俺はとっさに蛙屋の舌をよけ、水の腕を作り出し彼の舌を掴んだ。同じように硬直状態であった彼の四肢を掴み、彼の顔面に右ストレートを放った。一瞬にて彼は気絶し、首飾りを奪われた。


 彼の戦闘での特色は四つん這いからの跳躍と口から放つ酸、それに長い舌であった。まったく能力を発揮できずに倒れた彼を今でも少し可哀そうに思っている。


 そのころ、瑪瑙は必死に攻撃をよけ続けていた。痺れを切らした源三郎は一撃の速度と威力を格段に高めて放った。それはみごとに瑪瑙にあたったのだが、吸い込まれていくようにして消えていった。


 「何が起こったんだ・・。」源三郎は目を凝らす。そして目に入ったのは大きな鏡であった。その鏡が源三郎の攻撃を吸収したのであった。次の瞬間『先ほど放った』一撃がそのまま瑪瑙の鏡より自分のほうへとやってきた。なんとか相殺したものの、彼女の実力に驚かざるを得なかった。


 「これならどうだ?」そういい源三郎は両手より無数の力の球を放出する。その軌道、速度はまちまちであった。さすがの瑪瑙もここまでの攻撃をすべて吸収することなど不可能であると、源三郎は勝利を確信した。


 源三郎の攻撃で起こった砂煙がはれていく。そこには無傷の瑪瑙の姿があった。「ゴホっゴホっ、煙たいですぅ・・・・。」彼女はそのようなことを能天気に言っている。「うそだろ・・・。無傷だなんて・・・。」そういう源三郎のまわりに無数の手鏡が出現し、彼を上下左右、四方八方に囲みあげる。


 次の瞬間、彼は他方からくる自分自身の渾身の攻撃によって意識を失うのであった。そして、俺と綾乃が瑪瑙と犬千代に合流する。しかし、休息もつかの間であった。


 一瞬にして瑪瑙と綾乃が宙へ浮かび吹き飛ばされ、後方の木にぶつかる。俺は当てもなく氷の手裏剣を作り上げ、茂みの奥へと投げてみる。一向も当たる気配が無い中、その男は現れた。待ち望んだ相手。現時点で最も倒したい男『御手洗 風雅』その鋭い眼光に気押されながらも、俺は興奮で口元が緩んでいた。


 「樹、瑪瑙と綾乃連れて逃げろ。立て直すんだ・・・。ここは、食い止める。」俺は納得いかず「ふざけるな、怪我してるお前に何ができるんだ?この場でコイツを倒すべきだろ!?」そういう俺に対して静かに「時間稼ぎならできるさ、立て直せ、今は不利だ。お前なら奴を倒せる。」


 犬千代の言葉に従い、俺は綾乃と瑪瑙を連れて逃げた。「悪いな・・・。俺みたいな怪我人が相手で・・・。」という犬千代に対して風雅は「いや、そのようなことはない。怪我をしててもお前だ。決して手加減はしないぞ・・?」と風雅は静かに返す。


 伊賀の忍において最も疾い男たちの戦いが今始まることとなる・・・・。

 瑪瑙は先手を取って源三郎に手裏剣を投げたが、源三郎のかざした右手の前ではじかれてしまった。何が起こったかわからない瑪瑙に対し源三郎は「俺の能力は説明しにくい、まぁあえていうなら『気』だな。力の塊を両手から放てるのよ。南蛮のえげれすじゃぁ、『えねるぎぃ』っつうらしいだがよ!!」


 そういい源三郎は両手をかざす。そして攻撃を放つ瞬間、瑪瑙は彼の目の前まで一瞬にして移動し、足払いをくらわす。バランスを崩した源三郎の攻撃は地面を抉るだけであった。「もう好きにはさせねぇ・・・。」源三郎は鬼気迫る表情で瑪瑙を見つめた。


 そのころ、俺と綾乃は瑪瑙のもとへ駆けていた。しかし後ろに気配を感じ俺と綾乃は立ち止まる。俺は綾乃に「足場を頼む。」とだけ言い気配を感じるほうへとんだ。丁度いい高さで綾乃が木の足場を作り上げる。


 そして俺は『氷雨』を作りあげ、左手を鞘に、右手を柄にかける。そして目を閉じながら体勢を低くし、丹田に集中しながら息を吸い、吐く。そして次の瞬間、一瞬にて抜刀して抜刀すると氷雨は周りの枝を奇麗に切断した。


 ちょうど俺の『居合』によって『禿げた』部分に現れたのは蛙屋 宗一と思われる男であった。先程の斬撃を紙一重でよけたらしく、冷汗をかいていた。俺が彼と目を合わせた瞬間、彼の口より長く、鮮やかなピンク色をした舌が俺を襲った。

 岩代は再び右腕を巨大化させ俺を掴んだ・・・はずだった。しかし俺はスルリと彼の腕より脱出した。何度も・・・・何度も・・・・。俺は全身の汗腺より水を発生させ、彼の手より滑るように脱出したのであった。


 「その程度か?」俺は岩代を挑発する。彼は体術に合わせ体の一部一部を巨大化させた・・。あれの攻撃をよけるのは楽ではなかったが、決して不可能ではなかった。自分の実力に歓喜した俺は勝利を確信した。


 しかし、岩代は全身を巨大化させた。約5mにまでなった彼をどのようにして倒すか考えもつかなかった。倒されることはなくとも、倒すこともできない。先ほどの喜びは飽くまでぬか喜びだったと悔しさを噛みしめた瞬間。岩代の巨体のまわりに蛇のようなものがまとわりついた。


 『木』だ。無数の巨木が彼の体の自由を奪っていた。木を作り出した張本人の綾乃が「早く決めなよ、瑪瑙達の援護をしなくちゃならないのよ?」その声で俺は我に返り、氷で巨大な槌を作り上げる。


 足もとに水球を作り上げ、それの爆発を利用して上空へと飛びあがる。そして動きを封じられていた岩代の人中に槌を振り下ろす。


 同じころ、茂みの奥に逃げた犬千代と瑪瑙の前に現れたのは源三郎であった。「おいおい、さっきみたいにまた逃げるのは無しだぜ?」そう源三郎は冷やかす。「私がいるの・・・無視ですか?あの・・・・女だからってあまり馬鹿にしないでください・・・・。私だって、立派な忍です・・・・。」瑪瑙は静かに立ち上がり、源三郎をひたと睨みつけた。