俺は足元に水球を作り、それを爆発させた勢いで一瞬にて懐へ飛び込み斜め上に剣を薙ぐ。剣先が善鬼の肌を切り裂くものの、薄皮一枚しか切り取れなかった。そして善鬼が上から下へと剣を振り下ろす。俺はすんでの所で剣を頭上で受け止める。


 『キーン』と音が鳴りひびく。右、左、右、左と善鬼の刀をよける俺は、動きがわかっても反撃に移れずにいた。それこそ彼の剣の速さに対応しきれていなかった。そして、氷の塊をつくり、彼の剣をはじく。そして反撃の一撃も空を裂いただけであった。


 善鬼は笑いながら「そろそろ、『あれ』使うか?」と俺に問いかける。『あれ』とは『一刀流が極意、真打ち』独自の鍛錬と、独自の握り方により、薄い日本刀の刃の中心部分だけに力を集中し、飛躍的に破壊力を高めると言う技である。


 その昔、伊藤一刀斎が盗賊退治の折に、瓶に隠れた盗賊を瓶ごと真っ二つに切り裂いたという逸話が、この『真打ち』の力の証明をしている。横薙ぎで切りかかった善鬼に対し、厚い氷の壁を作り対応するが、一刀の元に切り伏せられる。


 何度か攻撃を防いだものの、瓶割刀を後方へと飛ばされてしまった。「おぉ?お前も終わりだなぁ?残念だなぁ・・・・弟弟子よ。」といって俺に切りかかる。無防備であった俺の腕は一瞬にして空を裂く。その後、善鬼の首より血が噴射する。


 「妖刀 氷雨・・・。」と俺は言い放ち、氷で出来た刃を水に帰した。もし、善鬼が油断していなければ、敗北していただろう。しかし、慢心を誘い込むのもまた策。そうして辛くも善鬼に勝利した。