こんにちは!東京・府中の「スモールビジネス専門税理士」天野です
法人の決算書でときどき「役員貸付金」という勘定科目を目にすることがあります
そもそも役員貸付金ってなんだ??という方もいらっしゃると思いますが
この役員貸付金とは「会社が役員(社長)に貸し付けているお金」のこと
実はこの役員貸付金は税務上のデメリットが大きいんです
今回はこの役員貸付金について解説します
目 次
1. 役員貸付金はなぜ発生するのか
2. 役員貸付金のデメリット
3. 役員貸付金の清算方法
4. まとめ
役員貸付金はなぜ発生するのか
この役員貸付金は大きな会社であればしっかり管理されている場合が多いので発生しにくいですが
ひとり社長の会社や家族経営の会社など身内だけでやっている会社の場合は発生しやすい傾向にあります
ひとり会社などの場合は「会社のお金は自分のお金」と思っている社長も少なくないですし
家族以外の人が目を光らせていることもないので
会社のお金と自分個人のお金をごっちゃにしてしまうことがあります
法人は「法律によって個人と同じ権利義務を認められた組織」のこと
つまり法律上は1人の人ということになり社長個人とは別の人なんですね
なので自分の会社だからと安易に会社のお金に手をつけるとマズいわけです
ではどのような場合に役員貸付金は発生するのでしょうか??
主なケースとしては自分の手持ちのお金が無いから会社からちょっと借りちゃったとか
会社と個人がごちゃごちゃになってしまい会社のクレジットカードで個人の買い物をしてしまったとか
領収書等を無くしてしまって経費計上できなかった場合などに発生します
では役員貸付金があると何が問題なんでしょうか
役員貸付金のデメリット
役員貸付金が長期間返済されず残っていると税務調査で指摘される可能性があります
返済されず残っていると会社から役員にあげた給与(役員報酬)とみなされてしまうんですね
そうなると税金計算上の経費(損金)にできないので法人税を支払うことになります
また社長個人の所得税や住民税も追加で払うだけでなく
源泉徴収をしていなかったことになるため不納付加算税も支払わなければなりません
また会社は役員貸付金に対して利息をとる必要があります
会社は営利目的の組織です
通常であれば利息も取らずに会社が誰かにお金を貸すことはありませんよね
それは相手が自社の社長だからと言っても同じこと
会社が利息をとるということはその分会社の利益が膨らむので法人税の負担も増加します
たとえ無利息や低利息で貸し付けていたとしても通常の利息相当額を計上しなければいけません
その他にも金融機関からの印象も悪くなり融資を受けにくくなったり
会社と社長個人の社会的な信用が下がる恐れがあります
役員貸付金が多く計上されていると「社長が会社のお金を流用しているのでは?」と疑念を持たれてしまう可能性があるからです
このように役員貸付金にメリットはなくデメリットばかりです
では役員貸付金はどのように清算すればいいのでしょうか
役員貸付金の清算方法
最もシンプルな方法としては役員(社長)の自己資金で会社に返済する方法です
でも自己資金からの返済が難しい人もいますよね
その場合は役員報酬の一部を返済に充てるという方法で返済していくことをオススメします
月々の給料から差し引いて清算していくというイメージです
でもその場合は手取りは減ってしまいますよね
手取りを減らしたくない場合は役員報酬を増額して手取りの差額を埋めてもいいかと思います
ただ役員報酬の増額にはタイミングがあり好きな時に増額することはできません
役員報酬増額のタイミングは「事業年度開始(期首)から3ヶ月以内」です
このタイミングを間違うと増額分が法人税法上の費用と認められないため法人税の負担が増えます
役員報酬を増加すると社長個人の社会保険料や税金も増えるので
その点も踏まえて計画的に返済していきましょう
まとめ
いかがでしょうか
役員貸付金にはデメリットばかりだということがお分かりになったのではないでしょうか
特に個人事業主から法人成りした人は注意が必要です
個人事業主の時は事業で残ったお金は全部自分のものだったので
その感覚のままでいると会社のお金も自分のものと思ってしまいがち
法人の場合は会社員の時と同じで会社から出ている役員報酬が自分のお金です
会社のお金と自分のお金をごっちゃにしないよう注意しましょう
もし役員貸付金が残っている場合は一刻も早く返済することをオススメします
では、また