YouTubeやレビューサイトでは絶賛されることの多いCASIOの電子ピアノ「PX-S1100」。
「スリムでスタイリッシュ」「この価格帯では破格のクオリティ」などといった言葉が飛び交い、興味を持って購入された方も多いのではないでしょうか。
私もその一人だったのですが、実際に使ってみると見えてくる不満点も確かに存在します。
今回は、そんなPX-S1100の「リアルな使い心地」について、良い点・悪い点を率直にまとめてみました。
■ 不満点1:音質にクセがあり、リアルさに欠ける
PX-S1100には実用的なピアノ音色が2種類収録されています。
ところが、この2つの音色はいずれも「これぞリアルなピアノ音」とは言いがたい仕上がりです。
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1つはこもったような音で、やや輪郭がぼやけ気味。
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もう1つは、いかにも「電子ピアノらしい」キラキラとしたサウンド。
好みにもよりますが、アコースティックピアノに近い自然な音色を求める方にとっては、やや物足りなさを感じるかもしれません。
■ 不満点2:鍵盤の奥が重く、タッチに違和感
鍵盤アクションにも不満が残ります。
鍵盤の"手前側を弾いた時"と"奥側を弾いた時"で重さに大きな違いがあり、タッチのバランスが不自然です。
というか奥側はホントに重いのでまともに弾けません…
この感覚に慣れてしまうと、他のピアノに移ったときにタッチの違いに戸惑う可能性もあり、「悪い癖がついてしまうのでは?」という不安も。
■ 不満点3:音の強弱表現が雑すぎる
演奏表現にこだわる人にとって、最大の不満がここかもしれません。
本物のピアノであれば、100の力で弾けば100の音量、99の力なら99の音量が出ます。
しかしPX-S1100では、95の力で弾いても105の力で弾いても「100」の音が出るような感覚があります。
このため、微妙なタッチコントロールが再現しづらく、表現の幅がかなり制限されてしまう印象。
さらに、実際にはタッチがバラついていても上記のような補正が入るため、「本当は下手でもうまく聞こえてしまう」という危うさも感じます。
■ 不満点4:操作性が悪く、直感的に使えない
PX-S1100は、デザイン性を重視した結果、物理ボタンの数が非常に少なくなっています。
音色の変更などは「特定のボタン+鍵盤」を組み合わせて操作する仕様ですが、これがとにかくわかりにくい。
説明書を見ないと何がどこにあるのか把握できず、直感的な操作はほぼ不可能。
一応、CASIOのスマホアプリを使えば操作性は改善されますが、ピアノを操作するのにスマホをいちいち開くという手間が発生するのはやはり面倒です。
■ それでも「価格を考えれば」優秀な1台
ここまで不満ばかりを並べてきましたが、決して悪い機種というわけではありません。
5〜6万円という実売価格を考えると、コストパフォーマンスはかなり高い部類に入ります。
実際、楽器店で10万円前後の電子ピアノを一通り試奏したところ、PX-S1100はそれらと比べて遜色ないタッチ感だと感じました。
10万円払って変な電子ピアノを買うくらいなら、PX-S1100を選んだ方が後悔は少ないかもしれません。
ただし、15万円を超える中上位機種と比べると、さすがに音・鍵盤・表現力すべてにおいて力不足は否めません。
■ 結論:おすすめできる人・できない人
PX-S1100は、以下のような方におすすめです:
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予算が15万円以下で、できるだけ質の高い電子ピアノが欲しい
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サブ機として軽量・コンパクトなモデルを探している
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音やタッチにそこまで強いこだわりがない
一方で、以下のような方にはあまりおすすめできません:
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本格的にピアノを上達させたい
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表現力やタッチの細かさにこだわりたい
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操作性のよさや音のリアルさを重視したい
購入を検討している方は、自分の目的と照らし合わせて判断するとよいかと思います。