俺は足元に水球を作り、それを爆発させた勢いで一瞬にて懐へ飛び込み斜め上に剣を薙ぐ。剣先が善鬼の肌を切り裂くものの、薄皮一枚しか切り取れなかった。そして善鬼が上から下へと剣を振り下ろす。俺はすんでの所で剣を頭上で受け止める。


 『キーン』と音が鳴りひびく。右、左、右、左と善鬼の刀をよける俺は、動きがわかっても反撃に移れずにいた。それこそ彼の剣の速さに対応しきれていなかった。そして、氷の塊をつくり、彼の剣をはじく。そして反撃の一撃も空を裂いただけであった。


 善鬼は笑いながら「そろそろ、『あれ』使うか?」と俺に問いかける。『あれ』とは『一刀流が極意、真打ち』独自の鍛錬と、独自の握り方により、薄い日本刀の刃の中心部分だけに力を集中し、飛躍的に破壊力を高めると言う技である。


 その昔、伊藤一刀斎が盗賊退治の折に、瓶に隠れた盗賊を瓶ごと真っ二つに切り裂いたという逸話が、この『真打ち』の力の証明をしている。横薙ぎで切りかかった善鬼に対し、厚い氷の壁を作り対応するが、一刀の元に切り伏せられる。


 何度か攻撃を防いだものの、瓶割刀を後方へと飛ばされてしまった。「おぉ?お前も終わりだなぁ?残念だなぁ・・・・弟弟子よ。」といって俺に切りかかる。無防備であった俺の腕は一瞬にして空を裂く。その後、善鬼の首より血が噴射する。


 「妖刀 氷雨・・・。」と俺は言い放ち、氷で出来た刃を水に帰した。もし、善鬼が油断していなければ、敗北していただろう。しかし、慢心を誘い込むのもまた策。そうして辛くも善鬼に勝利した。

 陽炎は為す術もなくやられていた。そして鬼蜘蛛は口よりありったけの糸を巣のように張り巡らせ、陽炎を捕らえる。身動きを取れなくなった陽炎に苦無で止めを刺す。しかし、その陽炎は蜃気楼で刃は空を裂くだけであった。


 そして鬼蜘蛛が振り向いたときには無数の陽炎が蜘蛛の巣にかかっていた。そして陽炎は「炎舞 一式 焔雪」そういった瞬間、晴天のはずの空から雪が降っていた。その雪はほんのりと赤色をしており、鬼蜘蛛に付着した瞬間、燃え上がった。「炎舞 二式 炎刃」炎の雪は集合し、いくつかの刀となって鬼蜘蛛に突き刺さる。「炎舞 三式 炎牢」と唱えると、蜃気楼であるはずの陽炎が鬼蜘蛛の周りを取り巻き、その瞬間炎の鎖に変化して鬼蜘蛛を捕縛する。


 陽炎は静かに「炎舞 終式 焔美人」というと陽炎は姿を消した。その瞬間俺の元に何かが投げ込まれる。陽炎の着物だ。「なっ!」驚いてる俺をよそに、陽炎は鬼蜘蛛の前に炎と化して現れた。そして死の抱擁を施すと、鬼蜘蛛は形もなく消え去った。


 そして戦い終わった陽炎はこちらに戻ってきた。そして纏った炎が取れる・・その瞬間、俺は敵方に向けて氷の壁を作り、陽炎の裸を見られないように死守した。しかし、自分の前に壁を作るのを忘れて陽炎の裸を直視してしまう。「ご、ごめ・・・。」と言葉を失う俺。「ちゃっかりと自分は見るのだな♪」と陽炎は俺をからかう。しかし、そのときの顔は笑顔で、俺の心を安心させるものであった。


 そうしている間に「おーい、次郎ちゃんがでるぞ!出て来い、我が弟弟子よ!もう我慢できないぞ!」と善鬼が抜刀する。俺は柄に手を置き「あぁ、そうだな、ぱっぱと任務をこなさないとな。」と静かに返す。今ここに、剣聖より剣を学んだ二雄が火花を散らす。

 試合は俺が分らないうちに終わっていた。艶の右腕がなくなった事により蛇たちが彼女自身に襲い掛かった。戻ってきた花が。「彼女ね、右腕に開いた穴に風を通して音を鳴らしてたの。それによって蛇を統制していたの。」と花は淡々と解説する。


 まぁ、つまりまさに蛇使いだったわけだ。笛で蛇を踊らすように・・・。それを見抜いた花の観察眼はまさに感服だった。「いったでしょ?あのなら勝てるって。あの子の耳と目があればどうにかなるのよ。まぁ、それはいいとして次は私が出ようかね。」と陽炎は腰を上げる。「伊賀忍軍、陽炎。」と短く名乗り前へ出る。


 敵方は老人が前へ出た。「風魔が五つ鬼が一つ、鬼蜘蛛、参る。」と名乗った瞬間。花が声を上げる。「なっ・・・。五つ鬼って・・・。」と驚愕する花に対して俺は「なんなんだ?有名な忍者なのか?まぁ、陽炎なら余裕だろ?」と楽天的に語りかけるが花は「五つ鬼・・・。風魔忍軍の五指に入る実力者・・・。風魔忍軍は小規模だけど、頭となると実力は相当だと思う・・・。」


 唾を飲んで見る俺たちをよそ目に、戦いは始まっていた。一瞬の内に間合いをつめ、陽炎が苦無で鬼蜘蛛に切りかかるが、左右の腕をつかまれ、身動きを取れなくなった陽炎。その瞬間鬼蜘蛛から四本の腕をはやす。四個の拳が陽炎の腹部に炸裂する。陽炎は口から炎を吐いて、そのすきに脱出する。


 鬼蜘蛛の六本の腕から繰り出される手裏剣術に死角はなかった。陽炎でさえもよけるので精一杯であった。陽炎が炎弾をうちつけるが、鬼蜘蛛の口から吐く糸に炎をかき消された。近づくことも出来ず、遠距離攻撃も効かず、まさに陽炎は八方塞となっていた。