12/2-4に開催された第60回東京国際ギターコンクールの結果と総括をお届けします。先ずは、写真でイベントの雰囲気お楽しみください。

【写真1】入賞した6名中5名の記念撮影(1名欠席、中央が優勝した小暮浩史さん、右端は5位入賞の菅沼聖隆さん)
【写真2】表彰式直後の小暮さんと私。ロビーで記念撮影。
【写真3】表彰式のステージの様子(第1位の小暮さん表彰中)
【写真4】審査員の荘村清志さんに表彰される優勝した小暮浩史さん
【写真5】第2位のGian Marco Ciampa さん(Italy)
【写真6】第3位のFlavio Nati さん(Italy)
【写真7】第5位の菅沼聖隆さん
【写真8】第6位の Zhanxian Shi さん(China)
【写真9】優勝のスピーチをする小暮浩史さん
【写真10】入賞者の方々(第4位Anton Baranovさん (Russia)は欠席)
【写真11】2次予選審査員の先生方
【写真12】1~3位の3名
【写真13】カメラマンに?おどけたポーズを要求されて(笑)
【写真14】審査員の福田進一さんと入賞者(現代ギター社の取材用?)
【写真15】会場の東京・白寿ホール
【写真16】賞品の数々(優勝賞金は約100万円!)
【写真17】本選の採点表
【写真18】2次予選の採点表
【写真19】本選のプログラム
【写真20】留学先のスペインから駆けつけ第5位に入賞した菅沼聖隆さん(右、2次予選終了後)
【写真21】留学先のドイツから駆けつけて挑戦した斎藤優貴さん(右、2次予選終了後)
【写真22】第6位入賞のZhanxian Shi さん(右、China、2次予選終了後)
【写真23】惜しくも予選突破ならなかった飯野なみさん(右)と
【写真24】右より斎藤優貴さん、松澤結子さん、飯野なみさん、浅田侑子さん、私(上原淳)
【写真25】2次予選突破時の小暮浩史さんと
【写真26】休憩時間のロビーの様子
【写真27】会場のビルから見える東京の街並み
【写真28】会場の東京・白寿ホールの正面玄関

皆さんこんばんは。
いよいよ2017年も残すところ数時間ですね。私のイベントレポも残すところ山下和仁リサイタルと東京国際ギターコンクールの2件です(笑)。
定期演奏会の準備などで時間が無く報告が大変遅くなりましたが、東京国際は何とか今年中に掲載できそうです。山下さんは来年に持ち越しそうです(笑)。では、東京国際から。

日本におけるギターコンクールの最高峰で世界的にもハイレベルなコンクールとして知られている、東京国際ギターコンクールが12/2(土)~3(日)の2日間に渡って、東京・白寿ホールにて開催されました。
当日、会場から予選や本選の結果速報などで、激戦の模様を皆さんにお伝えしてきましたが、改めて振り返って総括したいと思います。先ずは本選結果は下記の通り。

【第60回東京国際ギターコンクール本選結果】
第1位 Hiroshi Kogure小暮浩史(Japan) 92点
第2位 Gian Marco Ciampa (Italy) 90点
第3位 Flavio Nati (Italy) 89点
第4位 Anton Baranov (Russia) 87.5点
第5位 Masataka Suganuma菅沼聖隆(Japan) 84.5点
第6位 Zhanxian Shi (China) 82.5点

先ずは、日本人として6年ぶりに優勝の栄冠を勝ち取った小暮浩史さんの快挙を讃えたいと思います。おめでとうございます!。菅沼さんも世界の強豪を相手に堂々の第5位入賞、おめでとうございます!
小暮さんは、7年ほど前早稲田大学在学中の頃からの知り合いで、千葉にお招きして何度も演奏して頂いている方なので、今回の快挙は自分の事のように嬉しいです。最近の若者にしてはとても礼儀正しく、相手に気配りができる挨拶や言葉遣いなど、社会人としての基本がしっかりできている方です。音楽だけでなく人間的にも魅力があり、末永く応援したいと思わせる好青年です。
小暮さんの演奏は、技術的に高いレベルに達しかつ安定感があり、表現もダイナミックで音楽が躍動して生き生きとしており、音色も伝統的な音色で大変に美しい。演奏前後のステージマナーも気持ちよく、演奏中の表情や所作も自信に満ち溢れ音楽を作る喜びが感じられます。楽器の性能をフルに引き出すタッチから繰り出す迫力ある低音と輝かしく艶のある高音と相まって、優勝するにふさわしい見事な演奏であったと思います。楽器は伝統的な構造の楽器との事でした。

表彰式での優勝記念スピーチで本人が述べていた「この優勝で終わりではなく、これをスタートとして今後も精進したい(主旨)」と言う言葉からも、今後彼が現状に満足する事なく、更なる高みを目指して我々に素晴らしい音楽を届けてくれることが期待できます。早速来年、千葉で優勝記念コンサートを企画しました!(笑)日時など詳細は近日中にお知らせします。

今回のコンクールを一言でいうと「近年にないハイレベルの出場者が揃い、その中で小暮浩史さんが日本人として6年ぶりに優勝した、まことにめでたい記憶に残る大会であった。」と思います。ちなみに前回の日本人優勝者は2011年の藤元高輝さんでした。
例年レベルの高い人は1~3人いますが、今回は4~5人いたと思います。誰が優勝してもおかしくない、もう好みの問題で決めるしかない、と言っても良いほどであったと思う。実際に本選審査員の採点表を見ると、1位が一人に集中することなく、かなり分散していました。点差も少なくハイレベルでの接戦、激戦であった事が伺えます。

各審査員の採点を細かく見ていくと審査員の好みや、採点基準がかなり違う事が分かります。特にギター以外の審査員(今回は指揮者とピアニスト)とギタリストの審査員の採点結果比べてみると興味深いことが見えてきます。ギタリストの審査員でも意見が分かれる事は珍しくありませんが、もっと極端に差が出ていました。
例えば6位になった中国のZhanxian Shiさん、ピアニストの審査員は1位の点数を付けていますが他に1位をつけた人はいません。また演奏者6名中5名が1位評価を獲得しており、評価が分かれて大混戦だった事が分析できます。

一人ひとりの演奏に対するコメントは時間の関係で(笑)控えますが、本選に進めなかった人の中で印象に残った浅田侑子さんについて一言書きたいと思います。
浅田さんの演奏は今回初めて聴かせて頂きましたが、とても高い演奏能力をお持ちの方です。自由曲でパガニーニのカプリース第24番を弾いたのですが、この曲は技術的に難度が高くアクロバティックで、コンサートピースとしては楽しめますが、コンクール向きとは言えません。かなりテクニックがある人でも音を出すだけで精いっぱいになってしまう難曲で、この曲を音楽的に高度に聴かせるには至難の技となります。もっと余裕をもって弾けて、ギターの良さが発揮でき、音楽表現にも気を配る事が出来る曲を選曲していれば、本選に残る可能性は大いにあったのでは、、、と惜しまれました。
話が前後しますが本選の前日に行われた2次予選会についても書いておきます。

【第60回東京国際ギターコンクール2次予選結果】
1.Anton Baranov (Russia)114.5点
2.Gian Marco Ciampa (Italy)11.5点
3.Hiroshi Kogure小暮浩史(Japan)110点
4.Masataka Suganuma菅沼聖隆(Japan)108点
5.Flavio Nati (Italy)106点
6.Zhanxian Shi (China)106点
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次点:Io Yamada山田唯雄(Japan)104点

2次予選会には、日本人9名、外国人7名の合計16名が出場。激戦の結果、上記6名が本選会に進出。
この結果は私の予想とほぼ一致しており納得出来るものでしたが、山田さんとベラルーシのPavel Kukhtaさんの二人が落選したのは意外だった。特にKukhtaさんは私の評価では、必ず通ると予想していたBaranovさん、Shiさんと並んでベスト3だったので。

日本人では小暮さんと菅沼さんの2名が本選に進出しましたが、点差を見ると僅差ですので、本選での逆転優勝も十分に期待できると思いました。惜しかったのは次点の山田さん。私は本選に残ると予想していましたが、結果を見るとわずか2点差で涙をのみました。わずかなミスが響いたのかも知れません。このようなハイレベルなコンクールではほんのわずかなミスでも目立ってしまうのです。
本選に進出した方々の演奏に総じて言えることは、高い演奏能力と音楽表現力、音色が美しく、表現や音質・音量の幅が広く素晴らしかった事です。ギターの命ともいえる美しい音色をしかりしたタッチで出していた方が、本選に選ばれたと思います。楽器もダブルトップやラティスなど新しい構造の楽器を使っている方も多く、大きな音量でしかも音色も美しいという事が、上位進出のトレンドになっていることを感じました。その中で、伝統的な構造の楽器で優勝した小暮さんは立派だと言えます。

落選した方々の演奏について全体的に言えるのは、音楽の表現意欲は感じるものの、それを実現するための技術が足りなかったように思います。表現の幅が狭かったり、音量が小さかったり、音質に魅力が無かったり、小さくこじんまりとまとまってしまった感じの人が多かったです。次回に向けて頑張って欲しいものです。
そういえば、今回もコンクールでは、第4位入賞したロシア人のAnton Baranovが、トップ通過だった予選と第4位に入賞した本選の両方で審査結果発表及び表彰式に欠席したのは謎の行動でした。自分の演奏が終わったら、或いは審査結果を聞いたらステージに上がらずに会場を後にしていたようです。不可解な行動です。

コンクール会場では、プロギタリストやギター仲間など多数の知合いとお会いしました。皆さん思い思いにこの日本最高峰のギターコンクールを楽しんでいたように感じました。昨年度の優勝者トマシ氏にも11/21の「音大ギター科在籍者&若手のコンサート」に続き再会しました。
2次予選会終了後には前年度優勝者記念演奏会としてトマシ氏のリサイタルを聴きました。とても美しい音で気持ちの良い音楽を堪能しました。特に最後に弾かれたブリテンの名曲ノクターナルの演奏は心に残る演奏でした。

日本ギター連盟のHPに今回のコンクールの結果報告が掲載されていましたので、以下に転載して紹介します。(見やすくなるように私の方で一部編集しています。)
http://

第60回東京国際ギターコンクール
本選結果 / FINAL Result
第1位 1st Prize:小暮 浩史 / Hiroshi KOGURE
第2位 2nd Prize:Gian Marco Ciampa(Italy)
第3位 3rd Prize:Flavio Nati(Italy)
第4位 4th Prize:Anton Baranov(Russia)
第5位 5th Prize:菅沼 聖隆/Masataka SUGANUMA
第6位 6th Prize:Zhanxiang Shi(China)
本選出場者演奏順/演奏曲目順 Order of performance for final
本選課題曲 : 挽歌/原博(ギタルラ社版)
Final Compulsory : Banka / Hiroshi Hara (Ad:Casa dela Guitarra)
1.Anton Baranov(Russia)
フォーローン、ホープ、ファンシー/J.ダウランド
3つのカプリセッティ/L.レニャーニ 課題曲
ソナタ4番「イタリアーナ」/G.サントルソラ
Forlorn hope fancy/J.Dowland
3 Capricetti/L.Legnani Compulsory
Sonata Italiana/G.Santorsola
2.菅沼聖隆/Masataka SUGANUMA
ソナタK213、K.322/D.スカルラッティ 課題曲 ソナタ/A.ホセ
ハンガリー幻想曲/J.K.メルツ
Sonata K213,K322/D. Scarlatti Compulsory Sonata/A.Jose
Fantaisie Hongroise/J.K.Mertz
~ 休 憩 ~intermission
3.Zhanxiang Shi(China)
ファンタジーニ短調P5/J.ダウランド 課題曲 カプリス7番/L.レニャーニ
スペインのフォリアの主題による変奏とフーガ/M.M.ポンセ
Fantasie in D minor P5/J.Dowland Compulsory Caprise No.7/L.Legnani
Folia de Espana Theme and variations with fugue/M.M.Ponce
4.Flavio Nati(Italy)
前奏曲P98ファンシー/J.ダウランド 課題曲
練習曲4番アダージョ/G.レゴンディ
ノクターナルOp.70/B.ブリテン
Praeludium P98,A Fancy/J.Dowland Compulsory
Study No4 Adagio/G.Regondi
Nocturnal, after John Dowland Op.70/B.Britten
~ 休 憩 ~intermission
5.小暮 浩史/Hiroshi KOGURE
ソナタK.208 K.209/D.スカルラッティ 課題曲
アリアと変奏第1番/G.レゴンディ
2つのリディア調の歌/N.ダンジェロ
Sonata K.208 K.209/D.Scarlatti Compulsory
Ter Air Varie pour la guitare/G.Regondi
Due Canzoni Lidie/N.d’Angelo
6.Gian Marco Ciampa(Italy)
ファンタジー7番 P.1/J.ダウランド
スクリャービンの主題による変奏曲/A.タンスマン
序奏とカプリス/G.レゴンディ 課題曲
パーカッションスタディ1番/A.カンペラ
Fantasy No.7 P.1/J.Dowland
Variations sur un theme de Scriabine/A.Tansman
Introduction et Caprice/G.Regondi Compulsory
Percussion Study Ⅰ/A.Kampela

第2次予選演奏順 Order of Performers for 2nd preliminary
課題曲 : パッサカリア/A.タンスマン
Compulsory : Passacaille/A.Tansman
1. 閑喜 弦介/Gensuke KANKI
2. 斎藤 優貴/Yuki SAITO
3. 浅田 侑子/Yuko ASADA
4. 山田 唯雄/Io YAMADA
5. Anton Baranov(Russia)
6. Zhanxiang Shi (China)
~休 憩~
7. Gian Marco Ciampa(Italy)
8. Flavio Nati (Italy)
9. 高橋 紗都/Sato TAKAHASHI
10. 菅沼 聖隆/Masataka SUGANUMA
11. Pavel Kukhta(Belarus)
~休 憩~
12. 小暮 浩史/Hiroshi KOGURE
13. Hanyuan Huang(China)
14. 会所 幹也/Mikiya KAISHO
15. 飯野 なみ/Nami IINO
16. Minseok Kang(South Korea)
以上。
