俺と風雅の戦いに、はじまりの合図など必要とされなかった。風雅が一瞬にして俺の前へ出て、右へ左へ拳を繰り出す。それに対し俺は紙一重で攻撃を受け流す。そう、通常ならかわす事など絶対に不能な風雅の風をまとった体術をかわしているのだ。


 これには一つタネがある。『ドーピング』である。『水気』によって自分の血液の循環を急激に速くする。もちろん、攻撃に回ろうとも超人的な運動能力は絶大な力を示した。風雅と俺の体術は五分五分で、長くの間膠着状態が続いた。風雅は轟隼人に対してつかった回転かかと落としを俺に振り下ろす。


 次の瞬間、俺は「贖罪の山羊・・・。」そうつぶやいた瞬間に俺の片口に無数の巨大な泡が現れる。その泡がかかと落としの衝撃を分散する。そして俺は風雅の腹に水球を一撃見舞う。風雅は一瞬にして体をよじらせる。水球をよけた風雅は再び俺に襲いかかる。俺は白との戦いで見せたように、木々に飛び移り水球の罠を設置する。


 そして水球は多方向より風雅に襲いかかる。風雅は微動だにもしなかったにもかかわらず、水球は一発として風雅に当たることは無かった。風雅を中心として竜巻が巻き起こったのだ。全ての水球は竜巻の前にかき消されたが、俺は水球を足元にて爆発させ、その推進力で竜巻の上へ出る。


 空中で俺は水の弓に氷の矢三本を番え、風雅へと放った。


 その瞬間、綾乃は意識を取り戻した。すると丁度その瞬間に茂みの奥より音がし、白がボロボロの姿で現れた。「・・・やぁ・・綾乃・・。」息も絶え絶えに言う白に対して綾乃は「お互い・・・ボロボロみたいね・・・。」と返し、二人は戦闘態勢に入る。


 白の両手は黄金に光り輝き、バチバチと音をたてる。一方綾乃の周りには無数の木の葉が舞い落ちる。風雅と樹、白と綾乃。伊賀の里でも最強ともいえる猛者達の戦いも、終焉へ着々と向かっていくのであった。

 綾乃が振り下ろした槌は木牢をバキバキと押しつぶし、風雅にも到ろうとしていた。「双風裂掌(そうふうれっしょう)!」風雅がそう叫んだ瞬間、人間の数十倍の大きさをもった槌は上下にかざされた風雅の両手を中心に回転した豪風により破壊され、ただ残ったのは風に舞う木片だけであった。


 「木手裏剣、輪廻!」綾乃はそういいながら『くの字型』で80cmほどの手裏剣を六つ投げる。この技をあえて現代においての言葉に直すのであれば『ブーメラン』である。案の定風雅は手裏剣をよけ、綾乃へと近づく。次の瞬間綾乃は自分の前方より木の根を発生させ、風雅へと打ちつける。


 風雅は後ろによけた、そう、『後ろ』に。先ほど放った手裏剣が風雅に襲いかかる。風雅は襲い来る手裏剣を『かまいたち』で真っ二つにして防いだが丸太のような木の根が彼の腹部を捉える。綾乃は間髪入れずに「奥義・木龍牙!」そういった瞬間、無数の木の根が絡まりあって作られた木の龍がその大きな口を広げ、風雅へ襲いかかる。


 風雅は両足をしっかり踏みしめ、右手をまっすぐ、左手は少し曲げて右手より下のほうにして手を前方にかざす。そして木龍が風雅に喰らい付く瞬間に彼は右手を軸とする感じにし、左手を回転させる。その瞬間、風雅の前方に豪風が吹き荒れる。「双風裂掌おおおお!!」風雅は叫び、風を襲い来る怪物の口にねじ込んだ。


 双風裂掌の強さはその形にあった。亀の甲羅のようななめらかな丘のような形をした風の塊は、最強の防御力をもった盾と化す。形状に合わせ、その風の力は絶大。流石の木龍といえども沈黙するを得なかった。舞い散る木片、大きな力を使った直後の反動立つのがやっとであった。木片の煙より風雅が現れ、綾乃は腹に一撃を食らう。


 「カハッ・・・!」綾乃は気絶し、風雅が首飾りに手をかけようとした瞬間、茂みより二人を見つけた俺は風雅の顔面に一撃を喰らわせる。「ハッ、モロだぜモロ!風雅さんよ、弱くなったかい!?」俺は興奮し風雅へそのような挑発をする。「フッ・・・。まぐれだろ・・・?」風雅は珍しく笑みをみせ問いかける。「試してみろよ、お前を倒すための奥の手は腐るほどあんだよ・・・。」


 

 実は綾乃は風雅の妹であった。そんな事実などつゆ知らず、俺は白のもとより離れ、風雅と綾乃を探し始めた。


 「いくよ!!」そう綾乃が言った瞬間に後方の木々の根がまるで蛇のように風雅に襲いかかる。風雅は前へ飛び出し、木の根を風に纏われた両腕で弾く。「単調だ・・・。何故お前が『木龍』に選ばれたかがわからんよ・・・。」そういった瞬間綾乃は木の槌を作り上げ風雅向かって振り落す。


 『ズドン』と大きな音を立てるが、風雅を捉えることが出来なかった。「チッ・・!」綾乃は軽く舌打ちをすると地面より無数の根を発生させ上方へと風雅を襲う。さすがの風雅も避け切ることは出来ず、髪の毛が『チリッ』と音を立てる。そして間髪入れずにまたもや綾乃が槌にて風雅を襲う。


 直撃を避けたものの、風雅は地上へ叩きつけられる。「奥義・・・・十柱木牢(じっちゅうもくろう)!!」綾乃がそう叫んだ瞬間に風雅の周りより先ほどの倍以上の太さをもつ木の根が隙間なく十本生え、風雅の逃げ場を防ぐ。「打ち出の小槌!」綾乃がそう続けた瞬間、綾乃の槌は何倍にも膨れ上がり、風雅へと木牢ともども叩きつける。


 一方、瑪瑙と白はにらみ合いのまま数分が立っていた。先に動いたのは白で、瑪瑙へと雷を落とす。瑪瑙は絶妙な角度で鏡を使って白へと雷を打ち返す。


 白はふらつきながらも、すんでのところで雷撃を避け、地電流にて足元より瑪瑙を攻撃する。流石の瑪瑙の鏡も地面よりの攻撃は返しようもなく「キャッ!」瑪瑙は小さく叫んで気を失った。「風雅・・・。」白は瑪瑙の胸元の首飾りを引きちぎり、ふらつきながらも轟音の響くほうへと足を進めた。