【“神の手”訴えられる】
今年4月、名医としてメディアに何度も取り上げられ、多数の著書も持つ脳外科医の福島孝徳氏が、手術ミスにより提訴されたことを全国紙などが報じた。
福島氏は2006年、大阪脳神経外科病院(大阪府豊中市)で30歳代女性の右視床腫瘍摘出手術を執刀した際、誤って左視床の正常組織を切除した。患者は手術直後から発語不能、右半身麻痺になり、4カ月後には腫瘍内出血を来して四肢麻痺に陥り、10カ月後に転院先の病院で急性心停止のため死亡した。
「手術で腫瘍を摘出できていれば、その後の腫瘍の悪化や死亡は避けられた」として、患者遺族は福島氏と大阪脳神経外科病院に約1億1000万円の損害賠償を請求した。
訴状によると、患者は06年6月ごろから左上肢に痺れ、脱力などの感覚異常を自覚。7月に近隣病院で右視床腫瘍と診断された。教師として働く患者やその家族は、早期の腫瘍摘出手術を希望。そこで脳外科医としてメディア露出の多かった福島氏に手術依頼の手紙を書き、大阪脳神経外科病院での手術が決まった。福島氏は当時、同病院の非常勤医として月に1日ほど手術に来ていた。
福島氏は手術数日後、患者家族に口頭と文書で手術ミスの経緯を説明した。文書では左視床の組織を切除した理由について、手術ベッドか頭の固定が不十分だった可能性があると説明している。右に切除部位がある際は通常、手術台を右に10°ほど傾けて進入するが、固定が不十分で患者が左側に傾いていたため、左に進入してしまったという。手術中も手術台の傾きや患者の頭部の向きを確認しなかったようだ。
福島氏は文書で「脳室内部の腫瘍と見えた膨瘤も、前回のオペ(病理組織生検)の影響で黄色変化があり、凝血塊が付着して腫瘍と考えられた」と説明。さらに「私の不注意でこのような結果になり、誠に申し訳なく思います」とも記した。
死亡との因果関係が争点に
手術ミスは福島氏も病院も認めているため、裁判の争点は誤って正常組織を切除したことと死亡との因果関係になる。遺族の代理人弁護士は、「患者は心臓に既往症はなく、急性心停止は腫瘍内出血に由来するものと考えられる。少なくとも、福島氏の手術で全摘出に近い結果を得られれば、その後の腫瘍の悪化や死亡は回避できた」と主張する。
一方で福島氏の代理人弁護士は、「患者の腫瘍は当初、グレード2とされていた。しかし手術後に急速に腫瘍が大きくなっており、腫瘍はもともとグレード3か4だった可能性がある。腫瘍を切除しても死亡を回避できたとはいえない」と反論する。
ただ、今回のケースは訴訟を防げた可能性もあったとみられる。遺族の代理人弁護士は昨年8月、損害賠償を求める内容証明郵便を、福島氏が院長を務める塩田病院附属福島孝徳記念病院(千葉県長柄町)と大阪脳神経外科病院に送付。大阪脳神経外科病院とは代理人弁護士を通じて示談に向けた協議を重ねてきたが、福島氏からは回答がなかったという。
「不法行為による損害賠償」を裁判で請求できる時効は、被害者やその法定代理人が損害および加害者を知ったときから3年間。同氏からの回答をこれ以上待つことができず、遺族は訴訟に踏み切った。
「手術ミス後も再手術の実施について話すなど、患者家族と福島氏の関係は当初は良好だった。しかし07年2月以降、家族は福島氏と連絡が取れなくなってしまった。責任を放棄されたことで、家族には納得できない感情が残った」と遺族の代理人弁護士は話している。
「吸引が必要な患者さんです」 後編
乗車して約10分経つと、やはり予想していた通りの状態が起こりました
喉元でゴロゴロとしていた音が 急激に大きくなってきたのです
申し送りでは93%だったSpO2も88~90%と低下しています
ストレッチャーで移動をしたり、車の振動を受けたりすると、病棟サイドで考えて
いる以上に 搬送中には「痰がらみ」の症状が強く出ることが多いです
さっそく 痰の吸引処置を行うことを決めました
分泌物が貯留している部位にカテーテルを挿入し、陰圧をかけて吸引します
「咳をしてくださいね~」 本人に声をかけながら、ゴホゴホと咳を促し、出てきた
痰を吸引します。4~5回続けてようやくヒット!たっぷり取れて、SpO2も上昇
してきました
本音を言うと、搬送付添いナースとしては、なるべく吸引はしたくないのです
なぜなら、喉の奥までカテーテルを深く挿入すると、嘔吐反射(吐きそうになること)、
または嘔吐を引き起こすことがあるからです。 またその吐物が気管に入ることで
誤嚥性肺炎を引き起こすリスクもあります
こう考えると、搬送中にはなるべく吸引はしたくないのが本心なのです
けれども、痰が詰まって窒息してしまっては大変なので、常に患者さんの状態を
観察しながら その辺の判断をしなければいけません
この日の受診は、外来が異常に混雑して待ち時間が長く、約3時間かかりました
受診が終わっての帰りの車内でも、同じように吸引が必要でした
個々の患者さんによって違います。その個別性を把握しながら 搬送することは
とても難しいと毎回思います
DREAM号には、
吸引器のほかに酸素ボンベ、バイタルを測定するための一式、AEDも 積んで
います。 医療依存度の高い患者さんの移動には、ぜひDREAMをご指名ください
「吸引が必要な患者さんです」 前編
病院の相談室から ナース同乗の依頼でした
他院受診の 往復付添いです
病棟へお迎えに上がると、その日の部屋持ち担当ナースが 今朝の最終バイタル
(体温・脈拍・血圧・SpO2)を書いたメモを渡してくれました
「戻ってきたら、また声掛けてください。この辺ウロウロしてますから」
感じの良いナースです。外部から入ると、病院の対応やスタッフ、清潔状況などに
敏感になり、また客観的に見ることができます
「○○さん、おはようございます」
患者さんに声をかけると、右方偏位した眼球がわずかに動くものの、発語はなく、
ほとんど無反応に近い状態です
ベッドの頭上の壁に付いている吸引瓶には、淡黄色の痰が多量に溜まっている。
ふだんから吸引がかなり必要な患者さんであることがわかります
今も患者さんの喉元で、ゴロゴロと小さな痰がらみの音が聴かれ、すこし気になります
「吸引はしたばかりですか?」
外出する前には、吸引しておくのが病棟としての最低限の常識です
担当ナースの気に障らないよう 言い方に注意しながら聞いてみました
「そうです。したばかりですよ」
「わかりました。PEGのトラブルは特にないですか?」
「大丈夫です。よろしくお願いします」
そんなやり取りをしてから、DREAMドライバーと一緒にストレッチャーに乗せ、
DREAM号へ乗車しました。
(後編につづく)





