俺たちが去ったあと、二人の男が対峙した。一人は圧倒的な実力で天狗を倒した男、もう一人は苦戦しながらも新たな力を発揮し二人を倒した男。ともに実力は申し分のない男であった。


 犬千代は一瞬で狼男と化し、栗色をしたその毛はたちまち銀色に変化した。「また強くなったんじゃないのか?」風雅は珍しく口に笑みを含め犬千代に問いかける。「あぁ、そうだ。今までの俺と思うなよ・・・・。」


 そういった瞬間、二人の姿は消え、少した離れたとこにて二人の姿は現れ、また消え・・。伊賀において最速の戦いであろうこの二人のぶつかり合いは俺達忍びにおいても動きをとらえることは不可能であろうかと思えるほどだった。


 風雅の拳が犬千代をとらえたかに思えたが、犬千代はすんでのところでよける。後ろに並ぶ木々が彼の拳より放たれる風になぎ倒される。犬千代の横薙ぎを伏せてよける風雅。犬千代の爪は木々を次々と切り落とす。


 拮抗していた二人の実力。しかし戦いは長くつづかなった。犬千代の傷口が開き、苦痛ゆえに一瞬の隙ができる。風雅は見逃さず犬千代の腹に一撃を加える。そして追い打ちのように衝撃波が彼の腹を突き抜ける。さすがの犬千代も風雅の前には沈黙せざるを得なかった。


 その頃ただ一心に二人を連れて逃げる俺に、瑪瑙が喚起を促す声を放つ。「樹様、避けて!!」その言葉に反応した俺は天より地面へと突き刺さる一筋の閃光をすんでのところで避ける事に成功する。


 「やぁ・・・・。やっと会えたね・・・。君と手合せしてみたかったんだ♪」閃光が落ちたはずの場所にたった白がにこやかに話しかける。俺はゴクリ・・・と唾を飲みながら「綾乃、瑪瑙・・。ここは俺に・・・・。」


 風雅と並び、伊賀の雷神と呼ばれる男『雷堂 白』は今まで戦った相手とは違うタイプの人間であった。『殺気』が無いのだ。こうも無垢な笑顔を向けてくる相手と俺は対峙したことがなかった。


 『この男相手に俺は勝てるのか・・・・。』そのようなことを柄にも無く不安に思う自分がいるのは、否定できない事実であった。