犬千代たちが戦っているころ、俺たち三人は誰とも遭遇することなく移動していた。「戦いは始まってるっつーのに、いたって平和だな。」と俺は二人に声をかける。「そうかな?アタシはそうも思わない。最初の轟音は間違えなく風雅だし、そのあとの閃光は白ね。つまりこちらは最低でも2人やられてるってことよ。」と綾乃は鋭く返す。


 「そ、そこまで言わなくても・・・。だって、別動隊には犬千代君と花ちゃんがいるし・・・。」と瑪瑙がフォローを入れるが俺は不安をぬぐいきれなかった。「とりあえず、あまり好ましくない状況だな。」と自分に言い聞かせるように言い放った。


 不安が的中したかの通りに犬千代が茂みよりあらわれた。背中が焼けただれていた。「犬千代、どうした!?花は?」と俺は犬千代の背中を治癒しながら問いかける、その問いに対して犬千代は「岩代、蛙屋、倉内の三人に襲われた。京香と宮は倒した・・・。花は、岩代にやられた・・。」と息を切らしながら答えた。


 数分後、茂みの奥より巨大な手が俺達を襲った。俺は氷の壁を作り攻撃を防いだ。「綾乃、一緒に戦ってくれるか?瑪瑙、犬千代を安全な場所に!」という俺の問いかけに対し瑪瑙と綾乃は頷き、瑪瑙は犬千代を連れて茂みの逆方向へ、綾乃は俺とともに臨戦態勢となった。


 氷の壁に突き刺さっていた腕は縮まり、茂みの奥より巨漢が現れる。その男は俺がこの時代に来た時に見た男であり、岩代入道という音にも聞こえた剛の兵であった。「綾乃、援護にまわってくれるか?俺はこの男で実力を試したい。」


 陽炎との特訓で身につけた力が、この男に対してどれ程まで通用するのか、自分の力を試したいという念に駆られていた俺はニヤリと笑って戦いの口火を切った。

 花の指示に見事こたえた犬千代の体には、宮からつけられた傷などなかった。何度も傀儡のからくりを喰らいかけたが、花の機転により危機を脱した。


 しかし指示を出していた花の声が途絶えた。犬千代が振り向くとその場に花は倒れこんでいた「花ァ!!」犬千代は応戦しながら叫ぶ。花は意識があるらしく「ちょっとした・・・眩暈・・・。糸の動きと・・・音・・・・聞くのに集中・・・しすぎちゃった。」


 犬千代は狼化を解いて花のもとへ駆け寄り、「よく頑張ったな・・・。俺がなんとかするから、ゆっくりしてろ。」と満面の笑みを見せ、花を安心させる。花はただ頷き、ゆっくりと目を閉じた。


 その瞬間、宮の傀儡が犬千代の後ろをとる。『勝った』そう宮が思った瞬間と同時に彼女の意識は途絶えた。一瞬にて犬千代は狼となり油断しきった宮の後ろをとり、気絶させたのだった。犬千代は一瞬安心したものの、花の悲鳴にて再び緊張の糸を張らざるを得なくなる。


 「犬千代、逃げて!!」花は精一杯に声を張り上げ、犬千代に喚起を促す。犬千代が花に視線をやった瞬間、彼が見たのは花を締め上げる巨大な右手であった。その『右手』が少し力を入れた瞬間、花は意識を失った。犬千代が反撃に移ろうとした瞬間、彼の背中に焼けるような痛みが走った。


 「おいおい、背中がガラ空きだぜぇ・・?」後ろより蛙屋 宗一がニヤリとしながら問いかける。そしてその隣には倉内 源三郎が犬千代に向い手を伸ばしていた。そして彼は低い声で「終わりだ、犬千代。」源三郎が技をかけようとした瞬間、犬千代の懐より鏡が飛び出し、その鏡より出た光があたり一面を覆いつくした。


 

 花が宮の傀儡の攻撃に防戦一方となっている間、犬千代と京香は互いににらみ合ったままであった。先に動き出したのは京香であった。大きな翼をはばたかせ、あっという間に上空へと上昇する。


 次の攻撃に移ろうとした京香の視界には犬千代の姿はなかった。「ど・・・・どこに・・?」という京香に対して「こっちだよ。」と犬千代の声が聞こえる。京香は愕然とした、何故なら『犬千代では絶対に届かない高さまで』浮遊したからである。次の手を打つ間もなく犬千代に羽交い絞めにされ、地面へと突き刺さった。


 京香が意識を取り戻した時には、犬千代の姿と首飾りはなくなっていた。


 花のもとについた犬千代は傀儡との戦いを買って出る。そうすると花が「意識は私の声に集中して。」と放つ。絶対の信頼を置いている犬千代は「あぁ・・。」と短く返し、傀儡へと突き進む。丁度犬千代の体が加速しきった時、宮の姿をしたからくりの首が外れた。「伏せ!」と花が言い放った通りに犬千代は地面すれすれにまで伏せる。外れた首は犬千代の上を猛スピードで飛んで行った。


 「あの人形にはからくりが沢山あるわ、だからあたしが指示を出すわ。いいわね?」と花が声高らかに犬千代へ問いかける。「いちいち聞くな、信頼してるから・・・。」と犬千代は照れながら返すのであった。そして花と犬千代の反撃が始まる。