突然現れたイザナミに、俺はただただ驚くばかりであった。


「馬鹿者!集中せんか・・・!私であろうとも・・・・此奴の攻撃を凌ぐのは至難の技ぞ!」


 そういってイザナミはおりんの姿になる。


「樹様・・・・。心配で・・・・ついつい出てきてしまいました。おそらく・・・・この戦いで・・・・私達の力は切れ、この世に命を留めて置くことが出来なくなります。ですから・・・・」


「それって・・・死ぬって事だよな・・・!?ふざけるな・・!誰がそんなの許すか!俺っ・・・・・俺っ・・・・・お前にまで死なれたら・・・・俺・・・・。」


 涙目になる俺を愛しそうに眺めながらおりんは続ける。


「元々・・・・・私は死した体に無理やり命を繋いだだけであります。・・・・・それ以上に・・・・貴方様の命を救いたいのです・・・・。」


「でもっ・・・・・でもだなぁ・・!」


 言葉が見つからず、俺は嗚咽をもらす。天海の体が消滅していくに連れて、徐々におりんの姿も粒子化して行く。天海の体は限界に近くなり、彼は雄たけびを上げる。


「くそおおおお、くそおおおおおおお!我の・・・・・・我の体がああああああああああああああ!」


 断末魔を残して、最強最悪の男は消滅した。そしてそれは、この物語が終わりつつあることを意味していた。

 俺が再び立ち上がったときには、皆は既にやられていた。ドクン、ドクンと心臓の音が五月蝿い。天海が此方に気付き、攻撃を仕掛けてくる。


「待ちくたびれましたよ・・・。こいつ等全て殺してしまおうかと思いましたよ。」


 そういって振るわれた拳は、とても遅いものだった。いやっ、とても遅く『感じた』のである。風を切る音が聞こえ、難なく彼の拳を避ける。そして俺の体より勝手に、紅骸が発動し、左腕を紅く染め上げる。そして、足元には俺の冷気で作られた白銀の狼が現れたのであった。


「花・・・陽炎・・・犬千代・・・。」


「何をぶつぶつ言ってるんですか・・・・?」


 そういって再び天海が攻撃を仕掛ける。白銀の狼が攻撃の合間を縫って天海の喉元に喰らい付く。この時、初めて天海に苦悶の表情が浮かぶ。そして、超聴力・長視力を使って彼の懐に入り、紅い左手をかざす。すると天海は苦痛ゆえの悲鳴を上げた。


「お前の・・・『創成』の力に対するのは俺の・・・・『還元』だろ・・・?」


 天海の体は少しずつ粒子化して消え去っていく。しかし彼も抵抗しないわけではなく、鋭い爪を俺にはなってきた。俺に避ける術は無く、ただ目を閉じるだけであった。しかしその爪は俺に届かなかった。彼と俺との間に割って入ったのはイザナミであった。


「百地 丹波守 イザナミ 参る!」

 朦朧とする意識、動かない体、この二つの要因が俺に敗北を悟らせた。しかし、それを悟りつつも俺は歯を食いしばり、立ち上がろうとする。するとそこに面無が現れる。


「樹君・・・・前にあった時・・・・助けたろ・・・いうたやろ・・・?それがこの時やと思うんだよな・・・。」


 そういって彼は天海のほうへ向かう。そして次に俺の元に現れたのは廻神であった。


「樹さん・・・。私が弱くなければ・・・佐助も、陽炎さんも、他のみんなも死ななくて良かったんですよね・・・。でも・・・その罪を償えるときが来たみたいです・・・・。」


 次にやって来たのは、綾乃であった。


「樹・・・・頑張りなさいよ・・・!戻るまで・・・・時間稼ぎするから・・・・。」


 白と、風雅が続いてやってくる。


「樹君・・・・。僕・・・樹君に会えてよかった・・・。君にあってから・・・僕は・・・少しずつ変われたと思う・・・。君は大切な友達だから・・。風雅も帰ってきたし・・・・みんなで・・・・里に帰ろ・・・?」


「オイ馬鹿・・・。もう少し寝たら、起きてこいよ・・・。癪なんだが・・・・お前なしじゃ・・・・勝てそうにない・・・。お前の力が・・・・必要だ・・・・頼む・・。」


 ふらふらと、燐もいっぽいっぽ近づいてくる。


「アンタ・・・・。ここまで来たんだからね・・・・。必ず・・・・勝とう・・・・・ね?」


 最後に、剛蘭が優しく話しかけてくる。


「わし等が、未来から呼んだのは・・・希望であったな・・・。今・・・この絶望的な状態においても・・・。ここに呼ばれたのが、お主で良かったと思っておる・・・。」


 そういって剛蘭も戦いに赴く。目頭が熱くなり、涙が頬を伝う。心臓の音が、いつもより大きく聞こえてきた。