俺はおりんと二人で里のはずれの草原へ赴いていた。そこは子供たちの遊び場で、明るい声が響き渡っている。俺はりんの膝に頭を置き、子供たちの様子を眺めている。「久しぶりですね・・・。こうやって・・・樹さまとふ、二人でいるなんて・・・。」おりんはこちらを覗きこみながら俺に話しかける。


 「三日も起き上がれなかったんだよなぁ・・・。」そう、俺は風雅との激闘を終えた後、三日の間も疲労故に起き上がれなかったのだ。最後に放ったあの技は一体何なんだったのだろうか。そのようなことを思いつつも、今はおりんとの二人の時間を満喫しようと目をつむる。


 「なーなー、この里で最強なのって誰だと思うー?」草原で遊ぶ一人の少年が他の子供たちに問いかける。「白ー!」と女の子達が声を合わせて返す。それに負けじと大半の男の子が「風雅だって風雅!やっぱりアイツが強ぇって!」質問をしたの男の子が「樹ってどう・・・?風雅に勝ったんだよ・・?」


 その少年の問いに対して「ばーか、マグレだよ、マグレ!」そう大勢の子達が返す。俺は多少頭にきたので、体を起き上がらせようとする。「こんにゃろっ!言いたい事いいやがっ・・・っつあぁ!」上体を反らした俺の頭は俺の顔を覗き込んでいたおりんの頭と衝突する。「あいたたたた・・っ」二人とも声をそろえて痛がった。


 「ハハッ」後方から笑い声が聞こえる。その声の主はこのように続ける。「流石のお前も、こういう時はゆるいのだな・・。」次の瞬間、彼は俺達の前に姿を現した。風雅だ。「何の用だ?」俺はムスッとしながら風雅に問いかける。「散歩だ・・。それより樹。お前はこの里においても最強といえる部類にまで駆け上がった。でもな、あくまでお前は『一番の強者』には慣れない。まだ、上がいる。」淡々と返す風雅に対し、怒りをあらわに俺は喰らい付く。「その『上』ってのがお前だって言うのか・・・?」


 風雅は呆れたように返す。「馬鹿か・・・。お前は俺に勝っただろう・・・?おそらく、この里において俺以上なのは、陽炎、半蔵様、長老だ。その中でも最強と思われるのが長老。俺はあの方から一本も取った事が無い・・・。」俺は口元をニヤリと緩ませ「藤林・・・・剛蘭・・・。」とボソリと呟くのであった。

 綾乃と白が激闘を演じていたころ、俺の矢は風雅の肩へ深々と刺さっていた。「ぐぬっ!」風雅は無理やり矢を引っこ抜いて、空中の俺の場所まで一瞬にして迫る。「双風裂掌・・・。」そう小さく言い放つ。それに合わせて俺は「贖罪の山羊!」といい、風雅が狙っているであろう腹部へ泡の盾を作り上げる。


 しかし、双風裂掌の力の前では泡の盾など相手にならず、一瞬にしてはがされる。そして腹部へ重い一撃をくらった俺は地面にはじき落とされた。風雅はすかさずかまいたちで追撃を試みる。俺は一瞬で氷雨を作り上げ、かまいたちと同じ角度で剣を振り、相殺した。


 その様子を見ていた白は、綾乃に対して「風雅・・・・とっても楽しそうだね♪」そういう白に対いて綾乃は「なんで・・・?なんで白は・・・あいつのことが・・・・そんなに大切なの?」


 「今の僕がいるのは風雅のお陰・・・・。僕は・・・捨て子だった・・・。しかも刃心で雷の・・・力を手に入れちゃったんだから・・・。小さい頃から、呪いの子って言われて・・・。でもね・・・でもね・・・。その当時から・・・みんなの・・・みんなの憧れだった風雅が・・・僕に話しかけて・・・くれたんだ・・・・。いきなり・・・『俺と戦え』って・・。風雅らしいね・・。それで・・・僕ね・・・初めて風雅に認められたんだ・・。初めてだよ・・?風雅が・・・風雅が・・・僕の・・・僕の居場所なんだ・・・。」


 話している間にも俺と風雅の攻防は続いていた。先ほどの双風裂掌を喰らった俺は限界が近づいていた。足に力が入らず体勢を崩された。その隙を見逃さず、風雅は「終わりだ・・。双風裂掌!」渾身の力が込められた双風裂掌が放たれる。


 「あれが出たら終わりでしょう・・。俺達でも無理じゃない・・・綾・・・・・・・。」そういう白は絶句した。


 何故なら風雅の双風裂掌が全く俺に届かなかったからである。正直その時俺も事態を把握することができなかった。ただ、無心のままかざした左手は一点の汚れもない純白に染められていた。『そこ』からは大気をも凍らす冷気が発せられていた。


 「ぐぁぁ!」そう短く叫んだ風雅の体はものすごい勢いで氷に浸食されていった。風雅に勝った。そう確信した瞬間、全身から力が抜け、その場に倒れこんだ。そして、晴れ渡る青い空に向かって俺は歓喜の雄叫びを上げるのであった。

 舞い落ちた木の葉は、綾乃の周りで舞い上がった。そして出来上がった渦は次第に大きくなり、白ともども二人を飲み込んだ。白は異変を察知し、綾乃に向って拳を放つ。すると、木の葉が人の形をつくり、綾乃の盾となった。次の瞬間、白の手に纏われた電気により、木の葉で出来上がった人形が燃え上がる。


 「・・・・あんまり・・・派手に暴れれないわよ?」綾乃はそう言い残すと、木の葉の渦へと隠れていった。「あちち・・・。こんな技見た事無いや・・・。流石だなぁ・・・綾乃は・・・。」白がそういった瞬間、木の葉で作られた人形が四体ほど殴りかかってくる。殴るといえども、所詮木の葉の塊である故、避ける必要はないと思った白はあえて体を動かそうとしない。


 しかし、次の瞬間には白は殴り飛ばされていた。木の葉の人形の中に綾乃がいたのだ。「やば・・・・。勝てないかも・・・。」そういった白は両手に纏った電気をさらに激しく光らせ、次の攻撃に備える。


 攻撃の第二波が始まる。またもや四体の木の葉人形が現れ、白へ殴りかかる。瞬時に白はすべての人形の心臓を貫き、炎上させる。しかし、目の前に燃え上がる炎より、木の幹らしきものが物凄い速さで自分へと襲いかかってきた。直撃を避けられず、鳩尾を強く打ち、後方の木へと打ちつけられた。


 立つのもやっとな白の目の前に、綾乃が現れる。「私の勝ちね・・。」そう言って白の首飾りに手をかける、しかし、一瞬のうちに光の矢が体をかすめた。「直・・・撃じゃ・・・・なかっ・・・たね・・・。」そういうものの効果は絶大で、綾乃の体には力が一切入らなかった。

 

 白も綾乃も互いに動けぬままにらみ合う。すると白が、「ねぇ・・・?僕の・・・首飾りあげるから・・・綾乃の頂戴・・・・?」と突拍子もなく聞いてくる。「な・・!?」そう驚く綾乃に対して白はこうつけくわえる「僕と・・綾乃・・相討ちって・・ことに・・・ね・・・?」


 「そうね・・・。彼らの・・・戦いも見てみたいし・・・ね・・・。」綾乃は承諾し、二人は動かない体を無理やり動かして互いの首飾りを引きちぎった。