『水と炎の龍が来た~喧嘩せや~、喧嘩せや~。愛しき人を憂う目や~儚しや~。ほのおは猿を愛しと思い、み~ずは蜻蛉を愛しと思い~。』


 右月と左月は歌いだす。そして、その歌が終わると、そこに立って居たのは先代猿飛佐助と陽炎であった。すると佐助は姿を消し、陽炎はこちらに向かってくる。陽炎の一撃を避けた俺は燐に忠告をする。


「迷い無くきれ!所詮変化だ・・・!」


「甘いわ・・・樹。」


 そう言ったのは陽炎であった。彼女は炎の剣を作り出す。俺は氷雨を抜き、ぎりぎりで陽炎の一撃をいなす。一方燐は佐助の一撃を喰らい、後方へ吹き飛ぶ。俺はそこへ飛び込み、クッションの役割をはたす。


「この忍法はなぁ・・・・死んだ人間の霊魂を降ろしてその力を得るってものなのさ・・・。わかったかい、水龍の旦那?」


 俺は絶望した。陽炎は何度も何度もその姿を俺の前に現す。まるで亡霊のように。その現実をひしと受け止め、再び俺は構えた。




 一方、白と綾乃は鬼屍を追い詰めてた。あれから百七回彼を殺したのだ。


「ひっ・・・・ひぃいい!何で・・・?何でこんなっ・・・・?」


「僕達と貴方では覚悟が違う・・・。命の重みもね・・・・。僕達は『彼』が戻って来るまで・・・・絶対に死ねないだ・・・・。」


 そういって白は砂鉄の刃で彼の心臓を貫き、綾乃を連れて奥の間へ行くのであった。




伊賀・甲賀連合対風魔党率いる敵対忍軍。伊賀・甲賀が優勢の戦乱の中、一陣の風が吹いた。

 白と綾乃が部屋に入った瞬間、凄まじい死臭が漂ってくる。二人は鼻を覆い、敵を探す。奥にたたずむ男は青銅色の肌に、ただれた皮膚をしている。それが腕を振るった瞬間、その腕は大きく膨れ上がり、白と綾乃を襲う。


「綾乃、すぐに決めよう・・・・。この先に・・・・『最後』がまってるから・・・。」


「全ての戦いの首謀者・・・・・。許せない・・・・!」


 そういうと、綾乃の目は緑に白の目は金色に色を変える。雷の狗が敵の動きを止め、木の根の槍が心の蔵を貫く。しかし男は何も無かったかの様に槍を引き抜く。


「我が名はぁ・・・・・風魔五鬼の一ぃ・・・・屍鬼ぃ・・・・忍を喰らうて生きるぅ・・・我の命は百八ぃぃぃぃぃ!!」


 そう言って再び二人に襲い掛かる。彼の爪を避け切れずに白の着物が裂ける。二人は動揺を隠せなくなった。百八の命を持つ相手に、二つの命が勝てるのであろうかと。




 一方、面無の選んだ門の先は一本道であった。その先は他の三つの門の合流点で、風魔忍軍党首で風魔五鬼最強の男、風魔小太郎が待ち受ける部屋であった。ここで時間を稼ぎ、見方の合流を待つという作戦である。長い廊下が終わり、広い部屋に出る。そこに待ち受けるは、数年間生活を共にした、風魔党の長であった。


「お主が患者だったとはな・・・鬼面・・。・・・・覚悟は・・・・決まったか・・・?」


「敵が誰であろうが関係ない・・・・!さてっ、小太郎様っ、我が剣舞を味わうか、それともご自慢の魔羅で戦いますかえ?」


 そういいながら面無は般若の面をかぶる。すると彼の声は高くなり、胸は膨らみ、角の生えた美しい鬼女となった。そして腰の剣を抜き放った。



 

 俺と燐の前に現れたのは、短い丈の着物を来た、双子のくのいちであった。二人を区別することが出来るのはどちらに眼帯をつけているかという点だけであった。


「来ましたわ・・・左月姉さま・・・・。」


「そうね・・・・右月・・・・。」


 二人は互いの頬を触りあう。その情景は艶やかでなんとも形容し難い。


『我ら、風魔五鬼が一・・・・鬼雛・・・・参る!』

 俺達一行は富士へ向かった。そして樹海の奥地に城とも言えるほどの屋敷が現れる。

。「ここが・・・・。それにしても・・・・どうしてアンタが道を知ってたんだ、廻神さんよぉ・・・。」


 俺は懐疑の眼差しで彼を見つめる。


「向こう方に甲賀の間諜が居るということだ・・・。」


 そういうと一行は屋敷に入る。そこは畳が千畳ほどひかれた凄まじく広い部屋で、屋敷の中にもかかわらず、奥に四つの門があった。そしてそこで待ち受けていたのは一匹の鬼であった。浅黒い肌に禍々しい角。俺はこの忍者を知っていた。二年前、佐久間善鬼と対決した際に居た風魔の忍、面無である。


「久しぶり・・・・和田 樹・・・。それと・・・・廻神様・・・・・。」


「してっ、ここの作りはどうなっている?」


 廻神は悠々と面無に声をかける。二年前の『いつか助けてやる。』という言葉の意味がここにきてやっと理解に至る。


「後ろのどの門よりでもいけますが、それぞれ、私以外の風魔の五鬼が待ち受けております。彼奴らの実力・・・私め以上であります・・・。確固撃破が好ましいかと・・・・。」


 すると一行は門のほうへと移動する。


「ご老体・・・共に・・・。」


「綾乃っ、行こう!」


 廻神・白が藤林・綾乃を誘う。


「燐・・・・いくか・・・・?」


「なっ、何故お前なんかとっ!?」


 燐は敵意むき出しで此方をにらみつける。しかしながら時は既に遅し、俺と燐以外はそれぞれの門を開けて中に入っていった。


「ほれっ、いくぞっ、我侭言うな!」


 そう言って俺達二人は五鬼の一人の待つ部屋へと足を踏み入れる。