にいました。
ご飯は、大きいボウルが 2つ。
一つはふうちゃんのご飯。
もう一つには、ブル 2匹が身体ごと入り込んで、、、
ご飯つぶだらけの縦より横に長い顔を、重たそうにかしげます![]()
その顔が似ているので、彼らの名前は、チエちゃんとヒラメちゃんに決定![]()
私たちは、マンションから店に通っていました。
毎朝、おはよう
ふうちゃ~ん
、、、と声を掛けると、喜んで 3匹が小屋から出てきます。
ある朝のこと、ころころと出てくるヒラメちゃんの後を、ゆっくりとふうちゃんが、、、
まだ眠たいのか、チエちゃんが出てきません。
ふと、ガレージから店に通じる土間を見ると、、、一つ、、、二つ、、、と、割れた卵が、全部で4個。
何か様子がいつもと違う、、、
小屋の中のチエちゃんは、じっとして動きません、、、え、、、息をしていない![]()
前日、近所の子供たちが、赤ちゃんブルの抱き合いっこをして遊んでいました。
子供たちが帰ったあと、、、チエちゃんが、ハイハイをしています。
よく見ると、後ろ足が脱臼していたのです![]()
獣医さんに直してもらいましたが、どこか他にもダメージがあったのかもしれません。
チエちゃんを抱き上げようと夫が小屋に入る、、、と、生卵が 3個、、、
動かなくなったチエちゃんの為に、何度も失敗しながら厨房から卵を運んだ![]()
夫の腕に抱かれた、くったりとしたチエちゃんに顔を近づけ、くう~ん![]()
ふうちゃんの悲しそうな声、、、
まるで、ぬいぐるみのワンコみたいに、じっとしているチエちゃん、、、
近所の子供たちのせいではありません。
私たちの不注意でした。
ごめんね、、、チエちゃん、、、![]()
ごねんね、、、ふうちゃん、、、![]()
その 2カ月後、ヒラメちゃんの正式な家族が決まりました。
私たちは、夫の友人の家で生まれたものの、貰い手の無い赤ちゃんブルを預かっていたのです。
すっとぼけた顔をして、ぶっといあんよでポテポテと歩き、、、ところ構わず居眠り![]()
タレ目と重たそうなほっぺのヒラメちゃんです。
「どうちて皆は、わたちの顔を見て笑うの
」 と、顔をかしげます。
もう、、可愛すぎる![]()
2ヶ月もすれば、別人ではなく別犬になってしまうブルドッグです。
新しい家族の許で、チエちゃんの分まで可愛がってもらって、元気な日々を過ごしてくれるようにと願って、彼女を送り出しました。
犬の想いで、、、その11<大人に成ったふうちゃん>
引越したのは、夫の自宅(店)から歩いて5分もかからないマンションでした。
ただし、大型犬を飼うことができません。
夫の実家のガレージに一畳ほどの小屋をつくりました。
そのすぐ横に、以前のマンションで使っていたソファーを置いてあげました。
何故って![]()
今までとは違い、ふうちゃん
は 1人で眠らなければならないからです。
私がマンションに帰ろうとすると、彼女はキュンキュン
と悲しそうに泣きます。
せめてもと、いつも使っていたソファーをプレゼントしたのです。
もう既に立派な大型犬だったのですが、、、箱入り娘のふうちゃんです。
彼女は、自身の体の大きさを把握していませんでした。
夜の散歩中、野良の子猫
を見ても怖いのか、体をすくめてしまいます。
遠くから歩いてくる人に気付くと、ビク![]()
![]()
外出が怖いのですから、首輪は付けていましたが、鎖やリードは必要無しです。
2カ月後、私は娘を出産。
その頃には、ふうちゃんは堂々とした普通の大人の土佐犬♀になりました。
土佐犬というと闘犬ですから怖がる人もいますが、♀は闘いませんし、闘犬としての育て方もしていません。
イカツイ外見にもかかわらず、大人しくて優しいふうちゃんになりました。
母の店(実家)では、既に老犬マイ
は、裏山で行方不明のまま亡くなっています。
娘が 1歳になった 12月クリスマスの早朝、私の母も病死。
その数か月後、残されたノア
も、ずうっと面倒を見てくれていた店の老齢のスタッフに看取られてマイ
と母の許に行きました。
ふうちゃんは娘にとって、とても面倒見の良いお姉ちゃんでした。
娘がソファーから落ちそうになると、背中で押して守ってくれます。
娘が泣き出すと、心配そうに、、、ウロウロ、、、
ガラガラ
のオモチャや自分のおやつ(ドッグフード)を咥えて持ってきます。
大人しくて優しいふうちゃんは、OLさんにも近所の子供にもモテモテです。
気が付いたのですが、大きい犬を怖がるのは、大抵、大人の男性のようです。
娘が 2歳になった頃、夫が 2匹のブルドッグの赤ちゃんを連れてきました。
誤解の無いように言っておきますが、夫の膝に抱かれているのは 2匹のブルではなく、そのうちの 1匹と 2歳になった娘です。あしからず、、、
犬の想いで、、、その10<ふーちゃん>
夫 39歳、私 33歳、、、当時にしては、かなりの晩婚でした。
そんな歳まで勝手に生きてきた二人の価値観と生活スタイルは、違っていて当たり前。
半年も経つと、お互いストレスが溜り、、、いっぱいイッパイ![]()
になってしまいました。
半日や 1日間、口をきくのも嫌になることだって。
それでも、お互いに別れる、、、までは考えません。
朝、二人で車で出かけ、夫の店で彼を下ろし、私は母の店に向かいます。
夜は、その反対のコースを辿る、、、そんな毎日でした。
ある日、、、ちょっと寄りたい所があるから、待っていてくれ、、、と、夫。
車に戻ってくる彼の、紺の刺し子の作務衣の懐が、、、膨れています。
え、、、何
、、、うわぁ
可愛い![]()
それは、1ヶ月♀
土佐犬でした。
土佐犬、、、鼻の上に寄った小さな皺が、それを証明しています。
以前から、ペットショップに予約していたというのです。
夫は、ギクシャクする二人の 『カスガイ』 を連れてきたのです。
カスガイを得た私達の新しい生活がスタートしました。
ところが、その子は、二日目になっても、水は飲むものの、食べ物を口にしません。
ミルクも、お粥も、赤ちゃん用のペットフードも、、、
たった 1ヶ月でお母さんの温みから離された赤ちゃん犬ですから、無理はありません。
このままでは死んでしまう、、、どうしょう、、、
この子が自ら食べようと(生きようと)しないのなら、、、それも運命だよ、、、![]()
そう言って夫は、自分のビールの摘みのオイルサーディンの缶を開けました。
プシューという音がするや否や、、、、
私の膝にうずくまっていた子が、狂ったようにサーディン缶に向かって行きました。
あ、、、この子、魚だったら食べるんだ![]()
サーディンのオイルに食パンの中身を浸して与えると、懸命に食べ始めました。
良かった、、、私たちはホッとしました。
翌日からは、サバの水煮が彼女のご馳走になりました。
缶を開ける私の足元に飛びついて、、、早くちょうだい
とせがみます。
1週間も過ぎると、ミルクも飲み、ペットフードも食べるようになりました。
名前はふうちゃん、、、6歳になったばかりの夫の甥の命名です。
ふうちゃん
はお利口さんでした。
トイレに行きたくなると、キュンキュン
と鳴いて教えてくれます。
庭の無いマンションですから、バスルームに連れて行きました。
二日目からは、扉を少し開けておくと、1人で行きました。
初めの 1週間は、たった 10cmの段差を超えるのがやっとでした![]()
不思議なことに、ウンチは必ず風呂桶の中に、、、![]()
出来る限りお尻を高く付き出して、頑張っているのです![]()
2週間も経つと、決まった時間にするようになりました。
洗面所にペット用トイレをセットしました。
ふうちゃんは直ぐに覚えてくれました![]()
初めてお風呂に入れてあげると、ほ~
とした表情で、、、気に入ったようです。
毎夜、早くお風呂にして
と、、、ドアーの前で待っています。
ある日、ちゃっぽーん
という音がするので、見に行くと、、、
ドアーの隙間からバスルームに入ったふうちゃんが、お湯の中で前足で突っ立って、顎を水面に突き上げて頑張っています。
しかし、お尻はポッカ~ンと浮いた状態で、、、ママ、何とかして~![]()
お風呂が待ちきれなくなって、自分で飛び込んだのです。
ふうちゃんは、毎日どんどん大きくなっていました。
数日後には慣れたものです。ドヤ顔で悠々と飛び込んでいました![]()
![]()
出かける時は、ふうちゃんはボストンバッグの中に入って、車に乗りま す。
私たちが出かける準備をし始めると、自らバッグに入って待っています。
半年も経つと、もうシェパードほどの大きさですから、バッグには入れません。
リアシートに座り、窓から大きな顔を付き出し、ご機嫌な様子でルンルン![]()
![]()
夫と共に車から降り、夜には再び私の車に乗り、マンションに帰りました。
夜のベッドは 1匹と 2人で取り合いのバトルです![]()
溢れた人はソファで眠ります。大抵それは夫でした。
ふうちゃん
がうちに来て 8ヶ月後、夫の実家(店)の近くのマンションに移ることになりました。
私は妊娠 8ヶ月になっていました。
毎日の通勤が負担になってきたので、引越しをしたのです。
犬の想いで、、、その9<マイとノラ>
小さい母犬マイとボーダーコリーそっくりさんのノラの毎日は、まるで、子犬同士のジャレ合いです。
私の姿を見つけると、二匹が喜び勇んで飛びついてきます。
喜ぶノラの尻尾は格別でした![]()
ふさふさの尾を、扇風機の羽の様に 360度回転させるのです。
ぶる~ん
ぶる~ん
、、、
ワンコ達が喜ぶ姿を見るのは、飼い主にとって至福の時です![]()
![]()
ノラが 1歳になる前の夏、彼女は海岸の家で過ごしました。
抱いて海に入ると、砂浜に向かって懸命に泳ぎます。
濡れた体を砂まみれにして、、、ごろごろ、、、ごろごろ、、、
3週間が過ぎ、すっかり逞しくなったノラと共に家に戻りました。
車から降ろすと彼女は、一目散にマイが待つ玄関に向かって走って行きました。
が、、、次の瞬間、思いもよらない事が、、、
マイが激しくノラに噛みつきました![]()
それは一瞬の出来事でしたが、キュン
と鳴いてノラは地べたにうずくまりました。
どうしてそんな事が起こったのか、、、
知らない犬が来たと思ったのか、それとも、嫉妬したのか、、、
ノラに噛みついたマイの気持ちは、、、![]()
そう、、、マイは、どうしてノラが家に居なくなったのか、、、3週間、不安だったに違いありません。
どこに行ってたの
こんなに心配かけて、、、二度とママから離れてはいけません![]()
、、、という感じだったのかも知れません。
いつも一緒だった 2匹を離れ離れにしてしまった、、、![]()
飼い主として、私は失格でした![]()
その後は、何でもマイが一番、、、ノラはじっと我慢して待っています。
私の膝に乗るのも、マイが充分満足してから、、、そろそろとやって来るノラ。
ご飯は、少し離れた場所で、、、ベッドも別々、、、
けな気なノラ、、、![]()
そんなある夜、庭から 2匹の激しい鳴声が、、、ワン
ワン
ワン
ワン![]()
何が起こったのか、急いで見に行くと、、、
ぎょえー![]()
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大きな蛇がネズミを呑み込んでいる最中ではありませんか![]()
2匹は 1メートルほどしか離れていない場所で、その蛇に向かって吠えているのです。
ネズミを呑み込んだ蛇は、重たそうな動きで草むらに入って行きました。
頭から 20cmくらいの処を膨らませて、、、
私は腰が抜けるほどビックリしたのですが、、、![]()
蛇を追い払った 2匹の満足そうなドヤ顔といったら、、、![]()
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そして、この事件をきっかけにマイとノラの関係が元に戻りました。
親分はマイでしたが、以前の様に食事もベッドも隣どうしになりました![]()
その後数年経ち、、、ある小雨の夕方、、、雷がゴロゴロと鳴る日、、、
トボトボ庭に出るマイ、、、
マイは、思いっきり雷を怖がっていたのに、、、どうして![]()
彼女は既に 11歳になっていました。
目は白内障になり、耳も遠くなっていました。
「マイ、家にお入り、、雷が鳴ってるから、、、怖くないの
」
その日、マイの姿が消えました。
何度呼んでも、何処を探しても見つかりませんでした。
その頃、私は自活をしていて、母の仕事を手伝うために毎日通って来ていました。
心配で仕方なかったのですが、母に任せるしかありません。
それからの数日間、母は毎日裏山に入り彼女を探しました。
軍手とタオル、スコップを持って、、、
何処か木立の中に彼女が眠っているかも知れない、、、
見つけたら、そこにお墓を作ってあげよう、、、大好きな裏山だったから、、、と。
結局、マイの姿を見つけることは出来ませんでした![]()
私が拾ってきたマイ、、、バイク事故で無くなった子にそっくりなマイ、、、
クロに守られ伸び伸びと育ち、、、小さいけど機敏で、勇敢で、、、
頑張って 3匹の元気な子供を産んでくれた。
自分より大きくなったノラを守り通したマイ、、、でした。
その後、のんびり屋さんのノラは、ゆっくりとした日々を過ごしました。
マイとは違い、雷なんて気にしない。案外、肝っ玉が据わっているのかも。
誰が訪ねて来ても、相変わらず 360度回転の尻尾パフォーマンス![]()
うお~ん
とペンペン
をしていたクロと、どこか似ています。
数年経ち、私は35歳、、、
娘が 1歳になった誕生日の月、それはクリスマスの早朝、、、
4ヶ月の闘病のあと、母が亡くなりました。54歳という若さでした。
母の会社は他の役員に譲り、逆に私が退職することに。
ノラも老い、散歩もソロソロと歩く程度になりました。
1歳の娘を抱えたマンション住まいの私が、ノラを引き取るのは無理でした。
幸運なことに、母の会社のスタッフが引き取ってくれることになりました。
母と共にノラを可愛がってくれていた、動物好きの老齢の女性です。
彼女は自ら望んでノラを引き取りたいと言ってくれました。
彼女は、ノラを連れて退職しました。
その数ヶ月後、ノラは静かに母とマイの許に、、、
ノラを看取ってくれたその人に、今でも深い感謝の念にたえません。
ジョン
、、、マル
と子供たち![]()
、、、バイク事故死の子
、、、
うお~ん
とペンペン
のクロ、、、マイ
とノラ
、、、
みんなみんな、いい子だった、、、
彼らと過ごした独身時代は、今となっては遠~い想いで、、、となりました。
あ、、、犬の想いでは、まだまだ続きます、、、
犬の想いで、、、その8<マイと子供たち>
クロが亡くなってから数ヶ月後、彼女の思い出をいっぱい持って、マイを連れて引越しをしました。
新しい住いは家の裏が東山の麓で、そこでもマイは殆ど放し飼いでした。
とても今では考えられない犬の飼い方ですが、、、
毎日夕方になると一匹の黒い中型犬が現れ、彼と山の中へ遊びに行ったマイは、30分ほど経つと戻ってきます。
その中型犬は野犬だったのですが、とても人慣れしていていました。
予想はしていたのですが、暫くしてマイは子供を宿しました。
成犬になっても彼女はとても小さかったので、ちゃんとお産ができるか心配でした。
誰も口にはしませんでしたが、6匹の子を死産したクロを思い出してしまいます。
そろそろ今日辺りかしら、、、部屋の一角にベッドを作り、、、周りを暗くして、、、
夕方になり、、、いよいよ、、、一匹目の赤ちゃんが![]()
マイは器用にヘソの緒を噛み切り、赤ちゃんの体を舐めています。
その子はマイの一番下のオッパイを上手に吸い始めました。
それから 20分ほど経った頃、2匹目の赤ちゃんが![]()
一匹目と比べると少し大き目でした。
その子がオッパイを探し始めたので、上のオッパイまで移してあげました。
良かった、、、マイ頑張ったね、、、可愛い子が 2匹もできた![]()
、、、と
、、、うえ~
、、、三匹目が![]()
小さなお腹に 3匹も入っていたなんて、、、
力を出し切ったのか、マイの目には瞬膜
が、、、
急いで台所から生卵を持ってきて、ボウルに割り、マイの口元に近づけると、、、
なんと、ペロリ
と呑み込んでくれました。
その処置が良かったかどうかは判りませんが、マンガみたいですね![]()
![]()
3匹の赤ちゃんたちは、日に日に活発に動き始めました。
一匹♂は、真っ黒で毛長、、、パパ似だね![]()
もう一匹♂は、キタキツネの赤ちゃんみたいで、マイとソックリ![]()
最後の一匹♀は、黒と白の毛長、、、どちらに似たのか
、、、ボーダーコリーのそっくりさん![]()
雑種犬からは、親犬の容姿からは想像もつかない子が生まれます。
2匹の♂は近所の家に貰われて行き、ボーダーコリーのそっくりさん♀が残りました。
♂犬は子供を産まないので、貰われる率が多かったのです。
ボーダーのそっくりさんには、ノラと命名しました。野良犬の子なので。
ノラは半年も経つとマイより大きくなりましたが、それでも小型犬の大きさです。
小さなお母さん犬マイと、親よりかなり大きい娘犬ノラのコンビができました。
何処へ行くのも何をするのも一緒の、仲良し親子
です。
その後、2匹は避妊手術をうけました。
犬の想いで、、、その7<ありがとう☆クロ>
マイがやってきて 2年が過ぎた頃、クロの足が弱り始めました。
それに気付いたのは、まだ肌寒い 3月の終わりでした。
小屋から出て庭の隅でトイレを済ましたクロが、戻って来る途中でうずくまっているのです。
クロは既に 9歳になっていました。
当時、純血種の大型犬の寿命は 8~9歳。
彼女の腰を持ち上げて、小屋まで戻るのを助ける日々が続きました。
4月、暖かくなった日中は小屋を出て、木陰で昼寝、、、
附き添うように、マイも横で身体を伸ばして日向ぼっこです。
5月に入り、動くのが辛くなったクロは、もう小屋から出ようとはしません。
小屋の中に新しいモクメンを一杯入れて、彼女のベッドを作りました。
そこに横たわり、眠っている時間が多くなりました。
「クロ、、、うお~んは
」 と話しかけると、、、
小さな声で、うお~ん
と答えて、尻尾の先を小さくペンペン![]()
数日後の夜、目を閉じ、小さな小さな最後の うお~ん をしました![]()
一度もワン
と吠えたことのない、大人しいクロ、、、
優しいお母さんとなって、マイを育ててくれたクロ、、、
うちに来てくれて、ありがとうね、、、
その後一匹になったマイは、私のベッドの側で眠るようになりました。
若い頃のクロと同じように、、、
犬の想いで、、、その6<クロとマイ>
クロがうちに来てから 7年が経ちました。
その間に、古い 2階建の納屋を取り壊して庭を広くしました。
クロの小屋のすぐ横に、ワンルームのプレハブが建ちました。
小さな玄関が付いたその部屋は、高校 3年生になった私の個室になりました。
昼間は気ままに庭で過ごし、夜には私のベッドの横で寝るのがクロの日課になりました。
帰宅したある日、いつもなら喜んですり寄って来る彼女の姿が見えません。
庭の何処かにいる筈なのですが、、、
クロー
クロー
と呼び続けていると、、、
プレハブの後ろ辺りから、、、うお~ん
と小さな声が、、、
塀とプレハブの狭い隙間から聞こえます。
覗いてみると、奥の方にクロのお尻が見え、後ずさりしようと頑張っている様子です。
よく見ると、後ろに下がろうとすると、お尻に雑草が当たり、、、
というか、突き刺さり、、、![]()
![]()
雑草を抜きながら中まで入って行き、助けてあげました。
庭には時折、カエルやイタチなんかも姿を見せていましたから、多分それを追いかけているうちに、、、彼女としては遊んでいるうちに、その状況になったのでしょう。
いつからそこに居たのか、、、本当に大人しい犬でした。
彼女の背中にとまるチョウやトンボを見るのも、珍しい事ではありませんでした。
そんなノンキで優しいクロに、新しい仲間が出来ました。
大学 2年の春、びわ湖ドライブの帰り、山中終えの途中で野良犬の子を見かけ、、、余りに可愛かったので、ついつい抱いて車に乗せてしまいました。
片手に乗るほど小さかったのですが、体つきから見ると生後 2ヶ月くらいです。
私の膝でスヤスヤ
眠ってしまい、、、そのまま連れて帰ってしまいました。
バイク事故で亡くなった可哀そうな、あの子犬にそっくりだったのです。
車の中は、その子に付いているノミが飛び跳ね、、、ちょっと大変でしたが、、、
とても人懐こい女の子でした。
名前はマイ、、、迷子のマイです。
マイは無邪気に、クロの背中に乗ったり、尻尾で遊んだり、、、
一緒になってスズメやハトを追いかけたり、、、
ご飯タイムは、大きいボウルと小さいボウルを用意するのですが、、、
マイは、クロ用の大きいボウルの中に入って食べ始めます。
クロは、マイ用の小さいボウルのご飯を食べ、、、
マイが食べ終わると、その残りを平らげるのです。
そして、マイの体に付いたご飯をキレイに舐めてあげます。
夜は自分の小屋に入り、マイを包む様にして眠ります。
クロは私から自立し、マイの母親になったのです。
犬の想いで、、、その5<クロの手術>
クロは 2歳の頃、隣の町内の秋田犬を飼っている家に出かけました。
その秋田犬はとても立派な、やはり 2歳の男の子でした。
1週間そこに滞在し、再び我が家に帰ってきた彼女に母が言いました。
「きっと元気な子が生まれるからね。」
そして 2ヶ月が経ち、お腹が膨らみ、、、
私たち家族は、数日後には生まれてくるであろう子犬に期待を膨らませていました。
ところが、、、1週間経っても出産の気配がありません。
獣医さんに来てもらって、、、入院して、、、帝王切開をすることに、、、
子供たちは 6匹いたそうです。
ただ、、、悲しいことに、みんな死んでいたというのです。
骨盤の一部が凹んでいて、参道が狭く、、、
一番初めに生まれてくる筈の子が大きかったので、外に出られず、、、
小さかった他の子も、そのままお腹の中に残されてしまったのです。
その半年ほど前、こんな事がありました。
近所の店に勤めているおじさんが訪ねてきた時、いつも通り、うお~ん
とペンペン
をするクロに、その人は手に持っていた大きなソロバンで、クロのお尻を思いっきり叩いたのです。
クロはキャン
とびっくりするほどの大きな声で鳴きました。
父が抗議をしましたが、大きな犬が自分に危害を加える前に叩いただけだと言って、その人は帰って行きました。
その頃はまだ、動物愛護なんて言葉すら無かった時代です。
その数日後に、その人は勤めていた店を辞めていなくなってしまいました。
それが原因で骨盤が凹んだのか
は判りませんが、クロにとっては、とても辛い経験だったに違いありません。
クロは、子宮ごと取り除く手術をうけました。
お腹の中の子供たちを助けることはできませんでしたが、クロが無事に帰ってきて良かったと、心から思いました。
元気を取り戻したクロは、何事も無かったかのように、また、うお~ん
とペンペン
をするようになりました。
私たちは、どれほど安心したことでしょう。
犬の想いで、、、その4<クロ>
小学校 6年生の春、校庭の桜が散り始めた頃、、、
学校から帰るやいなや、母が 「子犬がき来たよー
」 って。
「犬って、、、犬が来た
ホント
どんな犬
」
「まだ 6ヶ月の子よ
可愛いよ
」
走って裏庭に出た私の目に入ってきたのは、、、
子犬って、、、大きいじゃない、、、![]()
![]()
もう既にシェパードくらいの大きさの、黒い毛並の子でした。
秋田犬、♀、黒ゴマ、名前は 『黒姫号』。
マル
の孫にあたるらしく、急性肺炎で亡くなった 2匹![]()
の姉妹の子供でした。
大きい柄にもかかわらず、彼女はペンペン
と尻尾を振って、すり寄って来ました。
悲しかったスクーター事故から 5年の月日が経っていました。
スクーターに乗っていた人が、事故の2日後に、この犬をあげるから許してほしいと、白いスピッツの子を連れてきたのを思い出しました。
当時は、スピッツを飼うのが流行っていました。
私は泣きながら言いました。
「そんな犬、欲しくない
死んでしまった子でないとアカンの
おじさん、家に入らんといて
帰って、、、
」
随分ひどいことを言いました。
誰を恨むことも出来ず、ただただ胸の中でその悲しみを消化するには、私は小さすぎました。
マル
と彼の子供たち![]()
との別れだって、、、
「ねえ、この子はズーっと家に居るよね
何処にも行かないよね
」
念を押すように、母に言いました。
「大丈夫、大人に成ったら子供を産んで、その子供もズーっと家にいるからね。」
『黒姫号』 だから、クロと呼ぶことにしました。単純な命名![]()
![]()
クロは私のお腹の辺りに顔を押し付け、太い尻尾をペンペン、ペンペン![]()
可愛い、すごく可愛い
大事に育てよう、、、心に決めました。
クロは、うちに来てから 2週間以上も声を出しませんでした。
ワン
と吠えないのです。
「ねえクロ、、、ワンは
ワンは
」 って、毎日話しかけました。
すると、、、柔らかな声で、、、うお~ん、うお~ん、、、
その後も、彼女がワンワン
と吠えるのを聞いたことがありません。
クロは、庭に住み付いている野良猫の家族にも、松の木に巣を作っているキジ鳩の夫婦にも、優しい声で、、、うお~ん
、、、尻尾をペンペンペンペン![]()
人が訪ねて来ても、、、うお~ん
、、、ペンペンペンペン![]()
学校から帰って来る私にすり寄り、、、うお~ん
、、、
玄関に腰掛ける私の膝に大きな顔を乗せ、、、ペンペンペンペン![]()
クロは、裏庭では自由に走り回っていましたが、決して勝手に玄関から外には出ませんでした。
庭には畳一枚の大きさの小屋がありましたが、土間にも自由に行き来します。
ある日の夜、私たち家族が 2階でテレビを見ていた時、突然
障子を突き破って、、、
クロの頭が
ニュー![]()
私たちの話し声に釣られてか、何と
階段を上がって来たのです![]()
きっと途中で怖くなって、降りるにおりられず、2階まで来てしまったのでしょう。
私たちは大笑いをして、彼女を部屋に招待しました。
その後、大きな彼女を下まで降ろすのに、どれだけ大変だったか、、、
彼女自身もそれに懲りたのかクロは翌日からは階段の下で我慢です。
時折、うお~ん
とペンペン
をしていました。
家族の誰もが、ますますクロを好きになりました。
クロは知らず知らずのうちに、悲しい過去の犬の思い出の傷を癒してくれていました。







