白は直撃を避けたものの、無数の水弾に消して浅くない傷を負った。白は吐血し「やばい・・。流石樹君・・。すごいね・・。」それに対して俺は「水気は造形術に特化してるんだ、そして基本的に水は『造形された形を維持しようとする』んだ。布のような長方形に『造形された』水に対して水弾を放つ。それに対して長方形の水は元の形に戻ろうとするが水弾の力のほうが強く伸び続ける。そして水弾の勢いが無くなった瞬間、長方形に『造形された』水は勢いよく元の形に戻ろうとする。それを利用した罠さ。勉強になったか?」

 ふらつきながらも白は俺を見つめ、「僕は・・・負けられないんだ・・・強さが僕の・・・証だから・・。『友』と二人で並んで戦うには・・・強くないといけないんだ・・・。」そういう白の腕より、一筋の閃光が走った。俺はよけることができず、地面へ倒れこんだ。


 意識ははっきりしている。しかし体に力が入らない。うつむせに倒れた俺は顔だけ上にあげ白を見上げた。「流石だ・・・。雷神・・。」そういうと白は「いや・・今のは正直に自分でもわからないんだ・・。『無我夢中』ってやつだよ・・。」そうニコリと笑顔を向ける。「樹君・・・君は風雅の次に強かったよ・・・。ゴメンね・・。」


 その次の瞬間、白はありったけの力を込めた雷撃を俺に放つ。しかし、奥より現れた瑪瑙の鏡によって斜めに受け流された。「樹様・・・大丈夫ですか・・?綾乃は風雅さんの元へ行きました・・・。」俺の体は多少回復してきて、やっと立てるようになっていた。


 「綾乃の力は風雅さんと相性が悪いの・・・。だから、風雅さんのところへ行ってください。私は・・・多分白君にはかないませんけど、綾乃が来るまでの時間稼ぎならできます・・・・。綾乃を連れてきてください・・・・。ね・・・?」切なそうに微笑む瑪瑙の頼みを断る事も出来ず、俺は元来た道を引き返す。


 その頃、風雅と綾乃は対峙していた。ともに伊賀屈指の実力者である。この二人は互いににらみ合う。そして先に口を開いたのは綾乃であった。「今日は退けないの・・・。だから、本気で行くね・・・兄さん・・・。」彼女はそう風雅に言い放つのであった。

瑪瑙と綾乃の姿が消えた頃、白は音もなく俺の前へ歩み寄り掌呈を放つ。彼の腕は金色に輝き、避けた時には『バチバチ』という音を耳に残した。彼は両手に電気を纏い、シンプルに『殴る』という行為のみで俺に対峙してきた。


 「なめるな。」そういう俺の右手には氷雨が現れ白へ白刃を振り下ろす。「へへ・・・。僕の間合いで戦わしてくれないの?」笑顔で白は俺に問いかける。「無理だ、お前の『こぶし』はキツそーだからな・・・。」


 すると白は笑顔を崩さずに「こんなのはどうだい・・・?」その瞬間俺の体に電流が走った。「地電流・・。元々雷は土気になってるんだよ・・?勉強になったでしょ?」と白は続ける。


 俺は電流を喰らい、力の入らない体を必死に動かし体の感覚を復元させる。「地に足をつけちゃ・・・駄目ってか?」そういうと俺は斜めに飛び上り、周りの木々に隠れた。白は「かくれんぼの鬼、得意なんだよねぇ・・・。」そういうと白は俺のいる方向へ手を掲げ、次の瞬間雷が俺へ襲いかかった。


 足もとに作った水球を爆発させ、違う木々へと移動する。それを追うように白は雷を俺へと放つ。「防戦一方だね・・・?」余裕の白に対して「次は俺が鬼で鬼ごっこだ、逃げてみろよ。」そういった瞬間、今まで俺が乗り移った木々より強力な水球が白へ向かって放たれた。


 

 俺たちが去ったあと、二人の男が対峙した。一人は圧倒的な実力で天狗を倒した男、もう一人は苦戦しながらも新たな力を発揮し二人を倒した男。ともに実力は申し分のない男であった。


 犬千代は一瞬で狼男と化し、栗色をしたその毛はたちまち銀色に変化した。「また強くなったんじゃないのか?」風雅は珍しく口に笑みを含め犬千代に問いかける。「あぁ、そうだ。今までの俺と思うなよ・・・・。」


 そういった瞬間、二人の姿は消え、少した離れたとこにて二人の姿は現れ、また消え・・。伊賀において最速の戦いであろうこの二人のぶつかり合いは俺達忍びにおいても動きをとらえることは不可能であろうかと思えるほどだった。


 風雅の拳が犬千代をとらえたかに思えたが、犬千代はすんでのところでよける。後ろに並ぶ木々が彼の拳より放たれる風になぎ倒される。犬千代の横薙ぎを伏せてよける風雅。犬千代の爪は木々を次々と切り落とす。


 拮抗していた二人の実力。しかし戦いは長くつづかなった。犬千代の傷口が開き、苦痛ゆえに一瞬の隙ができる。風雅は見逃さず犬千代の腹に一撃を加える。そして追い打ちのように衝撃波が彼の腹を突き抜ける。さすがの犬千代も風雅の前には沈黙せざるを得なかった。


 その頃ただ一心に二人を連れて逃げる俺に、瑪瑙が喚起を促す声を放つ。「樹様、避けて!!」その言葉に反応した俺は天より地面へと突き刺さる一筋の閃光をすんでのところで避ける事に成功する。


 「やぁ・・・・。やっと会えたね・・・。君と手合せしてみたかったんだ♪」閃光が落ちたはずの場所にたった白がにこやかに話しかける。俺はゴクリ・・・と唾を飲みながら「綾乃、瑪瑙・・。ここは俺に・・・・。」


 風雅と並び、伊賀の雷神と呼ばれる男『雷堂 白』は今まで戦った相手とは違うタイプの人間であった。『殺気』が無いのだ。こうも無垢な笑顔を向けてくる相手と俺は対峙したことがなかった。


 『この男相手に俺は勝てるのか・・・・。』そのようなことを柄にも無く不安に思う自分がいるのは、否定できない事実であった。