俺と風雅の戦いに、はじまりの合図など必要とされなかった。風雅が一瞬にして俺の前へ出て、右へ左へ拳を繰り出す。それに対し俺は紙一重で攻撃を受け流す。そう、通常ならかわす事など絶対に不能な風雅の風をまとった体術をかわしているのだ。
これには一つタネがある。『ドーピング』である。『水気』によって自分の血液の循環を急激に速くする。もちろん、攻撃に回ろうとも超人的な運動能力は絶大な力を示した。風雅と俺の体術は五分五分で、長くの間膠着状態が続いた。風雅は轟隼人に対してつかった回転かかと落としを俺に振り下ろす。
次の瞬間、俺は「贖罪の山羊・・・。」そうつぶやいた瞬間に俺の片口に無数の巨大な泡が現れる。その泡がかかと落としの衝撃を分散する。そして俺は風雅の腹に水球を一撃見舞う。風雅は一瞬にして体をよじらせる。水球をよけた風雅は再び俺に襲いかかる。俺は白との戦いで見せたように、木々に飛び移り水球の罠を設置する。
そして水球は多方向より風雅に襲いかかる。風雅は微動だにもしなかったにもかかわらず、水球は一発として風雅に当たることは無かった。風雅を中心として竜巻が巻き起こったのだ。全ての水球は竜巻の前にかき消されたが、俺は水球を足元にて爆発させ、その推進力で竜巻の上へ出る。
空中で俺は水の弓に氷の矢三本を番え、風雅へと放った。
その瞬間、綾乃は意識を取り戻した。すると丁度その瞬間に茂みの奥より音がし、白がボロボロの姿で現れた。「・・・やぁ・・綾乃・・。」息も絶え絶えに言う白に対して綾乃は「お互い・・・ボロボロみたいね・・・。」と返し、二人は戦闘態勢に入る。
白の両手は黄金に光り輝き、バチバチと音をたてる。一方綾乃の周りには無数の木の葉が舞い落ちる。風雅と樹、白と綾乃。伊賀の里でも最強ともいえる猛者達の戦いも、終焉へ着々と向かっていくのであった。